海部山地縦走  (1/3 )  

日和田〜四ッ足峠〜行者山〜赤城尾山〜駒背山〜太郎山〜西又山〜甚吉森〜湯桶丸〜金瀬〜神戸丸〜吉野丸〜鰻轟山〜霧越峠
令和元年11月16日〜18日  メンバー: 四国の山放浪者・エントツ山、土佐の岳人・gakugaku さん、分水嶺歩き狂・北川クン(S.Kita)

海部山地縦走 日和田から霧越峠 (2泊3日)

 カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図  海部山地縦走

プロローグ

海部山地とは

山域を一括りにしたり山域を分けたりする事は少々無理があり、山や川は人間の思惑を越えて繋がり広がって行く。四国の山は大きく
石鎚山系と剣山系に分けられるが、その末端部は果たして何処までか定かでは無い。


一つ一つの山を登って行くのも山歩きの愉しみの一つではあるが、山全体の繋がり、位置関係を知るには縦走という形態が一番理解し
易い。
剣山系の主稜線上にある高ノ瀬から石立山へと尾根が分岐し、尚も尾根が南側に続く。以前からこの南側の県境尾根が気になっ
ていた。


今年の春に干支の山絡みで高知県の梁瀬ダム付近から猪ヶ森へ行き、貧田丸〜湯桶丸〜甚吉森〜千本山を縦走した。その時に湯桶丸か
ら西へ延びて鰻轟山へ至る尾根や、甚吉森から西又山〜赤城尾山〜四足峠へ至る北側の尾根を眺めて、これは歩けそうだと確信した。

徳島県の南部を流れる海部川流域の山々を狭義には海部山地と呼ぶのは理解できる。だが、その範囲は一体どこまでを指すのだろうか?

徳島県が公にしている資料によると徳島県の山域は北から讃岐山脈、四国山地、剣山地、海部山地と四分している。



@讃岐山脈は雲辺寺山、大川山、竜王山、大滝山、大麻山など。(異議なし) 

A四国山地は北は吉野川、南は鮎喰川から祖谷川を結ぶ線に挟まれた区域で国見山、中津山、寒峰、烏帽子山、矢筈山、八面山、
     東宮山、高越山、焼山寺山、西竜王山、眉山など (四国山地と言う呼び名は四国全体ではなく部分的に使うのはちょ
     っと誤解を与えそうだ。我々が矢筈山系と呼んでいる山域だろう
。)

B剱山地は剣山を中心に三嶺、天神山、高城山、雲早山、旭ヶ丸、中津峰などの連山からなっている。(これも納得) 

Cそして海部山地は剣山地とほぼ並行して、西から赤城尾山、甚吉森、湯桶丸、神戸丸、吉野丸、鰻轟山、胴切山、八郎山、後世
    山    と次第に低くなって太平洋にそそり立つと記されている。(今回の山岳縦走はこの山域に入る)

この区切りだと那賀川本流以南が海部山地の括りに入れられているので、果たして次回私が縦走しようとする那賀山地(六郎山、
平家平、権田山、不入山、新九郎山ってどちらに入るか微妙なものだ。ちなみに
ヤマケイオンラインによると高知県の千本山まで
海部山地だとされている


丁度そんな時に高知のgakugakuさんから「晩秋に日和田から甚吉森〜湯桶丸〜鰻轟山の縦走を計画しちゅうけんど、どう?」とライ
ンが入ったので即「乗った」と返事をしていた。ただし今年の
gakugaku遠征はことごとく雨で流れていたので期待はしていなかった。

その後、私以外の現役労働者、ガクちゃんと北川クンの休みに合わせて日程が11月16日から18日と決まる。この山域をカバー
してくれる地図は泉保安夫さんのイメージをトレースする山歩き地図1「剱山・三嶺」だ。この地図は現在絶版となっているので原
本は大切に保管して現場には縦走山域をカラーコピーして持って行く。地図を眺めて私の脚力だと丸々二泊3日の行程だ。



  泉保安夫さんのイメージをトレースする山歩き地図1「剣山・三嶺」は海部山地もカバーしてくれている

ガクちゃんより集合場所の「霧越峠」を09時にしますとの連絡があった。ん?それだと登山口の日和田出発が遅くなるので日程
が心配だったが、後半は比較的歩き易い尾根が予想されたので最悪ライトを点けても大丈夫だろう。水は事前にガクちゃんが湯桶
丸に置いてくれるとの事で給水場所への時間ロスが無くなり少し安心した。


土地勘が無い場所なので前日に行って車中泊をしようと考えていたら、現在高松勤務の北川クンが当日朝高松を出発すると言う。
それじゃあと北川クンの車に同乗させて貰う事にした。



霧越峠(きりごえとうげ)


 国道193号線にある霧越峠の林道竣工記念碑  実際の霧越峠は少し南へ下がった場所にある

雲切峠は徳島県那賀郡那賀町海川と海部郡海陽町小川を結ぶ国道193号線にある峠で今回の海部山地縦走後の下山地となる。

太平洋側の海部付近には海部、牟岐、浅川、宍喰などの漁港があり、そこで取れる塩や海産物を山深い木頭村地区に馬で運ぶ峠道
だったらしい。太平洋から吹き込む海風で霧の発生が多い事が峠名の由来となった。


国道193号線は面白い国道で、香川県では塩江街道と呼ばれて高松から脇町へ続く。その後、山川町から雲早(くもそう)トン
ネルを越えて大釜の滝、大轟の滝を抜けて木頭村へ至る。そしてその後、那賀川を越えて急に道が国道らしく無くなり霧越峠から
海部まで延々と続く国道だ。


霧越峠はちょうど那賀川水系と海部川水系との分水嶺となっており、分水嶺歩きをしている北川君にとっても興味がある場所なのだ。



タヌキの油

11月16日05時過ぎに北川君の屋島宿舎に行き、彼の運転で集合場所=下山地の雲霧峠へ向かう。ルートは色々あるが北川クン
に任せて徳島から勝浦川を少し遡り鷲敷〜上那賀へと進む。那賀川沿いの195号線でタヌキが車に撥ねられて道路に横たわってい
る。北川君が車を停めて死んだタヌキをビニール袋に入れて車に乗せようとする。 え〜〜? 何それ?カンベンしてよ! 

理由を聞くと高知県ではタヌキの油が貴重な民間薬として有名で傷口に塗ったり胃薬として飲んだりしていると言う。高知では昔は
どこの家でもタヌキの油を置いていたらしく、北川家では現在でも県外に居る娘さんもタヌキの油を常備薬として持って行っている
と話す。え〜〜?土佐にはそんな文化があるんかい! ラッキーにもタヌキの状態が悪くて車に乗せるのを諦めてくれたのでホッと
する。朝から高知県人の興味深い文化を知る衝撃的な出来事だった。


雲越峠への国道193号は那賀川本流から「海川谷東俣」に入ると予想通り狭くて対向車が来ないか心配しながらの運転だが、丁度
紅葉のシーズンで美しい。一か所落石があり北川車は幅が広い為二人で動かして谷へ落とす。


08時30分霧越峠に着くとあれだけ「ゆっくりしいや」と言っていたガクちゃんが既に到着して待っていた。そこからガクちゃん
のパクパク号に荷物を積み替えて、運転をしない私は谷筋の紅葉を楽しむ。訳の分からん近道を通って195号線へ出た後、四ツ足
トンネル手前で右折して10時過ぎに日和田登山口へ着く。


  
狸を回収しようとするワイルド北川 え〜〜? 聞いてないよ〜〜!  08時30分霧越峠に着くとガクちゃんは既に待っていた


          ここが3日後 我々のビクトリーロードとなる鰻轟山登山口  正面は請ヶ峰か


令和元年11月16日(土)

海部山地縦走第1日目

日和田〜四ッ足峠〜行者山〜赤城尾山〜駒背山〜ビバーク地 

歩行時間約6時間50分 歩行距離 約10.87km


 カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図  (縦長くて申し訳なし)

日和田〜四ッ足峠(四ッ足堂)  約 1時間05分


   カシミールソフトを使用したGPSトラックログ図  日和田〜四ッ足峠   旧道破線ルートは崩壊等の為 新ルートになっていた


10時15分日和田登山口を出発する。日和田登山口は今年丸石〜高ノ背〜中東山〜石立山を歩いた時に下山した場所だ。当初、四
ッ足トンネルの高知県側から四ッ足堂へ行く案があったのだが北川君が分水嶺歩きで下山した時崩壊地があり重たいザックで歩くの
は危険だとのアドバイスで徳島県側の日和田を出発点とした。


登山口を左手に進むと直ぐに四ッ足峠への標識があり、植林帯へ入って行く。10分程薄暗い植林帯を歩くと急に当りが明るくなり
伐採地へ出た様だ。


  
日和田登山口には石立山への登山者の車が1台停まっていた    「四ッ足峠」への標識

  
 最初は植林地帯を歩く                        10分程樹林帯を歩くと大規模な伐採地に出る

10時35分歩きにくい伐採地を斜めに上がると又植林帯へと入り水が流れて石が沢山転がる小さな沢を越える。沢部にはアルミ梯
子が置かれている。更に鬱蒼とした樹林帯を進むと10分程で2度目の沢を渡る。この場所は斜面がザレているので木で道が補強さ
れていた。

10時58分3度目の沢に出会う。古い登山道は崖崩れなどによりルートが少し変更になっているが登山道には赤テープが置かれて
踏み跡もしっかりしているので地図さえ持っていれば四ッ足峠へ進んでいるのを確認すれば安心だ。このルートはガクちゃんが既に
歩いているのでリードして貰う。


  
 ムーチョ歩きにくい伐採地トラバース道               アセビが生えた平地で伐採地がほぼ終わる


 支尾根部からは石立山から南に延びる県境尾根が見える この辺りまで石灰岩質の岩が転がる

  
 植林帯のトラバース路に入る                    10時40分 第一沢を渡る あまり水は無い

  
 沢の向こう側にアルミ梯子があり渡渉後 緩斜面を上がる   植林帯に入る スズタケはほぼ消滅している

  
 10時45分 荒れた涸沢を渡る  向こう側の斜面はザレ気味    渡渉後の斜面は幅が狭いが整備されている

  
小尾根を越えると旧道と交差しているので注意が必要だ     ここは沢へ向かってゆっくりと下がるルートへ進む

  
     10時57分 3つ目の荒れた沢へ下る           こんな渡渉もルートのチェックポイントになる

11時00分先程の沢を渡ってから四ッ足堂へ向かって最後の急登となる。大岩の左手を喘ぎながら這うようにして登る。これが四
ッ足峠の謂われとしても良かった様な・・・
植林帯の急斜面が終わると尾根部へ着いた様で11時22分右手に四ッ足堂が見えた。

  
  登山道の標識も置いてくれている           大岩の左手に沿って急傾斜を登る
  

 支尾根を一つ越えて植林帯を上がる                 11時22分 ガクちゃ〜〜ん 尾根に着いたぜよ

四ッ足堂

四ッ足堂は江戸時代の初めに石立山修験道の遥拝所的な意味合いで立てられたらしい。遥拝所と言えば石鎚山の遥拝所を思い浮かべ
るが、どこも霊峰石鎚を遠くから眺める事が出来る場所である。こんな鬱蒼とした斜面から石立山は見えないと思うのだが・・・

峠の回りは平地になっており野宿も可能な場所なので石立山への登拝の基地的な地だったのかも知れない。

四ッ足峠の由来はそこに立つお堂の名前から取られた峠名で、お堂には四本柱があって2本づつそれぞれ土佐側と阿波側に在る事
から四ッ足堂と言われる様になったらしい。でも小さなお堂はどこでも普通四角に四本柱があるような・・・・

峠名についてはそれ以前、この辺りに傍璽山(ぼうじやま)とか傍示山とか呼ばれた山があった事から傍璽峠(ぼうじとうげ)、
傍示峠などと呼ばれていたらしい。傍示(ほうじ)とは国境に立てられた傍(ふだ)の事だから阿波と土佐の国境を表す場所とし
て納得出来る。


四ッ足堂には修験道のシンボル、蔵王権現では無く地蔵尊が祀られていたので「地蔵堂」とも言われていらしい。土佐中街道
して古くから往来の有ったこの峠にお堂を立てて旅の安全を祈願するのは自然だし、ついでに旅人も修験の山・石立山に向かって
拝んでいたのだろうか。このお地蔵さんは四足トンネル竣工の際にお堂からトンネル内の県境部に安置されているとも聞く。トン
ネル内には確かに地蔵尊が祀られている写真をネットで見るがこれは四ッ足堂に有ったものかどうかは良く知らない。

しかし、昭和40年(1965年)に国道195号線「四ッ足トンネル」が開通してからはこの峠を通る人は無く、江戸時代初期
に建てられたという四ッ足堂は間には補修もされたとは思うが無残な状態になっていた。こんな話は自動車道路の開設と共に全国
各地にある峠話の一つだろう。

  
 11時22分 石立山からのなだらかになった尾根筋に四ッ足堂があった  10分程休憩する

     
   令和元年11月6日現在 四ッ足堂は相当痛んでおり既に四ッ足とは言えない状態だった


四ッ足峠〜行者山〜赤城尾山〜駒背山   約 5時間30分

行者山 (1,346m)

剣山系の主稜線、高ノ瀬分岐から別れた南に続く尾根は石立山から四ッ足峠へと下り、更に南へと続く。徳島県側の那賀川分水嶺
に沿って南へと延びて西又山に行き付く。そこから今度は東の甚吉森へと方向を変える。
初めての尾根を一人で歩くのは不安で少
し緊張感があるが頼れる仲間が居れば楽しい歩きとなる。


11時35分四ッ足堂から南へと植林帯を進む。さして広くもない尾根にはびっしりと杉が植林されている。11時50分最初の
括(くび)れを過ぎて急な上りに差し掛かると植林帯が切れて紅葉が太陽に輝く。微妙に植林が混在しているがヒメシャラや広葉
樹の紅葉が綺麗だ。やはり山歩きは晴天に限る。


  
11時35分 県境尾根を南へ出発する                尾根にはおびただしい程の植林が並ぶ

  
 これが最後の登山道標識となる                   11時50分 左に曲がりながら急登となる

  
 最初の尾根の括れ部、細尾根を渡る                 11時58分 2度目の細尾根を渡る

  
  ヒメシャラやブナの黄葉が朝日に輝く                1,201mPに向かって雑木林の様な尾根を歩く
 
12時28分行者山手前の1,201mPを過ぎると荒れた細尾根を通過して、その後も荒れ気味の雑木林の上り坂となる。12時
55分になると疎林尾根となり傾斜も緩くなる。すると行者山の西肩部に上がった様で、大きなブナが現われ美しい尾根風景となっ
た。やはり縦走尾根を美しく飾る切り札はブナだろう。行者山は東西に長く延びたピークで、尾根が東に振りながら平らなピークへ
近づくと前方には次の目的地、赤城尾山、反対側には石立山が見える。


  
12時28分 1,201m ピークを通過する              荒れたコル部を渡る

  
 行者山に向かって上りが始まる                    やはり上りは北川クンが知らぬ間にトップにいる

  
 ベテランのガクちゃんの場合は上りはマイペースだ        行者山の肩部が見えてきた


  13時00分 行者山の西肩部に着くとブナの巨木が迎えてくれる


        前方(南側)には赤城尾山がどっしりと構える


                   反対側(北側)には石立山

足元には枯れかかったシダが覆うばかりで、一昔までまで繁っていたであろうスズタケの藪は鹿の食害で全く見られない。13時
05分行者山には似つかわしくないプラスチックの山名板が枯れかけた木にぶら下がっていた。ハートマークが入ったオレンジの
かわいらしい標識だが、無いよりはずっと良い。いずれゴミになっても山頂には一つだけ山頂標識が有って欲しいものだ。まあ、
山自体の印象も穏やかで行者が来るような厳しい場所では無い。そこは鹿の食害に倒れた枯れ木とシダが残る荒涼とした野原だった。


    枯れたシダの上を歩いてピークに向かう


13時05分 長いピークのど真ん中にある山頂標識に到着する  う〜〜ん 先はまだ長いにかわらん


行者山の山頂標識地点を出発して暫く枯れたシダが広い尾根に広がっている。枯れた倒木は別としても、周りに立っている木も冬
枯れで葉が落ちているだけなのか、本当に枯れているのか定かでは無い。まあ、そのお蔭で展望がすこぶる良い。前方に見える赤
城尾山は東西にも支尾根を持つのでどっしりとした端正な三角錐を見せている。行者山も同じく東西に尾根を持っているのだが北
側からは樹林帯の中で殆どその姿を見る事が出来なかった。


13時35分肩部から下り坂に差し掛かる。地形図を見ると行者山の1,346mピークは正確にはこの地点だった。まあ地元の
山でも無く深く詮索する事もあるまい。こちらは縦走だから山頂は何処に有っても踏んでいる訳だから良いが、日和田から行者山
をピストンする登山者は良く地図を見て欲しいとの老爺(婆)心だ。


  
      山頂標識                 行者山平原を東に向かう


   奥は剣山系の次郎笈〜剣山〜一ノ森 以東が並ぶ

  
この辺りが地形図にある1,346mピーク表記場所だ       行者山東端から尾根ルートが南に振る


赤城尾山 (三等三角点「赤城尾」1,436.03m)

行者山の南斜面を下り出すと自然林の疎林帯が現れる。コル部近くでは一部に植林が見られたが直ぐに消滅した。この辺りでは県
境を示す石標や黄色のプラスチック杭も立っている。
行者山から赤城尾山の間には2つのピークを越えて行くのだが、14時00
分その最初のなだらかなピークを越える。

この最初のピークは先に小さなピークを持っていてブナが現れる。その後、ヒメシャラなどの雑木が密生する尾根を抜けた辺りで
少し休憩し、上り傾斜に向かう。

  
  下り斜面にもブナが結構ある            少しだけ植林っぽい場所が出てくる

  
行者山を過ぎて境界石標の立つ最初のピークを越える    下りになると前方が開けて行者山が姿を見せる

  
 尾根を下る 黄色いプラスチック境界杭が現れた     コル部から上りになるとブナが黄葉している

  
 最初のピークに付随した小ピークを越える        こんなコンクリートの境界杭もある
 
  
  灌木にヒメシャラが混じる              14時15分 ちょっと休憩


赤城尾山・北斜面の岩尾根群が面白い

14時23分赤城尾山の手前にある2つ目の1,346mピークを越える。すると山容が穏やかな尾根からガラリと変わり厳しい
赤城尾山の一面を見せる。以前「高松山の会」の久米さんから「赤城尾山は厳しい岩場もあって美しい所です。是非行って下さい」
とよく言われていたが、その山域に来た様だ。


  
 14時23分 赤城尾山手前の1,346mピークを通過      いよいよ細尾根が始まるぞ  ワクワク

14時30分細尾根の岩山ピークを一つ越える。この下りは垂直に近い崖になっておりザックが重たいので慎重に下る。その後も
2つ目、3つ目と岩尾根が現れる。3人共普段からこんな場所を歩き慣れているのと、灌木が適当に立っているので少しの緊張感
があって楽しい。見晴が良い場所から振り返って石立山を眺める。


  
  おぉ〜  岩尾根じゃん                        面白いっすねえ

  
  ガクちゃん お得意のポーズ                     うへ〜〜  崖じゃん 結構高いでおます


     14時35分 最初の岩ピークをクリアする

  
  次の岩山へ向かう                               楽しいっすね

  
落ちたらあかん〜♪ 墜ちたらアカン〜 ?             14時45分2番目の岩山をクリア〜〜

  
  尚も岩尾根は続く                           コル部に下る

  
  で・・・ 又 這い上がる                        14時55分 アトラクションが終わりを告げる 

14時55分前方に赤城尾山の本体が現れるが、今歩いている岩山と違って穏やかな山の印象だ。リョウブやブナなどの細い灌木
帯を緩やかな傾斜に沿って上ると15時13分「赤城尾山」の三角点峰に到着した。

山頂は小さ目の天然杉やリョウブなどの雑木に囲まれた広場となっており、展望は行者山程良くないが絶好のビバーク地だった。
雰囲気の良い山頂で10分程休憩する。
体力が有り余った北川君の「あわよくば西又山まで」との淡い希望は年寄り二人によって
脆くも打ち砕かれ、ガクちゃんが当初予想した通り駒背山がビバーク地となる様だ。


私も単独ならば早朝日和田を出発して水場のある太助山西又山までの行程にするのだが、老獪なガクちゃんが「事前に水は湯
桶丸においちょくき」の言葉に「褒めよ称えよガクガクツアー計画」に従うしか無かったのだった。



   石立山を振り返る  県境尾根の一部が見える


    見上げる赤城尾山は樹木に囲まれて穏やかな印象だ

  
  急斜面だがもう岩山では無い                     15時05分 穏やかな尾根になる

  
  なだらかな灌木の並木道を山頂へ進む             15時13分 赤城尾山三角点を踏む


              三等三角点「赤城尾」 1,436.03m

  
    さて ビバークは駒背山辺りかな                 今回 最初の三角点「赤城尾」


駒背山までに大崩壊地が2ヶ所ある

行者山から赤城尾山を経て駒背山まで西側は物部川の支流「杉熊川」の谷が迫り、東側は那賀川の支流「千本谷」が延びて文字
通り物部水系と那賀川水系の分水嶺となっている。
赤城尾山から尾根ピークが少し東側に振った後、南側へと続く。

15時25分赤城尾山を出発し東の肩まではなだらかな尾根にブナやヒメシャラが点在する美しい眺めが続く。15時38分赤城
尾山の東肩に出ると前方の尾根が右手の南方向に曲がって行くのが見える。尾根は杉熊川と千本谷が迫る細尾根になり、こんな場
所では多少岩っぽい姿となる。


赤城尾山から駒背山までにも2つの主なピークがあるのだが、左手はびっしりと樹林が立ち並び、右手は疎林の尾根を登って行く
と15時58分最初のピークを通過する。
すると左手が大崩壊した絶壁となって千本谷に落ちている。崩壊地の向こうに見える
山は林道などからして池野河山だろう。その後は何事もなかった様に自然林の細尾根が続き、紅葉が西陽を浴びて橙色に輝く。

  
このツアーは結構休憩が多い              15時25分赤城尾山を出発 南へ向かう


           ブナとヒメシャラの平和な尾根


    岩山の緊張感が解けて夜のビールを思い浮かべながら歩く二人

  
   ブナの黄葉が輝く                 ヒメシャラ林の陽だまりを歩く

  
  ブナの立つ風景はいい             15時40分 赤城尾山の東肩部から尾根は右手に曲がる

  
  アセビとリョウブの尾根                コル部に向かって下る

  
 コル部を細尾根が繋ぐ                 尾根に岩がゴロゴロしている セメントの境界杭

  
  最初のピークへゆるやかに登って行く         15時58分 最初のピークに上がる

  
  はれ〜〜 こりゃまた凄い崩落じゃわい        尾根は広いので歩行に問題はござんせん

  
崩落地から千本谷を挟んで見える山は池野河山だろう    何事もなかったような尾根が続く

16時18分県境杭が立つ2つ目の1,263mピーク(駒背山手前のピーク)に着く。
そのピークからの下りになるとヒメシ
ャラが群生しており周りの色が茶色になる。こんなヒメシャラの群生は天狗の森から大引割へ行く途中にあるヒメシャラの並木道
しか見たことが無い。


前方には駒背山ピークの肩部が見える。駒背山の山塊は南北と東西に逆L字の形をしており、山頂は県境尾根主稜線から少し西側
に外れた場所にある。
16時30分南側の肩部に上がると左側斜面が大崩壊をしている。先程赤城尾山を過ぎてのピークにあっ
た崩落部と全く同じ場所かと疑う程良く似た崖だった。


  
16時18分 駒背山分岐尾根手前の1,263mピークを通過    16時20分 ヒメシャラの群生地を歩く
 白い境界杭と境界標石が置かれている

  
 駒背山分岐付近の南肩部が近づく                 ブナとヒメシャラが西日に輝く

  
16時30分 南肩部に上がる                     肩部に上がると又左斜面が大崩落している

  
大山では尾根の両側がこんなになっている ここは片側だけ   尾根が右手に回り込む


駒背山 1,311m

16時40分駒背山への平らな東肩県境部分岐に着いて、この付近がビバークに適した場所だと言いながらも、鹿が集まりそうな
場所だったので一応駒背山までザックを担いで行く事にした。駒背山は県境尾根から西に少し外れた尾根上にあるピークで、恐ら
く馬の背みたいな尾根の形から名付けられたのだろう。その馬の背みたいな細長い尾根に入ると左手にはほぼ干上がっているが池
の様な窪みがある。

  
 16時40分 駒背山分岐に着く          西側の駒背山へ向かう尾根の左手が窪地の池になっている

  
 駒背山のピークに向かう                16時50分 駒背山の山頂に着く


16時50分平らな駒背山の山頂に着く。県境から西の高知県安芸市に属する山である。夕日が丁度西に沈む直前だった。3人で
ビバークを検討するがどうも西風をまともに受けるし、木の根や傾斜があって3人のビバーク地は先程通過した県境分岐の方が良い
と言う結論になって引き返す。県境分岐から駒背山を経て西に延びる尾根は高知県の
物部川伊尾木川(安芸市に流れる)の分水嶺
になっている。


  16時50分 高知県の山「駒背山」に着く  丁度西陽が山際に沈む所だった

  
  明日進む西又山方面                        県境尾根へ引き返す

  
  県境尾根に復帰する                         さて、ビバーク地を探そう!!

駒背山分岐でビバーク

17時05分風の当らない分岐付近の窪地をビバーク地とした。テントが3つもあれば鹿も近づかないだろう。三者三様のザック
を肩から下す。
ガクちゃんはマウンテンハードウェアのザック50Lで総重量16kg北川君はオスプレーのイーサー 70L
総重量は 19kg
エントツ山はグレゴリーのオプティック58Lで 総重量は 13.5kgだ。

若くて馬力のある北川君はテントからして2.5キロの装備だからザックも大きくて重い軽量化の為ツェルト装備の私とガクちゃ
んの重量差は酒と食糧にかわらん
初めから自己流山歩きの私は食べ物などは下山してから何ぼでも食べれると質素な食糧で朝、昼
は歩きながら行動食を食べる。一方、ガクちゃんと言えば山岳部育ちの為かきっちりと休憩を取ってリッチな食事と酒を楽しむ。
だからガクちゃんからすれば私の山歩きは「いらち」に見えるらしい。

北川君はそんな年寄り二人の会話をニコニコ笑いながら聞いてくれる気のいい後輩だ。ただし分水嶺歩きで鍛えられた尾根歩きは持
ち前の体力もあって逞しく既に我々を凌駕している。



左からgakugaku さんのマウンテンハードウェア  50L 大きなフロントポケットは便利だ    総重量 16kg
    S.Kita さんのオスプレー イーサー70L オーソドックスなアルプス縦走ザックだが・・・  総重量 19kg
    エントツ山はグレゴリー オプテイック58L 1.2kgしかないULザックだ          総重量 13.5kg 

ベテラン・ガクちゃん バーナーを忘れる

さて、今回はガクちゃんより共同装備は無し!テントやガスは各自装備の事と指示があった。各自寝床を作る。

北川君はニーモの大きい自立式テントを張る。私は例のモンベル・モノフレームシェルターだ。ガクちゃんは渋くモンベルのツェル
トをストック利用でテキパキと張っている。自在も器具を使わずガイドラインで器用に作っている。 「さすがやなあ」と褒めると
「ベテランですから」と得意顔だ。ツェルトを見るとやけに太っ腹な形状なので中を覗くと中央部にインナーポールを固定出来る様
に改良して広い空間を作っている。「凄いねえ」「ベテランですから」


各テントの間にガクちゃんがガスランタンを出して来て灯す。貴重なガスで灯りを作るって発想は私には無いが、ガクちゃんに言わ
せると冬季はツェルト内を温める為にも便利だとの事。確かにガスランタンの光は
LEDより柔らかくキャンプの雰囲気を醸し出す。
ガスランタンの手配を褒めると「ベテランですから」


さて、食事の準備になってガクちゃんが「あれ?・・・ アレ?  あれ〜〜〜〜?」と段階的に声のボリュームが上がる。「どう
したん?酒でも忘れたん?」「ジェットボイルのストーブ部分が見つからん! 入れ忘れたにかわらん」そこで私と北川君で「ベテ
ランじゃけんのう」とお返しをする。
まあ、単独山行なら悲惨な夕食になる所だがグループだと何の問題も起こらない。

乾杯をして各自自由な夕食を摂る。私はカップ麺一つとビスケット、二人は何やらカロリーの高そうな食事をしている。
さて、翌日は何処まで歩けるかなあと考えながらシュラフに入る。


奥から S.Kita さんのニーモ ダブルウォール 自立式テント  2.5kgほどの重量らしい
       gakugaku さんの モンベル ツェルト インナーポールは自作  非自立式ツェルト インナーポール込みで約500gと思われる
       エントツ山の  モンベル モノフレームシェルター  非自立式シェルター 650g


  
  「カンパ〜〜イ」(酒飲み) 「知るか〜」(下戸)        ランタンは灯(とも)る バーナーは自宅に忘れちゅうにかわらん


縦走2日目 駒背山分岐ビバーク地〜太助山〜高ノ河山〜西又山〜甚吉森〜うお山〜おばけ杉〜県境分岐〜湯桶丸(ビバーク) は  ここ

縦走3日目 湯桶丸ビバーク地〜金瀬〜上越峠〜神戸丸ピストン〜吉野丸〜鰻轟山〜霧越峠 は   ここ


        
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