究極の修験の道「大峯奥駈道(おくがけみち)」を歩く
平成28年5月31日〜6月5日


プロローグ

山歩きを続けていると自分が歩いている道に祠や地蔵尊があったり社(やしろ)を見たりと何らかの宗教的な雰囲気を感じてくる。
そもそも日本に於いて山を歩く事は山岳宗教や修験道と密接な関係があった様だ。


修験道は山に入って修行を積むことによって霊験を感得してそのパワーを里に下りて現世的な効能を発揮してきたらしい。元々日本
には山からの恵みに感謝して、時としてその荒ぶる姿を畏敬する山岳信仰があり、それに仏教、道教などがミックスして修験道が形
成されて行き、特に道教の「仙人思想」が修験者・行者とイメージが重なる。

役行者(えんのぎょうじゃ)は修験道の開祖として定着し全国のあちこちに現れている。私が良く歩いている石鎚山も役行者によっ
て開山されたと言われている。ロープウェイのアナウンスに石鎚へ登れない役行者が成就で斧を研ぐ老人を見て何をしているか尋ね
る。するとその老人は斧を研いで針を作っていると答えて役行者はその努力に感心して再度石鎚へ挑戦しついに登頂を果たすという
話だ。そんなバカげた話がまことしやかに伝わっている事自体役行者の怪しげな存在を感じる。

後世の人たちがある人物像や荒唐無稽な逸話を作り上げてきた事実は沢山あり役行者や空海ですらその例外とは言えない気がする。
ともあれ呪詛的な面が強い修験道が体系付けられて修行者や信者が増えて行くのは真言・空海や天台・最澄による「密教」の影響が
多いだろう。

何はともあれ最近親しい山友を失った憔悴感もあり、修験道のメッカ「大峯奥駈道」を歩いてみる事にした。

大峯奥駈道の順路

大峯奥駈道は2004年に世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として登録された巡礼道である。宗教と巡礼は世界的に見て
も深く結び付いている。自分の足で苦労して聖地を訪れる事にロマンを感じ自分自身を見つめて達成感を求めるのだろう。


大峯奥駈道は熊野三山を巡る「熊野詣」を主導してきた天台宗・本山派(聖護院)により熊野大社から吉野へ向けて行場(これを靡
なびきと言う)で修行をしながら歩いたのでこれを順峯(じゅんぶ)と呼ばれる。

一方今回私が選んだルートは真言宗・当山派(三宝院)の行者が歩いた吉野から熊野大社へ向かう道でこれは逆峯(ぎゃくぶ)
呼ばれている。


別に行場(現在は75靡なびき)で修行をする訳ではないのでどちらからスタートしても良いのだが、四国から熊野はいかにも遠い
ので土地勘のある吉野から歩き始める事にした。


       大峯奥駈道 (5泊6日)

        
      カシミールソフトを使ったGPSトラック・ログ図  吉野〜熊野大社

アクセスと装備

今回は吉野と熊野が遠い事もあり初めて高速バスで大阪まで出て、その後電車を使って吉野へ向かう。帰りは熊野からバスで田辺ま
で出てJR電車で大阪まで帰り、そこから高速バスで高松へ帰るという交通手段で遠征する事にした。
奥駈道には無人の宿坊があるらしいのだがよくわからないのでテント泊ベース装備し、水場は地図でチェックし常時最低2リッター
持つ事でザック重量は約15kg程になる。

大峯奥駈道 装備品リスト (5泊6日)



装備品リスト上ではザック重量が15kg以下だったが、実際間際でザックに押し込んだ物があり総重量が15kgを少し
超えてしまった。

地図は昭文社 山と高原地図50「大峰山脈」とカシミールソフトから全行程をA4用紙に東経・北緯線(10秒毎)を印刷
した。この北緯10秒=約308m、経度10秒=約258mは四国の山歩きでも利用する地図で迷った時に大変便利だ。
大峯奥駈道は大変整備されており結果的にはほとんどこの詳細地図の出番がなかったのだが・・・。


行程

私の縦走スタイルとして大まかな日程(5泊6日)は考えるが「どこで寝るか」という事は現場でその日の状態で判断するので
特に綿密な計画は存在しない。要は行きあたりばったりって事になる。今回は予想以上に無人小屋が良い状態に設備されており
4泊とも小屋にお世話になった。


第1日目(5月31日)晴れ

吉野〜高城山〜青根ヶ峰〜四寸岩山〜二蔵宿小屋
行動時間:11時20分〜18時10分  約6時間50分



カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図   吉野〜二蔵宿小屋

第2日目(6月1日)晴れ
二蔵宿小屋〜大天井ヶ岳〜五番関(女人結界門)〜山上ヶ岳(大峯山寺)〜大普賢岳〜七曜岳〜行者還岳〜行者還避難小屋(泊+補水)
行動時間:05時30分〜18時30分 約12時間


  カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 (二蔵宿小屋〜行者還避難小屋)


第3日目(6月2日)晴れ
行者還避難小屋〜弁天の森〜弥山〜八経ヶ岳〜明星ヶ岳〜五鈷峰〜仏生ヶ岳〜(補水)孔雀岳〜釈迦ヶ岳〜深仙小屋(泊)
行動時間:05時15分〜20時20分  約15時間


カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図  (行者還避難小屋〜深仙小屋)

第4日目(6月3日)晴れ・曇り
深仙小屋〜大日岳〜太古の辻(南奥駈道)〜天狗山〜地蔵岳〜般若岳〜涅槃岳〜証誠無漏岳〜阿須迦利岳〜倶利伽羅岳〜行仙岳〜
行仙宿山小屋
(泊+補水)
行動時間:05時30分〜18時20分 約12時間50分


カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図  (深仙小屋〜行仙山小屋)


第5日目(6月4日) 曇り〜雨 
行仙宿山小屋〜傘捨山〜地蔵岳〜香精山〜玉置山(給水)〜駐車場食堂〜玉置辻(テント場)
行動時間:05時00分〜18時10分 約13時間10分(玉置神社付近にて1時間30分停滞を含む)


カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 (行仙小屋〜玉置辻)


第6日目(6月5日) 雨〜曇り

玉置辻〜大森山〜五大尊岳〜大黒天神岳〜吹越山〜七越峰〜備ア橋〜熊野大社
行動時間:06時05分〜15時30分 約8時間25分


カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図  (玉置辻〜熊野本宮)


縦走登山記
大峯奥駈道を全行程歩ける人は限られている。現役で働いておられる人は休みを取る事がためらわれる日数となり、結局私の様な退職後で
まだ元気が残っている人に限られるだろう。そんな人達の為に、或いは行きたくても行けない人達の為に毎日の記録を残した。

第1日目 (5月31日) 吉野〜高城山〜青根ヶ峰〜四寸岩山〜二蔵宿小屋     は                ここ   
 
第2日目 (6月1日) 二蔵宿小屋〜大天井ヶ岳〜五番関(女人結界門)〜山上ヶ岳(大峯山寺)
    〜大普賢岳〜七曜岳〜行者還岳〜行者還避難小屋
            は                  ここ   

第3日目 (6月2日) 行者還避難小屋〜弁天の森〜弥山〜八経ヶ岳〜明星ヶ岳〜五鈷峰〜仏生ヶ岳
    〜(補水)孔雀岳〜釈迦ヶ岳〜深仙小屋
                  は                  ここ  

第4日目 (6月3日) 深仙小屋〜大日岳〜太古の辻(南奥駈道)〜天狗山〜地蔵岳〜般若岳〜涅槃岳
    〜
証誠無漏岳〜阿須迦利岳〜倶利伽羅岳〜行仙岳〜行仙宿山小屋 は                  ここ  

第5日目  (6月4日) 行仙宿山小屋〜傘捨山〜地蔵岳〜香精山〜玉置山(給水)〜駐車場食堂
    〜玉置辻(テント場)
                                は                 ここ  

第6日目 (6月5日) 玉置辻〜大森山〜五大尊岳〜大黒天神岳〜吹越山〜七越峰〜備ア橋〜熊野大社 は ここ  



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