香川県境トレイル 5泊6日の旅
スタート:余木崎 (愛媛県と香川県の西部県境)
ゴール :県境岬 (徳島県と香川県の東部県境)
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 余木崎(西県境)〜引田県境岬(東県境)
縦走6日目 (最終日)
上畑ビバーク地〜鵜垰(うのたお)〜大山(おおやま)〜鉢伏山〜龍王山分岐〜大坂峠〜引田県境岬
香川県境トレイル
第六日目(最終日) 平成29年3月22日(水)天気 晴れ
上畑(鵜峠手前4.5km)ビバーク地 〜 引田県境岬
歩行距離:約25.5km 歩行時間:06時00分〜18時30分 約12時間30分
6日目 ルート図
カシミールソフトを使用したGPSトラックログ加工図 上畑ビバーク地〜引田県境岬
上畑ビバーク地から鵜垰(うのたお)へ
04時30分頃目が覚めてツェルトの中で道具類を片づけて出発準備をする。何度夜中に体が滑って元の位置に上がる作業をした事だろ
う。暖かいズボン下を脱いで冷たいスパッツ・タイツを履く嫌な瞬間を我慢する。スパッツタイツの効果は良く分からなかったが、
一度も足が攣ったり膝が痛くて歩けないって事は無かった。
登山道は昨日の雨で濡れているのでロープに吊っていた汚れたレインパンツをそのままズボンの上から履く。サコッシュは乾いてい
たので今日の行動食(ミルクパン)と本日使用する地図5枚、サングラス、ペットボトル1本を入れる。
ツェルトは恐らくもう使わないので細引きを付けたままクルクル巻いてザックの上部に押し込む。ホッカイロで温めた単四乾電池の内
2本が生き返ったので予備2本をポケットに入れてGPSを起動する。結構朝早くから準備をしたつもりだが、それでも出発は06時
になった。
目が覚める度に体が滑ってツェルトから出そうになっている ザックを足元に置いて滑り止めにする
植林の傾斜から尾根に出て暫くピークに向かうと自然林となり、縦走路が北に向かって方向を変える。右手から朝日が差してきて今日
は良い天気らしいぞ。30分程歩くと左手が切れ落ちて急な崖の様相をしている。地図を見るとその崖下に昨日少し歩いた林道が走って
いる。
06時40分稜線の右手に植林が出て来るが、縦走尾根はこの辺りから東に方向を変えて鵜峠(うのたお)へと向かう。尾根は自然林に
姿を変えており611mピークに向かって岩っぽい上りとなる。所々に頭が赤いペンキで塗られた境界石が見られるので安心感がある。
ツバキの木が多くて赤い花が咲いていたり地面に落ちており殺風景な尾根のアクセントとなってくれる。
07時20分611mピークで少し北側に振って下り坂となる。ここから県境縦走路は少し幅が広めで荒れている所もあるが歩き易い。
06時35分丁度尾根が兼弘(香川)と御所(徳島)を結ぶ「鵜の田尾トンネル」の真上に差しかかる。
ミルクパンが縦走開始時からずっとザックの片隅に残っていたのでを朝食として齧りながら歩く。
藪っぽくなってくる。
縦走6日目 ビバーク地から大山までのルート図
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ加工図
06時過ぎ、暗い植林の斜面を尾根に這い上がる 植林が切れれば周りが明るくなる
06時23分 うへ〜〜 朝日が眩しいぜ! 細尾根になると左手が切れ落ちているのがわかる
06時43分 カヤや倒木で荒れ気味の尾根が東にターンする 岩も現れたりして退屈しない
573ピークに向かって上がる 07時20分 573mピークを通過
椿が咲いていると心が和む なだらかな下り坂となる
平地では高カロリー過ぎる牛乳パン (安くて行動食に丁度いい) 07時45分 尾根が荒れて来る
地獄の藪下り「573mピークから鵜峠(うのたお)」間
07時45分573mピークを越えて下り坂になると尾根の様相が今までの香川県境とは思えないほどの酷い藪になる。尾根部にはシダや
イバラが密生して着ている服や帽子、ザックに引っかかって前に進めない。たまらず右手の灌木帯に入るとこれ又灌木が密生していて
進路を防ぐ。何じゃこりゃ〜〜 誰か地元の山キチでこの藪を整備をする奇特な人は居らんのかい!
08時10分激しい藪も小康状態になりホッとするが相変わらず小藪状態の下りが続く。
下り立った。そこが「鵜峠」(うのたお)と呼ばれる峠だった。香川県方面には「白鳥町」の標識がある。徳島県方面は土成(どなり)
町」でこの旧国道318号線は結構見通しが悪く危険だった為に1986年(昭和61年)「鵜の田尾トンネル」1,769mを完成
させた。 従って現在は酔狂な縦走登山者か峠マニアしか訪れない静かな峠である。
一旦広い尾根道から次第に荒れ気味になる 07時50分 足元が悪くなる
尾根はシダとイバラで歩けない 右に逃げても灌木ヤブだ でもここを行くしかない
歩ける場所を探して右往左往する 我慢 ガマン がまん
08時10分 やっと最悪の場所から脱出する 08時15分 荒れてはいるが歩ける様になった尾根道
08時20分 細い道が右手に回り込む 右側の土成方面が開けて来た
08時25分 ガードレールがある道路に出た 鵜垰(うのたお)とか 鵜の田尾峠と呼ばれている峠部
△点(43) 四等三角点「丸住」 455.68m
鵜峠(うのたお)の東側に「水源涵(かん)養保安林」の錆びた鉄板があり、そこから次の県境尾根が北に向かって延びて行く。
08時37分縦走路に入るが、踏み跡はあるものの藪っぽい斜面で先ほどまでの大藪よりマシだなって思いながら上っていくとそのピーク
に08時52分四等三角点「丸住」があった。(鵜峠から15分)
三角点「丸住」を過ぎると県境尾根らしく広くて歩き易い道となって安心する。09時15分尾根の真ん中に岩が並んでいる。所々で藪っ
ぽい場所も出現するがまず進路に問題は無い。尾根道が北から東へ方角が変わると四国電力の鉄塔指標杭が現れ、例によって道の状態
が良くなる。
の支流「狩居川」沿いの集落だろう。
08時37分「水源涵(かん)養保安林」の錆びた看板から入る うへ〜 こっちも藪っぽいじゃん
心配したより足元が空いている ピークが近づき三角点を探しながら歩く
08時52分 四等三角点「丸住」を通過 ここから尾根道が良くなる 峠から丁度15分で到着
美しいウバメガシの尾根道になる
09時15分 尾根にゴジラの背中が出て来た 東讃の県境尾根は西讃のそれよりワイルドだ
自然林の平坦な道に・・・ 09時42分 電力鉄塔指標が現れる
鉄塔が近づくと道の状態が良くなる 09時45分 四電・讃岐鳴門線106番鉄塔
△点(44)三等三角点「天井」 626.51m
09時50分県境尾根に小さな石組の土台を持った古い祠が立っている。地図にはこの辺りに破線道が南北に延びているので讃岐と阿波
を結ぶ古い遍路道となっていたのだろう。祠の中には何も残っていない。
少し歩くとヌタ場があり、水が地下から滲み出して来ている。10時02分左手に鉄塔保線路が鉄塔108番に向かって下がって行っ
てしまった。そこから岩が沢山尾根に現れるワイルドな上りになって10時12分大きなピークに上り詰めた。2年前の申年にアンジ
ーパパさんの紹介で東香川の宮奥池近くにある猿神社から奥宮経由でここまで支尾根を登って来たので三角点近くには覚えがある。
南へ少し傾斜を上ると10時17分懐かしい三等三角点「天井」に到着した。大きな松の木に山頂標識「天井山」が掛けられている。
09時50分右手に祠が置かれてある すこし進むと大きめのヌタ場があり水が滲み出している
10時02分鉄塔保線路は左に逸れて下ると尾根道がワイルドな岩尾根になる
岩尾根を上がる 三角点ピークがひん曲がっているので大きな県境礎石がある
10時18分 懐かしい三等三角点「天井」に到着 天井山の山頂標識が掛かっている
県境尾根はこの三角点で複雑な曲がりをした後大山までほぼ南東方向に向かう。松が主体の自然林が続き10時40分左手に林道
が尾根に接近する。昨日の失敗があるので林道には下りず尾根を忠実に歩く。道路や鉄塔のある所は展望が良い。北側遠くに瀬戸
内海が遠望できる。
10時55分久しぶりに右手に植林が現れると11時08分尾根のど真ん中に大岩がどっかりと座り、プチセリ割となっている。
10時20分 三角点「天井」にタッチして先へ進む 松が主体の自然林っぽい尾根だ
10時40分 左から細めで荒れた林道が迫るが、ここは尾根を歩く (林道へは下りない)
山間に海辺の町と瀬戸内海が見える 細尾根を進む
植林帯が始まると 11時06分 パックリ岩を抜ける この辺りはアップダウンが少ない
△点(45) 四等三角点「天狗岳」 582.55m
11時15分広い植林の尾根ピークから暫く東に向かい、その先に三角点がある筈だ。5分程歩くと自然林の開けた場所に出て前方に
瀬戸内海が見えて嬉しくなる。今まで見てきた瀬戸内海より近くに見える。すると尾根が未舗装林道と合流した様だ。でも国土地理
院の地図にはこんな林道の記載は無い。この道を進むと両側の立木が非常に高くて並木道の様に雰囲気が良い場所を抜ける。
三角点がある場所に近づいたので慎重に歩く。すると11時30分林道の右横の小高い藪に四等三角点「天狗岳」を発見した。とて
もじゃないが地形的に平凡すぎる場所にこんな大それた点名を付けた理由がわからん。まあ私が国土地理院にクレーム付けてもどう
なるもんでも無いし・・・
中々雰囲気の良い場所だ 左前方に瀬戸内海がグッと近づいて見える ウレピ〜〜
11時20分左から来た林道と合流した(恐らく先ほど合流しかかった林道だろう) 逆から歩く人の為に、引田方面から来たら左が尾根筋となる
雰囲気 めっちゃいいじゃないですか〜 森を抜けて右手の小高いヤブで三角点を発見
11時28分 四等三角点「天狗岳」を発見 「なあ お前〜 完全に名前負けしてまっせ」 「オラが悪いんじゃないってば 国土地理院様のせいだす」
さて、地図を見るとこの三角点から今度は北に一旦下がって、大山へは又東に方向を変える。こんなクランクした尾根に林道がある
と余計にルートがややこしくなる。尾根に沿って林道は植林地帯に入って行く。11時47分林道から尾根道が分かれているのでそ
ちらに入る。しかしこの尾根道も2分で今度は舗装道路(県道34号線)に合流した。その道路も3分程で又県境尾根に入って行く。
あ〜〜阿讃県境って道路と交錯するのでややこしいこっちゃ。
最終的に自然林の尾根道に入り、地図を見ても道路は尾根の南側に延びてはいるがこれからは尾根道に合流はしない。
尾根を通る林道の幅が結構広くなる 11時36分林道が少し尾根を外している様だ
11時47分 尾根道(山道)に入る 直ぐに11時49分 今度は右側からの舗装道路に合流
11時54分 最終的に県境尾根(山道)に入る この場所のGPSログはこんな具合になっていた
県道34号線は途中から別の農道になっている
△点(46) 一等三角点「大山」(おおやま) 691.29m
12時00分尾根が東にターンして大山へ向かう自然林となった。ザックの天蓋から本日の昼食かっぱえびせんを出して食べながら歩
く。残りの距離を考えるとゆっくりと休んで昼食休憩などしておれない。と言いながらこの6日間一度も昼食休憩など撮った事が
無かった。
広々とした森の中に道が続くが、東部尾根では結構メジャーな場所なので不安は無い。第一、尾根の直ぐ南側には舗装道路が走って
いるのだ。
この尾根筋から南側へ下りた所にある大山寺(たいさんじ)は水場調査を含めて2度程行った事があるが四国88か所番外霊場とし
て「四国別格20霊場」、又「四国三十六不動霊場」のそれぞれ一番寺と言う触れ込みだ。番外で別格? ようわからんけど弘法大師
ゆかりのお寺らしい。ここには歴史を感じさせる様な古びた山門が残っているがお寺は立派で雰囲気も良い。
義経の屋島攻めの際もこのお寺(奥の院)で戦勝祈願をしたとされている。ただ山容は広くてデカい雲辺寺山の様な存在なのだが、
森の中で眺望も無く登山としては少し魅力に欠ける。
平らな尾根道を歩くと右手に大きな電源開発の電波塔が立っている。フェンスの中に人が入って作業をしている様だ。作業員だろう
が人間に会うのは久しぶりだ。声をかけて挨拶する。
12時30分一等三角点「大山」に到着した。この三角点がなければ山頂としてのけじめがつかない山だ。少し奥に天測点の標石も立
っている。「天測」とは星の位置から地上・海上の位置を割り出す事で私が若い頃、航海士が乗下船する時に天測器(セクスタント)
という精密な計測器を箱にいれて大事に持っていたのを覚えている。GPSが取り入れられてからはこの機器も見られなくなった。
だからこの天測点も現在では活躍の意味もない物かも知れない。
丁度電源開発の人が作業を終えて車に帰ってきたので記念写真をお願いする。この縦走で初めての自分写真である。ミニ三脚を持
って来たのだが毎日歩く事が忙しくて kazashi さんみたいに三脚セット→タイマーセット→ポーズ決め→失敗→撮り直しって作業
など出来るかい!
地図を見て最終日の行程で大ざっぱにここ大山は丁度半分程の場所にある。06時から12時半まで6時間半歩いて来た。日没の
18時半まで後6時間あるので何とかまともな道が続けば今日中に県境尾根縦走を終わらせる事が可能だとほぼ確信する。
そうと決まればゴー!である。道路の横に細い縦走路が続いており、最初は藪っぽいが直ぐに明瞭な尾根道となる。後半のスター
トは小走りとなった。水の事前調査の時にこの辺りを歩いたのだがあまり記憶に残っていない。
自然林は少し荒れた場所になる事が多い 12時10分 今日の昼食は豪華にかっぱえびせんだ ぐっすん
こういった平地は道がなければ苦労する場所だ 大岩が横たわる
12時25分 コーナーを左に曲がる 電源開発の電波塔横を通る
12時30分 一等三角点「大山」でこの縦走で初めてのマイ写真を撮って貰う やっぱ足が上がってないわ
大山から鉢伏山までのGPSトラックログ図
カシミールソフトを使ったGPSトラックログ加工図
大山越
12時50分一旦北に向かった県境はここで南東の大山越へ向けて下って行く。このターニングピークの北側には2基の電波塔があり
そこまで舗装道路が徳島側から続いている。
右手に植林がある荒れた小道を下ると12時56分石積みが置かれてルートが左の舗装道路へと誘う。遍路道としては左の舗装道路に
出て大山越で県境尾根と合流する。でもここは石積みの崖を右側から下ってワイルドな下り道が県境部なのだ。足元が悪い下り坂
にはトラロープや電気コードの様な物が置かれている。急坂を10分程下り終えて平らな植林帯に入ると13時06分舗装道路に
出る。ここが大山越だろうが尾根を斜めに道路が真っ二つに分けているので峠の雰囲気は無い。
地図を見ると香川県側は引田―馬宿川沿いー小路池からや更に上流の川股ダムからこの峠に破線が延びており、徳島県側は大山寺、
上板町と繋がっている。
向かいの県境尾根に向かって登り口さえわからない有様だ。適当に道路端の斜面を這い上がり続く尾根道に乗る。広葉樹の中にし
っかりした踏み跡が続く。大山越交差点から10分程進むと標石が立つなだらかな508mピークに「どじ山会 大山越え」の私設
標木が立っている。
三角点「大山」の横、道路と行使した場所から藪っぽい縦走路に入る 12時52分 縦走路が右に曲がり下って行く
12時56分 崖で行き詰る 左へ林道に続く道があるが、ここは右に回り込んで石積みから真っすぐ下りる
荒れた細い急傾斜を下る ロープや電気コードが置かれている 植林地帯で急斜面が落ち着く
13時06分 舗装道路に合流した ここがいわゆる大山越 道路の向かいに這い上がって縦走路が続く
なだらかな自然林の縦走路 13時17分 旧大山越を通過する
この石標は三角点ではない どじ山会の「大山越」私標が立っている
△点(47)「畑」 537.07m
県境尾根は一本松越え手前に向かって最後の南下を続ける。背丈の低い笹薮なども少し現れるが踏み跡はしっかりしている。13時
37分四等三角点「畑」を踏む。三角点標柱の代わりに測量などに使う長い赤白の棒が立っている。丁度大山越えの舗装道路を渡って
30分後だった。大山寺の東側になだらかな平地が広がりその辺りが「大山畑」という地名だからそこから点名が取られたのだろう。
背丈の短い笹が現れる 境界石標が所々に見られて精神安定剤となる
13時37分 四等三角点「畑」を通過する
一本松越
三角点「畑」から10分程自然林の中をなだらかに下っていくと今まで南へ下っていた県境尾根は東へと方角を変える。このター
ニングポイントには四国のみちが南へ延びているのが地図上に破線で記されているのだが歩いている限りそんな分岐は確認できない。
更にシダや雑木が覆い茂って薄暗い道を下って行く。右手に掘れこんだ道が並走しているのでこれが古い遍路道だろうか。
13時53分薄暗いコル部にあるクロスポイント「一本松越」に着いた。特に一本松越の標識は見当たらず古びた「休息所」の標識
が見えるだけだ。今は廃れて往時の面影は無いが、少し徳島県側に入ると天保年間の古い道しるべお地蔵さんが立っている。
「左 くろだに?(黒谷)、右 亦たに ?」と読めない事もないがはっきりわからない。徳島県側には地蔵寺がある黒谷がある
のでその地名かな? 香川県側は川股の亦(また)だろうか?
屋島合戦へ行く途中に弁慶も通ったと言われている古くから武士や商人、お遍路さんが阿波と讃岐の往来を思わせる峠だ。
ここで地図を次のルートに交換する。残りが2枚になって気持ちが軽くなる。さてここからすぐ東にある451mピークに上り、
そこからは北に向かってまっしぐらの県境尾根となる。見通しは悪いが振り返ると尾根道のスペースから大山のデカい図体が見え
る。一本松越から10分程で451mPに着きそこからも自然林の下りになる。
う〜〜ん この辺りから南へ破線道があるんだけど見当たらない 縦走路通りに東へ下って行く
シダや灌木の薄暗い県境尾根を下る 13時53分 見覚えのあるコル「一本松越」に着いた
江戸時代から立っている道しるべのお地蔵さん はっきりと読めない
一本松越から縦走路を東の尾根に向かって進む 上り坂を喘ぐ
後ろを振り返るとデカい大山(おおやま)の山塊が見える 14時00分 451mピークから少し下りになる
△(48) 三等三角点「鉢伏」439.33m
14時10分足元に笹が現れる。低山の笹は時として藪化して厄介である。どうかこの先藪は現れません様にと祈る。祈った途端、笹
の背丈が急に高くなりどうもスズタケの様相だ。しかし登山道のスペースは確保されておりホッとする。自然林と笹が交互に現わ
れ、時にはツバキの鮮やかな花に慰められる。同じような風景のアップダウンを幾度も繰り返し14時50分鉢を伏せた様ななだ
らかなピーク、三等三角点「鉢伏」に着いた。掲示板でkazashi さんが貼ってくてた鉢伏山の私設標識が有った。
まあ、何の展望も無く楽しみの無い山だけど香川県にあるからこそ大事に扱ってくれるのだぞとお山に言い聞かせる。
先は見えたがまだゴールまでには距離はある。脱兎のごとく鉢伏山を駆け下りる。この辺りは左手が東かがわ市の山だらけ、右手
には板野町の川沿いに縦長くJRの大宮駅に向かって町がある筈なのだが何も見えない。笹やシダの生える自然林を足早に歩くと
15時05分382mピークから急な下りになる。
14時10分 げっ 笹が現れたぞ 低いままで収まっていてほしい 灌木の背が高いが県境部は切り開かれている
背丈の高い笹が現れたが尾根道はちゃんと笹刈りされていた 笹と灌木の縦走路
14時35分 歩きやすい県境尾根 笹が現れると少し荒れ気味だが笹刈りは十分だ
14時50分 鉢伏山 三等三角点「鉢伏」 にとうちゃこ〜〜 ブリキの缶は交流ノートが入っているのかな?
長かった龍王山分岐までの道
その後もシダが時折現れる自然林が続くが藪という程の道では無い。15時30分いきなり笹薮が現れるが歩くのに支障がある程
でもなかった。
15時50分445mピークに来ると深い灌木の林に入る。ここは少し地形が複雑でルート取りに気を付ける必要がありテープなど
も貼られている。東側はなだらかで、西の香川県側には支尾根が沢山延びている。そこをクリアして明瞭な尾根道に出ると16時
06分「龍王山分岐」にやっと着いた。
縦走計画時には余裕があればここから龍王山やビク山もついでに訪問〜何て甘い事を考えていたがとんでもない話だった。わき目
も振らずに大坂峠に向かう余裕のない自分が居た。
ここで地図が最後の1枚となる。日没まであと2時間余り有れば県境岬まで何とかなるやろ。ここで残り少なくなった水の補給に
緊急ビバーク用の最後の一本をザックの底から出して予備とする。
シダが現れるが長続きはしない 15時05分 382mピークから川俣ダムへの破線道があるんだがよく分からなかった
15時20分 尾根道が左に曲がってその後緩やかな上りになる 15時30分 笹薮っぽい場所にはイノシシの掘り返した跡がある
なんだか灌木が迫ってちょっぴり不安 16時手前に一番ルート取りが難しい荒地になる テープあり
龍王山分岐の手前が結構縦走路が荒れている おっ 三叉路ピークらしいぞ
16時07分 やっと龍王山分岐に着いたぞ〜 鉢伏山から1時間15分余りかかった 当然龍王山なんぞには寄る時間はない
△点(49) 四等三角点「展望台」 392.49m
龍王山分岐から少し下がるとススキの藪が現れそれを抜けると急に前方が開けて来た。今までの県境尾根が閉鎖的な場所だった鬱憤
を一挙に晴らす風景が眼下に広がった。右手、南東側には吉野川と眉山が見える。 気持ちいい〜〜〜。
更にススキとアセビの道を下ると右手に展望東屋があった。(アセビ公園展望台)前方には鉄塔の丘がありその手前にはトイレ設備
もある。何てパラダイスだ!
16時20分鉄塔とアンテナ塔が並ぶ丘を抜けてその先にある大坂峠展望台へと進む。ピンクや白のアセビが美しい。引田の町が見え
て翼山の向こうに白鳥町とを隔てる与治山を含む半島が瀬戸内海に突出している。その手前にも海に突出している山が城山だろう。
16時28分展望所の基部に帰って四等三角点「展望台」を確認する。それにしてもイージーな点名を付けたもんだ。ここの点名はや
っぱ大坂峠でしょ?
ればならない。日没まで2時間も無いし、県境尾根がどんな状態か良く分からないのだ。
龍王山分岐からカヤの藪を抜けると2分で展望が開ける うわ〜〜 景色が開けたぞ〜
悠久の吉野川の流れと徳島平野、眉山(びざん)が見える
カヤの間に付けられて遊歩道を下る 16時13分 右手にアセビ公園の展望台がある
前方にアセビ公園駐車場のトイレと鉄塔の丘が見える 道路の左に続く県境尾根を進む
電波塔と鉄塔の横を抜けると駐車場に出る 更に展望台に向かって進むとピンクのアセビが迎えてくれる
大坂峠展望所の入り口 四国のみち案内板もある 鳴門の海岸線
引田の海岸線 手前から 翼山、 城山、 与治山など引田の海岸線にある山が見える
16時28分 四等三角点「展望台」を大坂峠展望台の入り口に確認して右手の遍路道へ向かう
「四国のみち」で痛恨のミス
地図を見ると「四国のみち」が北側の先にある大阪峠の中間部付近まで県境部近くを通っており、その後県境と離れて西に別れる。
今までの経験から県境縦走路はこんな場合、四国のみちを歩く筈で、県境部は恐らく誰も歩かず藪だろう。あまり深く考えずに「四国
のみち」を駆け下りる。16時31分遍路道の分岐があったが尾根の横を階段が下って「四国のみち」標識があるのでドンドン下り
てしまった。
5分程走って階段を下りるが途中で何故か不安が心を過(よ)ぎった。コンパスを見るとこの遍路道が東へ向かっており北を指してい
ないのだ。ジグザグの道では一時的に方角があらぬ方向を指す事がある。でも何かおかしい。左手奥に大きな尾根が見えるし・・・
GPSと地図を出して位置確認すると何とこの遍路道は東の大坂越=徳島県へ向かっていたのだった。
あちゃ〜〜 この忙しい時に何てこった 不注意な自分の性格とこんな性格をDNAで繋いだ祖先を恨む。(逆恨みと言うもんじゃ!)
力を振り絞って分岐まで急いで戻る。随分長いロスと思ったが20分分程の事だった。
16時50分先ほどの遍路道分岐に帰り標識を確認すると無情にも左手にちゃんと「県境0.8km」の文字が・・・バカバカ(涙)
大坂峠展望台から右下に「四国のみち」を下がる うっかりして「大阪御番所跡」方面へ下りてしまった
どんどん走って遍路道を下りるが道間違いに気が付き引き返す 16時50分分岐に帰る う〜〜ん 四国のみちの分岐で間違ってしまった
いよいよ最後の花道〜 県境を辿って引田の県境岬へ (碁ノ浦)へ
大坂峠展望台〜県境岬(碁ノ浦)
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ加工図 大坂峠展望台〜大坂峠〜国道11号線〜三角点「県境」〜県境岬
大坂峠へ
16時50分県境尾根への遍路道分岐に復帰して気を取り直して左側の「四国のみち」へ下る。5分程「四国のみち」を歩くと遍路道は
尾根と別れて右手にトラバースするのでここから県境尾根に入る。
先の四電「板野・大内線」20番鉄塔までは保線路も併用されているのでそんなに荒れてはいない。17時00分この20番鉄塔を
過ぎると尾根道はワイルドになった。前方には311mピークが衝立の様に立っている。
17時10分尾根の下に先ほど別れた「四国のみち」が横切って西側へ下っている。この遍路道のコルに立ち、続く尾根の荒れ様を見て
少し弱気になる。でもここでオメオメと遍路道を大谷川へ下るのは自分らしくないと腹をくくる。
正面の竹藪はとても進めそうにない。少し左手から竹藪を避けて尾根に取り付いて行く。赤い椿がアホな奴じゃと笑っている様に見
えた。急坂を上り切ると尾根道が現れタヌキに化かされたのかと思う程快適な道が続いている。境界標石に勇気を貰い北に向かって
歩く。
左手の灌木を通して低くなった西陽が気にかかる。
県道1号線で徳島の藍住・板野と香川の坂元・引田を結ぶさぬき街道と呼ばれており、現在でも現役で車が多少通っている。
地図を見ると県境部にそって道路が何かの施設まで少し北側に延びている。
緯度で2つ半弱で海に達している。緯度10秒はこの辺りでは約308mなので暗算は苦手だが残りはおよそ800m弱だろう。
県境への標識に従って急な階段を北西に下りて行く 県境尾根に沿った遍路道を進む
16時56分 遍路道から別れて県境尾根に入る 17時00分 鉄塔20番を通過 (四電・板野大内線)
境界礎石もちゃんとある ワイルドな尾根もありますが歩くのには十分です
前方に311mピークの高い尾根が見える 17時10分 遍路道が下に見えて尾根を横切っている
遍路道の北側は竹藪で歩けない 少し左手から尾根に取り付く すぐに急傾斜だが歩きやすい尾根道となる
最初のピークへ上がる 境界石標がありこんな道が続いて欲しいと念ずる
やっぱりシダが生えて荒れた場所も少しある 311mピークから下りになる
総じて遍路道から尾根に入ってから思ったより歩きやすい県境だった 17時30分 大坂峠の道路に下りる
大坂峠から県境尾根を国道11号線「魔の断崖」へ
大坂峠から北に少し伸びる舗装道路を進むと広場に出ると後方が高いので展望所にでもなっているのだろうか?時間的にそこへ向か
う余裕は無いので17時35分ガードレールを乗り越えて県境尾根へと下りて行く。こんな場所には決まってゴミが投棄されている。
県境尾根は予想以上に明瞭でスペースもありホッとする。10分ほどなだらかな傾斜を下ると足元が海岸近くの花崗岩が風化した砂
っぽい尾根が現れる。すると前方に長浜の漁港が見えた。
お〜〜 あと少しやで。海に向かってクジラの背中の様な風化尾根を滑り落ちない様に気を付けて進む。左手に引田湾が見えて、後
方の夕日が色を濃くして山際にもうすぐ沈むぞと告げる。
17時48分急にシダ藪になり尾根道が無くなった。こんな藪は普段なら平気で歩くのだが、この場に及んで6日間歩いた老人にまだ
試練を与えるって言うの?
真上に出たのだ。あちゃ〜〜 下りる所無いじゃん!
右手のシダ藪を下るが、ここも崖で下れない。仕方なく崖を迂回して南側へ移動して立木を利用しながら下りる。修羅場に慣れてい
ない人には5分でこんな芸当は出来ないだろう。
れそうもない。切れ目を計らい走って向こう側へ渡る。
17時30分 大坂峠(県道1号線) 逢坂峠から展望所へ向かう北側へ延びる道路を歩く
17時35分 大坂峠園地下のガードレールにあった引田部族に関する看板
17時35分 古びたガードレールを越えて県境尾根へ入る 意外とスペースがある
まあ これ位なら問題ない尾根だ ん? 信じられない程立派な尾根道じゃん
17時45分 海岸線特有のザラ尾根になる 鳴門側の海岸線
滑りそうなのでバランスを取りながら尾根を進む 右前方に碁ノ浦漁港が見える
夕暮れの引田湾を眺める
マサ土の尾根を抜けるといきなりのシダ藪が出現 も〜〜 かんべんしてよ〜〜
先が知れているので破れかぶれで突き進む もうそろそろ最後かな?
18時00分 いきなり眼前に高い壁が現れた あちゃ〜〜〜 国道11号線の切通しやんけ 高すぎる〜
右手にも崖があってもっと奥まで回り込む 木々を掴んで藪を分けてとにかく道路の高さまで下りる
18時10分 右手から国道へ向かう 国道11号線を渡って切通しの西側へ移動する
△点(50) 四等三角点「県境」 40.38m
(フィナーレの県境岬に向かう
で・・で・・・ でぇ・・・・北側の切り通しも高い絶壁で西側のコンクリートを上がって斜面に取り付く。藪でザックが引っかか
り這い上がれない。仕方無くここまで苦労を友にしてきたザックを下してカメラとGPSをサコッシュに入れて稜線へ這い上がる。
18時17分最後の三角点「県境」にタッチする。まあイージーな点名ではあるが、確かに県境なのでこれは文句を言わないでおこう。
少しシダ藪を分けて、滑り落ちそうな風化尾根を進んで岬の突先に出る。先が瀬戸内海に切れ落ちてタイタニック号の舳(へさき)
の様だ。太陽は西に落ち、かすかに赤みを帯びた山際と夕闇が迫ろうとする引田湾を県境の岬に立って眺める。色んなハプニングが
あり今日この時間にこの場に立っている事が不思議な位だ。長かった香川県境歩きの6日間を終えるに相応しい景色だった。
18時12分 切通しの西側から取り付く 国道11号線を見下ろす
左手から回り込んでシダ藪を這い上がる 18時17分 最終三角点「県境」にタッチ
18時20分 県境岬に到着 これ以上は進めない ゴ〜〜〜ル !!
夕闇迫る引田湾 6日間に渡る香川県境トレイルはここにほぼ無事終了した やれば出来るじゃん
碁ノ浦漁港 帰ろ かえろ〜〜 お家へ帰ろ
エピローグ
さて、旅はまだ終わってはいない。イモトみたいにヘリコプターやスタッフの車が待ってはいないのだ。家々に灯りが灯された引田
の町を眺めながら風化尾根を引き返し藪を下ってデポしたザックの場所に帰り着く。ヘッドランプを出してライトを点け国道11号
線に下りる。
この辺りの国道を歩く人も居ないのか歩道の幅も無い。大型トラックが通る度にガードレールにくっつき排気ブレーキを浴びる。狭
いトンネルを越え坂元地区へ出てローソンに寄る。店に入る前に身だしなみを整え消臭ミストを浴びる。
おにぎりとホットコーヒーを買い「JR讃岐相生はどの辺りでしょうか?」と女性店員に聞くが要領を得ない。大体が女性に道を尋
ねても要領を得ない事はわかってるんだが・・・
とにかく橋を渡った遠くの向こうって事で店の外に置いてあったザックを背負って国道をトボトボ歩く。縦走中の志(こころざし)
が足の痛みを忘れさせたが、今はもうヨレヨレである。橋が有ったので左に入ると大谷川から大坂峠に行く遍路道の標識があった。
国道に引き返してひたすら歩き次の橋を渡って左に入ると「JR相生駅」があった。19時24分発の引田行鈍行列車が来て、引田
で高松行の鈍行列車に乗り換える。この時間の高徳線上りはガラガラで人目を気にせず助かった。22時前に自宅に帰り付き天国の
湯船に何度も浸かる。
18時40分 ヘッドランプを点けて国道をトボトボJR讃岐相生まで歩く 19時24分引田行の鈍行に乗る
旅はこれで未だ終わらず、翌日JRで西に向かいJR箕浦駅から痛い足を引きずって県境の道の駅に置いてあった車まで歩き回収する。
今回の香川県境トレッキングを振り返って反省点を幾つか
1)折り畳み傘はGPSや地図を濡らさない為に必携である
2)電池の保管は寒い時期はホッカイロで温める 電池切れは何としても防ぎたい
3)地図を良く見たら解決していた失敗が何度かあった
縦走者へのアドバイスとしては
1)6日間で歩く場合、水場は雲辺寺自販機、山間部での補水、五名トンネル口での自販機
春先や秋の縦走であればこの三回の補水で足りる
2)急坂は西から東への縦走の場合
@余木崎から石ノ口三角点
A大川山西斜面の最後の詰め
B竜王山の階段阪
C相栗峠東の笑うしかない坂
D境目の東、最終県境尾根取り付き部から三角点「北市場」まで
3)ルート上注意を要する箇所
@余技崎国道筋から三角点「余技崎」の場所まで
A若狭峰から猪ノ鼻峠までの県境尾根
B滝の奥付近(土器川源流付近)の県境尾根乗り換え
C東部、多和竹屋敷から砂利採取地経由多和菅谷(御所野)までの県境部
D鵜の田尾トンネル稜線部付近から鵜峠(うのたお)までの藪尾根
E大坂峠展望台から大坂峠経由県境岬までの県境部
香川県境トレイル 概要編は ここ
第1日目 余木崎〜雲辺寺山は ここ
第2日目 雲辺寺山〜東山峠手前の野営地は ここ
第3日目 東山峠手前の野営地〜立石峠付近の野営地は ここ
第4日目 立石峠ビバーク地〜中山峠 ここ
第5日目 中山峠〜上畑(鵜峠手前)野営地は ここ