思えば遠くに来たもんだ・四国編 馬路村の山々を周回

1日目:魚梁瀬(やなせ)ダム湖・小石川橋登山口〜猪ヶ森(三角点)〜小石川(三角点)〜県境尾根〜
    貧田丸ピストン〜仙現丸〜ビバーク地(1,132mP付近)


2日目:ビバーク地〜五郎丸〜湯桶丸分岐〜湯桶丸〜分岐〜お化け杉P〜うお山〜甚吉森〜千本山〜
    千年橋登山口 (自転車にて小石川橋へ移動)



  カシミールソフトを使ったGPS・トラックログ図  馬路村の山々を周回


平成31年3月24日  ( 二日目 )

第2日目:仙現丸北方1,150mピーク付近ビバーク地〜五郎丸〜湯桶丸分岐〜湯桶丸
       〜県境分岐〜お化け杉P〜うお山〜甚吉森〜千本山〜千年橋登山口

沿面距離:21.58km
行動時間:06時15分〜19時45分= 13時間30分



1)ビバーク地〜五郎丸〜湯桶丸分岐 3時間25分

朝05時に起きて外を見るとやはり雪がうっすら積もっている。防寒対策をして来たので夜間寝ている間は寒くは無かったが、
ツェルトの中でシュラフから抜け出し、ダウンソックスやダウンズボン、ダウンシャツを脱ぐと寒い。どうせ歩き出すと暖かく
なるので寒いのはガマンし、雪で足元が悪いのでズボンの上からレインズボンを履く。ツェルト内の片付けをしながら昨日の行
動食用で食べなかった稲荷寿司弁当を無理やり口に押し込む。時間が勿体ないのでお湯は沸かさない。


朝起きるとやはり雪が少し積もっていた。外は寒いがツェルトの中で着替えや片づけを行う


 テントの設営跡が菱型に見える  06時10分出発準備が出来ると太陽が既に上がっている  

06時06分右手から既に太陽が出ているので少しアセる。片付けに時間がかかるので出発は予定より30分遅れの06時15分
になってしまった。
ビバーク地を出ると雪は思ったより沢山積もっている。次に目指す五郎丸ピークは正面右にあるので尾根筋に
隠れて見えない。縦走する方向の県境尾根は左側に回り込んでおり伐採の為か単にザレているのか裸地になって見通しが良い。
まだ太陽が全ての場所を照らすまで上がっていないので寒々とした風景だ。


  
既に山際から太陽が上がっている                   寒々とした雪道を06時15分出発   

    
 下り傾斜は雪で滑る〜                      未だ太陽が昇り切っていないので寒々とした谷筋の風景だ


五郎丸 三等三角点「影五郎」 (1、147.99m)

06時28分岩尾根の急登となる。足元は木の根や岩に積もった雪で靴が滑り歩きにくい。まさか雪など想定外でチェーンアイゼン
は持って来なかったのだ。右手は植林、左手はザレ斜面のパターンが続き、進む方角には湯桶丸分岐のピークから縦走尾根が見える。

谷間から競り上がった山は宿杉で有名な雁巻山(がんまきやま)だろう。その向こうには千本山や烏帽子ヶ森、西又山が見えている
筈なのだが馴染みが無いので同定は出来ない。


五郎丸分岐付近から左手前方の県境縦走尾根を見ると結構な谷間になっており相当下って又上る尾根の様子がつぶさに見える。あり
ゃ〜 あそこを歩くのか〜


07時00分植林杉、天然杉、岩に覆われた山「五郎丸」に到着する。周りは植林に覆われて展望が無いショボい場所だが、三角点
名は「影五郎」と来たもんだ。名前だけが魅力的な山って事だな、こりゃ。と言っても山や川などで石がゴロゴロしている場所を正
に語呂合わせで五郎と呼ぶ場合があるので、やっぱりラグビー効果で印象が良くなったのだろうか。


  
   
 五郎丸への上りは岩がゴロゴロしている               尾根筋にも岩が多い

  
  結構 雪が積もった場所も多い                  雁巻山(中央)と甚吉森(右端)

  
 五郎丸はゴーロ(岩)が多い山と言う名の由来が説得力がある   細尾根にはスズタケがあるが枯れていた


 五郎丸手前から県境尾根は激下りし、又 激上りとなっている  キャイ〜ン あそこを通るんかい!

  
 五郎丸はあの向こうだろう  デカい切り株がある         07時00分 三角点「影五郎」を踏む


 五郎丸の山頂は平らだが植林の為見通しは悪い  

意外とハードだった湯桶丸分岐までの下りと上り

この三角点は県境尾根から少しだけ東へ張り出した支尾根の突端にある。三角点で記念撮影の後、ターニングポイントまで少し引き
返す。この五郎丸付近からの下りは雪が結構積もっていたので滑らない様に慎重に下る。すると今度は昨日這い上がって来た猪ヶ森
・小石川尾根分岐付近とその斜面が見えて来る。やはり伐採かザレ場かよく分からない裸地の斜面である。甚吉森までの県境尾根も
ずっと見渡す事が出来た。う〜〜ん 長いぞ!


ここも鹿害と思われる枯れたスズタケに雪が積もった荒れ尾根を下る。07時50分右手の彼方に海と島が見える。地図で確認する
とこの辺りで島が二つ見える場所は牟岐の出羽島と大島だろう。
植林が消えて天然杉、雑木、岩などで構成された尾根のアップダウ
ンが続き歩くペースがちっとも上がらない。


08時30分やっと五郎丸と湯桶丸分岐Pの中間点、1,180mピークに上り付く。ここは尾根の左右に雑木林が広がるとても気
持ちが良い場所だった。この1,180mPまで五郎丸から1時間半も要した事は想定外だったが、まあそれにしても青空が広がる
素晴らしい天気になり気分は落ち込まない。右手には湯桶丸の東端が見える。


灌木帯が終わると天然杉が立ち並ぶ明るい尾根が続く。左右の風景がそこそこ顔を出す状況ではあるが、さて左手は雁巻山の向こう
に千本山、その又向こうが烏帽子ヶ森だろうか・・・。
右手と来たら手前に特徴の無い海部山地とその向こうに雪で覆われた標高の
高い尾根が並ぶがサッパリ剣山系のどの辺りだか分からない。


09時00分天然杉の基部が分かれて人が通れるような大木の横を通過する。その辺りから尾根に枯れた天然杉が転がるオブジェ街
道を上る。


  
07時15分県境尾根に戻り、右手に向かって下る        最初は雪の細尾根で厳しい下りだ


 西側を奈半利川源流地の県境尾根を眺める  左奥が甚吉森だ あそこまで歩くのか〜

  
甚吉森をアップに 手前にあるピークの奥が三角点峰  前方に1,180mピークが立ちはだかる 湯桶丸分岐はその又向こうだ

  
      細尾根を下る                         眼前には衝立の様な登り斜面が迫る

  
  アセビの花が咲いていた                       足元は相変わらず悪い


    右手には牟岐(むぎ)沖の太平洋に浮かぶ出羽島と大島が見える

  
 08時頃から魔の上りとなる                     木の根がごちゃごちゃ広がる上り傾斜


   08時30分 うわ〜〜  上り坂はキツかったけど、青空と雑木林の散歩道が待っていた  

  
 右手に湯桶丸の東端が見える                    天然杉の並木道

    
   次郎笈    剣山・一ノ森     天神丸                     立派な天然杉やなあ

  
  こんな場所が続けばいいんだけどなあ                  これも立派な天然杉だ

  
       人が通れる程の宿杉                    倒木が白骨樹になっている 


湯桶丸分岐

0920分頃から又枯れたスズタケが現れる。恐らく以前はスズタケのヤブ尾根だったのだろう。鹿が増えた山域と共通の荒れ方が
見受けられる。09時35分ホンマもんの笹藪が出て来て嬉しい様な複雑な気持ちになる。その笹薮を登り切ると09時40分、2本
の天然杉の横に分岐標識があった。

歩いて来た県境尾根方角には「徳島県」(?)まあ県境だからそうとも言える。、北の方角には「湯桶丸 1300m」、これから
進む県境尾根、甚吉森方角は「遊歩道」となっている。


  
 湯桶丸分岐ピークへと登る                      始めて本格的な笹薮となる  何か懐かしい気になった


      09時40分 湯桶丸分岐に到着する   五郎丸から2時間半もかかった  


         湯桶丸分岐標識  ところで遊歩道って一体何なのよ?


思案の湯桶丸分岐

さて、時刻は09時40分だ。もし湯桶丸まで往復すれば今日のコンディションでは2時間30分はかかってしまう。そうなると
千本山の下山で日暮れギリギリになり、自転車での移動は夜になる。かと言って、以前来た時の湯桶丸の印象は余りにも薄い。

笹薮の残る湯桶丸分岐で少しだけ思案する。でも思案する前にほぼ結論は出ていた。やはり当初の計画通り県境尾根からも湯桶丸
へ行っておこう!


2)県境尾根分岐〜湯桶丸(ゆとうまる)〜県境尾根復帰 約2.6km 2時間10分

ザックを分岐にデポしてショルダーバックにGPS、カメラ、水、行動食を放り込んで北へ〜♪ 北へと出発する。いきなりの荒れ
た激下りに怯(ひる)みながらも、足は勝手にコル部へと向かう。今度は北側・徳島県側から縦走県境尾根を眺める。こちらの方が
お化け杉ピーク、うお山、甚吉森と尾根の様子がよく分かる。目指す湯桶丸の三角点は奥の方にあるので気合を入れて歩かなければ
ならない。ザレた尾根を下るともう一つ細尾根の小ピークがありこれを越えて進む。

  
 分岐から笹を掴みながら荒れた斜面を下る            目指す湯桶丸が見える  手前に1つピークがある様だ

  
 笹が枯れている 鹿のせいやな                    雪の細尾根を進む


   湯桶谷を挟んでこれから歩く県境尾根が眺められた 結構長いなあ

  
 湯桶丸の手前に一つピークがある                  湯桶丸から東に延びる金瀬〜吉野丸への尾根


 奥の左端がギリギリ剣山・一ノ森、 その右手に天神丸〜樫戸丸〜高城山と続いている(筈だ)
 その手前に青ノ塔〜平家平の那賀山地(の筈だ)


         金瀬〜吉野丸〜鰻轟山の稜線は那賀川と海部川の分水嶺となっている


  剣山の東側、 天神丸〜樫戸丸〜高城山 辺りだろうか

  
 中間ピークを通過してコルへと下る                       2重尾根の自然林コル

湯桶丸(ゆとうまる) 三等三角点「湯桶丸」(1,372.12m)

10時15分なだらかな灌木広場に下り着く。ここは二重尾根となっており窪地には水が溜まっていた。天然杉の点在する明るい尾
根を上がって行く。右手(東)から金瀬〜吉野丸へと続く支尾根との合流点に着くと枯れたスズタケのなだらかな斜面となる。
する
と10時50分標識のある湯桶丸に着いた。


湯桶(ゆとう)とは風呂桶では無く、湯茶を入れる漆塗りの木製の四角い器の事を言うらしい。分かり易く言えば蕎麦湯を入れる器
みたいな物で現在は陶器製が多いが昔は漆塗りの木製容器だった。湯桶(ゆおけ)と読めば風呂場で使う洗い桶の事である。


標識には左:遊歩道・登山口、右:南川林道・吊橋へ約7km とある。この「遊歩道」って一体何よ? こんな高知からも徳島か
らも遠隔地の山奥に公園みたいな設備があるって言うの?


地形図を見ると湯桶丸から登山道の破線は西側に下っており、そこから更に2本に分岐して南川林道へそれぞれ支尾根を伝って延び
ている。以前私が四国百名山に選定されているので渋々やって来た湯桶丸へはこの南川林道から登った。
東側にも恐らく「金瀬」へ
の尾根の途中から大木屋丸山線の支線林道へ下るルートがあるのかも知れない。


湯桶丸でタヌキに化かされてお湯に浸かる登山者写真を撮り終えて急いで県境尾根に引き返す。ピストンをする場合、景色が違って
方向感覚が狂う場合があり、自分なりのマークを地面に付けてそれをチェックポイントにする。この一人歩きの知恵は実戦で役立つ。
キツい上り返しを喘いで11時50分ザックをデポした県境分岐に帰り着く。



   コル部は小木の立ち並ぶ窪地になっていて雪解けの水が溜まっていた

  
 巨木「の並ぶ斜面を湯桶丸へと上がる                    モミ子とスギ男が恋をした

  
      最後は枯れたスズタケの道               10時50分 雪の湯桶丸三角点を踏む


 10時50分 湯桶丸(ゆとうまる)の三角点がある山頂へ到着  大きな標識がある  やはりここにも遊歩道の表示がある

  
湯桶(ゆとう)と読むとお湯を入れる漆塗りの茶器        湯桶(ゆおけ)と読むとお風呂場で使うフツーのゆおけ

  
湯桶丸でひとっ風呂浴びて下山する                 11時25分 中間部ピークを通過

  
  急傾斜を分岐に登り返す                       11時50分 分岐に帰る
  

3)湯桶丸分岐(県境尾根)〜甚吉森 約3時間半

さて、今更地図を眺めても仕方がないのだが甚吉森までの距離とそこから千本山へ下って更に登山口までのルートを眺め時間計算を
してみる。挙句の果てに取らぬ狸の皮算用は止めようと溜息を二つもついて重たいザックを担いで出発する。
分岐からは標識による
と遊歩道方面へ進む事になる。尾根道自体が遊歩道なのか、先に遊歩道へ下りる分岐があるのかさっぱりわからん標識だ。


出だしの尾根は笹薮も少し有り荒れているので「これって高知・徳島の県境では遊歩道って呼ぶのかしら?」何て不謹慎な事を考え
ていると15分程で藪は収まりフツーの尾根になる。天然杉やヒノキ、ツガなどの巨木が出現するがそれに気を取られていると足元
の倒木や枝に躓(つまず)く。


右手には細長い湯桶丸が何時までも付いて来る。林道が山頂近くまで延びているのが見えるが、現役なのか以前の様に崩壊したまま
なのかは定かでは無い。


  
12時05分 県境分岐を遊歩道?(甚吉森方向)へ向かって進む        最初は少し荒れた尾根が続く

  
この辺りは往年の笹薮に覆われた尾根の風景が残っている   尾根が少し左に湾曲しているので縦走路が甚吉森まで見える

  
 バランスの取れた形をしている天然杉            湯桶丸が右手に付いて来る 林道が直ぐ近くまで来ているのが分かる

  
 スズタケ藪の名残を感じさせる                   巨木が並ぶが密生していないので見通しが良い尾根だ

  
振り返るといつも湯桶が笑ってくれた〜♪ フミヤの歌を口ずさみながら歩く  1,230mピークに向かっているぞ


おばけ杉 (1,230mピーク

このユニークな名前も泉保さんの地図で知っただけなので一体どんな意味かも分からずに(恐らくお化けの様な杉があるのだろう)
そのピークに向かって進む。


12時30分頃から上り坂になり沢山の杉が出現するので「お化け杉」を逃さない様に写真を撮り続ける。注意深く天然杉を眺めな
がら笹が出現する尾根を歩いていると13時04分「お化け杉へ この先25m」の標識が立っていた。

もう・・・今まで何本無駄な杉の樹を撮ってきたか! せめて50m手前にこの標識を立てておくれでないかえ?
何せ東側からはこ
の杉の姿は尾根筋の陰になって見えないのだからみんなお化け杉に見えてしまう。 確かに幾つも見て来た今までの天然杉とは一味
違った迫力がある。特に西側から振り返るとそれが分かった。


   
 これ? お化けの割には色気があるし・・・             これ? 確かに裂けてるけどちょっとなあ・・・

   
 アナタもお化けと違うよね・・・                    ん? ピークに「この先25m」の標識が

   
   これか〜〜〜  逆光だけど                   ストックを二本置いてその胴回りのデカさを確認


 うひゃ〜〜 裏側ってか西側から眺めると確かに「お化け杉」の本領を発揮するお姿〜〜

  
 お化けに見送られながら甚吉森を目指す            スズタケの藪があるけど急に開けた尾根になる


うお山 (1,322mピーク)

13時05分次の縦走チェックポイント「うお山」を目指してお化け杉を振り返りながら出発する。ここからの尾根歩きは右手が徳
島県の那賀川水系・湯桶谷、左手が高知県の奈半利川水系・中川へ落ちる傾斜となっている。

しばらく枯れたスズタケ道が続くが尾根にデカいヌタ場があり、そのなかで大きなおたまじゃくしとカエルが沢山気味悪くのた打ち
回っている。あれ? イノシシって蛙は食べないのかしら?
 爬虫類と両生類はチョー苦手なので右手のスズタケを迂回していると
イノシシに腸を食いちぎられた大蛙が転がっており踏みそうになって飛び上がる。人間こんな場合には背中に重たいザックを背負っ
ていても飛び上がれるものだ。気を取り直して旅を続ける。


尾根には笹が沢山生えているが、稜線部は獣の遊歩道なのでスペースがある。なるほど!湯桶丸分岐で見た「遊歩道」と言うのは獣
の遊歩道だった訳か! 妙に納得しながら歩き続ける。


  
 おえっ ヌタ場にはデカいカエルとオタマジャクシがうじゃうじゃ!   これが「(獣の)遊歩道」 か〜〜〜

  
  湯桶丸が西側から縦になって尖がって見えてきた        ちょっと往年の笹薮が残っている  昔は苦労したやろね


   青空に雲が浮かび、白骨樹が立つのどかな風景を楽しむ  最高じゃないか!


    やはり山歩きの平和な楽しみの一つは天気の良い日に見晴の良い稜線を歩くことじゃね


13時30分頃になると稜線部の笹は枯れており幾分歩き易くなる。前方に「うお山」らしきピークが白骨樹の向こうに見える。
そしてその向こうにはターニングポイントの甚吉森も見える。尾根の笹が枯れて倒木が白骨化して倒れている。
正面右手に見える
剣山系は太陽に照らされて雪が極端に減って見える。13時50分モヒカン頭の様に山頂が樹林帯で尖がった「うお山」に着いた。



うお山」の北側はなだらかな地形の自然林となりブナの樹も見られる。14時15分一旦植林が混在する尾根となるが5分程で又
自然林を明るい陽射しの中を気持ちよく歩く。リョウブなどの灌木が立ち並ぶ正面に県境尾根歩きの最終ポイントである甚吉森が見
えて喜ぶ。

土地勘のある山なら簡単に思えるピークでも、初めて歩く尾根は細尾根以外油断ならない。三角形や四角形、或いは多角形で支尾根
が歩く者を惑わす。一人歩きの難しさは頼りにならない自分の山勘との戦いでもある。


尾根に映る自分の影を見ながら、一人歩きの事を考えながら、家族や友人の事を想いながら、境界杭に感謝をしながら、地図に感謝
しながら、水に感謝しながら、自分が山歩きを続ける全ての条件に感謝しながら、自分の弱さを助けてくれる全ての物に感謝しなが
ら尚も歩く。



   うお山ピーク(1,322mP)までの上りは鹿害と思われる山肌の荒れを感じる  前方の樹林帯がうお山だ

  
                     白骨樹の向こうに湯桶丸

  
  笹枯れの尾根を上がる                      うお山ピークにあと一息


 お〜〜 朝は雪で白かった剣山系から雪が消えている  次郎笈から一ノ森〜肉淵峠〜天神丸〜樫戸丸への稜線


             次郎笈             剣山                  一ノ森

  
 うお山は三角形で支尾根がある 慎重にルートを選ぶ     見通しが良いのだが、平たい地形の尾根も方向が分かり辛い

  
      珍しくブナが現れた                    うお山から西側の尾根は幅が広い

  
 平坦な尾根樹林帯も慎重にルートを選ぶ             二重尾根は高い方を選びながら右往左往して歩く

  
 疎林地帯って言うのかなあ                  地図ではほぼ直線の尾根も現場ではほぼ直角に曲がる場所もある


 今日歩いて来た尾根を振り返る 左奥が湯桶丸、 正面の森がうお山だろう

  
     一人歩きの影がある                      弱い自分を助けてくれる全ての物に感謝する
 

甚吉森(じんきちがもり) 二等三角点「甚吉森」 (1,423.38m)

15時15分頃から周りの雑木が枯れて鹿害の雰囲気が漂う甚吉森への最後の上り傾斜になる。土が痩せて土壌が流されているので
境界標石も地表から飛び出ている。三本杭や石立山の様な殺伐とした尾根を進むと15時25分「甚吉森」に着いた。


甚吉森は海部山地の盟主的な存在で、安芸郡の最高峰でもある。名前の由来は先に述べた「魚梁瀬」と同じで平家の落人伝説に拠る。
つまり、平教経(たいらののりつね)一党が壇ノ浦〜祖谷と落ち延びて、更に南へ山伝いに逃れる途中、家来から木々の茂った丸い
山を一時の棲家(すみか)にどうでしょう?と言われて「この森は甚(はなは)だ吉なり」とOKサインをした山の為に甚吉ヶ森と
呼ばれるようになったらしい。

北側を見ると遠くに天狗塚・牛の背から次郎笈・剣山までの尾根が見える。手前には那賀山地も低く延びている。


  
 リョウブが鹿の食害で枯れている                       甚吉森手前の細尾根に入る

  
 何かイメージが違った甚吉森  森が無いのだ         15時25分 二等三角点「甚吉森」に到着〜〜


               今日の県境尾根歩き 最後のピークでシェー  


                 

4)甚吉森〜千本山〜千年橋(登山口)  約 4時間20分

さて、時刻は15時半を回った。ここでもう一泊出来る水と食料は十分に持っている。でもまだ夕暮れには時間が有り過ぎる。事前
の地図上で立てた目算計画とは甚吉森の到着が2時間程遅れてしまった。総じて貧田丸や湯桶丸への寄り道など想定内の遅れではあ
る。若い時のスピードは期待出来ないのだ。

千本山への破線ルートが良ければ明るい内にギリギリ下山出来るかも知れない。中途半端な時間の中で選んだ結論は下山だった。


甚吉森は所謂交差点の場所にあり色んな方向にルートが延びている。南側にも千本山へ下るルートの途中から中川林道へ下りる道が
有る様だ。取り敢えず尾根の先端まで出て見るが、ちょっと見にテープがあちこちに見えてあまりアテにならない。南へ伸びる尾根
を探して5分程下ると明確な尾根が出現した。ところが赤手テープは尾根を外して少し右斜面へと振っている。

この辺りの尾根は少し複雑で、右の尾根を下るのか、左の尾根を進むのか定かでは無い。地形図を見ると左側の尾根が一貫して千本
山へ向かうのでテープを無視して岩っぽい荒れたシャクナゲ尾根を下る。尾根は一番確実な登山道なのだ。


16時10分前方に1,195m小ピークが見え、右手からの登山道と合流したのか尾根道がはっきりして歩き易くなりホッとする。
この辺りから植林地帯に入り間伐材が尾根に沢山切り捨てられ転がっている。1,195mピークを過ぎると自然林に変わり大きな
天然杉の切株やヒメシャラなども見られる。


16時50分いきなり尾根に通せんぼのテープが張られている。こんな場所で「通るな!」って言われても仕方が無いのでそのまま
尾根を進ませて貰う。


  
細尾根を奥に進む  千本山への明確なルートが見つからない  右手にテープがあるがそちらは違う方角だ

  
 南へ延びる細尾根に進んでみよう                崖の右側を少し巻くと尾根筋に乗れた様だ

  
 15時40分 お〜〜 早速デカい杉が現れた             デカい切り株などもある細尾根

  
16時00分前方に1,196mピークが見える その奥が千本山?  シャクナゲの細尾根を下る

  
 1,196mピークへ上がって行く                   あれ? まだ先の上りがある


   16時20分 左手に見える中川(奈半利川源流)の谷筋、中川林道も見える  右手に少し見えるのが千本山か?

  
 1,196mピーク付近は伐採木が散らばる            座布団? サルの腰かけ類かな

  
 1,196Pの下りになると自然林                   コウヤマキもある

  
 まっこと デカい切り株ばあにかわらんぜよ            16時50分 いきなりテープ これは無視以外に道は無し



千本山 三等三角点「千本山」 1,084.52m

17時頃から千本山への上り傾斜になるのだが、ここから千本山までが遠く感じられる。ピークが見える度に千本山かと騙されなが
ら上り傾斜を喘ぐ。
辺りが森深い景色になり、最後の上りを頑張ると17時30分やっと「千本山」に着いた。

  
17時頃から千本山へ向けてのなだらかな上りとなる       古い切り株の両側に二世が育っている

  
 細尾根に根を張る天然杉                     切り株もデカい  切った後どうやって運んだのだろう

  
やっと千本山らしきピークが前方に見える              最後の上りを喘ぐ

  
 千本山ピークに上がる                          17時30分 千本山三角点にとうちゃこ〜


        誰も居ないから一人でバンザイして盛り上がるしかおまへん

さて、四国百名山で千本山へ登ったのは何年前になるのだろう。あまり記憶にないが千年橋の登山口から登山道が整備されていた事
だけは思えている。そう言う理由から多少日が暮れても心配がないと踏んで下山する事にしたのだった。



恒例の記念写真を手早く済ませて下山にかかる。最初の尾根筋はあまりしっかりした登山道とは言えないがテープもあり安心して下
る。一旦コルまで尾根を下ると、17時50分前方の1,035mピークを避けて左側(東)にトラバースして登山道が付けられて
いる。
尾根道へ出る直前、右手上に雨量計設備らしい小屋があるが、階段を上がって確かめる気力がなくスルーした。

18時05分登山道はこのピークを巻き終わり、前方の尾根道に入る。ここには「千本山頂上へ」の標識がある。そこからはほぼ尾
根上に登山道が付けられているので暗くなっても問題ないだろう。鬱蒼とした森なので目が悪い私にとっては不利な歩きだがライト
を点けると辺りが見えなくなるので薄暗い中そのまま歩き続ける。


  
 17時35分 千本山登山道を下山する              意外と最初はワイルドな道だった

  
 登山道だけにテープもしっかりある                  17時50分 トラバース道に入る

  
  雨量計の施設が右上にあるがもう上がる気がしない      18時05分 トラバース道が終わって標識があった

「展望台」の矢印標識がしきりに登場する。う〜〜ん この時間に展望ってもなあ・・・と呟(つぶや)きながら歩く。

18時15分休憩ベンチが並び東屋もある広い場所に着いた。魚柳瀬杉の巨木や解説標識も沢山立った休憩所だ。休憩所で休憩せず、
この辺りから暗くて登山道が良く見えなくなりライトを点けて歩く。
18時30分「鉢巻落とし」についたので空を見上げると辺り
は真っ暗に近いが、天空はまだ少し明るい。


18時50分「親子杉」を通過する。ここから登山口まで約1kmなので一安心だが、看板や標識をチェックしながらゆっくりと歩く

19時05分木道階段の最上部に着く。記憶では千年橋近くまで木道が整備されている筈で、沢の音が聞こえだす。ところがこの木道
を繋ぐ場所で不用意に踏み跡みたいな斜面に入ってしまい木道復帰に少し時間をロスする。下が林道ならばどこでも下れば良いのだが、
ここは千年橋に下りなければ川を渡れない。滑りやすい木道をゆっくり下りて19時45分千年橋を渡る。登山口の隅に置いた電動自
転車がライトに浮かび上がった。


  
 こんな標識がたくさん出てきた  遊歩道の感あり        魚梁瀬杉を見上げる

  
 18時17分 休憩所広場に到着する 休憩はしない〜〜    これこれ 前回来た時に見上げた見事な木肌や

  
 18時25分 ライトを点ける                        鉢巻落とし  空はつるべ落とし〜〜

  
 18時50分 親子杉通過                       進入禁止のテープは夜歩きに心強い

  
 19時05分  木道が現れてゴールが近い            沢水の音がする木道を繋ぐ道を下る

  
 躓(つまづき)そうな木道を下る                    19時45分 千年橋を渡る

  
 19時50分 千年橋登山口にデポした自転車に着く     21時30分 小石川橋付近に置いた車に帰り着く

エピローグ

平成31年3月24日  電動アシスト自転車にて移動

千年橋(千本山登山口)〜梁瀬丸山地区〜小石川橋(デポ車)
沿面距離:16.71km
行動時間:19時45分〜21時30分=1時間45分


 カシミールソフトを使ったGPSログ図:下山後、電動アシスト自転車にて千本山・下山口(千年橋)〜丸山地区〜小石川橋

旅はまだ終わらない

千年橋にデポしておいた電動アシスト自転車で暗い県道370号線(魚千本魚梁瀬線)を奈半利川に沿って下る。落石やガードレール
が無い場所が有るのでスピードは出せない。石仙橋で左岸に渡り21時00分丸山地区に着き無事下山を家族に電話する。

そこから大木屋丸山線に曲がり小石川橋に21時30分到着して自転車をカローラフィールダーに積み込む。

途中どこかで仮眠するつもりでカーナビ頼りで高松に向かう。縦走を終えて気分が高揚しているのか眠気が起こらないのでそのまま
02時自宅に帰る。


経験を積めば四国の山に関して一人歩きのフィールドとしては安全な場所だと言える。体の変調に関してはもうどこに居てもダメな
ものはダメで深刻に考えていると何も出来ない。
リスクを過剰に心配して自分を縛り付けると、もう自宅に籠るしかない。

歳と共に気力と体力が減退し計画を実行に移すのが面倒になってくるものだ。でも一旦その壁を打ち破ってフィールドに出ると気力
と活力が湧いてくるものだ。
一人歩きの究極の自己責任は山歩きの実力、現場力を向上させる最も有効な手段だと思っている。「山で一人で寝るのは怖くない?」
って良く聞かれる。肉食ライオンなど居ないし、熊なんかも主食は木の実だし、イノシシは向こうから逃げて行く。(逆に町での手負
いイノシシの方がヤバい)
何か分からない物を恐れる事はない。山は都会より平和な場所かも知れない。




      出発点にデポした電動アシスト自転車(パナソニック EZ)   千本山下山口(千年橋)


       縦走尾根にてビバーク   モンベル・モノフレームシェルター  本体:430グラム  ポール:150グラム
   

    今回の縦走に使った オスプレー レヴィテイ45 ( 重量830グラム )

今回も小さな試練を乗り越えて馬路村の山々を周回縦走を自己完結させ、良い思い出となった。


1日目:魚梁瀬(やなせ)ダム湖・小石川橋登山口〜猪ヶ森(三角点)〜小石川(三角点)〜県境尾根〜
    
貧田丸ピストン〜仙現丸〜ビバーク地(1,132mP付近)  は  ここ   

平成22年3月 しまなみ隊 はるちゃん・楠さんの 甚吉森、湯桶丸 は          ここ   

      
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