石鎚・剣山ガイドサービスツアーで行く北アルプス
薬師岳〜黒部五郎岳〜笠ヶ岳縦走 3泊4日
第3日目(8月3日)曇り(霧)
黒部五郎小屋〜三俣蓮華岳〜双六岳〜双六小屋〜抜戸岩〜笠ヶ岳山荘
05時10分〜16時10分
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 黒部五郎小屋〜笠ヶ岳山荘
黒部五郎小屋〜双六小屋 4時間30分
今日は長丁場になるので早めに並んで04時30分から朝食をとり05時15分準備運動の後出発する。やはり今日もガスが立ち
込めて黒部五郎岳や三俣蓮華岳への展望は無い。黒部五郎岳の稜線と三俣蓮華岳の稜線は真っすぐに繋がっておらず双方の尾根は
北側に落ちている。黒部五郎小屋はこの二つの尾根の中間底部にある。従って三俣蓮華岳へは小屋の東側にある斜面を2,661
mピークに向かって急斜面を這い上がって行く事になる。
出発前の準備運動 三俣・双六の標識に従って小屋を出発
樹林帯の急坂が30分程続く 雲が低く立ち込めて展望は無い
やがてハイマツ林になり傾斜が緩やかになると少しガスが切れてくるがまだ高い所は見えない。06時に稜線部へ出るとお花畑と
なり今まで綿毛だったチングルマが花に変わる。06時30分ハイマツの稜線部を歩いているとス〜〜とガスが晴れて祖父平への
斜面が緑の絨毯に見える。やがて岩稜部へ出るとミヤマダイコンソウが岩場に咲いており稜線部へ出るとナナカマド、ウサギギク、
オンタデ、ヤマハハコ、ゴゼンタチバナの花が並ぶ。
左手に雪渓が現れるとチングルマやヨツバシオガマ、ダイモンジソウなどが幅を利かせて来る。
07時を回った頃突如水晶岳や鷲羽岳が雲の上に現れて一同立ち止まり山の同定を楽しむ。振り返ると薬師岳から黒部五郎岳も
やっと見る事が出来た。やはり縦走の醍醐味は歩いてきた山々と道、これから歩く山々の連なり、今まで歩いた事のある峰々を
眺める事だとつくづく思う。
樹林帯を抜けても霧が低く垂れこめて展望は無い 稜線部に出るとお花畑になっている
ハイマツのなだらかな稜線を東に進む 風が出てきて霧が流れ出す
左斜面は砂礫地、草原となっている三俣蓮華岳への尾根が見えだした 雲ノ平方面が見え出しみんなで眺める
薬師岳が姿を現す 黒部五郎岳が歩いて来た稜線の向こうに見える
水晶岳〜ワリモ岳〜鷲羽岳も見えだす 前方の三俣蓮華岳は丸っこい
右手に顔を出したのは目指す笠ヶ岳 左手に雪渓が残っている
見たかった黒部五郎岳のカールをアップ
雪渓の向こうに雲ノ平と薬師岳
左手前は祖父岳、奥に水晶岳〜ワリモ岳〜鷲羽岳
三俣蓮華岳 2,541m
なだらかな三俣蓮華岳へ向かうと右手に今日の目的地、笠ヶ岳が見えて大いに喜ぶ。ここから見る笠ヶ岳は槍の様に尖ってはい
ないが鋭い姿である。しかし遠い・・・
07時20分なだらかな三俣蓮華岳に到着する。
なだらかな三俣蓮華岳へ向かう 笠ヶ岳が気高く聳える
双六岳の手前にある丸山と右奥に笠ヶ岳
三俣蓮華岳はあまり目立たない山ではあるが@剱岳・立山から五色ヶ原〜薬師岳〜黒部五郎岳の北西側稜線 A後立山連峰から
連なる烏帽子岳〜野口五郎岳〜水晶岳〜鷲羽岳のいわゆる裏銀座と呼ばれる北東側稜線 B双六岳〜槍ヶ岳への裏銀座ルートの
続きと双六小屋から笠ヶ岳への尾根への南側稜線部の交差点として重要な位置を占めている。
不思議な事にこの北アルプスの三叉路「三俣蓮華岳」に着くと同時に雲が切れて360度の展望が現れる。今回歩いて来た薬師
岳〜黒部五郎の稜線、2年前に石丸隊でやってきた水晶岳、ワリモ岳、鷲羽岳から裏銀座コースの槍ヶ岳まで、そしてこれから
進む笠ヶ岳をぐるっと眺めやる。
07時25分外れにある三角点にタッチしてどっしりした形の双六岳へと向かう。左手には槍ケ岳から延びる穂高の山々が雲を
少し被ってデコボコした形を見せる。
る。雪渓部に来るとハクサンイチゲの花が残っておりミヤマキンボウゲも咲いている。
お決まりの槍ヶ岳から穂高連峰の風景が南側に広がる
07時20分 三俣蓮華岳に到着
三俣蓮華岳
三等三角点「三ツ又」 北側には水晶岳 この辺りの山頂ポールは曲がっている
三俣蓮華岳から丸山を経由して双六岳へ
三俣蓮華岳から南側の双六岳へ向かう途中に丸山という名前の通り丸っこい2,854mピークがある。三俣蓮華岳から一旦そ
の丸山へ向かって下っていく。ハイマツが多くなるが左手が少しガレておりその部にはウサギギク、ミヤマダイモンジソウ、ヨ
ツバシオガマ、オンタデ、イタドリ、コバイケイソウが見られる。
てくる。アルプスの天気は目まぐるしく変わる。
南側の双六岳に向かう 前方は丸山、奥に笠ヶ岳 ヨツバシオガマ
雪渓が残る尾根を丸山ピークに向かう ハクサンイチゲ 前方に槍ヶ岳
シナノキンバイ 丸山に向かってゆるやかに上る
双六岳 2,860m 二等三角点「中俣岳」 2,860.42m
08時10分頃から前方に右手が岩っぽい双六岳の本体が見えてくる。遠くから眺めたこの山は穏やかな丸みを帯びてハイマツ
の緑に覆われていたのだが、いざ近づいてみると結構断崖なども見えて鋭くなる。やはり双六岳も北アルプスの山なのだ。
の断崖を避けて登山道はフウロソウ、コケモモ、コバイケイソウ、リンドウの咲く左側斜面を回り込んで行く。
最後は大きな岩がゴロゴロ点在するなだらかな傾斜を上がると08時40分双六岳に着いた。2年前もそうだった様に今回もこ
の双六岳で霧に包まれてしまった。
な地形に見える。
丸山へ上がる 丸山ピークを越えてコルへ下がる
前方に双六岳の姿が見える 双六岳の手前は右手が切れ落ちている
ハイマツのなだらかな稜線を進む 双六岳の右手は岩場だ
ハイマツ林を双六岳へ向かう 最後は左手から岩のゴロゴロした斜面を上がる
08時40分 石丸ガイドとは裏銀座縦走以来2度目の双六岳登頂となる
双六岳の山頂 二等三角点「中俣岳」
牛ノ背の様な丸っこい尾根を下り双六平原から見える槍ヶ岳は写真で有名な場所なのだが東からガスが湧いて来て穂高方面が少
し見えるだけであった。平原の端から岩場の大下りに入る。2年前にこの急な崖路を双六小屋から03時に起きてライト頼りに
この双六平原から見える「槍ヶ岳の夜明け」に来たことを思い出しながら下った。
双六小屋は前方の樅沢岳とのコル部に建っている。アオノツガザクラやゴゼンタチバナの花に見送られて09時40分懐かしい
双六小屋に下り立った。ここは水が豊富なので水道から補水する事が出来る。
双六岳は南側に尾根が張り出しているがそちらには進まない 山頂から東側に伸びる尾根に沿って双六平原に入る
天気が良いと正面に槍ヶ岳と穂高連峰が並ぶのだが・・・
双六平原を振り返る 2,881mピークから東へ急坂を下る
双六小屋がコルに見える その向こうが樅沢岳 コバイケソウ越しに双六岳の岩屑斜面を見る
巻き道分岐から双六岳を振り返る 双六小屋=笠ヶ岳分岐へ下る
正面の樅沢岳へ進むと西鎌尾根〜槍ヶ岳へ
右へ曲がれば笠ヶ岳へ
双六小屋〜笠ヶ岳山荘 6時間20分
裏銀座の西鎌尾根へはこの双六小屋から東の樅沢岳へ上がっていくのだが、笠ヶ岳へは富山大学・双六小屋診療所の脇を抜けテ
ン場のある双六池の左側を真南へ進み、樅沢岳から南側に延びた稜線へと上がって行く。標識には鏡平・新穂高温泉方面と記さ
れている。右手に池の周りに咲くコバイケイソウ越しに白い岩が点在する双六南方を見ながら横掛け道を進む。
花好きの和田さんが屈み込んで花を撮影しているので何かと見れば白いタテヤマリンドウが青いのと一緒に咲いていた。10時
20分稜線近くまで来ると傍らの草地にはウメバチソウ、タテヤマリンドウやエゾシオガマ、ミヤマキンバイ、ヤクシソウ、キ
ヌガサソウ、フウロソウ、コオニユリ、トリカブトなどが咲いている。
右手の谷を挟んで双六南峰とそこから西に延びる尾根がどっしりとした姿を見せる。この稜線の草地はお花畑となっておりハン
カイソウとトリカブトが霧にマッチして長い歩きを癒してくれる。
09時50分 双六小屋から笠ヶ岳へ向かう テン場と双六池のほとりを樅沢岳の南尾根稜線へ向かう
アルプスでコバイケイソウに出合えると嬉しい 右手に双六岳・南峰を眺めながら歩く
稜線のトラバース道を次第に上がって行く 双六小屋から30分程で稜線部に上がる
稜線部から双六小屋を振り返る
向かいの双六岳方面を眺める
稜線に出るとガスが湧いて来た ハクサンフウロやハハコグサなどのお花畑が続く
マルバタケブキとトリカブト
稜線に出て10分程歩くと「クロユリベンチ」と書かれた休憩所があり、さすがにクロユリはもう見られなかったが一面のお花
畑が広がる。この弓折岳手前は「花見平」と呼ばれてなだらかなピークを繋ぐ稜線となっている。
ので例年だとここに残雪があり、そこがお花畑となっているのもうなずける。10時50分登山道の左手に池塘の様な池を過ぎ
ると木道なども置かれた休憩所となっており、大勢の登山者がいる。
すると急に騒がしくなって皆が移動している。その先にライチョウの親子連れが現れたのだった。このアルプスの人気者は人間
どもの喧騒をよそに悠然とハイマツに消えて行った。
加えて初めてシモツケソウが現れた。
前方に弓折岳らしきピークが霧の中に現れると11時00分鏡平への道を分けた「弓折岳分岐」に着いて石丸隊長の号令で休憩
となる。黒部五郎小屋からここまで既に5時間半歩いて来た。
シラタマノキ コオニユリ
10時30分 クロユリベンチを通過 この辺りにクロユリが咲くのだろう
ハクサンイチゲとチングルマが残っている 池塘の様な池もある
10時50分 広い休憩所に多くの登山者が休んでいた そこにライチョウの親子が現れて大騒ぎ
ニッコウキスゲの咲く登山道 11時00分 弓折岳分岐に到着 (小池新道分岐=鏡平山荘へ)
行き摺りの尾根ピーク「弓折岳」 2,592m (11時30分通過)
山頂に寄らなかった「大ノマ岳」 2,662m (12時25分通過)
休憩の後、稜線を進むと11時30分弓折岳の山頂を通過する。山頂標識は見当たらず笠ヶ岳と双六小屋の標識が立っている。
後から地図を見るとこの近くに三角点があったのだが確認を忘れていた。前方に大ノマ岳から抜戸岳へに稜線が続くのだがガス
でほとんどその全貌を見ることはできなかった。一旦樹林帯を下り大ノマ乗越のコルに11時45分下りつく。
ここから急な上りが少し続くが、その後は緩やかになってこの大ノマ岳への上りは歩いて見るとそんなにキツくは無い。12時
25分、最後は岩くれの登山道は大ノマ岳のピークをトラバースしてしまう。晴れていればピークを踏もうという考えもアリな
のだが三角点も無い山頂なのでここは団体行動に徹する。
ガスの弓折岳へ向かう 11時30分 尾根の行き摺り「弓折岳」を通過
ミヤマコゴメグサ 前方に大ノマ岳が見える あ〜一旦下がるのね
ダケカンバの急坂を右手からトラバース気味に下る 11時45分 大ノマ乗越へ着く
大ノマ岳には意外とだらりとした登りだ ミヤマカラマツ、ハクサンフウロ、エゾシオガマ
ハクサンイチゲの咲く大ノマトラバース道 12時25分 大ノマ岳の左斜面をトラバースして尾根に向かう
秩父平
その後も岩とハイマツの稜線をひたすら歩く。左手が切れ落ちている様だがガスでその全容は良く見えない。天気が良ければこ
の左手に秩父岩の奇岩が見えるのだが残念。
は2667mの岩峰が厳しい姿を霧の中に見せている。
笠ヶ岳の尾根は西側がなだらかで、東側は激しく切れ落ちている。この秩父平付近はその最も典型的な地形で右手のハイマツ林
が切れ落ちる崖部にほぼ沿って登山道が付けられている。
休憩の後、登山道は右前方の2667mピークを左に巻いて、両側が岩峰が尖って鋭そうな岩くれの谷間を抜けて尾根部に這い
上がる。13時40分岩場を抜けて稜線部へ上がる。登山道のコースがここで真南の秩父岩方面2,792mピーク7へと進むタ
ーニングポイントとなっており標識が置かれている。
秩父平付近の東斜面は切れ落ちている ガスがかかって左手の秩父岩は見えない
13時12分 秩父平で石丸隊長より休憩の号令 右手に2,667m岩峰が見える
白と紺の林道が揃い踏み 谷間を進む
抜戸岳への尾根に向かって登っていく
もう少しで尾根部 13時40分 秩父岩ターニングポイントへ上がる
抜戸岳分岐=笠新道分岐
秩父岩ターニングポイントから相変わらず左手が急な砂礫地で右手にハイマツの生い茂る稜線を歩く。
前方に秩父岩の谷が終わる左手が切れ落ちた2792mピークが見えてそれに向かって進む。15分ほどでこのピークの右手
をトラバースして稜線へ上がるとライチョウが岩の上でポーズを取ってくれていたので全員大いに喜ぶ。
しばらく歩くと又ライチョウが現れる。やはり霧で天気が悪い日は天敵に上から狙われないので活動が活発になるのだろう。
抜戸岳ピークの右手をトラバースしてハイマツの間に付けられたなだらかな登山道を黙々と進むと14時40分標識に出会う。
ここが明日新穂高温泉へ下る「笠新道分岐」だった。
てハイマツのトラバース道を真っ直ぐ進む。
右 ハイマツ、左 砂礫地のパターン 2,792mピーク
2,792mピークを超えるとなだらかな尾根道が続く 何見てんのよ〜〜
抜戸岳のハイマツの中に続く右トラバース路 14時40分 抜戸岳分岐=笠新道分岐を通過
抜戸岩を通り笠ヶ岳山荘へ 、薬師岳小屋から約11時間の長歩きだった
霧にむせぶ岩っぽい尾根を暫く歩くと小雨がパラつき雨具を着る。展望は無いし雨が降るし最悪の笠ヶ岳への道となった。
15時28分前方に岩峰がいくつか見えて近づくと岩が割れてその間に登山道が続いている。ここが「抜戸岩」と言われる岩の
回廊だ。
いた雰囲気を感じながら黙々と歩く。
15時40分になると山荘に向かって最後の上りになる。この辺りで休憩が欲しいと皆が思っただろうが山荘がすぐ近くにある
と知っている石丸さんはドンドン進む。
15時55分平たい岩でゴロゴロ埋め尽くされた斜面の霧の中に黄色いテントが張られているのが見える。テン場があると山荘
は近い。登山道のルートマークが付けられた岩の坂道を進むと右上に小屋が見えて16時10分笠ヶ岳山荘にやっと到着した。
11時間弱の長い歩きだった。石丸隊長のリードで長老の山口さんを筆頭にみんな良く頑張って歩いたものだ。
尾根が岩っぽくなる 一つ岩ピークを越える
15時25分前方に岩が見える なるほど これが抜戸岩なのね
結構な迫力の岩回廊だ 抜戸岩を越えると前方がこんな風に岩尾根となる
ピークがいくつも高みに向かって現れる 結局最後まで霧は晴れなかった
笠ヶ岳への岩尾根を進む
ようわからんけど、あのガスがかかった天辺へ向かうんだね
結構キツそうな最後の傾斜だ これを越えるといよいよ笠ヶ岳の懐に入る
テントが一張り見えた テン場が見えると山荘も近い ガレ場を稜線へ向かって進む
16時10分 笠ヶ岳山荘に到着〜〜〜 明日上る笠ヶ岳は意外と近い
クールダウン体操の後小屋に入る。2階部屋は相変わらず足場がない布団が敷かれた状態だったが今日は石丸隊の男性で一部屋
使えたので気が楽だった。乾燥室も強力で濡れた衣服やザックは良く乾いて気持ちが良かった。夕食を食べながら長老山口は
「いや〜 キツかった〜 今回が私にとって最後のアルプスです」」と言うと皆から「山口さんは毎回これが最後やと言ってる
わ」と笑いが起こる。
小屋の前でクールダウン体操 最後の晩餐 いや〜 お疲れさんでした〜〜
気心が知れた仲間で最後の夜を過ごす。
第1日目 : 折立〜太郎平小屋〜薬師岳山荘〜薬師岳〜薬師岳山荘 は ここ
第2日目 : 薬師岳山荘〜太郎平小屋〜北ノ俣岳〜黒部五郎岳〜黒部五郎小屋 は ここ
第4日目 : 笠ヶ岳山荘〜笠ヶ岳〜笠ヶ岳山荘〜抜戸岳分岐〜笠新道〜新穂高温泉 は ここ