高縄山系縦走 2泊3日 (反時計回り)

福見山〜明神ヶ森〜白潰〜東三方ヶ森〜五葉ヶ森〜楢原山〜伊之子山〜北三方ヶ森〜高縄山〜大月山

プロローグ

高縄山系とは


 高縄山系は 松山市、東温市、西条市、今治市に囲まれた高縄半島の中央部に位置する山々である

愛媛県新居浜市で中学校時代、金子山の西側の山々が白く染まり冷たい風が吹いてくる。正体は西条市の向こう、壬生川(にゅうがわ)
辺りの一塊になった山である。


高縄半島は愛媛県の中央部、石鎚山系と中央構造線を挟んで北側に飛び出た半島で、松山市、今治市、西条市、東温市に属する。愛媛
県は虎が走る形をしているが、丁度その頭の部分にあたる場所で,半島というイメージより競りだした陸地って感じ。半島の名前はその
盟主「高縄山」から由来する。
この古い風化花崗岩帯には500m〜1000m程の山々が連なっており、それを総称して高縄山系と
呼ばれる。


平野部が少なく山深い場所柄昔から宗教色が強く、高縄寺・楢原神社・福見寺・黒滝神社等を中心とした修験者が歩いた山々として、
或いは木地師が活躍した山々として知られている。


山と渓谷社の「四国百名山」には高縄山(986.0m)、楢原山(ならばらさん)1,041m,明神ガ森(1,216.9m)、
東三方ヶ森(1,232.7m)の4山が選定されている。

高縄山系縦走を検索してみると、北側では四国の道を利用した幸次ヶ峠〜大月山〜高縄山〜北三方ヶ森、南側では福見山〜明神ヶ森〜
東三方ヶ森の2パターンが殆どで、その北側と南側のラインを繋いで歩いた記録は無い。


個々に登山口があり既に登った山ではあるが、ここを繋いで縦走したいと以前から考えていた。地図でルートを検証するに、少し土地
勘のある福見山からスタートし、明神ヶ森〜白潰〜東三方ヶ森、そして尾根を北に進んで五葉ヶ森〜楢原山〜北三方ヶ森〜高縄山〜
大月山と周回するコースが良さそうだ。大月山で時間的な余裕があれば南に向かって尾根を下るか、時間がなければ車道に下って九川
〜東川〜福見川沿いを通って出発点に帰る事が出来るのだ。


この縦走の実行は今年の秋として、その前に那賀山地を同じく2泊3日で縦走すべく4月5日午後徳島へ向かう。四季美谷温泉を過ぎ
て奥へ進んでいると突然の通行止めに遭い、敢え無く計画が頓挫する。家人には3〜4日程山に籠るからと予定地図を渡してある。
う〜〜ん そこで行先を急きょ高縄半島の縦走に切り替える事にした。


高縄半島の位置 四国の西部に突き出た半島で松山市、今治市、西条市、東温市に囲まれている


高縄山系縦走ログ図 2泊3日

カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図  高縄山系縦走図




  テント: モンベル モノフレームシェルター   780グラム  ポール、ペグを含む


 ザック: オスプレー レヴィティ45  830グラム  、モンベルショルダーバッグ 200グラム



第1日目 平成31年4月6日 (土)

福見川・三本杉登山口〜福見山〜明神ヶ森〜白潰(しろつえ)〜東三方ヶ森〜ビバーク地

沿面距離: 15.93km
行動時間:07時10分〜17時45分 ( 10時間35分)


カシミールソフトを使用したGPSトラックログ図  福見山〜明神ヶ森〜白潰〜東三方ヶ森

 

朝05時半頃、新居浜を出発する。前日徳島から帰って自転車を下し高縄山系の地図を印刷していた。高松の自宅には地図セットが
あるのだが急きょ行先を変えた為にモバイルプリンターで全体図1枚と部分図7枚を印刷せざるを得なかった。


福見山の登山口へ行ったのは随分前の事で、そんなに複雑だと思わなかった。カーナビは松山インターで降りて奥道後〜石手川ダム
を経由する案内になっていたが、以前の記憶で川内で高速道路を降りる。平井町から県道196号線に入る道を以前利用し記憶があ
りその道を走るが思ったより道幅が狭くて山の中をグルグル回って時間がセーブ出来たか良く分からない。


又、以前は日帰り登山だったので気楽に少し広い路肩を利用したが、やはり3日も車を停めるとなると地元に迷惑がかかりそうだ。
20分程駐車スペースを探して登山口付近を何度も行ったり来たりを繰り返す。結局民家から離れた山の中、道路脇の広い場所に車
を停めて準備する。


人間の記憶程アテにならない物はない。以前に福見山〜明神ヶ森〜白潰へ行った時の登山口の覚えが全くない。07時10分取り敢
えず「三本杉」の標識があったのでそこから山へ延びる道へと入って行く。途中で犬の散歩をしているご婦人に福見山への道に間違
いない事を確認し安心して歩く。


  
 福見川の集落を外した山手の広い場所に車を停める     福見山の登山口は三本杉への登山口となる

  
 三本杉への登山口から山に向かう道へ入る               直ぐに右手に曲がる

  
 山間に向かう道(舗装道路)                      右手の上り坂へ進む

07時30分広めの道路を歩いていると記憶にある遍路道の石標があり、そこから右手の細道(ザットした舗装はしている)に
入る。3分程進むと右手に古い遍路道の様な踏み跡があり、これが地図にある実線道と一致しているので右手の小道に入る。

10分程沢沿いの細道を進むが、途中で道が怪しくなる。沢の左手に渡ってからは完全に踏み跡が消えて植林の急傾斜に作業道
が入り乱れている。


ここで実線道を辿るのを諦めて左手の稜線へ向かって急斜面を這い上がる。08時00分何とそこは道路だった。30分前に別れ
たセメント道路がここまで延びてきていたのだった。


  
 道しるべの石碑から右手の細道へ上がる            直ぐに道路がカーブする場所に遍路道があり又右手に進む

  
 荒れた沢を右手に渡る                         沢沿いの植林帯を進む

  
  07時45分 沢を左手に渡り返す                 植林帯に入るともう道は無きに等しい

  
  辛抱しきれず斜面を這い上がる                  08時01分 舗装道理に上がっちゃったわ


△点1) 四等三角点「今治谷」 (708.39m)

舗装道路に上がった後も掘れ込んだ遍路道の様な場所を歩くが、結局は先でセメント道路と分岐した遍路道に合流する。08時
23分峠部に着く。ここには石像や八丁石があり、杉の木には「福見山登道」と記された標識が掛けられている。手の傾斜を少し
上がった所に三角点があるので参道を外れて尾根筋へ向かう。08時25分、ピークの外れにある三角点を踏む。今回の三角点
訪問第一号だ。


先が長いので記念写真を撮った後、峠に下りて先へと急ぐ。左手が自然林、右手が植林のなだらかで広い未舗装尾根道を進む。
福見寺へ行く参道は尾根をトラバースして、四丁、二丁と丁石があり最後の一つは倒れて字も読めなかった。


  
        峠に向かって歩く                     峠部に福見山登道? 字の並びはこれでいいの?

  
  八丁の丁石が立つ                         三角点は左手のピークにある


  08時25分 今回縦走の三角点第一号 四等三角点「今治谷」 

  
        福見寺への参道                     左:自然林、 右:植林の良く踏まれた尾根道

福見寺

竹林を抜けると09時00分、左手に山の中としては立派に見える古刹「福見寺」の石段に着いた。石段右には高縄山へ三里、
谷上山へ七里とか刻まれた湯之山、川之郷村が寄進したと思われる石標が立っていた。石標には「俵飛山・福見寺」とある。
山号の俵飛山(ひょうとびさん)?


まあこの辺りでは有名な話で、平たく言えば、時は大化の改新の頃だから645年頃?インドからイルカに乗ってやってきた?
(言い伝えでは紫雲)法道仙人が村の飢饉を助ける為に年貢米を運ぶ船の船長にトレードマークの鉄の鉢を飛ばしてお願いした。
当然お上に差し出す年貢米を譲る訳に行かず断る。すると鉄の鉢は全ての米俵を連れて福見寺にいる法道仙人の元に飛んで飛んで
飛んで行った。船長や役人が俵を追いかけ法道仙人に謝ると米俵が又船に飛んで行ったが、1俵だけ村に落ちてそれ以来裕福な村
になり「福見」という名前で呼ばれる様になったと言う言い伝えらしい。


ちなみに法道仙人は播磨の国で色んなお寺の開祖とされる伝説上の人物で、同じ俵が飛ぶ話が本場、兵庫県の法華山一乗寺にも残
されています


福見寺が伊予の国司によって建てられたのは奈良時代より以前の698年頃と言われていますから時代が合わない。でもこう言っ
た類の話は時代を超越してゴマンとあるから詮索無用のロマンの世界だ。その頃祀られていたのは「葛城蔵王権現」らしいから例
の役行者達の葛城山修験道と関係があると想像出来る。その後、807年ここを奥ノ院として重信川に近い場所に本寺を移す時に
弘法大師・空海がかかわったとされ現在、真言宗・豊山(ぶざん)派に属している。豊山派は奈良の長谷寺を総本山とし、同派の
お寺として近くでは石手寺がある。


  
 丁石が路傍にあると古道の趣がある                竹林を抜けると福見寺が近い


     山中にひっそりと佇む「福見寺」  静かなので鐘をそっと鳴らしてみる

  
  俵飛山(ひょうとびさん)と山号がかかっている          登山道へは右手に回り込む


今回の山行は福見寺から高縄寺への参詣となるので鐘楼で静かな鐘を鳴らした後安全祈願をする。福見山への登山道は記憶では
本堂を右手に回り込んだ奥にある。09時06分裏手の山際に進むと「明神ヶ森山道」の標識や、古びた「福見山・明神ヶ森縦走
ルート」の標識も立っていた。ここから標高差200mの植林地帯急登をジグザグに上って09時25分稜線部に上がり着く。


  
福見寺の裏手に明神ヶ森山道の標識がある             植林帯の急登に取りつく  踏み跡が稜線部まで続く

  
09時25分 尾根筋に出る                      例によって左:自然林、 右:植林のパターン


△点2)福見山 、  四等三角点「福見山」 (1,001.39M)

稜線部は左・自然林、右・植林のパターンで東へと歩く。福見山は地形が卍の形になって少し複雑なピーク群である。三角点の
ある北尾根の分岐には福見寺方面へと福見山・明神ヶ森縦走ルートの標識が2つ立っている。山頂としては南東部へ尾根を少し
進んだ1,053mピークが一応「福見山」とみなされている様だ。しかし、ここは少し離れてはいるが北側の三角点「福見山」
を踏んでおかないと収まりが悪い。アップダウンがきついのでザックを分岐にデポしてGPS、カメラ、水をショルダーバッグ
に詰めて09時33分北へと下る。ここも途中まで左・自然林、右・植林のパターンだが途中からほぼ自然林となる。


この辺りの北面も崩壊地があり稜線部を外れると危険な崖も存在する。四等三角点を踏み記念写真を撮って09時55分分岐へと
引き返す。上り返しが結構キツくて喘ぎながら10時11分ザックをデポした分岐に復帰した。


  
09時30分 福見山三角点分岐にザックをデポ           三角点への北尾根を下る

  
 コル部の右手に崩壊地がある                    三角点へ向かって上っていく 右手は植林


  09時55分 四等三角点[福見山」に到着  あまり訪ねる人も無い様だ

  
 落ち葉や枯れ木を少し除けて撮影                 ザックをデポした主稜線へと帰る

  
 崩壊地を除けて右から回り込んで斜面を上がっていく      10時10分 主稜線に置いたザックに帰る


自然林の細尾根を進んでいると10時20分、稜線部に「福見山」の山頂標識がある。ここが1,053mピークと思われるが、
目で見る限り通りすがりの平坦な尾根である。一応国土地理院の球形真鍮が埋め込まれた標石もある。まあ、ここも福見山だから
一応記念写真も収める。


  
 尾根を歩いていると山頂標識が・・・                 福見山の平らな尾根の山頂だった


  10時25分  福見山の山頂標識に出会う   どう見てもピークでは無い路傍の山頂だ


この後、南に伸びる尾根に踏み込まない様に気を付けて東へと細尾根を進む。福見山から明神ヶ森までは植林地帯をクネクネと東
北東に向かって登って行く。この辺り、左手の植林地帯は四国森林管理局と個人の共有となっている。尾根のすぐ右手に右手が自然林なので木々の
間から前方に一段と高い尾根ピークが見える。
10時45分ミツマタの黄色い花が見えだすと一面の暗い植林地帯となった。

11時00分国土地理院の真鍮が埋められた標石があり、紅白の棒が立っている。地図には三角点の表記がないが、時々こんな補
助基準点を目にする事がある。
この辺りに南麓の奥黒滝からの明神ヶ森へ至る登山道の合流点があるのだが、良く分からなかった。

  
10時28分 右(南)へ行きたくなるが騙されない様に気を付ける  10時36分右手に林道が延びている 福見寺へ南側
                                          からの車道があり、その延長上にある林道だろう

  
11時00分 補助基準点が埋められている(三角点ではない)  この辺りは左が植林、右が自然林


△点3)明神ヶ森 三等三角点「明神ヶ森」(1,217.00m)

11時15分頃から明るい自然林となりブナやミズナラが現れるが、すぐに右手から植林帯が出現する。それでも左側に気持ちの
良い自然林が続きホッとする風景だ。
比較的なだらかな上り傾斜を右手に回り込みながら11時30分ピークに達すると、そこは
明神ヶ森の山頂だった。

明神(みょうじん)は神の格式を表す名神が語源で、特に霊験あらたかな神様に使うらしい。神にもランキングがあるのかな? 
奈良・平安時代以降良く使われ出した神仏習合における仏教側から見た神の称号らしい。これが山名にも使われて「明神山」が
各地にある様だ。ややこしいのは仏教が日本に入って来てその地位を確立する為に本地垂迹説(ほんちすいじゃくせつ)と言う考
えを絞り出した。これは日本古来の神様は実はバックグランドがあって、仏様が化身として神様の姿で仮(権)に現れた(権現)
んじゃと主張する。八百万の神を無数の仏と縁組を図って無理な理屈を作り上げた。ちゅうことは明神も権現も何かおんなじ様な
ニュアンスで良く区別は分からない。山名も明神山や権現山が各地にあるし・・・。


  
 一旦明るい自然林となり気持ちがいい              緩やかな登り傾斜となる


 11時30分 やっと明神ヶ森に着いた  登山口からここまで4時間20分は誤算だった

  
  あまり景色は良くないが自然林の明るいスペースだ       ここからのコース取りは慎重に行う

さて、明神ヶ森のピークからは4つの尾根が下っている。歩いて来た西側と、南側、東側は割と分かりやすい尾根が延びているの
だが、縦走路を白潰へ下りるルートが分かりにくい地形となっている。下り口には明確な尾根がなく、途中から尾根が出現するの
だ。こういった場所では進む方角をちゃんと確認しないと厄介な事になる。


幸いにもよく観察すると北側に細い踏み跡が急な傾斜に向かって延びている。辺り一面スズタケのヤブだった様だが現在は鹿の食
害で枯れている。


最初は枯れたスズタケの間に踏まれたルートをゆっくりと下る。途中から急傾斜の細尾根が現われロープ等も敷設されていた。沢
山のスズタケが枯れた殺伐とした景色だがブナやミズナラが生えていて予土県境などの笹藪を思い出させる。


12時頃にアップダウンの穏やかな尾根になっても枯れたスズタケが両側に並ぶ。12時04分コル部から前方に1,118Mの
クランクピークが見える。


  
最初は北へ向かって枯れたスズタケの踏み跡を辿る       細尾根に乗った事を確認

  
  東三方ヶ森方面が見える                      11時47分 急傾斜にはロープが置かれていた

  
 少しザレ気味の細尾根                       荒れた尾根だがブナが多いのが嬉しい

  
 シャクナゲが有るから基本岩尾根か                スズタケの坂を上ると12時02分一つのピークを越える

  
  相変わらずの枯れたスズタケ道                  前方に白潰のピークが現れる


△点4) 四等三角点「白潰」(しろつえ 1,151m)

12時20分クランクになった1,118mピークを右手に回り込み、又北へと進む。この辺りに来ると尾根上にある花崗岩が風化
してザレている。左手前方にはザレた斜面が白い筋を見せている。白潰の核心部でなくても結構ザレた斜面が多く見られる。


広葉樹や針葉樹の混ざった自然林の傾斜を上っていくと右手に東三方ヶ森へ続く長い尾根が見える。少し荒れた傾斜を上ると12時
48分、古いミズナラの根元に境界石と「水造」という赤い標識が立てられていた。水源という意味だろうか?

するとその先に懐かしい三角点「白潰」(しろつえ)が有った。

  
1,118mピークには間違い尾根に気を付ける           尾根も風化してザレた石が転がる

  
 左前面には沢山のザレ場が山肌に見える           12時40分 細尾根の上りになる

  
  もうボロボロの風化岩が転がる                   細尾根をピークに向かって上がる


    三角点の手前にはミズナラの根本に「水造」の標識が立つ


 12時50分 懐かしい三角点「白潰」(しろつえ)に到着〜   ピークは少し先だ

  
  新しいタイプの三角点                        先にある三角点「ニブ川」から楢原山へ北に延びる尾根


因縁の白潰を渡る


             白潰縦走尾根崩壊による迂回路   場所によっては滑落の危険有り

もうあれから9年になるだろうか 黒滝神社から東三方ヶ森〜白潰〜明神ヶ森〜福見山のルートをトライし、白潰手前で日が暮れ
てしまった。ライトに照らしだされた白潰の絶壁に恐れをなして渡る事が出来ずに下の林道に下りるも、闇で林道を発見出来ず敢
え無く野宿となった。


この後、直ぐにマーシーさんと逆ルートで白潰を渡ったが、昼間に見るとまあそんなに苦労も無く渡れるルートが有った。その記
憶があるので白潰を渡るのは結構簡単に考えていた。

白潰三角点を12時55分出発し、最高点1,156mピークへ向かう途中の右手(南側)に二箇所崩壊地のザレ場がある。しか
しこれは急傾斜過ぎて迂回路として渡れる場所は無い。

白潰
ピークに進むと、そこから左手に伊之子山、水が峠へと続く北尾根分岐がある。今回はグルッと東三方ヶ森から周回するので
このショートカットルートへは入らない。少し右手の荒れた尾根を下ると13時06分縦走尾根の北側にある崩壊地の真上に出た。

ここの尾根部が5〜6メートル崩落しているので渡れないのだ。崩壊地の左岸を下って渡れる場所を探す。以前マーシーさんと渡
った場所はもっと崩壊が進み重いザックを背負ってとても渡れる状態ではなかった。ずっと下の方まで迂回して、それでも厳しい
場所を崩壊地まで下る。13時20分比較的傾斜の緩やかな崩壊地を恐る恐る渡る。対岸に渡る時間は1分程だが長く感じた。

そこから荒れた細尾根をシャクナゲに掴まりながら這い上がり切れ落ちた縦走尾根部に13時30分復帰する。
これで3度目にな
る切れ落ちた崩壊尾根を懐かしい気持ちで眺める。距離にして10m程の尾根崩壊なのだが、200m程の迂回を強いられる。

崩壊尾根から細い縦走尾根を下るが、以前には無かった崩壊地が尾根筋まで侵食していた。

  
  ピークに上がる右手も崩壊斜面となっている          縦走尾根の手前側も崩壊斜面が急過ぎて渡れない

  
  もう一つ崩壊斜面が右手に見える                 白潰ピークに向かう

  
  伊之子山分岐ピークを右の縦走尾根と下る           細尾根の縦走尾根


  縦走尾根を下ると崩壊地に突き当たる   右端が本来渡るべき尾根部だ

  
 渡渉点を求めて藪斜面を下る                   以前渡った場所は無理だった

  
  もっと下まで降りて渡渉場所を探す                ここなら渡れそうだ


  13時22分 何とか崩壊斜面を渡り切る

  
 シャクナゲの岩斜面を這い上がる                   前回マーシーさんと渡った場所を覗く

  
 13時30分以前、暗くなって行き詰ったキレット場所に立つ   ここには尾根は無い    崩壊の高さは6m程だろう


 三角点「ニブ川」から北に延びる尾根が見える   左のピークが楢原山だろう

  
   縦走尾根にも崩壊の余韻が続く                 穏やかな尾根に なってホッとする


基本的には東三方ヶ森に向かって尾根を東へと進むのだが、地形が複雑でジグザグしているので支尾根に入らない様に気を付ける。
シャクナゲ尾根を過ぎると樅や笹などが生えた針葉樹林帯に入り、鹿のネットが現れる。以前ここを歩いた時はしっかりしたネッ
トが立っていたのだが、今は地面に落ちて防護柵の役目を果たしていない。


14時03分左手前方に崩壊地の斜面が見える。縦走尾根はこの先で左へ直角に曲がるので白潰と同じような崩壊地が尾根の西側
に見えてくる。白潰は縦走路が崩れているから目立っているが、この辺りには他にも沢山の崩壊地が存在する。
赤いペンキが塗ら
れた境界杭に尾根歩きの安心感を貰いながらも時々地図を確認しながら進む。


  
 13時45分シャクナゲの尾根                    自然林の細尾根  やはり自然林は明るくて良い

  
 14時03分 鹿の防護ネットが現れた                左手前方の斜面は崩壊の筋があちこち見られる

  
 左手に崩壊地が近づく

  
猛烈なスズタケの藪だが全て枯れている              いくつものピークを越える

1,200mターニング・ピーク

14時25分一つのピークを越えると荒れ気味の細尾根に入る。少しするとおびただしい笹が尾根の両サイドに現れるが全て枯れ
ていた。
14時35分「西61」と刻印された石標が置かれたピークに着く。古い標識も立てられているがもう何を書いているか
読めない。傍らに丸い真鍮が埋め込まれた補助基準点の様な物もある。地図を確認すると、縦走尾根はここから北に進路を変える
ターニングポイントになっていた。磁石を出して慎重に進路を北に合わせ、ブナと枯れたスズタケの縦走路へ入って行く。


暫くすると背丈の低い笹が現われブナなどもあって良い尾根景色を楽しむ。14時55分左手が少し開けてゴールの高縄山の電波
塔が見える。


  
 14時25分 松の生えた細尾根を通過              細尾根を抜けると枯れたスズタケの尾根

  
 14時36分 境界石と標識のある1,200mピークに着く   振り返ると明神ヶ森が尖がっている

  
平凡だが重要なターニングポイントだ                東へ進んでいた樹総尾根はここで一旦北に振る

  
 最初は背丈の高い枯れスズタケ                  次第に背丈が低い笹に変わる


    ブナやミズナラの美しい尾根を暫く楽しませてくれた

  
左手に縦走最終目的地、高縄山が見える               右手には今日の最終目的地、東三方ヶ森


△点5)四等三角点「ニブ川」 (1,228.56m)

尾根に岩やシャクナゲが現われ、そこを過ぎると又自然林の穏やかな景色になる。上り傾斜を喘ぐと見覚えのあるブルーシートや
鉄の棒が転がったピークに近づく。平らなピークに上がると通信設備の様な鉄の櫓(やぐら)が立っており、木製の見晴台の様な
ステージがある。そこに懐かしい三角点「ニブ川」があった。ニブ川は鈍川の事だと思われるが、鈍川温泉は遙か北の方の温泉地
名である。

ここは最適のビバーク場所なのだが時刻は15時30分とチトはやや過ぎる。このピークも地図で見る以上に非常に進路を取りに
くい場所だ。地図を見るとすぐ北側に林道がクネクネ走っており、「木地奥林道 第二隧道」への下山口を示す古い標識などもあ
る。この北尾根は楢原山まで続いており、昔は修験者が歩いたルートらしい。
東三方ヶ森への縦走路は少し北側に下りて、慎重に直ぐ東へ延びる尾根に乗らなければならない。


  
 15時06分 岩尾根が現れる                     岩尾根にはシャクナゲがセットになっている

  
三角点峰に向かって灌木の上り坂になる              急斜面にブルーシートや鉄骨が転がる

  
  小さな鉄塔だが碍子は見当たらない  電波塔?        板張りの縁台が以前と同じくあった


 15時20分 四等三角点「ニブ川」に着く

  
木地奥林道 第二隧道へと読める  真北に向かう尾根だ   縦走尾根は最初北東に延び、直ぐに東へ向かう


岩っぽい細尾根を下ると赤いプラスチックの杭が立っている。色んな境界杭があるので、杭があるから縦走尾根とは限らない。ス
マホ地図で現在位置が縦走尾根だと確認しながら歩く。


15時43分右手にピークが3つ見える。恐らく奥の方が目指す東三方ヶ森と思われた。一番奥のピーク南側からこの山に至るコ
ース上にある1,202mニセピークだろう。シャクナゲや自然林、枯れたスズタケの尾根が続く。


15時55分前方に1,164mのなだらかなピークがあり、その斜面のブナ林が美しかった。この辺りも以前は笹薮だったのが
鹿の食害で無残に枯れたスズタケが立っていて、リョウブの根本の皮は齧られて痛々しい。


  
 三角点「ニブ川」からは岩っぽい細尾根となる            ワイルドな岩尾根


   二コブピークの後ろ側が東三方ヶ森だろう

  
  赤い境界杭を追う 細尾根はルートが分かるから良い     スズタケで荒れた尾根


     15時55分 ブナが密生する斜面

  
デカいリョウブの幹の皮が鹿に食べられている          枯れる前は相当の笹薮だった場所 1,154mピーク付近

16時23分ターニングポイントのピークがあり、ここも北の支尾根へ迷い込まない様に右へ振る。迷い込んでも北側に林道が走
っているので遭難などの恐れは全く無いのだが時間のロスが勿体ない。前方の高みに雑木を通してデコボコのピークが並んでいる。
やはり奥側が東三方ヶ森だろう。


16時25分崩壊気味の細尾根渡りとなる。特に下る場所は足元が崩れやすく重い荷物を背負っているのでバランスを崩すと滑落
するので神経を使う。それを越すと平和な尾根になり前方に東三方ヶ森らしきピークが見える。左手には特徴の無い尾根が北に向
かって長く延びて行く。


  
  雑木林の尾根を進む                      1,154mピークの東端部で北の尾根に入らない様に右に進む

  
 東へ向かう尾根が細くて灌木に覆われているので注意する   東三方ヶ森が木立の向こうに見える

  
16時26分 細尾根が崩壊してザレている             渡り終えて振り返る  向こう側から下る方がヤバい


  16時30分 細尾根を過ぎると平和な風景になった

  
  この辺りの境界杭は赤いプラスチック              東三ッ森山から北に連なる尾根が見渡せる


△点6)東三方ヶ森 二等三角点「赤子谷」 1,232.82m

16時45分前方に尖ったピークが立ちはだかる。背の高い樹林に覆われているので余計に尖って見えるのだ。ブナ林を超えると
急にピークに向かってシャクナゲの荒れた尾根となる。一旦コルを下って東三方ヶ森へ上っていくのだが、そこに白潰以来のミニ
崩壊細尾根が待っていた。5分程で細尾根を渡ると広い尾根になりホッとする。


17時15分厳しい尾根を持ったなだらかな山頂「東三方ヶ森」に付いた。ここにある二等三角点の点名は「赤子谷」だ。南側に
阿歌古渓谷という谷があるが、どうも赤子の当て字っぽいからその谷の名前から取った点名と思われる。


南は道後平野の重信川、北は今治平野の総社川源流部で、現在の東温市(旧・久米郡)、今治市(旧・越智郡)、西条市(旧・周
桑郡)の市境(郡境)となっている。


東三方ヶ森は高縄半島では最高峰となっており、周囲の厳しさから西山興隆寺、黒滝神社方面から修験者が歩いた山域としても知
られている。
この東三方ヶ森は縦走尾根の南に入り込んだ袋小路の様になっており、北側の木地川(総社川の上流)沿いに開けて
いる為今治方面が少し見える位だ。

  
 前方のピークは東三方ヶ森の手前にあるピークだ     ブナ林が素晴らしい

  
  前衛峰のピークはシャクナゲ藪だ           案の定、ピークの向こう側が細尾根となる


   16時58分 東三方ヶ森手前のコルに着く  前方はやっと東三方ヶ森だ

  
17時00分 崩壊地が現れる              木の根で何とか持っている尾根

  
  やっぱ そう簡単には東三方ヶ森には通してくれんわ  荒れた細尾根を上がって行く


17時17分 やっと東三方ヶ森に到着する  山頂は狭いが平たい場所だった  あ〜ここでビバーク出来たらなあ

  
本日6個目の三角点と最後の山頂でシェ〜〜        北側の今治方面だろう


山頂部は平らでツェルトを張り易いのだが、計画した予定より遅れているのでもう少し先に進む事にした。17時20分山頂部
を東に進むと直ぐに南側、阿歌古渓谷からの登山道分岐があるので、ここは左の細尾根に進む。ロープが敷設された崖状の細尾
根を下ると今度は南東側、関屋方面からの分岐が右手にあり矢印標識やテープが沢山見られるので縦走路をキープするのがやや
こしい。

ここはテープが無い左手の尾根を進む。右手にグルッと回り込む縦走尾根が西陽を浴びて山襞に陰を作っている。荒れた細尾根
からは沓掛・黒森〜笹ヶ峰〜瓶ヶ森〜石鎚山と、石鎚山系を初めて見渡す事が出来た。


  
17時20分 東三方ヶ森の山頂から東側に進む          直ぐに阿歌古渓谷からの登山道分岐を逆方向に進む


 17時26分  阿歌古渓谷分岐の反対側、北側の細尾根へ下りて行く 目印はロープだ

  
17時30分 次の関屋分岐が現れる 矢印(右)へ行ってはならない この分岐は矢印標識の無い左側へ進む


   黒森・沓掛 笹ヶ峰 寒風  西黒森・瓶ヶ森 子持ち権現   石鎚山


さて、東三方ヶ森から北に延びる縦走細尾根はシャクナゲなどが生えた細尾根で荒れている。17時40分通過の岩尾根の斜面
には太目のロープが敷設されておりビバーク場所を心配しながら歩く。


17時45分丁度ツェルトを張る事が出来るスペースを見つけたのでザックを下す。気持ちとしては天気が良いのでもう少し先
まで進みたいのだが地形的にビバークが難しいかも知れないので安全策を取った。そうと決まればグランドシートの上にザック
の荷物を放り投げ底のモノフレームシェルターを取り出す。細長い菱型をしているので前後をペグで留めて固定し、フレームを
一本シェルター内に丸く曲げて組み込む。このシェルターはポールの両端を固定する袋に欠陥があり苦労する。その為に自作で
鉛筆キャップを差込口に埋め込んで固定しポールの先端が直ぐに袋へ押し込める様に改良している。


  
 左手が崩壊している                          急傾斜なのでここにもロープが置かれていた

  
  樹林帯の細尾根  平らな場所が無い              細尾根が続く


17時40分 ゲッ 細尾根にロープ・・・ ビバークする場所があるんだろうか?

  
 少しでも平らな場所があったらツェルトを張ろう!!      17時50分 何とかシェルターを張れる場所があった

  
 ザックの荷物を出してシェルターを設営する           5分程で手早くシェルターを立ち上げる

5分程でシェルターを立ち上げて、下にタイベックのグランドシートを押し込み、シェルター内に百円ショップの銀マットを敷
く。そこに荷物を放り込んで靴を抜いて中に入り整理をする。水はあまり飲んでいないので十分に残っている。マットを膨らま
せて寝袋を出す。整理が不得意なので結構時間がかかるのだ。それから入り口の近くで見張りながらバーナーでお湯を沸かす。

お湯が沸いてガスバーナーの火を消すまでは火からは目を離さない。テント場では整地されたりデッキがあるので火の心配が少
ないが、ビバーク場所では一番気を使わなければならない瞬間だ。


  
 陽が沈む前にシェルターを張って安心する           バーナーでお湯を沸かしカップめんを食べる

あれほど楽しみにしていた食事の時間だが、食欲が湧いてこない。カップラーメンとコーヒーで質素な夕食をしていると太陽が
木陰の中に沈んだ。
シェルターの中で地図を広げて今日歩いた行程と残りの行程を眺める。う〜〜ん これだけしか歩けなかっ
たのか・・・ 机上の計算と実際の歩きとのギャップにうんざりしながら眠りにつく。



高縄山系縦走 2日目 ビバーク地〜五葉ヶ森〜楢原山〜水ヶ峠登山口(ビバーク地) は     ここ    

高縄山系縦走 3日目 水ヶ峠登山口〜水ヶ峠〜伊之子山〜水ヶ峠〜北三方ヶ森〜高縄山〜大月山〜福見川 は   ここ  

      
    
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