思えば遠くに来たもんだ・四国編 馬路村の山々を周回
1日目:魚梁瀬(やなせ)ダム湖・小石川橋登山口〜猪ヶ森(三角点)〜小石川(三角点)
〜県境尾根〜貧田丸ピストン〜仙現丸〜ビバーク地(1,132mP付近)
2日目:ビバーク地〜五郎丸〜湯桶丸分岐〜湯桶丸〜分岐〜お化け杉P〜うお山〜甚吉森
〜千本山〜千年橋登山口 (自転車にて小石川橋へ移動)
カシミールソフトを使用したGPSトラックログ図 2019年干支の山「猪ヶ森」から馬路村の山々周回(1泊2日)
プロローグ
平成31年干支の山は香川県の「猪尻山」(高松市・国分寺町)「猪ノ鼻」(琴南町・柏原渓谷)「猪ノ鼻」(財田町・池田町
県境)と3つの山を歩いた。
平成31年干支の山 その1)猪尻山 香川県国分寺町
平成31年干支の山 その2)猪ノ鼻山 三悪天「猪ノ鼻」 香川県まんのう町 (笠形山と柏原渓谷の間)
平成31年干支の山 その3) 三角点「猪ノ鼻」 (香川県・財田町と徳島県・池田町の県境尾根) 若狭峰と猪鼻峠との間
その後、高知の山友ギッチャンからその又山友繋がりで高知県馬路村の魚梁瀬ダム近くに「猪ヶ森」(ししがもり)と言う標高
1,000mを少し越す干支の山がある事を教えて貰う。地図で山の位置を確認すると登山口の小石川橋から意外と近い場所に
ある。んがっ! 問題は馬路村の魚梁瀬までがこじゃんと遠い! でもここを押さえておかないと干支の山フリークの名が廃る。
折角高松から馬路村まで行くんだから貧田丸(ひんでんまる)ってのが県境尾根沿いにあり、ここを県境尾根に沿って南西に下れ
ば元の小石川橋へ帰る事が出来る。漠然にそんなルートを考えていた。
そうこうする内に時が立ち、そろそろヤブが酷くならない内に行かなくちゃと泉保安夫さんのイメージをトレースする山歩き地図
パート1を広げてルートを検証する。泉保さんの山地図は昭文社地図には記載されていない山域もカバーしてくれている。実際に
歩く時は国土地理院の地形図を印刷するが、縦走のルート選びは本当に泉保さんの地図にはお世話になっているのだ。
地図を眺めていると、県境尾根を五郎丸〜お化け杉〜うお山〜甚吉森と回って千本山に下りるルートがしきりに私を誘っている。
それと貧田丸は当初からの計画上、外したくないからピストンする事にして、問題は湯桶丸だ。湯桶丸(ゆとうまる)は山と渓谷
社の四国百名山を歩いていた時に湯桶谷の崩れた林道を歩いたが、随分前の事でほぼ記憶に残っていない。県境尾根から徳島県に
あるこの山をピストンすれば時間的なロスは否めない。でも行けない距離でも無いし・・・今回、高知県の千本山へ下山するので
ここは徳島県にも義理立てをして周回しようと決める。そんな訳でこの海部(かいふ)山地エリアを一泊二日で歩く事にした。
そうと決まれば下山口から登山口へ帰る手段だ。電動自転車を千本山登山口に置けば下山後ダム沿いを少し遠いけど小石川橋まで
移動可能だ。自分一人で縦走を完結するこの痛快さはアイデア以上に多少の苦労が伴うが、やり切った後の充実感は他の山行では
味わえない貴重な体験となる。
新居浜のお袋さん当番は東京から兄貴が帰ってきてくれているからOK、後は春休みになった孫達の当番日を何とかやりくりする。
3月22日中に現地に入れば翌日早朝から余裕を持って1泊2日で周回可能だった。しかしこの日に孫当番が急きょ入ってダメに
なり結局翌3月23日早朝に出かける事になった。
ザック(オスプレー・レビティ45 830グラム モンベル・モノフレームシェルター 780グラム(ポール、ペグ、細引き込み)
平成31年3月23日
第1日目:小石川橋登山口〜三角点「猪ヶ森」〜三角点「小石川」〜県境尾根分岐〜貧田丸〜県境尾根分岐
〜仙現丸〜1,150mピーク付近ビバーク地
沿面距離:13.49km
行動時間:09時20分〜17時45分= 8時間25分
馬路村の山々縦走第1日目 行程図 小石川橋登山口〜猪が森〜小石川〜貧田丸〜仙現丸〜1,150mピーク野営地
朝03時半に目覚ましをかけて起き、04時に高松を出て高速で南国インターを降りる。ここから土佐山田を抜ける近道がある筈だが
カーナビは真っ直ぐ南へ誘導するのでそれに従う。55号線バイパスをひたすら西へ進み懐かしい夜須町から安芸市に入ると道が混ん
でいる。どうも少年野球大会がこの辺りで行われるらしくコンビニも車で一杯だ。
ガソリンは出発前に満タンにしてきたが安田町から山に入るとGSは無いと思われる。高知市内を抜けてどこかに営業中のガソリンス
タンドがあると思ったのだがどこも閉っていた。山沿いに入ってからの距離計算が出来ないので少し不安になる。魚梁瀬地区に一つガ
ソリンスタンドがあるのだが週末に開いているかどうか、又営業時間中に給油出来るかはっきり分からない。06時30分丁度開店し
たセルフスタンドが安田川に入る直前にあったので給油出来てホッとする。
魚梁瀬(やなせ)ダムと魚梁瀬地区
安田川沿いの県道12号線は千本山へ行った時以来で全く記憶に無かった。07時15分ナビ通りに走って魚梁瀬ダムに着く。魚梁瀬
ダムは1965年(昭和40年)完成の四国で最大の高さ115mの堰堤をもつロックフィル方式のダムだ。ロックフィル式ダムと言
えば中学校の社会科で習ったエジプトのナイル川・アスワンハイダムを思いつくが、山歩きを始めてから稲叢山登山口にある稲村ダム
(88m)で初めてどい言う物かこの目で理解出来た。その後、裏銀座縦走の始点にある高瀬ダム(178m)の規模にも驚いた物だ
った。魚梁瀬ダムの規模は西日本一らしい。又、上流に水を溜める貯水池も早明浦ダム貯水池に次いで四国で2番目の規模を誇る。
このダムがある場所は北川村に位置するがダム湖の大部分は馬路村に属している。戦後、住友共同電力と四国電力の間で水利権を巡っ
て激しい争奪戦があり、結果的に公営企業である電源開発(株)が奈半利川の発電用水利権を獲得し、住友共電、四国電力に対して当
時の通産省を通じて供給・配分を周旋する事になったという歴史がある。その為、高圧電線も西条市の伊予変電所までここから延ばさ
れている。
魚梁瀬ダム建設にあたっての補償事業として水没する魚梁瀬森林鉄道の代わりに奈半利町へ通じる代替道路の建設や同じく水没する魚
梁瀬地区住居地を丸山台地への代替地建設などを実施したと言う。普通、「やなせ」を検索すれば梁瀬の漢字が出てくるが、ここは魚
を付け魚梁瀬(やなせ)と呼ばれる。
梁(やな)とは川を石などでせき止めて一か所の出口に竹や木で作った梁簀(やなす)を置いて魚を捕る漁法の仕掛けの事。魚柳瀬地
区に立つ地名の由来を読むと、平家の落人・平教経(たいらののりつね)が祖谷地方から落ち延びて、奈半利川の上流で熊野権現に祈
願して梁簀を流してそれが引っ掛った場所を一族の居住地とし、そこを魚梁瀬と呼ばれる様になったらしい。ん? 確か平教経さんと
言えば、壇ノ浦で義経に船上組打ちを図るも有名な八艘飛びで逃げられて、近くに居た土佐の安芸太郎・次郎を道ずれに海のもくずと
消えた筈?
まあ、役行者や弘法大師もあんまり言い伝えを詮索するとロマンが消えて味気ない。一応、奈半利川の上流、奥西川一の谷には
の屋敷跡を示す石碑も立っている事だし・・・・
兎に角、雨の多い気候が森を育てて林業を盛んにし、ダム建設のこのお蔭もあって我々の千本山などへの登山アクセスが容易になった
訳である。
07時30分ダム建設によって水没した魚梁瀬集落など235戸の内193戸が引っ越したと言われる魚梁瀬・丸山地区に着く。ここ
には魚梁瀬森林保養センター(やなせの湯)やかつての森林鉄道展示場などがあるが帰りにお風呂に入る時間は無いかも知れない。
林業華やかしい頃、森林鉄道があった 地元HPより地図拝借 魚梁瀬地区の概要図 地元HPより地図拝借
ロックフィル方式の魚梁瀬ダム ダム湖の向こうに見えるのが千本山
「まあ よう来てくれたねえ」と言われれば悪い気はしない 魚梁瀬森林保護センター 結局、やなせの湯には入れなかった
縦走周回のお膳立て (自転車をデポ)
さて、千本山を下山した時に使う電動アシスト自転車を登山口へデポする為に奈半利川を上流に向かう。谷沿いの県道370号線
(通称魚千本魚梁瀬線)はクネクネしているが心配していた程落石も少なく途中、中川が分岐する付近で左岸から右岸に渡り08時
丁度千本山登山口に着いた。
以前、千本山へ登った時に千年橋を渡った記憶が蘇って懐かしい気持ちになった。手早く自転車をデポして魚梁瀬地区を通り越し、
ダム湖に沿って左折する。ここからの道は「大木屋・丸山線」と言って徳島県との県境部で大木屋小石川隧道を抜けて大木屋方面へ
延びている。途中で舗装が切れるが林業用の車が良く走っているのか未舗装でも小石川橋までは走り易かった。
千本山登山口は沢山の看板があるのですぐわかる 電動アシスト自転車を下して魚梁瀬直へ引き返す
小石川橋・猪が森登山口
08時40分小石川橋に着く。ここで川が二手に分かれ、真っ直ぐに進む道は東川に沿って雁巻山や汗谷山方面へと続く。大木屋・
丸山線はここで小石川橋を渡り小石川谷に沿って県境へと延びる。橋を渡ると右手にデカいユンボが止められて斜面の工事中だった。
すぐ先にある猪が森登山口を確認後、付近に駐車出来るスペースを探すが十分な程広い場所が見当たらない。林業のトラックが通る
のを邪魔する可能性があったので小石川橋を渡り返して09時00分広い路肩に停める。
08時40分 小石川橋を通過 前方右奥が猪が森辺りかな?
1)小石川橋登山口〜三角点「猪ヶ森」〜三角点「小石川」〜県境尾根 (4時間25分)
忘れ物が無い様に何度もチェックして小石川橋を渡り、少し進んだ左手の細い尾根の端にある登山口まで歩く。左手(西側)の
「東川」と右
に小道が沢に沿って延びている。10m程歩いて、この踏み跡が尾根に向かう様子がないので急斜面を尾根に上がる。
小石川橋から東川を眺める 雨季にはこのこの辺りもダム湖かな 歩いたドロドロ道を振り返る 山側が工事中だ
泥の左手、尾根の突端部が登山口だ 特に何の標識も無い質素な登山口 これが縦走開始点なのね
左手に道があるけど尾根に向かわない すぐに尾根に這い上がる
ほぼ自然林の細尾根は見通しが悪いが割と好みの場所でシャクナゲなども生えている。しかし15分程進むとあまり好みで無い植林
地帯に入る。10時頃になると植林はあまり手入れがされておらず雑木が沢山尾根を覆う。
雑木の密生地を避けながら、それでもスペースは十分でテープなどもみられる。10時20分ワイヤーが尾根に転がっている場所を
通過。足元は風化して恐竜の背骨の化石の様になった岩が見られる。
基本岩山なのかシャクナゲも見られる これだけのスペースがあれば文句なし 赤テープは林業用か?
雑木が多いので植林帯じゃないのかな? でもワイヤーが転がってってるし(登山口から約1時間)
節理を持った岩が風化して骨の様になっている じりじりと傾斜が急になる
四等三角点「猪(しし)ヶ森」 (1,008.83m)
10時50分地形図の破線は右手に尾根を外れているポイントに来たがその分岐はよく分からなかった。道を探すのは面倒だが尾根
を進むので気が楽だ。総じて植林地帯だが雑木に交じって時々周りの木々より太い幹の杉があるので恐らく天然杉だろう。道は相変
わらず尾根にスペースを持って続く。
11時15分赤ペンキが塗られた三角点があり、ここが「猪ヶ森」だった。地形図を見ると確かにピークなのだが、目でみる限り尾
根の通りすがりの地に感じる。
境界割出し作業をしている尾根で境界標石に赤ペンキを塗っていているのをよく目にするが、三角点にも同じように赤ペンキを塗っ
てしまう。委託作業員には境界標石も国土地理院の三角点も区別は付かないのだろう。
おぉ〜 さすが魚梁瀬〜 破線道が尾根の右手に分かれるのだが、尾根が快適なので気にならない
天然杉は枝に迫力がある アセビの木や切り株が見られる
ん? 境界標石みたいな赤ペンキが二つ有るぞ これって三角点じゃないのよ ダメじゃん ペンキ塗っちゃあ
11時15分 平成31年干支の山「猪が森」(ししがもり)を踏む ちょっと寂しい場所やなあ
さて、平成31年干支の山、4座目訪問がここ猪ヶ森三角点でつつがなく終了した。今からは海部山地の縦走周回となる。境界標石
には相変わらず赤いペンキが塗られているが、黄色いプラスティックの境界杭も同様に頭には赤ペンキだ。又この尾根にはコンクリ
ートの境界標石も見られた。杉がびっしり植えられた尾根は林業用の赤テープは見られるものの単調な景色になる。時々現れる巨木
の切株や残された天然杉からかろうじて刺激を貰う。
プラスチックの杭にも赤ペンキ セメントの杭にも赤ペンキ (ここは2種類ある)
ケンカをする樹 境界杭を食べる樹
ナデナデする樹 将来 宿杉を目指す樹
ねえ スクイーズ買って〜 甘える樹 少しずつ前へ進む樹
四等三角点「小石川」 (1,013.04m)
三角点・猪ヶ森と次の三角点・小石川は標高差があまり無い。従って尾根のアップダウンがあるものの比較的なだらかな植林帯の尾
根である。退屈な尾根を色んな根や幹の形をした杉を楽しみながら歩く。12時15分なだらかな1、007mピークを過ぎ、尾根
なりに歩いていると下りで少し南側へ振るので軌道修正する。尾根のなだらかなピークにはそこから更に支尾根が派生している場合
が多いから目指す高みが見えない樹林帯では注意が必要だ。
12時47分それまで以上にデカくて立派な天然杉が登場した。根本が窓になっている大樹は昔倒木の上に根を張った木の底が朽ち
て空洞になるメカニズムと聞く。そこから少し上り傾斜を進むと四等三角点「小石川」に着く。三角点の頭は予想通り赤いペンキが
塗られていた。ここも植林帯の尾根上にある何の変哲もない場所だった。
どこが根やら幹やらわからん モンローの美脚ボク おおぉ〜 こりゃデカい杉にかわらん
何という迫力の根元だろう! 何事もしっかりした土台が必要なんだなあ
切り株の前方に三角点峰らしきピークが見える ここの三角点も赤ペンキが塗られていた
12時55分 四等三角点「小石川」 (1,013.04m)に到着 猪が森三角点から1時間40分かかった
県境尾根へ
三角点「小石川」を通過して1,030mピーク辺りの地形は少し複雑なのだが、林業用テープと標識杭のお蔭でスムーズにコース
取りが出来る。13時20分この尾根で初めてヌタ場を見る。付近はやはり湿気があるのか大きな杉には苔が生えていた。尾根を通
じて足元は杉の落葉でフカフカなのだが、枝も沢山落ちているのでよく足に引っかかる。
13時35分左手の緩斜面に細い雑木が多く見える。地形が凹んでおりここに水が溜まっていた。恐らく先に見える急斜面を上がり
切れば県境尾根だと想像出来る。
13時45前方が開けて平らな雑木林になっている。県境尾根に出たのだ。正面に仙現丸、その右手に五郎丸、更に奥に県境尾根が
続いて見える。海部山地の主稜部だ。左手の谷から突き出ているピークが雁巻山だろう。
その後も自然林の多い尾根を上ったり 植林地を落ちている枝に足を取られながら下ったりする
13時20分 初めてヌタ場が現れる これも単調な尾根を歩く刺激だ 湿気が多い場所にはコケが樹に生えている
デカい切り株はいつ頃切られたのだろうか 13時30分 県境尾根手前は窪地に水が溜まっていた
13時40分 平らな雑木林となっている 県境尾根に着いた様だ 貧田丸へのターニングポイントを探して右に回り込んでみる
正面がビバークした1,150mピークでその奥が五郎丸だろう 尾根の左手はずっと高知県だ
左手前が雁巻山 その右奥が県境尾根(左端辺りがお化け杉ピークか?) その右奥が湯桶丸だろう
雁巻山の右肩、最奥に甚吉森が少し顔を出す
海部山地
県境尾根の徳島県側は海部川の水域にあり、この辺りの山塊は湯桶丸や甚吉森、西又山などをひっくるめて「海部山地」と呼ばれて
いる。海部川は二級河川ではあるが源流地域が未開発でダムなどが無いらしく日本有数の清流を誇る流れを持つ。又最近では河口付
近がサーフィンに適した波があり沢山の若者で夏が賑わうと聞く。
甚吉森の北側は那賀川水域になるのだが、その主流が流れる海川〜日和田(四足トンネル)以南の山々も海部山地とされている様だ。
那賀川の北側にも一つの山塊があり、つまり那賀川の本流と、その支流・坂州木頭川〜槍戸川に挟まれた六郎山〜青ノ塔〜平家平〜
権田山〜折宇谷山〜不入山〜新九郎山は「那賀山地」と呼ばれている。(ガクちゃんに教えて貰った)
それじゃあ西又山から北に延びる尾根上にある太助山〜駒背山〜赤城尾山〜行者山までを「海部山地」に入れるとして、石立山はど
うなんだ? 人間にも中途半端な立ち位置に在り悩みが多い人が居る。この石立山もそんな曖昧模糊な場所にあり、書物によっては
海部山地に入れるケースが見られるがどうだろう。枠にはまらないのに無理やり枠にはめようとする人間の習性は面倒だ。
海部山地は標高が低いが広い範囲に渡っている
辿りついた県境尾根部はただっ広い場所で取り敢えず右へ向かう。見晴しの良い場所に出てGPSで場所を確認するとどうも貧田丸
への尾根を通り過ぎてしまっている。辺りが開けて分かりやすい杉の樹の根元にザックをデポして少し尾根を引き返す。
2)県境尾根分岐〜貧田丸〜県境尾根分岐 (ピストン) 約2時間
一旦猪ヶ森・小石川尾根から県境尾根に出た場所まで引き返して良く周囲を見る。テープがあちこちに見えるが林業用が多いのでア
テにならない。こう言ったややこしい場所にはテープでは無く貧田丸への標識が欲しい。それに今まで見た様な境界標石が見当たら
ないのだ。
14時05分、取り敢えずそれらしい植林帯の中に又入って行く。感覚的には今来た尾根近くを又下っていく様な不安感がある。暫
く下ると尾根筋が出て来て、何とか貧田丸への尾根筋に乗った事をジオグラフィカで確認しホッとする。この県境尾根にある境界標
石は古いコンクリート角棒で古くて苔が生えており切り株と見間違い易い。この尾根も基本植林地帯だが細い自然林も尾根に混在し
ている。
14時20分最低コル部に下り着くと、右手の斜面に向かって赤テープが見える。ここが大木屋小石川隧道の高知県側へ下る登山道
だろう。徳島県側にも下りるルートが有る筈だが良く分からなかった。ここを下れば大木屋丸山線の道路に出て登山口まで帰る事が
出来る。でもザックは県境尾根にデポしているのでそうもいかない。
14時05分 少し掘れ込んだ踏み跡らしき場所から突撃する 直ぐに細尾根になって安心する ここからは一本尾根だ
ここの境界杭は古いコンクリート製だ 赤ペンキも塗られていない 明確な細尾根を下る
14時20分 最低コル部に下り着く 右手に大木屋小石川隧道へ下りるテープ道がある
14時25分尾根に間伐の木が沢山横たえられている。ここは左へ斜面を下る場所なのだが伐採木の為にルートが不明になる。暫く
伐採木に悩まされていると窪地を挟んで左手にも尾根が見える。どうもそちらが県境尾根らしいので無理やり倒木を乗り越えて左手
尾根に乗り換える。少し尾根を進むと土地所有者の花崗岩標石があり(株)三原色と記されていた。
尾根上に伐採木や枝が散乱してりる どこが尾根か分からず少し伐採木を乗り越えて下る
あれ? 左手に尾根があるぞ ここは二重尾根の様になっていた この辺りの所有者名
貧田丸(ひんでんまる) 二等三角点「東谷」 (1,018.71m)
植林と細い自然林が混在する急登となり、帰りが下りになる事だけを楽しみに息を切らせる。15時02分尾根のピーク付近に到達
するとススキが生えており鹿ネットが張られている。それに沿って右手に回り込むと15時05分「貧田(ひんでん)丸」に到着し
た。
貧田丸とは情けのない名前だが、この辺りに天水田があったという昔の言い伝えから付けられた名前らしい。雨水を利用した小規模
な田んぼがあったと言う事なら山名も貧田丸とか付けないで「天水田丸」とした方が良かったのにと思う。
三角点名は「東谷」となっており、貧田丸の東側を流れる東谷川から点名が取られている様だ。ちなみに、この東谷川は徳島県側か
ら南へ県境尾根を横切って高知県側に越境して「野根川」となる。
貧田丸は雑木林に囲まれた広々とした場所で最高の野営地然としているのでこんな場所で一泊したいものだ。中々夕方ギリギリにこ
のような野営適地に巡り合う事は期待出来ない。
激(ゲキ)上り〜〜 この上が三角点と思ったが甘かった 最後の急登を喘ぐ ピークに近づくと右手に植林が現れる
山頂部は稲でなく萱だった これが天水の水源地か? 大きなヌタ場あり
おっつ あそこに三角点がある雰囲気だなあ 15時10分 貧田丸の三角点「東谷」を踏む
あ〜〜〜 こんな場所で野営出来たらなあ・・・・・ 貧田丸にて
帰りは同じ尾根を歩き、今度は間伐材の倒木を避けて右手の県境部を這い上がり、16時10分ザックを置いた場所に復帰する。
帰りは伐採地を避けて右手の尾根から這い上がる 分岐直下は少し窪んでいるから道らしい雰囲気がする
分岐に這い上がって、貧田丸へのルートを振り返る 16時10分ザックに帰還 レンズに雪が付く
3)県境・貧田丸分岐(1,030P)〜仙現丸(1,061P)〜1,150P付近ビバーク地 1時間30分
南の山に雪が降る
登山口から今まで薄暗い植林地帯を這って来た。小石川尾根と県境尾根分岐(1,030P)からは尾根の左手がザレ気味の斜面で
開けており気持ち良くなる。しかし先程からウィンドブレーカーに落ちる細い雨粒が白い雪に変わっている。直前に調べた高知県・
魚梁瀬地区の天気予報では少し寒くはなるが天気は悪く無く、雨や雪の事は何も記されて無かった。
県境尾根を東北方面の仙現丸へと進む 尾根の左手は荒れて木々が少ない
正面は雁巻山、 左奥が千本山、 右奥が甚吉森か 相変わらず左手は荒れている
仙現丸 (1,061mピーク)
この辺りの県境尾根は右手(徳島県側)がびっしり植林されているのに左手の高知県側は灌木も少ない斜面となっている。
明日葉の生える尾根を進むと16時35分仙現丸と呼ばれる1,061mピークに着く。
仙現丸と言う山名は泉保さんの地図で確認しただけで名前の由来などは知らない。山名に「丸」が付いているから徳島県側からそう
呼ばれた名前だろう。(仙人が現れる?)地形図にはこのピークの東側に伸びる尾根の端に大木屋(徳島県海南町)地区があり南の
貧田丸との間に大木屋丸山線(車道)の大木屋小石川隧道(トンネル)が抜けている。
実際この山頂には標識などが無く、山名を知らなかったら気にも留めずに過ぎ去ってしまうピークだ。
振り返ると雪雲が垂れ込めている 奥が千本山 馬酔木(あせび)の花が咲いている
16時40分 仙現丸 1,061mピークを通過 特に山頂標識も無い
日暮れも近くなり雪がちらつく天気なのでビバーク地を気にしながら県境尾根を歩く。翌日の行程を考えると少しでも先へ進みたい
ジレンマとの戦いだ。県境尾根は相変わらず基本的には右手(徳島県)が植林、左手(高知県)が自然林なのだが場所によっては植
林が消える細尾根も有る。
今度は高知県側・奈半利(なはり)川上流の東川と徳島県側・海部(かいふ)川上流の大木屋谷源流部「大皆津谷」が県境尾根で対
峙する分水嶺鞍部(標高約950m)に向かって下る。そしてこの鞍部から1,150mピークに向かってのキツい上り返しとなる。
途中17時13分とてつもなくデカい基部を持った天然杉を通過する。これが「仙現丸の台杉」だろう。
空には暗い雪雲が垂れこみ、普段ならまだ明るい筈の夕方を物悲しい風景にさせている。左手には汗谷山と雁巻山のシルエットが見
えるが、その向こうの山々は良く分からない。
笑える程のスローモーションである。
左:自然林 、 右:植林 の尾根が続く 細尾根はルートが分かり易い
17時00分 最低コルからの上り、 節理が風化した岩 1,150mピークに向かって上りが続く
自然林の上り う〜〜ん デカい土台!これが仙現丸の台杉?
暗くてようわからんけど 正面右が千本山で 右端が甚吉森 その奥はさっぱりわからん
野営地
17時35分やっと1,150mピークに上り付く。振り返ると尾根の東側からガスが稜線付近まで湧いて来ている。この辺りは小
木や倒木等で野営する場所が見当たらない。少し進んで17時45分木立の間にスペースを見つけてここを野営地とする。
計画では最低五郎丸、あわよくば湯桶丸分岐まで行けると踏んでいたのだが、出発時間が遅くなり貧田丸へのピストンなどでここ迄
しか到達出来なかった。
からと言って決して悲観的にはならない。これが今回ベストを尽くし、しみじみと歩いた末の寝床なのだ。
荒れた尾根を進む 振り返ると仙現丸の東尾根には霧が湧いている
アセビの藪じゃツェルトは張れないわ 17時45分今宵はこの辺りでよかろうかい
お湯を沸かしてカップ麺を作り、余ったお湯でコーヒーを淹れる。尾根には寒い風が吹いているが薄いナイロンのツェルトを張り中
に入ると野宿とは別世界の宿となる。少しでも荷物を軽くする為に以前使っていたモンベルのドームシェルターIIという重量約
860グラムのシェルターを使っていたが、やはりペグや細引きを入れると総重量は1kg程になる。
そこで去年から一人用のモンベル・モノフレームシェルターを使いだした。重量はペグも含めて780グラムに収まる。たったそれ
だけの重さの違いと思われるが、こんな重量差が積み重なってザックを重くする。変なひし形なので
る。
移動式宿泊施設の中でシュラフに潜り込み地図を見ていると何かが降ってくる音がする。外を見ると雪が少し積もっていた。よく山
で一人で寝るのは怖くない?と質問を受ける。山で泊まった経験の無い人は「何かを恐れる」のだが具体的な何かのアイデアは持っ
ていない。ただ理由もなく何かを恐れるのだ。それは暗闇?動物?幽霊?山姥?、全くそれらの恐れなど無いのだが・・・
夜、ライトを点けてやることは結構ある。とにかく片付けと地図のチェックだ。特に水の残りは必ず確認する。家では食べれないス
ナック菓子だが、結局山でも食べる気がしない。あれほどシャバでは思いっきり食べたかったピーナツもとんがりコーンも袋から出
しもしない。未だに山に持って行く食糧はコレだ!という物に出会えていない。
ザックから荷物を引っ張り出して底に詰めたツェルトを取る このツェルトを張るのは10分程です
直ぐにお湯を沸かしてラーメンを作る あんりゃ 雪が結構降り出したぞ
翌日使う地図を順番に並べてしても仕方のない時間計算をするが、すぐにその行為が虚しい事を悟って寝る。
2日目:ビバーク地〜五郎丸〜湯桶丸分岐〜湯桶丸〜分岐〜お化け杉P〜うお山〜甚吉森
〜千本山〜千年橋登山口 (自転車にて小石川橋へ移動) は ここ