「山と元気の会」読売新道

縦走2日目 平成30年8月9日 晴れ
水晶小屋〜水晶岳〜赤牛岳〜(読売新道)〜奥黒部ヒュッテ

06時30分 水晶小屋出発
07時20分 水晶岳(南峰)   (2,986m)
07時35分 水晶岳(北峰)   (2、977.86m)
08時35分 温泉沢ノ頭 (高天ヶ原分岐)
11時07分 赤牛岳   (2,864.2m)
12時20分 黒部ダム湖が初めて見える
12時56分 6/8 標識  この辺りから樹林帯に入る
13時45分 4/8 標識
14時26分 3/8 標識
15時00分 2/8 標識
15時58分 1/8 標識
16時50分 奥黒部ヒュッテ
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合計所要時間 10時間20分

縦走3日目 読売新道 行程


カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図  水晶小屋〜水晶岳〜赤牛岳〜奥黒部ヒュッテ


晴天の霹靂(へきれき)の逆バージョン 停滞から出発に

さて、水晶小屋の朝食は05時と指定されているので停滞策を取って移動しなくても04時過ぎには起きなければならない。外は厚い
霧に覆われて日の出も望めない。05時朝食を食べて外に出るとあれ? 先ほどから立ち込めていた霧がす〜〜っと晴れて来るではな
いか。イワヒバリが岩の上に居たのでそれを眺めたりブロッケン現象を見たりしていると森さんが連絡にやって来て「今日 元の予定
通り出発するんですって」と上品な小声で教えてくれた。「え〜〜〜?!」今日は100%先に進む事は無い!って隊長がキッパリ言
ってたんだけど・・・


嬉しい誤算である。何せ天気がかくも回復したら停滞は勿体ない。頭を天井の柱にぶつけながら慌てて部屋に帰って支度をする

  
  朝5時から食事  外は霧が立ち込めている             水晶小屋の乾燥室は貧弱で干した物は乾いていなかった

  
小屋の南側に出るとイワヒバリが居て眺めているとガスが薄くなって来た   ブロッケンが出るって事は太陽が出る=天候の回復か


   次第に霧が飛んで槍の穂先が見えだした  これは思わぬ天候の回復が早いぞ


          
水晶小屋〜水晶岳  約50分

06時20分支度を整えて小屋の前に出ると今から歩く事になった水晶岳から赤牛岳の稜線が見えて、その奥には立山三山と剱岳まで
半分顔を出している。南側にはやっと槍ヶ岳が気前よく穂高連峰と共に姿を見せてくれる。ぐるっと見渡すと鷲羽岳から笠ヶ岳、黒部
五郎岳までまさにこれが360度の展望って事だ。山歩きはこれでなくっちゃ!


小屋の前面には野口五郎岳から三ッ岳、烏帽子岳の裏銀座尾根が見え、その手前の谷筋は逆光で暗い切れ込みとなっている東沢谷で、
この沢が黒部川本流と合流する東沢出合にある奥黒部ヒュッテが今日の目標である。


水晶小屋の若い女性が見送りに出て来てくれた。学生では無く社会人と言う。山好きの若者が休暇を取って好きな山小屋でアルバイト
をしているのだろうか。




            痛快な景色が見えた  やはり北アルプスはこうでなくっちゃ


       水晶岳                 温泉沢の頭         赤牛岳    立山三山(その左に剱岳が少し見える)

  
               槍ヶ岳            穂高       小屋の前が東沢谷 この沢の出合まで今日歩く 右手が裏銀座

  
 小屋を切り盛りする若い娘さんはとても感じが良い            出発を見送ってくれた


06時30分小屋の左を回り込んで広めの尾根に出る。平らな尾根に見えるが歩いてみると水晶岳までにも結構凹凸があった。尾根の
左手下には天空の楽園「雲ノ平」が見える。 ここは行った事が無いが楽園はちょっと大げさだが女性のロマンを掻きたてる場所らし
い。周りの名だたる名山が並んで、街の光から隔絶されているので星も綺麗だろう。


でも見る限り緑の台地で庭園と呼ばれる様な美しい場所が有りそうには見えない。

  
06時30分 水晶岳へ向けて出発する                   尾根には思ったよりアップダウンが多い


      水晶岳 (黒岳) 日本百名山 ここが読売新道の南起点となる

黒部源流の地

         祖父岳          黒部五郎岳      お皿の様な雲ノ平 そんなにいい所なのか?

  
     イワベンケイの色が鮮やかだ                     何か四国の伊予富士みたいな形をしている

いよいよ読売新道の南起点「水晶岳」に向かう。水晶岳は遠くから見ると黒っぽいので「黒岳」とも言われが、岩石に水晶の貫入層が
あるので水晶岳と呼ばれる様になった。
尾根から見る水晶岳は鷲羽岳の様な高低差は無いので少し迫力には欠ける。

途中で水晶小屋に荷物をデポして空身で来られた登山者とすれ違う。確かに水晶岳から北に踏み込む登山者はそう多くは無い。水晶岳は
地形図を見ると手前の2,986mピーク(南峰)と三角点のある2,977.9mピーク(北峰)の双耳峰となっており、山頂標識は
標高の高い2,986m
Pにある。しかし直下から見上げる水晶岳は四国の伊予富士みたいに沢山の岩峰が突出している。

登山道は水晶岳手前の1,920m岩山ピークを左手から回り込んで急傾斜の岩場を固定梯子を使ったりして這い上がる。

  
  急な岩場を這い上がる 上の方に梯子段が見える       次のピークへと進む  皆さんが居る辺りに水晶の層がある

水晶岳の岩峰手前で強い日差しの中に薄い霧が出たので先程小屋裏で見た様に「ブロッケンが出ますよ」と言うとその通り出現した。
ブロッケンは天気の良さと霧とのバランスが決め手で四国でも結構見て来た。槍ケ岳を開山した播隆(ばんりゅう)上人が笠ヶ岳でこ
のブロッケン現象に出会い阿弥陀如来が御来迎されたと思ったらしい。私の見た御来迎は手を振ると向こうも手を振るので阿弥陀如来
では無さそうだ。


  
            ブロッケンが出た                     霧が消えると雲ノ平台地がはっきりと見える 左は黒部五郎岳


水晶岳 南峰 (山頂標識)      2,986m
水晶岳 北峰 三等三角点「水昌山」  2,977.86m

手前のピークに出るとウスユキソウやイワベンケイが朝露に濡れている。山頂コル部から東側の鋭い谷を覗くと雪渓が残っておりイブ
キジャコウソウやイワギキョウが咲いていた。


07時20分水晶岳・南峰の山頂標識に到着して記念写真を撮る。奥には読売新道の標識が立っており、そこから北側の三角点峰へと
一旦コルまでおりて07時35分三角点峰を通過する。


  
   これから縦走景色のメインになる薬師岳               岩尾根をトラバースして山頂部へ進む

  
これが水晶岳の謂れとなった水晶の貫入だ               イワベンケイもこう色づくと美しい

  
    ミネウスユキソウ                             イブキジャコウソウ

  
  最後は岩だらけの山頂へ                         07時22分 水晶岳(南峰)を踏む


  水晶岳・南峰 標高 2,986m 日本百名山 いや〜 皆さん 晴れ晴れとした様子ですね  いよいよ読売新道ですぞ

  
  次の三角点峰へ下る為左手奥へ進む                 水晶岳に立つ読売新道の標識


       水晶岳・北峰 標高 2,977.86m   本峰より8mばかり低い 


  
07時35分 三等三角点「水昌山」を通過                  ちょっとガスがかかってるけど北へ進もう!


いざ 読売新道へ  水晶岳〜赤牛岳  約 3時間35分

水晶岳から葛篭折れの岩クレ登山道を尾根と左斜面の大きな雪渓の間を暫くトラバース気味に下って行く。07時55分ハイマツの生
えた尾根に復帰して水晶岳を振り返る。中々の岩山様相をしている。尾根は下ってはいるのだが前方に2,904mのピークが競り上
がっている。この温泉沢ノ頭ピークから稜線は左へ曲がっているので左手前方に赤牛岳付近の茶色い尾根筋が見える。

花は読売新道に入ると岩尾根という事もあり極端に少なくなる。お蔭で足早に歩く事が出来た。それでもミヤマコゴメグサ、ミヤマリ
ンドウ、ヨツバシオガマ、ミヤマアキノキリンソウ、ウメバチソウ、シラタマノキ、タカネオトギリ、ウサギギクなどが見られた。


上り傾斜から水晶岳を振り返るとその左手に槍ヶ岳がこちらを覗いていた。でもサービスはこれ以降途絶えた。

08時25分細長い2,904mピークの南端に上がり着く。このハイマツの広い尾根から赤牛岳付近を眺めるのだがまだまだ稜線上
には沢山のピークが重なってあるので赤牛岳が見えているのかよく分からない。この2,904mピークを下ると左手に高天原温泉へ
下る「温泉沢ノ頭」分岐がある。よく見ると左下にハイマツが切れた部分があり、そこに赤い屋根の高天原山荘が見える。08時35
分この分岐に着くと高天原温泉から上がって来た単独者と今から高天原へ下るカップルが話をされていた。


  
 水晶岳・北峰からは尾根の少し左側斜面を下る             岩屑だらけの下り傾斜だ


  前方には赤牛岳への標高差の無いピークが並ぶ しかしアップダウンを繰り返してピークを結ぶルートだ


厳しい岩峰は尾根を外して左斜面、雪渓の間に石クレだらけのトラバース道が続く  

  
      07時53分尾根道に復帰                   水晶岳を振り返る

  
       稜線も岩が多い                           左手には常に薬師岳が並ぶ


 左後ろを吹き替えると雲ノ平と標高が近くなった  その後ろに黒部五郎岳  左奥には薬師岳が見える


  08時00分 次の丸っこい2,904mピークへと進む この山塊の北端を少し下った場所が温泉沢ノ頭・分岐になる

  
  ミヤマコゴメグサやミヤマリンドウ                      ウメバチソウにシラタマノキ

  
   ミヤマアキノキリンソウ                          ウサギギクやヤマハハコ


   水晶岳の岩峰を振り返る  左手奥に槍ヶ岳が見えたがこれ以降又ガスに包まれる

  
  2,904mのピークは近い                          近づくとここも岩尾根だった


2,904mピークを少し下ると前方に温泉沢ノ頭、分岐標識が立っていた  左下から登山者が1名高天原温泉から上がってきている


 高天原温泉の赤い屋根が見える いくら温泉好きでもこんな不便な場所まで行く人が居るんだろうか? それが結構居るんだなあ

  
大酒飲みだが冗談が通じる元気な真鍋さん 会のホープだ        高天原温泉付近の情報を交換する登山者


温泉沢ノ頭」分岐の標高は地形図を読むと2,880m、目指す赤牛岳は2,884mだからこの同じ標高のピークを結ぶ稜線上
を何度もアップダウンして歩く事になる。
大好きなウラシマツツジの葉っぱが紅葉しているのを見つける。アルプスの花崗岩帯を染
めるこのウラシマツツジの真っ赤な絨毯は秋の風物詩となる。


温泉沢ノ頭からグッと一旦稜線の高度が下がり09時頃1,818m岩ピークのトラバース道入る。ミネズオウ、チシマギキョウ、
ミヤマコゴメグサなどが見られた。チシマギキョウとイワギキョウの同定は難しいが、イワギキョウが比較的花を下向きに付け、葉に
波状の鈍鋸歯があり、花の裂片に長い毛がある所からそれに決めた。

  
 温泉沢ノ頭から標高差80m程の下りになる       ウラシマツツジが一部真っ赤に紅葉している

  
  ミネズオウの花が終わっていた            ミヤマコゴメグサも少し咲き残っている

  
ちょっとうつむき加減だし毛があるしチシマギキョウにしておこう 温泉沢ノ頭を振り返る ガスが東側から吹きあがる


  赤牛岳への尾根をズームアップしてみる  どれも赤牛だが恐らく赤牛岳は一番奥だろう

  
 2,818mピークの岩峰は左を巻く          09時10分次の小ピークへと稜線を進む


  振り返ると水晶岳はガスに隠れて白っぽい温泉沢ノ頭までしか見えない 右奥は黒部五郎岳

  
 09時30分 前方の最低コル(2,720m)に向けて下る 右手下が2,742mピーク


前方に岩が飛び出ており、それを右手に避けて一旦コル部に下りる。次の2,742mピークは岩山なのでピークの左手をトラバース
して砂漠の様な砂地を歩く。赤牛岳までの大きなピークは後2つ越えて行くのだが、やはり縦に見ると近いが歩くととても長い。


2,742mピークはゆるやかな左斜面に登山道が続く 前方のピークは地形図に標高が載っていない2,820mピークだ  


  
縦走路を振り返ると一番高く見えるのは白っぽい温泉沢ノ頭だ   2,820mピークに向かって進む この辺りが最低コル部で標高2,720m程

次の2,820mピークもエジプトの遺跡巡りの様な風景の稜線を進み、今度はピークの右手にある岩稜帯をトラバースする。岩の間
から顔を覗かせるオトギリソウやホツツジを見ながら10時10分、2,820mピーク近くに上がり着き、ここで少し休憩を取る。
あと2,803mの大きなピークを一つ越せば赤牛岳の基部となるが時間は結構かかりそうだ。

休憩中に草地を探索するとエゾシオガマ、ミヤマリンドウ、ウサギギク、チングルマの綿毛などがあった。。

  
2,820mピークは右手の岩稜帯を進む        09時50分 右斜面の岩稜帯をずっと進む

  
ミヤマホツツジにミヤマオトギリ 何でもかんでもミヤマだ  2,820m峰を越したあたりで稜線に復帰する

  
  おっ 黒部ダム湖が霧の下に見えるでないの      10時10分 休憩〜〜〜


 2,803m岩峰の向こうに赤牛岳が姿を現す  左の尾根は赤牛岳から北西に延びる肩部だ

  
エゾシオガマやミヤマリンドウが咲く           ウサギギクとチングルマ(綿毛)


休憩地から前方の赤牛岳がガスに煙ってきた。稜線と言う物は地形図で見る以上に高低差や曲りがあるものだ。角度が変わると形
も変わり印象も当然変わってくる。まあ人間の方が見方や主観、感情によって印象が変わってくるから厄介なんだけど・・・・
2,803m峰は白っぽい花崗岩の岩山でルートは大きく左を巻く。薬師岳を眺めながら最後はハイマツ帯の岩稜トラバース歩き
となる。

10時40分岩尾根を巻いて稜線部に出るがガスが湧いて赤牛岳の本峰が良く見えない。左手に結構高い尾根があるが、これは赤
牛岳から北東に延びる別な尾根の肩部だ。この赤牛北東尾根は薬師見平をへて有名な黒部川「上の黒ビンガ」へと下って行く。


  
黒部ダム湖がこの辺りから見える 右の谷が東沢谷でこの出合まで下りる  さて先ずは手前の2,803m岩ピークへ行こうか


  何か エジプトの砂漠見たいじゃねえ  2,803m岩ピークの左斜面を適当に進む

  
  薬師岳が常に左手にある                        ハイマツ帯にある岩場を伝って前の稜線に出る

赤牛岳 三等三角点「赤手岳」 2,864.4m

稜線部に上がると右手からガスが吹き上がって赤牛岳を隠してしまった。稜線を歩いていると部分的にガスが薄くなり赤牛岳らしいピ
ークを確認。
確かに一部を除いてハイマツの緑がガレ石に押し流されて全体的に茶色い地肌を晒している。図体がデカいので赤牛岳の
名がピッタシと言える。又、このピークは水晶岳から続く北尾根の最後の高いピーク(肩部)となっている。


11時07分やっと赤牛岳の山頂に到着すると単独の男性がおられたのでシャッターを押して頂く。国土地理院の基準点成果等閲覧サ
ービスではここの三角点名は「赤手岳」となっている。牛と手は良く似ているので国土地理院の間違いではなかろうか? 水晶岳から
赤牛岳まで我がチームは3時間45分かかった事になる。

今回同行の細谷さんは比婆山スノーシューハイク、荒島岳・雨飾山に続いて3度目の遠征をご一緒した。岩場や上りが遅いと本人も自
認されているが年齢を考えると相場通りのスピードだし一生懸命に歩かれている。「下りは早いのよ」と言われるが下りは誰でも早い
ものだ。皆さんの足を引っ張ることなく赤牛岳までやって来れた。他の皆さんもCL平野さんやSL杉本さんに引っ張られてようやく
「読売新道」のスタートラインに立つことが出来た。



 赤牛岳の辺りにガスが薄くなったので急いで写真を撮る  一番奥が赤牛岳だ


         尾根の東側に回り込んで赤牛岳を撮影


   水晶岳は雲の中だが、下って来た稜線が見渡せる   谷を挟んだ左端の山が裏銀座の野口五郎岳か


    日本二百名山 赤牛岳 2,864.2m 南側基部から撮影  

  
  我がチームも読売新道の起点へと進む                最後は左手から回り込む 左の尾根は赤牛北東尾根

  
赤牛岳から尾根は北西と北東に分かれる 奥は薬師岳        赤牛岳三角点にて バックに槍ヶ岳が見える


 11時07分 我がチーム ついに赤牛岳に立つ! (座っている人もいるけど)
 

   薬師岳をバックに赤牛岳の三角点と山頂標識


旅はまだ おわら〜ない♪〜   読売新道 赤牛岳〜奥黒部ヒュッテ  約5時間15分

11時35分赤牛岳を後にして東方向にハイマツ帯を下りていよいよ読売新道に入る。昭文社の地図ではこの赤牛岳から奥黒部ヒュッ
テまで標準時間5時間となっている。長い道のりである。赤牛岳は西側にも尾根を張ったデカい山なので霧で視界が利かない時は下山
時に注意を要する。


赤牛岳の北側に出ると急に尾根は高度を下げる。前方に岩山ピークが3つ並んでいるが相当な下り傾斜の尾根になっている。ここから
は黒部湖がはっきり見えてその先には黒四ダムまで続いている。そこまで歩いて行くのかと思うと感慨深いものがある。岩場を下って
いくが、この辺りの花崗岩は風化が激しく赤茶色をしている。どうも花崗岩に含まれる黒雲母の鉄分がしみ出して茶色になるらしい。
右手にある裏銀座の尾根は雲が厚く覆っているのが残念だ。


  
 赤牛岳から北東に延びる尾根へ向かって下る             赤牛岳から暫くは見通しの良い稜線が続く


  低い雲に覆われているが黒部ダム湖と黒部ダムが見える  下り斜面に3つのピークが続く

  
       風化した岩尾根を下る                        東沢谷川を挟んだ裏銀座尾根


左手に見える尾根が真砂岳〜野口五郎岳〜三ツ岳などの裏銀座  奥に槍尾根、       右奥に水晶岳


11時50分前方に尾根の右側が崩壊して登山道が不安定な場所に出た。尾根の左手はハイマツ帯だが、ここには道が無い。ハイマツ
に沿ってロープが張られているが滑落に注意しながら渡る。北側のザレ場から赤牛岳を振り返ると南側からみたのどかな牛の山容とは
又違った厳しい様相を呈していた。


次の岩ピークに向かってはやはり風化した花崗岩とハイマツの風景だが登山道は落ち着いて歩き易くなっている。タカネオトギリ、ホ
ツツジ、エゾシオガマ、ホソバノシュロソウなどを散見するが水分が乏しい尾根なのでお花畑は存在しない。二つ目の岩ピークを右手
に巻いて花崗岩帯を前方の尾根に出ると黒部ダム湖が巨大な岩とハイマツ帯越しに見えて良い景色だ。

前方に3つ目の花崗岩が乱立するピークが見え、地形図にも岩マークが記載されている。右手の裏銀座尾根に烏帽子岳が少し雲を被っ
て確認出来た。この辺りには色鮮やかなイワギキョウが雨を欲しがっている様に真上を向いて咲いている。チシマギキョウは下を向き、
イワギキョウは上を向くって見分けの基本だがそこまで上を向かなくても良いのになあ・・・


  
むむっ こりゃどうならい ハイマツに沿ってロープが張られている    気を付けて下れば足場も崩れない


    北側から見上げた赤牛岳は荒々しく迫力がある

  
  結構な下りなのに上りのピークも出現                 タカネオトギリやエゾシオガマはもうお馴染みだ

  
   ホソバノシュロソウは初めて出会った                 岩尾根を右斜面からトラバースして行く


12時30分花崗岩の岩尾根で少し休憩する。確かに休憩が多いが団体登山はこんな相場だろう。最後の岩ピークは左を巻いて下降す
る。柱状節理の上に狛犬の様な形をした岩が乗っておりこちらに向かって愛嬌を振りまいている。花崗岩は風化によって犬になったり
イルカになったりする。東側の尾根には前烏帽子と烏帽子岳が低い雲のギリギリに見える。
そこから暫くは右手がハイマツ帯、左手が
花崗岩の風化斜面の穏やかな尾根が下っていく。



   岩尾根の向こうにダム湖と黒部ダムが見える   天気が良いと次に進む尾根が左手に曲がってるのが分かる


    確かにダム湖の奥に写っているのは黒四ダム (正式には 黒部ダム)

  
   裏銀座の烏帽子岳が見える                      ここのイワギキョウは姿勢が良い

  
  休憩〜〜  この辺りの花崗岩は白い                  大岩を左手から巻いて下る

  
 「なんができょんな」 狛犬が覗く                     ハイマツ帯に延びる岩を伝って前方に出る

  
雲が低く垂れこめている、その向こうにまだ3つのピークが見える   岩尾根が続く  右手斜面はハイマツ帯となっている

  
       裏銀座の烏帽子岳が見えた                次第に尾根が平らに安定する 前方の岩ピークが2,578m峰だ

岩だらけの2,578mピークを乗り越えるとケルンの様な花崗岩オブジェを過ぎると12時56分読売新道を八分割した /8標識
に出合う。ここから眺める黒部湖ダムがやや近くて鮮明になり、その右上には烏帽子岳から後立山連峰を繋ぐ針ノ木岳あたりの山々が
雲を被って少し見える。左手にある薬師岳は北薬師からなだらかな尾根が五色ヶ原へと延びている。最後の岩稜帯を楽しみながら広い
尾根を下って行く。


  
    12時50分 2,578m岩峰を越える                     プチ・オベリスクがあるじゃん


 読売新道を8分割した標識   12時56分 8分の6の標識に出会う  この後次第に分子が減って行くのが楽しみとなる


   左側:     薬師岳〜北薬師岳から五色ヶ原へ向かって延びるなだらかな尾根

  
   右側:  裏銀座と後立山連峰を繋ぐ船窪〜蓮華岳〜針ノ木岳などが並ぶ  このつなぎ目が未踏の尾根だ

  
 まだ暫く岩尾根が続く様だ                        稜線が曲がってるので歩いて来た赤牛岳(右端)からの尾根筋が見える


     メルヘンチックな岩の芸術  これを撮る為に皆さんの姿が尾根に現れるのを待つ  その後走って追いつく


13時05分岩稜帯を過ぎると尾根は低いハイマツ帯の緑に覆われて、その中に多少の花崗岩が散らばる風景に変わる。次第にハイマ
ツの背丈が高くなり登山道が狭くなる。すると尾根は俄然、樹林帯の様相に変わり丸木で整備された登山道が見られると13時12分
/8標識を通過する。

この標識を過ぎると背が高いハイマツ林の中に雑木や針葉樹が立っている景色になりあまり見通しが利かなくなる。少し岩っぽい稜線
の右側をトラバースして下って行く。時々見える黒部ダム湖を唯一の楽しみにして足元を見ながら歩くがダム湖があまり近づかない。



 13時05分 岩稜帯を過ぎるとハイマツ帯の尾根に変わる  まだ背の低いハイマツなので見通しが利く

  
う〜〜ん もう少し鼻が長ければワニなんだけど              シラタマノキ

  
次第に周りの草木の背が高くなる 丸太で登山道が整備        13時12分 コーナーに 8分の5 標識があった

  
           南沢岳    烏帽子岳  ニセ烏帽子岳       立山は雲の中                    針ノ木岳?

  
花崗岩が風化して雨水で掘れ込んだ登山道             尾根の右手をトラバースする
                                         標高が2千メートルを越しているのでコバイケイソウの群落もある

読売新道の森に入る

13時30分コバイケイソウの群落やモミジカラマツの咲く場所を通過しロープが置かれた岩っぽいトラバース道を過ぎると丸太を並
べた木道があり13時45分 
/8標識が現れた。読売新道の行程標識は8分割されているので理屈で言えばここが読売新道の丁度
半分まで来た事になる。赤牛岳から2時間15分で行程の約半分をこなした計算になる。果たして我がチームはあと2時間15分位で
奥黒部ヒュッテに着けるんだろうか?


  
  モミジカラマツ                                大岩とデカい樅系の樹が生えたプチ崖を下る

  
2,356mピークの左手を巻く 岩場なのでロープが置かれている  2,356mの肩を過ぎるとルートは北東に少し振る

  
13時44分 8分の4標識を通過 理屈上は半分歩いた訳かな   黒部ダム湖も幾分低く、そして近くなった様な気がする


       又真鍋さんに樹の名前を質問する  何とかダケカンバだけは覚えた様だ   高山の黄葉はこの樹が主役となる

ダケカンバやシラビソの様な針葉樹の巨木などが生える尾根をドンドン下って行く。登山道は根っ子や岩などが多くてそんなに早くは
歩けない。14時02分崩れやすい土壌の急傾斜には木製の階段などで整備されている。花と言えばゴゼンタチバナ位しか目に入らな
い。


14時26分深い針葉樹林帯の中に /8標識が足元に見えた。もうこの数字が減って行くのを楽しみに頑張るしかない。標高で言
えばこの付近でまだ2,120m程あり、四国の中には無い標高の高さだ。天然杉や樅の巨木が長い道のりを歩く登山者にアクセント
となって現われる。大岩の横を下ったり樹林帯の根っ子を頼りにトラバースしたり結構退屈はしないのだがいかにも行程が長い。


  
  ワイルドな樹林帯に続く読売新道                   足場の崩れやすい場所には木道が整備されていた

  
 花と言えばゴゼンタチバナ位しか見られない               岩や巨木の間を抜けて下る

  
 14時26分 8分の3標識を通過する                  根っ子や岩などで段差のある傾斜を下って行く

  
   この辺りは天然杉などの巨木が沢山ある                  屋久杉ならぬ黒部杉かいな

  
        出たか タコ入道!                        チューしよう木 いくらチューを迫ってもオイラ嫌だね

  
          大岩の崖を下る                      根っ子を足場に岩斜面のトラバース道

読売新道のアバンチュールな道を楽しむ

15時00分 標高約1,940mの/8標識をクリアするとロープが置かれたり丸太で整備された急傾斜を下る。地形図を見ても
この辺りの右斜面は東沢谷の支沢が深く切れ込んで崖の様相を呈している。15時30分アカモノの赤い実が残る登山道を歩いている
と花崗岩のデカい岩を下る所に出くわす。ここには岩に鉄の足場が2本打ちこまれていた。


15時53分黒部ダム湖が見えて、その手前に黒部東沢谷の渓谷が見えだしてホッとす。すると花崗岩の岩盤横を丸太で整備された急
傾斜を下る。この辺りにはミヤマママコナが群生している。シコクママコナと比べて花が大きくタツナミソウかラョウモンカズラかと
思ったが葉っぱが細いのでミヤマママコナだろう。


  
15時00分 8分の2標識で少し休憩                   2/8標識を過ぎるとロープが敷設された急傾斜の登山道が続く

  
         段差のある岩場が続く                     磐には足場にする鉄棒が打ち込まれていた

  
 もうダム湖が見えない高度になった                    木道の階段を下る

  
    ワイルドな道が続く                         岩場には懐かしいシャクナゲが生えている


                 針葉樹が乱立する細尾根を歩く我がチーム

  
  赤いものなら何でも目に留まる (アカモノ)             大岩を滑り下る  ここにも岩に足場の鉄棒が打ち込まれている

  
 休憩〜〜 水場が無いけど水大丈夫か〜〜             15時50分 おっ 東沢谷が見えだしたぞ

  
  崖の横に敷設された木橋を下りる                    花崗岩の崖に沿って下った


      ミヤマママコナ   ママコナは珍しく無いが久しぶりの花だった

奥黒部ヒュッテ

水晶岳から北に延びる主稜線は赤牛岳で東西に別れ、読売新道はその東側の尾根を下る。そして尾根の最後になって二股に分かれる。こ
の部分が先ほど下った花崗岩の崖部でそこを下った場所で15時58分 1
/8の標識を確認する。

ここまで来ると西側、黒部川本流と東側、東沢谷が左右から迫って読売新道の終点が近いと喜ぶ。しかし尚も草深い針葉樹林帯のワイル
ドな道が続く。沢の音が次第に大きくなり16時33分右手に水量の多い東沢谷が見えると登山道は尾根を外して北に傾斜を下る。大き
な杉を頭に乗せた大岩を左手に回り込むと水場があり、その向こうに建つ奥黒部ヒュッテに16時50分到着した。

ヒュッテの立地場所は「東沢谷出合」となっているが、正確にはで黒部川本流との合流点手前の扇状地みたいな場所に立っている。


  
 15時58分 やっと 8分の1標識に着いた               この辺りは花崗岩の崖が多い

  
         複合セクハラボク                        あれ? また休憩してるよ

  
 最後は尾根を外して右手に下がる                     歩く地形も平坦になってくる

  
   東沢谷が直ぐ傍に見える                        最後の下りになる

  
 小屋のコーナーには大岩に座った樹が迎えてくれる         16時50分 奥黒部ヒュッテに到着した

早朝06時30分に水晶岳を出発して水場の無い尾根を延々10時間20分歩いてやっと終着駅に到着した。一体どこで昼食を済ませた
のか記憶に無い。読売新道はマニアックな北アルプスの縦走路というイメージが定着してるが、それはアプローチが遠くて不便な事と途
中でエスケープするルートが無い事、水場が無い点などで一般登山者に敬遠されているのだろう。

ルート自体は整備のお陰もあって危険度ほぼゼロの尾根道でだった。昭文社の地図でも下りで水晶小屋〜水晶岳〜赤牛岳〜奥黒部ヒュッテ
の標準歩行時間は8時間20分、逆の上りは11時間10分となっている。これに休憩・食事時間をプラスすると結構ハードな歩きが要求
される。


奥黒部ヒュッテも台風情報の為に登山者は少なく布団1枚で一人の贅沢なスペースだった。
この小屋には小さいが石鹸を使えるお風呂があり、洗い場が2人分しかないので男性から順番に手早く入る。湯船のお湯が少ないのでお
湯の栓を開けると洗い場のお湯が出ず両方同時にお湯を出す事が出来ない。それでも夕食の前にサッパリして持って来た着替えに変える。
テント泊の様な装備が要らないのでその分余分な着替えやシュラフカバーを持って来る事が出来た。


お盆前で歩荷が出来ずビールの在庫が少なく、登山者一人につき缶ビール1缶と言う制約があり呑み助を困らせる。私の分は回り回って
真鍋さんの喉越しを潤した様だ。


男性2人で切り盛りしている奥黒部ヒュッテは料理もざっくりしておりハンバーグと玉ねぎ、おでんと言った具合だ。そのおでんを見る
と私の器には大根と天ぷらだけでタマゴが入っていない! 恨めしそうにしていると前に座っている山下さんが「これどうぞ」とタマゴ
をくれた。


食堂には赤牛岳手前で我々を追い抜いた青年がいて彼のルートを聞くと七倉から七倉岳〜船窪岳〜烏帽子岳〜野口五郎岳を経由して水晶
岳から読売新道へ入ったとの事だった。


又これから読売新道に行くと言う団体さんは水晶岳から裏銀座尾根を真砂岳まで下り、そこから竹村新道を湯俣温泉へ下り高瀬川沿いに
高瀬ダム、七倉へと帰るルートだと言う。
色んなルートで読売新道を攻略しているもんだ。

夕食の後部屋に帰り、布団が湿っぽいのでシュラフカバーで寝る。

  
      奥黒部ヒュッテの食堂                         夕食のメニュー

「山と元気の会」 読売新道
 第1日目  新穂高温泉〜(小池新道)〜鏡平〜双六小屋 は           ここ  
 第2日目  双六小屋〜双六岳〜三俣蓮華岳〜鷲羽岳〜水晶小屋 は     ここ  
 第4日目  奥黒部ヒュッテ〜平ノ渡し〜ロッジくろよん〜黒四ダム〜扇沢 は  ここ  


 
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