海部山地縦走  (2/3 )  縦走2日目

日和田〜四ッ足峠〜行者山〜赤城尾山〜駒背山〜太郎山〜西又山〜甚吉森〜湯桶丸〜金瀬〜神戸丸〜吉野丸〜鰻轟山〜霧越峠
令和元年11月16日〜18日  メンバー: 四国の山放浪者・エントツ山、土佐の岳人・gakugaku さん、分水嶺歩き狂・北川クン(S.Kita)

海部山地縦走 日和田から霧越峠 (2泊3日)

 カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図  海部山地縦走

令和元年11月17日 (海部山地縦走2日目)
駒背山ビバーク地〜太助山〜高ノ河山〜西又山〜甚吉森〜うお山〜お化け杉〜県境分岐〜湯桶丸(ビバーク)

歩行距離  約 19km
活動時間  約 11時間10分


カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 駒背山分岐〜西又山〜甚吉森〜湯桶丸  


海部山地 2日目

朝05時前に目を覚まして外を見ると月明かりが煌々と木々の間から照っている。月明かりの為に星は見えないが今日も良い天気
だ。
既にガクちゃんや北川君も起きて朝食の準備をしている。私はそんなに朝早くから食べ物は欲しく無いので居住区を片づける。
暇なのでガクちゃんのツェルトの中を覗かせて貰う。


インナーポールをツェルトの真ん中辺りに固定出来る様に自作している。私もファイントラックのツェルトロングIIとインナーポ
ールを持っているが、最近は軽量シェルターを使う様になってから実戦で利用した事は無い。


  
こんな朝っぱらからよく食べれるなあ  ベテランじゃ〜      ガクちゃんのツェルト  中央部が太っ腹になっている


  
 インナーポールで内部が広くなっている ベテランじゃ〜    長さ調節も自在器具無しでやっている ベテランじゃ〜

行程1)駒背山分岐〜太郎山〜高ノ河山〜西又山 約4時間10分 

06時23分まだ薄暗いのでヘッドランプを点けてビバーク地を出発する。直ぐにアセビが点在する植林帯に入るので中々回りが
明るくならない。06時35分左手が自然林、右手が植林の尾根になり朝日が届くようになった。


ドンドン下って06時40分コル部に着くと境界杭が3種類立っていた。そこから両側が植林帯の上り傾斜になる。この辺りの真
下に「駒背越隧道」が抜けている。このトンネルは高知県側が伊尾木川に沿って、徳島県側は千本谷に添って「東川千本谷線
と言われた道路がここで県境部を繋ぐ。舗装されているらしいが谷道なので狭くて落石も多いと聞く。トンネルの西口、高知県側
から太助山北側の県境尾根に上がる登山道があるらしい。確か今治のバリーさんもここを這い上がっている様だ。


  
 06時23分ビバーク地(駒背山分岐)を出発           植林帯に入るとアセビも生えている

  
 左:自然林 右:植林のパターン                  06時40分 コル部に着く


コル部から標高差150m程の先にあるピークまで上り傾斜が続く。07時20分1,310mピークを越えると急に前方が開け
て西又山方面の気持ちの良い景色が広がる。広々とした下り斜面は地表が荒れていてシダと倒木が目立つので鹿の生息地だろう。

07時26分斜面を下りヒメシャラ林に入るが、直ぐに植林帯に変わり急傾斜を右手に下って行く。07時43分樹林帯の中にぽっかりと湿地帯の空間が現れた。元々植林する前の姿だから不思議がる必要もないのだが、やはりシダに覆われている所から鹿のたまり場になっているのだろう。

  
 コルを過ぎると植林の急登が続く                   朝っぱらから体に悪い上りだわん

  
  07時08分 朝陽が山際から出て来ると暖かくなる      休憩中にザックを記念写真 全く減っていないように見える

  
  07時20分やっと前方が開けて見える                      西又山への尾根


   太郎山、高ノ河山、西又山の順番か  奥が烏帽子ヶ森だろう  下り尾根にヒメシャラが光る

  
  ヒメシャラ林に突入〜〜                     1,310m ピークの南肩に向かってヒメシャラが並ぶ

  
 ピークから暗い植林帯を標高差180mを激下り         植林の中にぽっかり空いた広場に出た


   窪地に水が溜まって鹿の集会所になっているのかシダに覆われている
  

太助山  1,241m ピーク  山頂標識 無し

地図で確認すると、この辺りの尾根ルートは県境から少し東側に逸れている。踏み跡を辿って来たので恐らく池ノ河谷の鋭い切れ
込みに依る急斜面を避けて県境尾根に右手から回り込んで復帰するのだろう。案の定、植林帯を登って行くと07時56分県境尾
根に復帰した。この辺りの県境尾根は左手が自然林、右手が植林のパターンが続く。


植林帯の中を左手の自然林から外れない様にピークに向かって上っていく。08時12分平らなピークに着く。標識は見当たら無
いがここが「太助山」1,241mピークに間違い無い。右手に何か白い人工物が見えたので下って確かめると簡易トイレだった
ので尾根に引き返す。地図でこの場所が1,241mピークだと確認して先へ向かう。コモさんのレポは随分昔なのでその時有っ
たキティ山名板も壊れてどこかへ飛んでいる。やはり山名板はその山を愛する地元の人達によって立てられて守られるのが理想だ
ろう。


  
 平地からすぐ植林帯の上りになる                 県境尾根に復帰した場所に着いて二人を待つ

  
 右手の植林帯に沿って太助山へと向かう            大きなブナが尾根に現れる この先が太郎山だろう

  
      鷲掴みボク   行かないで〜〜          平らなピークの下に人口物があったので見に行くと仮設トイレだった 


      08時13分 山頂標識は無いけどここが「太助山」の山頂にかわらん 奥が高ノ河山

  
   オラも異議なし! 太助山                     じゃ そう言う事で次へ進みましょか〜


太助山を回り込むと前方に高ノ河山が結構高い場所に立ちはだかっている。気が付くと今までワンサカあった植林が消えている。
この辺りはブナの森として定評があるが、どこの山でもブナのある風景は自然が残っていると実感させる。


  
 太助山からの下り斜面はブナ街道だ                丁度ブナの葉が黄葉を迎えている


   ブナの黄葉を眺めながら前に姿を見せる高ノ河山へと向かう


高ノ河山(たかのこう山) 1,364m  荒れた北斜面

一旦急傾斜を下って荒れ気味の尾根を小ピークへ上り返すと高ノ河山が前面に現われる。この山域は植林地帯でも自然林でもア
セビの木をよく目にする。シャクナゲやアセビは岩山のサインでもある。 08時35分コル部に下りるとネットで良く見かける
道標が立っていた。但し、こんな山域では尾根道を主たる登山道にする方が崩壊地に出くわしたり、道迷いを起こしにくい。


コルからアセビの生えた尾根を進むと次第に倒木や岩っぽい荒れ気味の急登を上がって行く。北斜面は陽が当たらないので≫余計
に寒々として殺風景に感じる。途中で休憩がてらサルノコシカケやホコリタケをしげしげと見物する。ロープが敷設された急傾斜
を08時53分登り切ると、前方に最後の急登が待っており北川君は既にそこに取り付いている。更にトラロープが置かれた急傾
斜が続き、そこを乗り越えると08時58分いよいよ最後の上りとなる。

09時08分 高ノ河山の細長い山頂に至る。眺めが良い所はすなわち鹿の食害が進んだ場所だ。陽が差して明るいので15分程
お約束の休憩を取る。


  
  08時18分 一旦コルまで下る                    上りになると風景に華やかさが無くなる

  
  荒れた尾根を小ピークへと上がって行く            08時28分手前の小ピークに着くと高ノ河山が見える

  
 アセビが生えた細尾根を通過する                 08時34分 高ノ河山手前のコル部に着く

  
 コルにある標識 ここから高サデ登山口へ下れるみたい     細尾根の上り傾斜になる

  
サルノコシカケ 白いのは幼菌で最初はこんなに柔らかい   一見ブナが立っているが結構尾根は荒れている

  
 岩っぽく荒れた尾根の急登だ                 道しるべが落ちている 西又山へのトラバース路が有るようだ


   ホコリタケがあったので菌糸ホコリを出してやる

  
  荒れた急登を這い上がって行く                  ベテランは付設されているロープを使わない

  
  若手は先の急斜面に取りついている                もうすぐ高ノ河山のピークじゃぞ

  
  何か荒れた山頂じゃおまへんか                 下山方角を確認する


   山頂標識も無いけど 09時08分 高ノ河山(たかのこうやま)に足跡を残しました


西又山へ

09時30分高ノ河山を出発して西の肩へ向かう尾根は地表が荒れてシダが生え立木が枯れている。すなわち鹿の生息地に間違
いが無い。それでも西の肩部との間の平坦地にはヒメシャラの群生地となっていた。鹿はリョウブの樹皮は好物で枯らしてしま
うが、ヒメシャラは樹皮が薄いので鹿もあまり食べない様だ。シダやバイケイソウなど鹿に食べられない植物が四国の山で生き
残っていくのだろう。

  
 石立山を振り返る                  ブナの向こうに石立山と剣山系が見える


     歩いて来た尾根の向こうに石立山と剣山系

  
 左の西又山へ向かう 尾根は裸地になっている      ブナとヒメシャラが立ち並ぶ


  裸地尾根を過ぎると左手がヒメシャラ林となる

  
北川クンのザック・オスプレーイーサーは縦長い     ガクちゃんのマウンテンハードウェアは幅が広い



貴重な水場 (高ノ河谷源流)



カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図  西又山北側の水場周辺図

09時42分 高ノ河山の山塊・西肩部に出て下りとなる。この下りにもヒメシャラが生えている。左手に植林が現れると09時
51分西又山手前のコルに下りた。

ここは那賀川の支流・南川が更に源流部では高ノ河谷と呼ばれて尾根筋まで谷が切れ込んでいる。その源流部がコルを横切って
いるではないか。水の補給が第一の私は早速プラスティバ水袋を出して流れがありそうな場所を探して補水する。ガクちゃんは
「そんな鹿がいる場所の水なんぞ飲めるかよ」と言って補水に興味を示さない。今まで長期縦走で水で幾度も辛酸を舐めてきた私
は、いかに湯桶丸に4
L水を置いていると聞いていても本能的に給水する。勿論それを飲む時は浄水器を通すか、沸騰させるけど。

一方、北川君はその水路がコルを横切って右手に続いているのを見るや「今下った尾根道は分水嶺を外している様なので確認し
て来ます」と北側の別な尾根筋に向かった。さすが分水嶺に懸ける男だのうし。「彼なら遅れても心配なかろう」とガクちゃんと
私は西又山へゆっくりと向かう事にした。


  
 この辺りの水場を泉保マップにマークしている           09時51分 水場マークのあるコル部に着く

  
 クリーク(水路)がコルを横切って右へ延びている       水が流れて少し段差がある場所で給水する

  
「ちょっと分水嶺歩いて来ま〜す」(北川クン)           分水嶺・県境尾根を西又山へ向か


西又山 1,360m (三角点の場所は相当東に離れている)

ブナとヒメシャラの斜面を登っていると案の定北川君はすぐ追いついてきた。西又山の北側は複雑な地形をしているので県境は
北尾根を外して北西側の斜面沿いに引かれている。途中から東川・千本谷林道の別役(べっちゃく)に下りる登山道があるのだ
が分岐は特に標識が見上がらず確認できなかった。荒れた斜面をゆっくりと上って行くと10時28分県境部は北尾根に合流し、
甚吉森方面が開ける。その向こうに湯桶丸らしき山塊も見えるがいかにも遠い! 

10時33分西又山の山頂に到着したが東屋(あずまや)は完全に倒壊していた。高知県ではこのブナとヒメシャラの美しい山
域を自然探訪のメッカにしようとの試みて登山道や標識の整備をしてきたのだろう。当時この山を覆っていた厄介なスズタケは
鹿の食害で無くなった。しかしながらアクセスの悪さから中々登山者で賑わう様な場所にはならなかった様だ。壊れて朽ち果て
ようとする大きな東屋が利便性を求める人間の習性を物語っている。

  
  ブナの黄葉が美しい                 傾斜がキツくなると山が有れてくる

  
  荒れた急登を喘ぐ                  10時28分尾根部へ這い上がる

  
 西又山のピークが近づいた               左手前方に甚吉森とその向こうに湯桶丸が見える


 10時35分 西又山の山頂に到着する  東屋は倒壊していた

  
 北側を振り返る 「随分荒れてまんなぁ」        倒壊東屋の横で休憩〜〜

少し休憩して南西方向にある「観察広場」まで行こうと言う事になった。北川君によればヤマップ上ではこの観察広場付近が西
又山とされている様だとの事。ブナの生える尾根を少し歩いて辺りをウロウロするが「観察広場」の標識しか見当たらない。この
辺りから東川・千本谷林道の高知側・川成への下山道があるらしい。尾根を南へ下ると烏帽子ヶ森や宝蔵山、更には稗己屋山等、
馬路村の山々へとッずく。

先のピークまで少し進んだ後、倒壊東屋まで引き返し、初めて訪れた地での眺めを堪能する。


  
 ブナ尾根を南側の観察広場へと向かう              観察広場の標識  右手には魚柳瀬方面へと書かれていた

  
 観察広場って何を観察するんだろう 自然観察?            西又山へ引き返す


10時55分 西又山へ帰って初めて三人揃って意念撮影をした後 甚吉森へと進む 東屋が傾いているので写真も傾く


行程2)西又山〜甚吉森  約 2時間40分

少し離れた三等三角点「西又山」 1,321.65m

ここで3人の記念写真を撮った後、10時55分西又山を後にする。西又山は倒壊東屋の山頂を西端にして台形の尾根が長く東
に延びる。倒木の残骸が転がる広めの尾根を進むと11時10分三角点「西又山」に出合う。山名が付された山頂に三角点があ
れば理想的なのだが、山名と同じ点名が付いた三角点が離れた場所にあると登山者は多少悩ましい。新宮にある笹ヶ峰も山頂と
三角点は離れている。悩ましい場合は両方の山頂を踏めばそれで解決する。

  
 甚吉森へ進む 足元にはシダ類が生えている       倒木に跨(またが)る北川クン


  11時10分 三等三角点「西又山」 1、321.65m を通過

  
  三角点「西又山」を踏む               ゾンビの手が地中から出ている

長い尾根を歩く

倒木とシダの生えた台地が10分程続いた後、灌木帯を少し左手に向きを変えて下り斜面になるとブナやカエデの紅葉が美しい
場所になる。喜びもつかの間で、やがて灌木が林立する平凡な細尾根がクネクネと続いていく。この山域はイメージ的に相当奥
深い山の印象だが、泉保さんの地図を見ると尾根の南側(高知県)には魚柳瀬(やなせ)から奈半利川の支流・西川に沿って
「西又・東又林道」が延びて来ている。更にその南側には西又谷や東又谷に沿ってそれぞれ長い林道が走っている。一方、尾根
の北側(徳島県)には那賀川の支流・南川に沿って林道が延びている。
地形図に慣れ親しみ、近くの尾根や谷、林道が何処に向かうのかを理解する事が登山の安心感に繋がる。


西又山から甚吉森までの長い尾根には名前の付いたピークや特徴のある大木なども特に無くランドマークの無い単調な歩きとな
る。それでもこの時期は随所に現れるブナやヒメシャラの紅葉が退屈を紛らわせてくれる。 


12時25分立派な天然杉が初めて現れる。そう言えば右手の魚梁瀬・馬路村は四国で有数の天然杉のメッカなのだ。暫くする
と細い幹の灌木帯やブナ、リョウブの尾根に珍しくツガやヒノキがポツンと現れる。

  
 11時15分 初めて天然杉が現れる         尾根に横たわる白骨樹も傍にある


         白骨樹は芸術的なオブジェを創る

  
 11時30分頃から大ブナが現れる          丁度見頃の黄葉だ 

  
    小下宿屋杉                   ブナの黄色の次はカエデの茜色

  
ここの尾根筋は小振りのヒメシャラが多いがこれはデカい  まだまだ続くよ ブナの尾根

  
12時25分 立派な天然杉も立っている        基本的にはこの様な灌木帯の尾根だ

  
  笹薮は後退しブナの快適な尾根が続く         リョウブもかろうじて生きのこっている


    12時40分 「四本杉」を通過する

  
 前方に甚吉森のピークが見える             


甚吉森 二等三角点「甚吉森」1,423.38m

12時43分小高いピークを越えると前方に甚吉森の一つ手前にある1,349mピークがやっと見えた。灌木帯を20分ほど
なだらかに登って手前ピークに出ると前方に甚吉森の高みが現れる。今まで穏やかだった尾根にゴツゴツした岩が地表に露出し
た傾斜を上ると13時32分甚吉森の三角点に着いた。山頂部は細長い裸地となっていて、そこに安芸森林管理署が設置した
山頂標識が立っている。山名は平家の落人伝説に絡んで付けられたものらしいが、それは前回の山行記に述べているので省略す
る。今年の春に逆方向から歩いて来てこの甚吉森から千本山へ向かって岩尾根を下った事を遠い昔の出来事の様に思い出した。

  
 12時43分 手前の1,349mPが見える     お馴染みの灌木帯を進む

  
 境界杭がある平坦な尾根を進む          ガクちゃんがブナの実の抜け殻を拾って見せてくれる


  13時20分やっと正面に甚吉森が見える  もう少しや〜〜〜

  
 細長い尾根を南へ進む                  13時32分見慣れた山頂標識に到着〜


  何とか私の目的だった日和田から甚吉森が繋がりました ガクちゃん ありがとう!

  
 S.Kita さんの分水嶺歩きも順調です          石立山               次郎笈


行程3)甚吉森〜うお山〜お化け杉〜県境分岐〜湯桶丸  約3時間50分


(速道路では無かった)

先が長いので13時40分休憩を短く切り上げて甚吉森を出発する。何せこの春歩いた時は雪が少し有ったとは言え甚吉森〜湯
桶丸間が4時間30分程かかっているのだ。


甚吉森の山頂ピークは地形に注意が必要で尾根が4つに分かれている。大きな分れ尾根は先ほど歩いて来た西又山から来る西尾
根と北側の南川林道登山口に向かう北尾根だ。残り2つは千本山へ下る南尾根と西側の県境尾根に続く西尾根となる。


県境尾根を甚吉森へ逆方向から来ると尾根なりに進むので全くルートミスは起こらない。しかしここを東に下るとなると最初は
意識的にバカ尾根斜面に向かう事になるので注意が必要となる。先を行く北川君はスマホ地図を見て的確にルートを決めている。
ガクちゃんは踏み跡を見つける名人だから踏み跡を探して同じ方角へ下っている。私ときたら前回の記憶が全くなく二人の後を
「こんな所歩いたっけ?」と首をかしげながら付いて行く。



 甚吉森から東に続く尾根への下りは右に下って曲がって行く感覚だ  左奥が湯桶丸

  
 尾根を右に外して下る意識が要る                   灌木帯を辛抱して東へ下る

  
   少し下ると尾根筋に出た様だ                    天気が良いと先の尾根が見える           


途中から明確な灌木の細尾根になってホッとすると14時00分広い尾根に出た。ここから甚吉森から直接続く東尾根を抜けて
アップダウンを幾度も繰り返すが、等高線が緩やかな様に余り高低差を感じない。


  
 14時00分 尾根が広くなる                     1,308mピーク辺りが若干高くなっている

うお山 1,322m ピーク

14時28分地形図にある1,308mピークにさしかかるがブナが立っているだけでピークと言う気がしない。灌木・ブナ・
ヒメシャラの尾根をドンドン進むと背の高い樹木に覆われたピークに向かって左手から上がって行く。14時50分見覚えのあ
る「うお山」(1,322mピーク)に着く。この山の名は泉保安夫さんの山地図で知ったのだが、山名の謂われは知らない。
但し長い尾根歩きのチェックポイントとしてピークに山名があれば助かる。



  
14時28分 灌木帯を抜け 1,308mピーク付近のブナ  モミの木もごく稀に出てくる

  
  ピークに向かって左手から回り込む         14時50分 この右手の森が「うお山」になる


  14時50分 「うお山」付近で何か標識を探すが見当たらなかった


   「うお山」の目印 「三本杉」だが これとていつまで3本で立っているかどうか・・・


さて、ここからお化け杉までがガクちゃんに「高速道路やで」と嘯(うそぶ)いていた快適な稜線歩きの場所だ。風倒木による
白骨樹の残骸が転がる尾根ではあるが、基本的には一面を覆っていたスズタケが鹿の食害により消滅し土壌が現われ根っ子を支
える地表が弱くなったのも老木が風倒木した原因かも知れないと想像する。

白骨樹の下でガクちゃんと写真を撮っていると北川君はどんどん先へ行ってしまった。15時17分スズタケ藪の名残りが現れ
る。以前は藪漕ぎで随分悩まされたスズタケではあるが、昨今の消滅状態を見ているので逆に今では葉が緑色をして繁っている
のを見るとホッとする。


  
  うお山を出発すると枯れたスズタケが現れる            風雨に晒されて立っている天然杉

  
 湯桶丸が左手近くに見えるがグル〜っと回り込まなければならない   枯れたスズタケが尾根の両側に立つ

    
  細い天然杉とガクちゃん (ガクちゃんが太く見える)     太い白骨樹とガクちゃん  (ガクちゃんがスマートに見える)

  
北川クンはドンドン先を行く                       葉っぱが生きているスズタケが出てくる

化け杉  (約1,235m)

ここから湯桶丸県境分岐まではスズタケが続く尾根となる。15時24分この春歩いた時に見た登山道の水溜りは干上がってヒ
キガエルも居ない。この水溜りに来るとお化け杉は近い。前方に大きな杉が現われ15時26分「お化け杉」に着くと既に北川
クンとガクちゃんは写真撮影を終えて休んでいた。北川君に頼んでお化け杉の前で記念写真を撮って貰う。話を聞くと北川君も
果たしてどれがお化け杉か分からず途中の天然杉の写真を全て撮って来たと言う。やはりこの杉は桁外れてデカい。

お化け杉の立つピークは東に進んで来た県境尾根がここで一旦南へ下がり、又少し北側へ返ってから元の東へ方向を戻すターニ
ングポイントとなっている。


  
 15時25分 以前ヒキガエルがうじゃうじゃ居て気味が悪かった水溜り  お化け杉が見えた


    15時26分 「お化け杉」に到着 西側から見ると逆光にならないのではっきり見える


   東側から見るとバックが明るいので逆光になる  私が中央に立っている(北川クンに撮って貰った)

  
 ガクちゃんの縦写真が上の方まで見える              何度も振り返りながら県境分岐へ向かう

湯桶丸への県境分岐

お化け杉を過ぎて荒れた尾根を15分程下る。それから湯桶丸への県境分岐までが結構長く感じた。出来れば湯桶丸の先へ進み
たいと言う我々の願望は既に砕け散り、逆にガクちゃんが水を置いてある湯桶丸まがギリギリの時間になってしまった。どんど
んスピードを上げる北川君を必死で追いかける。


16時22分湯桶丸への県境分岐に着く。結局お化け杉から分岐まで1時間近くかかった。分岐でガクちゃんが来るのを待つと
言う北川君に「日没が近いので休憩を取らずに先に進みます」と言って湯桶丸への尾根を下る。

  
  天然杉の横を下る 左は崖の様な傾斜          ツガだろうか  モミだろうか?

   
 先を行く北川クンを追う                 上りになると急に速度が遅くなる


  湯桶丸が那賀川水系、南川の源流部「湯桶谷」を挟んで正面に見える

  
 左手に湯桶丸への中間部尾根ピークが見える   16時22分 県境尾根分岐を通過する 湯桶丸まであと1300mだ


湯桶丸(ゆとうまる) 三等三角点「湯桶丸」1,372.12m


湯桶丸への尾根道は春に雪が積もって往生したが、その時はピストンするので空身だった。今回は片道切符だがザックが重い。
二人がすぐ追いついて来て中間部のピークを越えると左手に沈んで行く夕陽が見える。沈みゆく太陽は物悲しく感傷に浸れる貴
重なシーンだが、今は一刻も早く湯桶丸へ辿りつきたい気持ちでその余裕がない。尾根の右手からはガスが吹き上がって翌日の
天気が悪くなる兆候を見せる。


     
 県境から分かれて北へ藪尾根を下る                中間部の尾根ピークへと向かう

  
 中間部の尾根ピーク付近で夕日を見る               16時47分 山際に夕陽が落ちる

  
 東の太平洋側から霧が吹き上がって来る            霧は尾根を回り込まないが明日の天気が悪くなる兆候だ


16時53分平たいコル部に着くと薄暗くなってライトを出して使える様に用意する。この尾根は登山道があるのと、小さな境
界杭が随所に置かれているので急傾斜をヘッドランプの灯りを頼りに足元だけを見ながら這い上がる。標高差はコル部から実に
170m程もある。

上を見ると北川君のヘッドランプの灯りが見えたのでこちらもヘッドランプを点ける。三人がバラバラになってもそれぞれが山
慣れしているので山頂で会えば良い。
上から北川君が「山頂に着きました」と声がかかる。17時30分ガクガク給水ステーシ
ョンがある「湯桶丸」に着いた。


ほどなく真っ暗な山頂にガクちゃんも着いて「北川君 その斜面下辺りに水を置いちゅうき取って来て」と言う。元気な北川君
が藪を探す。「見当たりませんが・・」「何〜〜?」一瞬三人共アセる。三人で藪に入って探すと木の根元に見つかってホッと
する。


さて、テントを張る場所を検討する。パッと見、スペースはあるのだが結構傾斜があって石も出ている。三角点付近のそこそこ
平坦な場所にまず大き目の北川テントの場所を決める。次に、その周りの出来るだけ平坦な場所に小型のシェルターやツェルト
を張る。
南から冷たい風が吹き上がって来るので北斜面に少し出て夕食を作る。

  
  16時56分 コルから湯桶丸へ最後の急登となる         17時05分 ライトを点けると周りが見えなくなるので我慢しえ歩く

     
17時12分 ガクちゃんが通過した金瀬・神戸丸分岐標識     17時20分 登山道が見えなくなったのでライトを点ける

  
17時30分 何とか湯桶丸に辿りついた               ガクガク給水袋も捜索の結果無事発見!

     
 ビール2本に水4リッターを事前にガクちゃんがデポしてくれた  三角点の近くにスペースを見つけてテントやツェルトを張る


私は先ずガクちゃん給水所から1リッターの水を貰いペットボトル2本で翌日の飲料水を確保し、食事用には高ノ河山・南コル
の水場で汲んだ沢水を浄水器を通して出す。ガクちゃんや北川君は水の残りが厳しく、夕食と朝食用、更には翌日の行動用にも
湯桶丸給水所の残り水3リッターで済ませるらしい。今まで水で悲惨な思いを何度もしてきた私は、二人の水使用計算が結構楽
天的だと思った。まあ翌日は天気も悪くて水の問題は起こらなかったのだが・・・


ガクちゃん給水所には水だけでなくビールも置いていた。私も少しだけチタンカップにビールを注いでもらい乾杯をする。二口
程で飲み干すそのビールがおいしい事! 乾いた体に冷たいビールが染み渡った。


  
  カンパ〜〜イ  ようけ歩いたにかわらん          カップ麺を食べて体が温まったのでシェルターでぐっすり寝る

海部山地縦走1日目 日和田〜四ッ足峠〜行者山〜赤城尾山〜駒背山〜分岐ビバーク地   は   ここ   

海部山地縦走3日目 湯桶丸〜金瀬〜上越峠〜神戸丸・ピストン〜吉野丸〜鰻轟山〜霧越峠 は   ここ   



          
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