大山・地獄谷から振子沢、ユートピア小屋、大休峠から船上山周回(1泊2日)

第1日目:一向ヶ平〜大山滝〜地獄谷〜振子沢〜ユートピア小屋
第2日目:ユートピア小屋〜振子山〜野田ヶ山〜大休峠〜矢筈ヶ山〜甲ヶ山〜勝田ヶ山〜船上山



縦走2日目 令和元年(2019年)11月10日(日)
ユートピア小屋〜振子山〜野田ヶ山〜大休峠〜矢筈ヶ山〜子矢筈〜甲ヶ山〜勝田ヶ山〜船上山 (約10時間35分)


カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図 2日目:ユートピア避難小屋〜船上山 (伊予の鈍亀さん提供)


ユートピア避難小屋より2日目縦走開始

05時過ぎに入り口のドアが開き男性が入って来た。てっきり昨夜から泊まっている人が夜景でも撮りに行って小屋に帰って
来たのかと思った。しかし履いている登山靴が違うので聞くと朝日を撮りに大山寺からヘッドランプ頼りに霧の中を登って来
たと言う。世の中には
kurenaikai さんみたいなマニアックな人が居るものだ。

05時30分窓から外を覗くと霧が少し晴れて来た様なので小屋を出てみる。街の灯りが弓ヶ浜の湾曲に沿って見える。星が
少し見えるので短い簡易三脚をセットするが、低すぎて草が邪魔をして撮影が出来なかった。太陽が出てくる東側は残念なが
らガスが湧いている。それでも剣ヶ峰や三鈷峰は良く見えたので良かった。


  
三脚が低すぎて草木が入って星が見えない              未明の弓ヶ浜

  
角度的に朝日はもっと右手から上がる様だ  ガスが湧いてくる    三鈷峰  左奥は孝霊山


        ユートピア避難小屋から朝日を浴びた大山主峰を眺める


行程1)ユートピア小屋〜振子山〜親指ピーク〜野田ヶ山〜大休峠 約2時間35分

振子山〜親指ピーク〜野田ヶ山 (西斜面は崩壊気味の崖




          06時20分 ユートピア避難小屋を出発する  


  振子山・大休峠分岐付近からユートピア避難小屋を振り返る  バックに三鈷峰と孝霊山
  

振子山(1,452mP)へ

06時20分振子山へ向かって出発する。途中までは昨日這い上がって来た尾根を白い分岐ポールまで下る。06時37分
分岐ポールまで下ると辺りは明るくなったが、振子山へ近づくころにはガスが次第に湧いて来た。天気予報が悪くなくても
山の天気、特に霧に関しては予想が付かないものだ。振子山付近の尾根筋は崩壊が進んでおり登山道近くまで崩落が延びて
来ている場所もある。要所にはロープが置かれてはいるが注意が必要だ。


07時10分振子山の目印になる尖った岩を通過する。この岩を左へ回り込むようにして尾根道が北側へ曲がってからも崩
壊した荒れ尾根沿いを進む。


暫くすると前回縦走時にビバークした見覚えのある場所を通過した。何しろこの尾根にはここしかツェルトを張る場所が無
かった貴重なスペースだった。


06時27分 正面に振子山に向かって下って行く  前方の白いポールが振子沢との分岐になる

  
 昨日歩いて来た尾根筋を白いポールまで下る       右手が昨日這い上がって来た振子沢 左奥が振袖山

  
右上の象ヶ鼻に小屋であった二人が居る          06時37分 振子沢〜ユートピア〜振子山分岐を通過



  分岐付近から見上げる大山東壁  キリン峠から天狗ヶ峰までの槍尾根全景が見える

  
 振子山への縦走路 両サイドは灌木に覆われている    ガスが湧いてきた様だ

  
 朝出発したユートピア避難小屋を振り返る         振子山の肩  左手が切れ落ちている様だ

  
 尾根の左手斜面が抜け落ちている             振子山は霧の中

  
藪尾根の左手、崩落地を通る              07時10分 振子山目印になる岩峰を回り込む

 
 07時15分 振子山を過ぎると崩壊尾根と藪をちらバースして急な傾斜をロープで下る

  
  懐かしいビバーク地を通る             前回はここに無理をしてツェルトを張って寝た
 
 

親指ピーク
 (約 1,330m)

その後、ロープ伝いに厳しい斜面を下って行くと霧の中に尖ったピークが見えた。07時35分尖塔岩の基部に着くとやけに細い
岩尾根が現れる。亀吉さんが「これ上るの?」と不安げに聞くが私は既に上った事があるので「行くよ〜」と答える。ロープも付
設された急な細尾根を這い上がると07時42分岩が立つ山頂部に着いた。左手斜面を覗くと下側の谷筋が霧の間から見えた。

親指ピークは南側の振子山(1、452m)と北側の野田ヶ山(1,344m)との間を繋ぐ細尾根上に立つ標高約1,330m
程の小ピークだ。その為、振子山や野田ヶ山から見る親指ピークは下側に有るので余り迫力が無い。

右手(東側)には加勢蛇川(かせいちがわ)の支流、大休谷と野田滝の上流部の谷が迫り、左手(西側)は阿弥陀川の上流、東谷
が切れ込み三鈷峰と対峙する。

  
 左手は鋭く切れ落ちた崩壊崖となっている
          急傾斜を下る場所にはロープが付設される

  
  ロープのお世話になって急傾斜を下る             ボ〜〜っと尖がりシルエットが霧に浮かぶ


    前回、天気が良ければこう見える      奥が野田ヶ山      右奥が甲ヶ山


            直下から見上げる親指ピーク

  
 テムレスの手袋を履いて亀美さんが這い上がって来る     07時42分 親指ピークの山頂部へ着く

    
 ピーク付近は右側にトラバース路がある            親指ピークを過ぎても岩ピークがある

  
 親指ピークの西側には東谷が切れ込む              親指ピークから15分程歩くと縦走路は安定する


    天気が良ければシリーズ :北側から眺める親指ピークは余り迫力が無い
  

野田ヶ山(のだがせん) 1,344mP

灌木の荒れた尾根を抜けると次第に尾根が安定して歩き易いブナ林となる。基本的には細尾根が暫く続くので縦走路は尾根部を
少し右手にトラバースして付けられている。するとブナのシルエットが多くなり08時20分、右に急カーブする場所のブナに
「野田が山」と標識が掛っている。ここから大休峠へ尾根が真東方角に振る曲がり角だが特にピークとしての印象は薄い。

  
  灌木のトラバース道を進む               尾根筋の縦走路にブナが多くなる

  
  
08時20分尾根道が右に曲がる  木の杭が見える         傍にあるブナに野田ヶ山の標識が掛けられていた
 
   
 大山にはイヌツゲの群生地が多い                   湿気が多いゆるやかな灌木の下り坂が続く

  
 この辺りは笹が足元を覆う                       明るい灌木帯の下り


大休峠 (おおやすみとうげ) 約 1,112m

野田ヶ山(1,344m)から大休峠(1,112m)まで灌木のなだらかな尾根を下る。尾根筋は単調過ぎる程一直線に東
へと下る。傾斜が緩くなると湿地帯の様な平らな地形となり08時55分大休峠避難小屋に着いた。


大休峠避難小屋は中国自然歩道の峠部にあるので外見も綺麗で小屋の中も広くて快適そうだったので少し朝食休憩を取る。バ
イオトイレもあるらしい。水場は少し一向ヶ平方面に下がった所にあるそうだが、亀吉さんの確認ではあまり良い水は保障さ
れていない様だ。


  
  大休峠付近は湿地帯みたいに水が出ている          08時55分 大休峠避難小屋に着く

  
  避難小屋の内部は清潔そうだった                      野田ヶ山方面はガスの中


行程2)大休峠〜矢筈ヶ山〜小矢筈〜甲ヶ山〜勝田ヶ山〜船上山〜船上山下山口 約7時間40分

09時15分大休峠を出発して灌木の急登を進むと笹薮になり、正面に1,300mピークが見える。振り返ると少しガスが
飛んで振子山とユートピア小屋が見えるが大山本体はまだガスに包まれていた。1,300mピークは云わば矢筈ヶ山の長い南
側の肩部でブナが立ち並ぶ美しい場所だった。ここから前方の矢筈ヶ山に向かってブナを眺めながらひたすら歩く。


  
09時15分 大休峠を出発する                    いきなりの急登りが始まる

    
 1,300mの肩は下から見るといい形をしている         結構深い笹が登山道に生えている

  
   剣ヶ峰方面  振子山   野田ヶ山               ブナの急登を喘ぐ

  
 09時50分 1,300mピーク(矢筈の南肩)に上がる       尾根斜面にはブナが群生している

    
  ブナ林の尾根の向こうに矢筈ヶ山が見える           ブナの尾根をドンドン進む

矢筈ヶ山  一等三角点「双子山」1,358.43m

ピークに近づくと植生が変わりイヌツゲとダイセンキャラボクの低木群生が登山道の両脇に現れる。そこを抜けると一挙に西側
の展望が開ける。すると10時30分矢筈ヶ山に到着した。西側の大山付近は天気が良いのに白く厚い雲に覆われているが、北
側の甲ヶ山は右手の小矢筈と共に日本海まで良く見えている。


ここには一等三角点があるのだが点名の双子山は一向ヶ平付近から見た双耳峰の形から名付けられたのだろう。ここに来てみる
と矢筈ヶ山はデカくて小矢筈は稜線上の小さめのピークなので双子と言うよりは親子って関係に見える。


  
 矢筈山に向かって明確な道が続く                  ダイセンキャラボクが出てくる

  
  最後はやっぱりイヌツゲか〜〜                    あちゃ〜  大山方面は雲の中やんけ

 矢筈ヶ山より南側の眺め

  晴れていればこんな風に見える (前回の記録写真より)


        10時30分 矢筈ヶ山の三角点峰で記念撮影〜〜

  
   一等三角点「二子山」=矢筈ヶ山                伊予の鈍亀さん達は初めての山となる


   天気が良ければ・・・・矢筈ヶ山からの大パノラマが烏ヶ山〜弥山が一望出来る

この北方稜線の西側には甲川(きのえがわ)が大休峠辺りを源流にして北に流れている。その甲川の谷が矢筈ヶ山と小矢筈の尾
根に鋭く切れ込んでいて尾根が右に湾曲しているので甲ヶ山へ進むには一旦右側に見える小矢筈へと向かう事になる。
小振りな
三角錐をした小矢筈へ細尾根を下って行きコル部へ近づくと、この山も親指ピークの様に鋭い岩峰だとわかる。


小矢筈は確かに厳しそうな岩峰だが、大山・槍ヶ峰みたいにボロボロの岩屑崖では無い。上部で大岩をロープ頼りに這い上がる
難所があるが岩がしっかりしているので注意すれば問題ない。以前は山頂へ行った後、トラバース路を歩いたが今回はザックを
持って山頂へ進む。10時58分ほぼ山頂まで這い上がってイヌツゲが生えた稜線の細尾根を進むとワイルドだがちゃんと下る
ルートがあった。




            小矢筈と日本海    親指ピークは霧の中だったけど小矢筈は良く見えた


  矢筈ヶ山から少し下ると小矢筈から甲ヶ山への尾根ルートが見える

  
 矢筈ヶ山から小矢筈への細尾根は少し荒れている       下るにしたがって小矢筈の形が立ってくる   


              小矢筈と甲ヶ山

  
 左手に甲ヶ山を覗きながら小矢筈の岩尾根を這い上がる   岩場だが灌木が生えているので安心感がある

  
 この岩場辺りが難所だろう  (前回のHP写真より)      山頂へはスラブ岩をロープ伝いに這い上がる (同左)

  
  小矢筈より矢筈ヶ山を振り返る                     小矢筈山頂より甲ヶ山

  
 小矢筈の北肩へイヌツゲの細尾根を進む            小矢筈の北肩より矢筈ヶ山を振り返る


      小矢筈の北端より甲ヶ山とそれに続く尾根を眺める

甲ヶ山(かぶとがせん)1,338m

矢筈ヶ山あたりからずっと甲ヶ山の南壁が見えるのだがまさに岩の鎧だ。11時20分小矢筈の北端に出て北側へ下るルートを
眺める。藪っぽい急傾斜だが大丈夫だろう。11時30分コル部まで下ると今日初めて霧が晴れた大山の東壁が見えた。眼前に
迫る甲ヶ山の岩峰は鬼の角の様に2つに裂けて見える。
11時40分縦走路は甲ヶ山の正面突破を避けて右手に回り込む。つま
り東側斜面の岩場に取りついて山頂へと至る。



        小矢筈と甲ヶ山の稜線部から大山東壁が今日初めて見えた〜〜

  
 甲ヶ山の正面に見える岩壁はトップが2つに割れている様に見える   南側へ回り込むにつれて二角獣となる

  
    小矢筈         矢筈ヶ山  を振り返る        ここにもダイセンキャラボクが生えている

  
11時40分 甲ヶ山の右手岩場に出る                最初の滑りやすい岩場にはロープが付けられている

  
       東斜面を斜めに上がって行く               左手には岩場が並ぶ  これを避けて斜め右へ進む


          中腹辺りは安定した岩場を上がって行く


           東側の矢筈川に沿って美しいブナ林の風景が広がる

甲ヶ山の東側は勝田川の支流、矢筈川のなだらかな源流域にブナだろうか白っぽい黄葉が広がって美しい。這い上がる岩場は確
かに急傾斜だが足場がしっかりしているので危険は無い。東面の厳しい崖を避けて右手の岩場伝いに12時08分山頂部へ上が
る。


丁度無口な男性単独登山者がやって来て山頂標識近くに座って行動食休憩をされたので山頂写真は撮り辛かった。我々も気を付
けなければいけない事だが、山頂で休憩や食事をする場合はなるべく山頂標識近くは避けた方が良いと思う。



    12時08分 甲ヶ山山頂に立つ  南側はガスっぽいので展望が余り無い

    
    小矢筈            矢筈ヶ山              甲ヶ山の南側は岩場まで細尾根が続いていた


    西側の甲(きのえ)川に沿っても美しい紅葉が広がる


ゴジラの背中

甲ヶ山の南側は大きな岩壁になっているが、北側の細尾根はイヌツゲが斜面に生い茂り、稜線部には岩が露出している。これが
甲ヶ山の「ゴジラの背」と呼ばれている場所だ。


12時20分伊予の鈍亀さん達がゴジラの背に取り付く。岩場の北端には二人の若者がのんびりと昼食を取っているので少し緊
張感が薄れる。このゴジラの背には一ヶ所危険な岩の段差がある。そこにはボルトでフィクスロープがあるのだが、同時に意味
の分からないロープが2本ほど岩伝いに延ばされている。岩を下りる時にロープが足に引っかかり余計に危険な気がした。


15分程でゆっくり岩場をクリアして昼食休憩を取る。若者達は船上山から甲ヶ山をピストンしていると言う。今から下って行
く尾根を眺めると、当然の事ながら地図で見る以上に蛇行して下っている。20分程休憩の後、12時57分イヌツゲの間に伸
びる尾根道を下る。


  
 甲ヶ山より北側へ向かう  孝霊山と弓ヶ浜が見える       イヌツゲと大山キャラボクの細尾根を北へ向かう

  
  行ってらっしゃ〜〜い                        黙々と進んでいる


   鈍亀さ〜〜ん  そこからが勝負どころやで〜〜


    下から見るとゴジラの背はこんな感じ


     ゴジラの背中を歩いたイノシシ  


  甲ヶ山・ゴジラの背より野田ヶ山 と 船上山 を眺める


「香取分岐」

13時07分「香取」と書かれた分岐標識が左手にある。このルートを後でネットで調べると、尾根から別れて真西方向に甲川
(きのえかわ)まで下り、更に西側の旧道へ至る「甲ヶ山直登ルート」があるらしい。


  
 甲ヶ山も北側から見るとフツーのピークやねえ          13時07分 「香取」と書かれた分岐がある


ネットで調べると 甲ヶ山の北側尾根から真西の甲(きのえ)川へ向かって下りるルートがあるらしい 
登山口の北側に「香取」という地名がある  むらくもさんも以前このルートを歩いている


勝田ヶ山  四等三角点「勝田山」 1,148.88m

その後、余り枝振りの良く無いブナが雑然と生い茂る尾根登山道をどんどん下る。前方にピークらしき肩がみえて又イヌツゲが
現れる。
13時45分尾根ピークが右に回り込むと南側が開けて甲ヶ山や大山方向が見える。北側から見上げる甲ヶ山は迫力が
無いフツーの尾根ピークだ。この辺りが標高1,210mの勝田ヶ山なのだが、山頂標識を見つける事が出来なかった。


少し灌木ヤブを滑りながら10分程三角点「勝田山」(1,148.88m)と出合う。やはり山の名を冠した三角点はピーク
にあって欲しいなあ。


  
  ブナが沢山生えた尾根を下る                    前方に勝田ヶ山が右に突き出ている

  
  勝田ヶ山が近づくとやはりイヌツゲが現れた               甲ヶ山を振り返る  右奥は大山東壁

  
  13時40分 勝田ヶ山の山頂付近を通過する         以前はこんな山頂標識があったのだが今は見つからない

   
  この辺りが勝田ヶ山の山頂にしときましょう            コーナーを左=北に向かって下る

  
 コーナーより北に10分程下る                     三角点「野田山」を踏む


    13時55分 四等三角点「勝田山」 1,148.88m


笹藪の中に続く尾根道

勝田山三角点を過ぎるとクマザサが繁る尾根道となり足元が濡れているので滑る。船上山までかなり距離があるので忍の一字で
笹を掴みながら黙々と下って行く。
ガスで青空が無いが自然林の紅葉が美しく、単調な笹原を歩く励みとなる。

  
 三角点を過ぎると前方が少し開ける                14時00分 熊笹が尾根にす〜〜〜っと生い茂る 

  
  紅葉がボツボツ現れる                         深い笹が続く

  
        頭上に現れる景色を眺めていると・・・           必ず誰かが滑る  え? 私だけ?

  
  船上山には少し右に曲がる                     ホンマに笹道がよう続くもんじゃのうし


四等三角点「大流」 940.76m

14時40分平らな尾根の分岐に三角点が現れる。三角点の存在は単調な尾根歩きで良いチェックポイントとしての刺激剤とな
る。それに尾根の分岐などにそれが有るとルート上の良い目印にもなる。この場所からブナと紅葉越しに甲ヶ山を眺めた後、右
手の尾根に向かって船上山へ下って行く。


  
  14時40分 前方に三角点がある                四等三角点「大流」


   雲がかかっているので大山なのかよくわからない

すぐに「甲ヶ山」と「天王屋敷」の分岐標識がある。天王屋敷とは恐らく天皇屋敷の書き間違いだと思うが後醍醐天皇の屋敷
があったと思われる場所の事だろう。しかし、別の場所にも「船上山行宮跡」という場所もある。「行宮」(あんぐう)とは天
皇の仮御所の事で「行在所」(あんざいしょ)とか「御座所」とか呼ばれる場合があるそうだ。

後醍醐天皇は鎌倉幕府を倒そうとして失敗し隠岐に流罪となる。その後、隠岐から脱出して地方豪族の名和氏に庇護されてこの
船上山に80日程留まったらしい。その時の仮住まい、天皇屋敷跡と天皇行宮跡は元来同じ物であると思うが、恐らくその屋敷
跡が明確で無いって事だろう。おまけに後醍醐天皇行宮記念碑と言う場所もあって訳が分からん。


後醍醐天皇は社会科の歴史で良く目にした人物なので記憶にある人だが、武士の台頭に我慢が出来ず、反旗を翻し隠岐に島流し
に遭い、それでも脱出して船上山に立てこもり名和氏などの武力で京都へ帰還する。そして足利尊氏や新田義貞らの武士の助け
によって鎌倉幕府を打倒する。その後めでたく表舞台に立って行った建武の新政がうまく行かず結局武士の足利尊氏が離反し
日本史に南北朝時代を作ると言うバイタリティ豊かで波乱万丈な野心家みたな天皇のイメージだ。


船上山」は隠岐への島流しから建武の新政へと起死回生の逆転人生を歩んだ出発点として地元では売りにしている歴史ロマン
の地だろう。しかし又、古期大山の火山活動によって流れた溶岩の北端にあたり、柱状節理の断崖上には大規模なブナの原生林
が残されている。笹原の中に立つブナ林は紅葉の時期を少し過ぎてはいる様だがまだまだ美しい。15時00分珍しくナツツバ
キの大きな幹が鹿の子模様で立っているのに出会うと直ぐにブナの巨木が枯れて立っていた。尾根道には微妙な起伏があり窪地
を挟んで綺麗なブナ風景を笹原に入って撮影する。


  
  天王屋敷跡(左)への分岐標識                    快適な自然遊歩道

  
  船上山の秋は素晴らしい                       特に左手に谷があり地形に変化がある森だ


        少し遊歩道を離れて左手に踏み込む


      15時00分 でかいナツツバキに出合う


    船上山では紅葉を堪能する


                枯れてはいるが偉大なブナだ


相変わらず笹とブナ林の紅葉を楽しみながら遊歩道を進んでいると前方に神社の屋根が見えてきた。15時45分建物の前に出
ると、標札がありここは元々開山者の知積仙人の名を取って僧坊が52を擁する「智積寺」があり、大山・三徳山と共にこの船
上山を加えて「伯耆(ほうき)三山」として山岳仏教で栄えた地だったと記されている。明治時代の神仏分離令(神仏判然令)
によって船上神社と改称されたとある。この辺りは平坦な森で、その中に智積寺の遺構跡が散らばっている。


  
     笹原の中に続く遊歩道を進む                15時43分 神社の建物が見えて来た

  
  船上神社の裏側から入って行く                      船上神社の表側に回ってお参りする


三等三角点「船上山」 615.44m

船上山は細長い尾根なので下山まではまだ遠い。細尾根の遊歩道を東に進んで前回踏み逃した三角点へ行く。スマホ地図を頼り
に遊歩道から左手に外れて16時05分無事三角点を踏んで亀吉さんと握手する。


  
  神社からは広い遊歩道となる                    16時03分 最後の三角点「船上山」に着く


      二日間よう歩きました  お疲れさん  でもまだ下山まではかなり距離がある
  

三角点から続く道が地図の破線通りだったので少し北側へ向かってジグザグに下る。粘土質の道部分が非常に滑りやすくヒヤヒ
ヤしながら歩く。登山道の両側が深い笹に覆われた登山道を下って行くと柱状節理の崖下に伸びるスロープに出る。以前、事前
調査に来た時は美しいススキに覆われていた笹原にはほぼススキは無くなっていた。ここで後続の若者グループが我々を追い越
す。

  
  船上山 東坂登山道を下る 左に振るので不安になる   その内 右に道が振って安心する     

   
船上山のドーム  ここのスロープにススキが沢山生えてたんだけど   舗装道路(環状道路)に向かって下る

16時35分下の舗装道路に着くと先程のグループがヘトヘトになり帰り支度をしていた。聞くと関西方面から来て、大山寺を
未明に出発しユートピア小屋〜大休峠〜矢筈ヶ山〜甲ヶ山〜船上山へと縦走して来たと言う。舗装道路から遊歩道へ下りて大鳥
居を潜って16時55分少年自然の家駐車場にデポしていた私の車に帰り着く。


  
 16時35分 大山環状道路に下り着く 大阪から来た登山者     船上山ドームを眺めながら道路を少し下る



  
  船上山ダムへ向かって遊歩道を下る                勝田川水系のロックフィルダムだ


 16時54分 二日間の縦走を終えて船上山ダム下にある少年自然の家駐車場に帰り着く  車が下に見える
  
   

地獄谷を歩くと言う私と伊予の鈍亀さんの目的が達成されて、ユートピア小屋から船上山まで快適な古期大山を一緒に歩く事も
出来て楽しく思い出深い1泊2日の旅となった


第1日目:一向ヶ平〜大山滝〜地獄谷〜振子沢〜ユートピア小屋 は ここ  

平成29年10月31日〜11月1日 烏ヶ山から振子沢〜振子山〜大休峠〜矢筈ヶ山〜甲ヶ山〜船上山を歩いた記録は  ここ  


  
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