現代版「石鎚山~剣山単独無支援縦走」 平成27年10月14日〜10月26日(13日間)
第二章 大田尾越〜吉野川
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図
第2章、石鎚〜剣山縦走の核心部 大田尾越〜黒滝山〜吉野川(土佐岩原)
10月17日〜10月22日
大田尾越〜黒滝山〜吉野川ルート図
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図
備考:この山域の内、大田尾越から土佐街道・笹ヶ峰までは既に2年前縦走をしたのでその時の登山記を参考の為にリンクする。
予土県境尾根 東部トレイル:平成25年10月3日〜5日 大田尾越から土佐街道・笹ヶ峰は ここ
縦走4日目(10月17日) 約10時間40分
(大座礼山−大北川源流ベースキャンプ(食糧補給)−)大田尾越−東光森山−野地峰
直線距離:12、805km、 沿面距離:13,300km 累積標高差:2,920m
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 大座礼山〜野地峰
大田尾越
第一ベースキャンプの大北川源流地で食糧を調達し詰替えやゴミの片付けなどで1時間半ものんびり過ごした後09時30分に出発し
林道へ下って県道6号線を東光森山から続く長い尾根を眺めながら歩き10時00分大田尾越に着く。大田尾越は愛媛県側の筏津と高知
県側の大川村を結ぶ峠である。
筏津から大田尾越への林道は現在路肩が崩壊して工事中の為通行止めになっている。なお車は崩壊工事現場付近までは通行可能なので、広
い場所に車を停めて第一ベースキャンプの下見や食料デポを行った。普段は静かな場所だがアケボノツツジのシーズンには花好きな登山者
で賑わう。
ここから東光森山へ急な登山道が続く。
10時00分大田尾越から東光森山へ取り付く 県境尾根は整備されているが傾斜がムーチョ急だ
東光森山 1,486.19m 三等三角点名「東三森」
大座礼山の西側にある三ッ森山とよくごっちゃになるが、三ッ森山の三角点名が「西三森」であり、この東光森山の三角点名が「東三森」
である事から元々は三森であったのが光森と変わったのではなかろうか。
森と西黒森などセットになった山が多い。
東光森山はアケボノツツジが急な尾根沿いに咲いて西赤石の遠望美に対して、ここ東光森山ではアケボノの美しい近望を楽しむ事が出来る。
又ここでは珍しく白いアケボノツツジが見られる事でも有名な場所だ。
急坂を喘ぐとアケボノツツジやブナの紅葉が光に輝いて美しく、振り返ると昨夜居た大座礼山のデカい姿が見える。東光森山は2段ロケット
になっていて、最初の急登、アケボノ坂を登り切ると平坦な尾根回廊の向こうに本峰が姿を現す。シャクナゲの岩っぽい細道を下ると広く刈
り払われた登山道が本峰の懐まで続く。
ここから又急な上りが続くがやはりアケボノツツジやその他の広葉樹の紅葉に辛さを忘れさせてくれる。高度が増すにつれて所々にある岩場
の切り替えし場所では西側の展望所となり大座礼山の右手には笹ヶ峰・チチ山から沓掛・黒森への吊り尾根や冠山・平家平も見える。
良い秋の自然林ほど美しいものは無い。頭上にきらめく色とりどりの葉っぱは散りゆく前の輝きを山全体に発散させている。
最後の急登を頑張ると11時50分東光森山の山頂に着いた。ここには全く同じタイプの山頂標識が2つ並んでいる。
急な傾斜部にはロープが置かれている 昨夜ビバークした大座礼山がどっしりと構える
アケボノツツジの紅葉 ブナの黄葉
ここはアケボノツツジの名所なのだ ツツジは花も葉っぱも美しい
山頂付近になるとゴーロやザレ気味の斜面が出てくる いよいよ最後の上りになる
デカい大座礼山 奥に手箱・筒上 平家平・冠山 笹ヶ峰・チチ山 沓掛・黒森
11時50分 三等三角点「東三森」 東光森山からも快適な尾根道が続く
同じ様な山頂標識が2本立っている「東光森山」 大田尾越から1時間50分かかった
地味尾根を東光森山から野地峰まで歩く (約5時間)
さて東光森山から野地峰までが標高1400m〜1300m程の山名すらないピークを越えて地味〜な尾根を実に5時間も歩き
続けなければならない。これと言って目玉もない長い尾根では2つある三角点を通過する事が唯一、否唯二のカンフル剤となる。
しかしこの尾根は大登岐山近辺とは違い県境尾根がそこそこ整備されており藪がほぼ存在しないのが救いでもある。
四等三角点「別子」(1,374.82m)
東光森山からスズタケが刈り払われた明確な尾根道が続き、ブナの大木なども所々に現れて寂しい登山者を喜ばせる。30分程
で岩尾根となり1,464mピークから紅葉越しに東光森山を振り返る。
ここから尾根が少し南側へ湾曲するので野地峰への尾根が眺められる。幾つかのピークを越えて少し高度を下げてながら延びて
おり、その彼方にはキューピー頭の大登岐山も見える。
しばらくスズタケの刈り払われた尾根道を進むと13時00分リョウブと細いブナに囲まれて四等三角点「別子」(1,374.82m)
があった。こんな所に何故「別子」なの? この別子(べっし)の点名は恐らく南斜面一帯が属していた別子山村から用いられ
たのだろう。
名も無きピークを越えて尾根を歩く ブナが退屈な歩きに元気をくれる
東光森山を振り返る 奥に笹ヶ峰とチチ山が見える この時期は紅葉が美しい
野地峰に向かって延びる地味〜〜な県境尾根 左奥に大登岐山、その右奥に白髪山が見える
明るい登山道に三角点が見えた 13時00分 四等三角点「別子」を踏む
もうお昼なのだが午前中に第一ベースキャンプでたくさん飲み食いしたのでお腹が空かない。前方に鋭いピークが見えてその近く
に南の水谷地区に向かう古道が地図に記されているので右側を注意して歩くが、岩場が現れてとてもそんな道があるのかサッパリ
分からなかった。
14時少し前から前方に南半分が植林の緑に覆われている台形の山が見え出した。南に張り出した支尾根から1,4003mピー
クだろう。尾根道は相変わらずしっかりしており、両側にはスズタケと灌木が並ぶ。振り返ると東光森山からの縦走尾根が見渡せ
るが、やはり1,454mピークから尾根が湾曲しているのがわかる。
13時30分 前方に鋭いピークが見える 13時40分 シャクナゲの向こうにピークが見える
歩いたピークを振り返る 前方にターニングポイント台形の1,403mピークが見える
14時10分 歩いて来た東光森山からの尾根を振り返る アップダウンの様子が良く分かる
二等三角点「大野」(1,400.16m)
14時30分、急に前方の尾根がスズタケの藪になる。ここは1,454mピーク直前にあるV字型ターニングポイントで、左手
に縦走路が鋭く切れ曲がっているのだ。その曲がり角を確認した後、ピークまで笹藪を進んで引き返す。
へ支尾根を張り出したピークが見える。これが次の三角点がある1,400.1mピークなのだ。
平らなコルを抜けて岩場を通りスズタケの刈り払い道を進むと15時08分二等三角点「大野」(1,400.16m)に着いた。
ここから北に落ちる支尾根と、野地峰から同じく北に延びる支尾根に挟まれて折宇(おりゅう)、戸女(とにょう)などの集落が
あるが、その更に東側に大野集落があり、三角点名もそこから来ている。
足元のササは先が無くこの辺りではシカが多いとわかる。15時25分荒れ気味の岩尾根を少しの間左へトラバースして尾根に復
帰すると正面にかわいい悪魔=キューピーのホイップ頭、大登岐山が見える。16時05分南側に長い支尾根を持った1,342m
ピークを過ぎると分やっと前方に野地峰のシンボル、反射板が見えた。野地峰は少し標高が低いのでその姿を確認するには相当近づ
かなければならないのだ。
見上げると色とりどりの紅葉だ 地面はスズタケの刈り払い道となっている
14時30分 1,403mピーク手前のターニングポイント 左手から来て右手に下る
笹藪と紅葉の登山道が続く 奥に大登岐山が見えるが野地峰は1,342mPの支尾根で隠されている
15時08分 2等三角点「大野」を通過 その後、少し荒れた尾根となる シカの食害笹も多く見られる
ブナが立ち並ぶ尾根 16時05分 1,342mピークを過ぎると前方が開け
野地峰や南側の白滝王国が見えてくる
野地峰 1,279.4m 四等三角点「野路」(1,279.42m)
16時15分ススキ原となった滑車台跡のコルに到着。前回このコルを踏み跡を辿って左に下りてしまい、そこにも古い滑車台ら
しき物があった。しかしそこからのルートが分からず右手の尾根へ藪漕ぎして復帰した苦い記憶がった。
ルへ下りて右手へ進む。案の定ここに本家滑車台跡があり、自然に次の尾根道へ進む事が出来た。
この峰の高知県側にある「白滝鉱山」は江戸時代初期から各所で細々と経営され明治42年にこの小規模な鉱山を統合して名付け
られたらしい。立川銅山に似た歴史がここにも見られる様な気がする。又別子銅山と同じくここにも煙害や鉱毒の問題があり江戸
時代に下流の阿波藩の反対に遭い閉山を余儀なくされた時もあったが、後に藩主会談で再開されたと言ういきさつもある。大正時
代になって白滝鉱山から伊予三島港まで索道を通して鉱石や生活物資の運搬を行ったが、この名残が「野地峰の滑車台」としてそ
の残骸が見られる訳だ。
最後の経営は日本鉱業(株)によって行われていたが昭和47年と言うから別子銅山と同じ頃に閉鎖になった。それまでは別子銅
山の旧別子や東平の様な賑わいのある鉱山街がこの山の中にも存在していたのである。
して地域おこしに奮闘されている。
のどかな自然王国を眼下に見ながら尾根を時計回りにグルっと回って16時50分野地峰三角点に到着する。野地峰は古くから商
人や鉱山関係者にとって高知と愛媛を繋ぐ物流の峠であった。
三角点から少し進むと平坦な場所にマユミの木があり、その横に首なし地蔵が立っている。
シーさんと兵庫山稜線から大登岐山〜黒岩山〜野地峰を周回した時で、もう藪でボロ雑巾の様になりながらここに到達して感激し
たものだった。
2年前には尾根縦走で今回と同じルートで東に向かい、去年はマーシーさん、ふーみんさんと冬に岩黒山の大ブナを見に愛媛県側
からやって来た。今年は水場チェックに白滝側からも来ているのでこのお地蔵さんには4度目となる。こちらは懐かしいのだが、
なにしろ相手には顔が無いのでその表情を知ることが出来ない。
16時15分ススキに覆われた滑車台コルに着く コルを右手に進むと滑車が残地さてている
16時25分 尾根右手に見える反射板辺りが野地峰なのだが、地味な県境尾根の中でも特に地味〜〜な存在だ
正面に野地峰と反射板が近づく 16時50分 四等三角点「野路」 1,279.42m
野地峰山頂の首なし地蔵さんにご挨拶 バックは大登岐山
まさかの水場枯渇!!
2年前の縦走では黒岩山まで行ってテントを張ったが、給水の事もあり今回はここでビバークする。2〜30メートル先の反射板
広場に移動してビバークテントを設営する。平らな地形に手早くテントを張ってお腹が空いていたがここの水場は稜線から遠いの
で補水道具を持って水場に直行する。
場、猿田峠のトンネル口までが長い道のりだ。
大登岐山を赤く染めた後、夕日が西の尾根筋に沈む。ヘッドライトを途中から点けて足場の悪い登山道を下りる。何度か折り返し
た後、水場の近くまで来るが沢や水の音が全く聞こえない。まだ下なのか・・・と思った時に右手に見覚えのある樋(とい)がラ
イトに照らされて唖然とする。樋の中には落ち葉が溜ってカラカラなのだ! 嘘だ〜〜い 何ちゅうこと?
あちゃ〜 暗がりの中を白滝まで下りなければならないのか・・と覚悟して念のため水場を再チェック。すると水場横のコケが生え
た岩の上をかすかに水が音もたてずに流れている。
漏斗(じょうご)を出して思い切りコケに押しつけると少しだが採水出来る様だ。ただ、角度が緩いのであまり浄水器には溜らない。
何十回も作業を続けてやっと1リットル採水する。その後緑内障の目薬を差した後手をコケに浸して顔を洗う。私は左目が黄斑変性で
失明に近く、残った右目が緑内障で視野が狭まりつつある。緑内障の目薬は副作用を緩和する為に事後顔を良く洗わなければならない
のよ。
グランドシート(タイベックシート)を下に敷き、まずテントの 次にポールを交差させる この場合は中でポールを交差させ
四隅をペグで固定する(ペグダウンと言う) 、 ベルクロで所定の位置に
留めていく」
テント内部に銀マットを敷いて、ザックや荷物を放り込む 10分程で屋根付き一戸住宅の完成だ
明日攻める大登岐山 歩いて来た縦走路に陽が沈む
むむtっ 水が無いじゃん!! 枯葉が溜ってるよ〜〜 岩のコケに漏斗を力一杯押し付けて補水する
疲れ果てて月夜の登山道をトボトボとテントへと帰る。寒くないので外でお湯を沸かしてアルファ米の五目こはんを作って食べる。
スープは水セーブの為作らずコーヒーのみで夕食を済ませる。
飲んで早めに就寝する。
縦走5日目(10月18日) 約10時間30分行動
野地峰−黒岩山−大登岐山−兵庫山−渡り尾根ビバーク地(玉取山手前)
直線距離:7,356km、 沿面距離:8,013km 累積標高差:1,502m
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 野地峰〜玉取山
05時頃目覚めて例によってダラダラとテント内の片付けにかかる。06時に外を眺めるとキューピーのホイップ頭と黒岩山の稜線
が背後からオレンジ色の朝陽を浴びて黒く浮かび上がる。片づけをしながら眺めていると06時30分朝日が上がり一辺に明るくな
った。
さあ、今日は気合を入れて歩かなければならない核心部だ。07時00分眩しい朝日に向かって黒岩山へ向かう。去年ふ〜みんさん
達と歩いた笹藪は広く刈り払われてニコっとする。ひょっとして大登岐山も・・・まさかね
夜明け前のシルエット 大登岐山と黒岩山 07時00分出だしの笹藪が綺麗に刈り払われていた ラッキー
黒岩山 三等三角点「麻谷山」 1,341.69m
両側は背の高いスズタケと灌木だが県境尾根は広く刈り払われており歩き易い。30分程で黒岩山の取り付き部へ着き高度を上げて
行く。岩っぽい急登は相変わらず健在で縦走者の息を切らせる。急登を這い上がると尾根が左手に回り込み、緩やかな北斜面にはブ
ナが並走してくれる。大森山や佐々礼尾山にも負けない程の立派なブナ林だと思う。
黒岩山までは境界割出し作業が行われている 左手にはブナ林が並ぶ
県境尾根分岐をやりすごして前回テントを張った台地にザックを置く。2年間は笹が結構深くてテントのペグが地面に刺さらず苦労
したが、今は鹿が笹を平らげている。獣道にそって南側へ続く支尾根を少し下って08時00分黒岩山の三等三角点「朝谷山」を
訪問する。麻谷は野地峰の南、白滝鉱山のあった朝谷地区の名前から来ている。又、黒岩山三角点のある尾根を南側へ下ると、途中
に西側の麻谷へ通じる山道がある。
藪が酷くてあんまり訪れる価値が無い様な三角点だが、何か山頂近くに三角点があるとそれを踏まなければ落ち着かない。
えば、途中で眼下に野地峰とそれに続く西側の県境尾根、その奥に赤星山、二つ岳から赤石山系を見渡す事が出来る事であろうか。
黒岩山の広場 (前回ここでテントを張ったがその時より笹が後退している)
三角点へ行く途中、野地峰の反射板を眺める バックは二ッ岳から東赤石までが並ぶ
08時00分 三等三角点「麻谷山」を踏む 黒岩山のピークに帰る
08時10分県境尾根を少し東に下がり右手にある八方ブナ(玉ブナ)を見に行く。何せこのブナは黒岩山の超目玉商品なんだか
ら・・・
て次なる難行・苦行に向かわなくてはならない。
県境尾根を下って行くのだが期待したほどには尾根の状態は以前と変わり映えしなかった。果たして作業道分岐からは・・・・・
08時27分大ブナが立つ藪尾根分岐に到着する。ここから右へ直角に曲がって作業道が続くので以前、この作業道を何だろう?と
進んでみたが県境尾根から遠ざかるので引き返した場所だ。
割出作業は全く行われていなかった。 残念 !!
(
黒岩山のピーク手前にある県境尾根分岐 相変わらず紅葉が美しい
黒岩山の女王「玉ブナ」別名「八方ブナ」 確かに四方八方に腕を空に向かって延ばす
大登岐山のキューピー頭を見ながら稜線を下る 08時32分 藪歩きの開始目印のブナ これを真っ直ぐ進む
(右手に刈り払い道が下るが、そちらには行かない事)
試練の藪漕ぎ、大登岐山へ
カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図 黒岩山〜大登岐山
第一ステージ(前半) 黒岩山の藪尾根の玄関にあるブナ〜下川峠 (約2時間)
尾根には刈り払いがなされていない事は覚悟の上だが、何故県境尾根の境出し作業があちこちで盛んに行われているというのに何故
ここだけ??
藪尾根のスペースを選びながら県境尾根を進むと15分程で大岩の左を進む。そこを過ぎると猛烈な笹藪となり、少しブナのある左
手へ尾根を外したりするが、すぐに尾根の高さに追いつかず戻らなければならない。この辺りにはやはり鹿が多く、スペースのある
笹藪は結構先端部が食べられている。しかし尾根部の笹藪が濃い場所はさすがに鹿も手出し(口出し?)が出来ない様だ。
09時35分この尾根のターニングポイント1,369mピークに差し掛かると西側が開けて野地峰のみならず大座礼山やその彼方
にチチ山が見える。でも前方の大登岐山はピークに阻まれて姿は見えない。その後の笹藪はあくまで濃く、もがきながら進む。
黒岩山から大登岐山への県境尾根は当然の事ながら一直線ではなく、1,369m台地が南へ張り出しているのでグルリと回り込む。
このなだらかな地形が曲者で笹の勢いが強い場所では猛烈な笹藪となる。藪の中では時々赤い境界杭を発見して県境を歩いているの
だと確認する。
10時30分、突然藪の中に別天地の様な空間が現れる。この外れが「下川峠」でここから南へは下川川に沿って下川地区を経て早
明浦ダムへ、北は落合から法皇湖へと続く山道があるのだがそんな道を探す余裕は無かった。
最初は比較的フツーの笹藪 08時47分 大岩の左手を抜ける
そこそこの笹藪でウオーミングアップ 09時00分ブナが美しい 尾根を少し左に外して歩く
信じられない程快適な尾根もちょっとだけある 09時20分獣道を辿りながらスズタケ藪の中を歩く
藪から頭上を見上げるとブナが美しい 目を足元に向けるとこんな笹藪
09時30分 1,369mピークに差し掛かると黒岩山とその右側に野地峰の反射板が見える
笹を掻き分けて1,369mピークに向かう こんな簡単な場所にだけ赤テープは存在する
10時02分 1,369mピーク付近を歩く 10時15分足元に県境杭があった
1,369mピークを越えると前方に大登岐山が現れる 足元は相も変わらずの笹藪が続く
10時30分 藪の中の別天地 下川峠付近 シカの集会所で笹が食害で減りシダが生えている
第二ステージ(後半) 下川峠〜大登岐山 (約2時間)
別天地「下川峠」を過ぎると大登岐山へ向かって猛烈な笹藪の上りとなる。この尾根は大登岐山の基部で少し標高を下げるので10時
50分前方に大登岐山の全容が姿を現す。左手の稜線にはびっしり岩が張り付いて厳しい岩尾根の様相を呈している。
ここからコル部に向かっては猛烈な笹藪で、上を見上げるとブナなどの立木は美しいのだが足元は地獄である。獣道を頼りに笹を掻
き分ける。先ほどから左の靴が何度も緩んで笹藪で足がすっぽ抜ける。モンベルのリール式登山靴は無精者の私にとって靴紐を結ぶ
必要が無く非常に便利な物で、靴幅もぴったりなので愛用している。このリールが不調で何度も外れて押し巻きしても空回りするだ
け。左足が踏ん張れずに時間のロスが多くなった。
11時20分頃から傾斜が更に急になり笹や灌木を掴みながら藪を這い上がる。右手後方には苦労して歩いた藪尾根が見える。前方
には登岐山の南稜線が紅葉に朱く染まっている。
この辺りの笹藪には幅15cm程の獣道がありこれを辿らないと進めない程の密生地となっている。倒木などでこの獣道を失うと絶
望感に陥る。こんな時は「いつまでも続く訳はないんやからね」と自分に言い聞かせる。
一旦小ピークに這い上がり時計を見ると12時だった。この辺りから灌木が増えてそれを掴んで笹藪を這い上がるが、ザックが枝を
クリア出来ずに何度も引き下がる。覚悟の上だがこの辺りが今回の縦走最大の試練が尚も続く。
12時40分見覚えのある岩の左手を這い上がる。見上げる稜線の上が空になりこの戦いも終わりが近いと感じさせる。
分目印のペットボトルが見えてドウダンツツジに彩られた大登岐山の稜線部へ這い上がった。
10時40分 ひどい笹藪へ突入する ブナを見上げて喘ぐ
笹藪が薄ければいい尾根なんだけどなあ 笹藪の背丈は私の背丈と同じです
10時52分 尖峰に大登岐山が見える 尾根の左端には沢山の岩場が並ぶ (この岩場の右側を通る)
大登岐山の稜線部が見える 我慢 がまん ガマン
12時02分 大登岐山の左面にある岩場が見える ここまで来ると大体のルートがわかる
狭い獣道をひたすら見つけて辿る 振り返る 1,369m 中間点ピーク
ず〜〜と藪が続く 左手に岩場が見えてきた
木の幹を掴んで這い上がる 12時40分 見覚えのある大岩の右手を抜ける
もう上には青空しかない おっ ペットボトルが見えた やった〜〜 12時45分 大登岐山の尾根筋に這い上がる
大登岐山 1,477m 別名:天狗(岳)
最初に大登岐山へ来たのは寒川のアウトドアショップ「クロスポイント」の掲示板に紫雲さんが「大登岐山へ誰か一緒に行きません
か?」との書き込みがきっかけだった。何となくの乗りで私とマーシーさんがそれに参加する事になった。初対面の三人だったが直
ぐに打ち解けて桑野川沿いに車で行き、東側の尾根伝いにここへやって来た時にマーシーさんが「ここから下がります」と言って
「マジかよ〜」と思った程意外な黒岩山への下降点だった。
今、その地点へ三度目に立って、黒岩山のブナ・藪尾根分岐から実に4時間ちょっとの猛烈な笹藪との格闘の果てに何故ここにドン
ピシャ辿りつけたのか不思議な気がした。
風が心地よい岩尾根に立って大登岐山の南斜面を見渡す。この美しさは一体なんだ?!人間の侵入を苦しめる難関地は「そんな事知
るかい!」と言いたげに自然の美しさに包まれていた。
今日は水場が無いので少しだけの水でうがいをして行動食のビスケットを食べながら再び眼下に広がる自然林と歩いて来た県境尾根
を眺める。石鎚・剣山縦走の第一難関は突破出来たが、道のりは尚も長く栃尾山の北尾根には第二の難所が待っている。
次の兵庫山へはこの場所から反対方向へ下るので重いザックを置き少し東側にある大登岐山の山頂へ岩尾根を進む。大きな岩テーブ
ルの奥にシャクナゲに囲まれた白骨樹の倒木があり、大登岐山の山頂標識が掛けられている。
かは良く分からない地形だが、雰囲気として山頂とするに申し分のない場所だ。そして地元では「天狗岳」と呼ばれていたのも肯
(うなず)ける。お決まりのシェーで記念写真を撮って分岐へと引き返す。
大登岐山のテラスへ岩場と藪を越えて向かう 大登岐山の山頂標識が掛かった岩テラス
岩テラスから見下す光景は藪山とは思えない美しさだ
12時55分 大登岐山の岩テラスでシェ〜〜 登岐山は少し標高が低い 三等三角点名は「下川峠」
歩いて来た野地峰から大登岐山への尾根が全部見渡せる
兵庫山 1,302m 四等三角点「兵庫山」(1,303.15m)
13時10分崖の様な急斜面を丁度這い上がった斜面の反対側に下る。大登岐山の県境尾根部は鋭い岩場となっており直接下る事は
出来ない。先ず北に向かって急斜面をシャクネゲの木を滑り止めにしながら下った後に適当な所から左手の県境尾根へ復帰するのだ。
県境尾根に復帰すれば手品の様に又境界杭と境界割出し作業テープなどが現れ平和な尾根道となる。北に向かうこの県境尾根にも予
土県境独特のササが現れるが、もはやそれは大登岐山南面の狂おしさは無く、背丈も短い上品な物だった。上空を美しく染める高木
の紅葉を今はゆとりを持って眺めながら歩く。
く以外はルート上問題になる事は一切無かった。
少し荒れ気味の小ピークへと向かうと14時40分ザレ場の様な場所に兵庫山の三角点を確認する。
高松一高山岳部OB・OG会の石鎚・剣山縦走記念」プレートが掛かっている。期間は1971年12月21日から翌年1月5日ま
でと記されている。(16日間) 今から40年以上も前からここに掛かっている筈は無いので、後年ここにプレートを置いたと思
われる。何故この兵庫山に? と同時に一体どんな方達がどんないでたちでどんなルートを歩いたのか・・・想像を掻き立てられる
ロマン一杯のプレートである。
ここで行動食のビスケットをかじりながら小休止する。2年前より30分程遅れてはいるが、これは出発点が野地峰と黒岩山の差だ
と考えよう。
大登岐山から県境尾根部は岩場となっており右手を巻く 一旦斜面を20m程下り、左手の尾根部へ復帰する
県境尾根に復帰すると平和な風景になる 13時35分 岩が現れ単調な歩きのアクセントになる
13時50分 多少笹藪っぽい場所になるが刈り払われて問題ない 14時12分 岩と紅葉のなだらかなピーク
14時37分コルから少し上ると少し荒れ気味のピークに到着 高松一高山岳部OB・OG会 石鎚・剣山縦走記念プレートがある
14時40分 兵庫山の開けた山頂で休憩する 四等三角点「兵庫山」 1,303.15m
兵庫山〜玉取山間の岩尾根
予土県境東部ルートの難所は大登岐山と栃尾山北尾根の笹藪だと言う事には異論は無い。しかし兵庫山から玉取山の間にある岩尾根
も重いザックで通るには十分に難関の資格がある。
兵庫山を出発して10分程で県境尾根は北から東へ向きを変えて少し下って行く。うっかりすると北側の天堤山へ行ってしまうので
ここは意識的に右へ曲がる注意が必要だ。このコーナーだけ気を付ければ後は細尾根となるので心配は無い。ブナが並ぶ尾根を進む
と風景が荒れて来る。石ころが多い痩せ地からなのか、はたまた鹿の増えすぎなのか地面が露出して倒木が多い。
15時30分になると大きな岩が出現する様になり尾根の様相が変わってくる。10分程進むと又細尾根に変わるが16時に垂直に
近い岩盤が眼前に突っ立っている。岩の右手を天然ヒノキに掴まりながら這い上がると、又更に鋭い岩盤が現れて恐れをなす。ザッ
クが重いのでバランスを崩さない様に注意して這い上がる。16時30分右手から斜面を這い上がると大きな天然ヒノキの幹を潜り
、やっと岩場が終わってホッとする。
兵庫山から10分程下った場所に右へ尾根がターンするので注意が必要 東への尾根に乗ればのどかなブナ尾根になる
15時05分 右手が荒れた尾根が現れる 前方にギザギザハートの岩峰が見える
15時30分から岩尾根の開始となる 15時35分岩尾根を少し左へトラバースする
15時48分 岩の細尾根が美しい 16時02分 この岩質は大登岐山と全く同じで尖っている
石旅山の尾根向こうに奥工石と白髪山が見える 慎重に岩場を這い上がる
16時20分 出た〜〜〜 岩場のハイライト これを這い上がって行く
最後は裂けた大岩の右手を巻いて進む 16時30分 岩場終了の目印 天然杉を潜る
右手の厳しい斜面越しに石旅山の尾根が並びその向こうには奥工石らしいピークが見える。
に立つ殺風景な細尾根を30分程進むと17時08分県境尾根ジャンクションに着いた。
兵庫山からほぼ東方面に進んだ県境尾根はここで急に北へ振る。尾根筋は真っ直ぐ1334mピークまで延びた後、一本は汗見川の
谷へ消え、もう一本は南側へと回り込み石旅山を経て桑野川へと消える。
一方、北側へ延びる県境尾根ときたら最初は単なる平坦な山の斜面で、ここに境界割出しのテープや灌木を伐採した作業がなされて
ないとターニングポイントだと分からない。
この場所に初めて来た時にウロウロした記憶があったので、先日白髪隧道・猿田峠へ水場の下調べに来た時に玉取山を経てここまで
足を延ばして確認に来た場所だ。今回で3度目になるのでここから玉取山への吊り尾根になっている事を少し前から余裕を持って確
認する事が出来ていた。この厳しいロングトレイルの間に少しでもストレスを減らすべき水場やルート確認を事前に行っていたのが
ここで活きる。
勢いキリ良く玉取山まで進みたい所だが前回同様、この吊り尾根のどこかでビバークを覚悟する。左手から差し込む夕陽を浴びて金
色に輝く木々も時間と共に物悲しい風景になってくる。17時20分に前回ビバークした細尾根を通過し、10分程下った場所にス
ペースを見つけて素早くテントを設営する。
岩場を抜けると又平和な尾根道となる 17時08分ここから北へ下がり玉取山へ向かう 境界割出がある
ターニングポイントから少し下がると細尾根となっている 17時30分 細尾根の途中でビバーク
水は1リットル程残っていたが節約する為に夕食はお湯を沸かさずエナジーバーやビスケットで済ませる。早朝からの厳しい一日の
行程を頭の中で辿りながら就寝する。
ビバーク地−玉取山−白髪隧道水場−大森山−佐々礼尾山−中川峠−水場(約1時間) −三ッ足山−ビバーク地
直線距離:10.404km 沿面距離:10.719km 累積標高差:2,099m
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 玉取山〜三つ足山〜ビバーク地
玉取山 三等三角点「玉取」1,330.40m
04時半目覚めテント内の片付けを始めて05時30分に朝ごはんも食べずヘッドライトを点けて出発する。細尾根を抜けると平ら
な地形になるが上りなので不安は無い。境界杭が現れる度に「ありがとうよ」と言いながらタッチをして玉取山へと丸っこいピーク
を右手に回り込む。
石柱と境界割出し作業の赤いテープがあったので三角点かと良く見るがどうも違っていた様だ。夜が明けて暗い樹林帯を通して右手
の空が明るくなって鳥の元気な囀りが木霊す。
石鎚山系の東部自体がマイナーな山域だが、その中でもこの兵庫山から玉取山界隈は特に地味でアプローチの悪さから人気の無い山
域となっている。
っている。
05時30分に出発 夜明け前のシルエット 奥工石、白髪山 06時00分 玉取山 三等三角点「玉取」1,330.40m
参考写真(平成27年5月27日 水場チェック時)
玉取山ジャンクション尾根 (縦走時はこの境界杭をライトに照らして歩く 明るい時の 玉取山・三角点
06時20分 岩場を左右に巻く 06時40分 ブナ林に朝陽が差してくる
猿田峠と水場
06時50分1,274mピークから北に方向を変えると木々の間に少し尖った大森山が見えてくる。岩がちな細尾根をどんどん歩
くと07時20分前方が開けてススキや灌木、スズタケのコル部に下りる。前方には大森山の西端が聳え。このコルが西側の冨里に
ある猿田地区の名前から「猿田峠」と呼ばれている様だ。
右手に大森山が見える 07時00分 岩場っぽい尾根が現れる
7時25分 猿田峠のコル部を望む 鉄塔保線路の為、笹やススキは張り払われている
猿田峠 住友共電・物部線 119番鉄塔 (5月27日撮影) 猿田峠・ 大森山登山口標識(5月27日撮影)
ここには住友共同電力の物部線119番鉄塔があり、地下には白髪隧道(トンネル)が抜けている。住友共同電力の物部線は私の故
郷新居浜の煙突山付近を通ってはるばるここまで続いて来ている。
この峠を挟んで東西の鉄塔保線路が主に大森山への登山道として利用されておりそれぞれ20分程下りると水場がある。事前に歩い
て調べたがここは東側の沢にも良い水場があるが、西側の白髪トンネル口へ下りた方が足場も良く、舗装道路横から水が取れるので
ザックを峠に置き西側へ鉄塔巡視路を下る。
晴天続きで少し不安を感じながら07時50分白髪トンネル西口に着くと、石垣の間から少しではあるが水が落ちていたので安心す
る。ここはトンネルの山側に沢があり最悪この沢へ下れば水が確保出来る。
持って来た浄水器を通してペットボトルや水バッグに給水をする。トンネルの入り口には通行止めの大きな看板が掛かっており、舗
装道路の脇でバーナーでお湯を沸かしていると車がやってきてトンネルの中に入って行った。あれ?トンネルは通行可能の様だ。
縦走路から水場に下りると相当時間のロスがあるがこれは長期縦走の宿命だ。体を濡れタオルで拭いて足を溝に入れて洗う。それを
終えてアルファ米の山菜おこわとポタージュスープを作って豪華な朝食を取る。水場で食事をするのは当然の事ながら水の心配が無
いので平和な気持ちになれる。あっという間に1時間以上経過したので水を抱えて峠へ帰る。
平成27年5月27日 猿田峠水場チェック時のGPSログ図
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図
猿田峠 西側の水場 (白髪隧道トンネル口)
正面がトンネル口 その右側の崖から水が落ちてくる 採水の様子
猿田峠 東側の水場 (鉄塔保線路沿いの沢)
登山道を10分程下りる 水場は沢部
大森山 1,433m
09時50分重たいザックを背負い大森山へ向かう。大森山は佐々礼尾山とは同じ山体にあってその西側にあるピークに山名板が付
けられている。大森山と言う山名は全国的にも沢山あってポピュラーな名前で、四国でも7山あり、この大森山が四国では一番背が
高い。
猿田峠から壁の様に立ち上がる急登を1時間程かけて台地の縁へ着くのだが、その間各所に岩場があって今まで歩いて来た西側の大
展望が広がる。登山道はロープなどが敷設されており普通の登山者であれば危険と思われる様な場所は無い。
11時少し前、大森山の西縁に上がって感じるのは鹿による台地の荒れ様だ。立木は枯れ果て、笹はちぎれ果て、ペンペン草の代わ
りにシダが生い茂る。北面に立つ大ブナもこんな風景の中では何か落ち着かない。なだらかに北側へ落ちて行く斜面に閑散と立つブ
ナの間が透けているので豊受山〜赤星山の法皇山脈が並んでいる。
南東へ延びる尾根の1,433mピーク、大森山に11時15分到着する。木の枝に山頂標識が無ければ通り過ぎてしまう場所だ。
水場から鉄塔保線路を辿って猿田峠へ帰る 大森山の西端が綺麗に見える
岩も出て来るがちゃんとした登山道が続く 見上げる様な急登を上がる
10時40分 大岩展望所から歩いて来た県境尾根をしみじみと眺める
11時00分 大森山の西端に上がる 鹿害の笹や灌木で殺風景な平原だ
ブナの名所 大森山プラトー
11時16分 冴えない大森山の山頂に到着 次の佐々礼尾山への間には1つ藪っぽいピークがある
佐々礼尾山 三等三角点「大平」 1,404.20m
大森山から10分程東へ進むと樹林に覆われたトンガリピークの向こうに笹原を持った佐々礼尾山が見える。このトンガリピークか
ら北側に佐々連鉱山へ続く道がある。11時50分笹藪の濃いピークを抜けると前方に懐かしい佐々礼尾山が現れる。稜線を挟んで
北側が樹林帯なのだが南面には笹原が広がっている。
この1,400m程の樹林帯標高に笹原が存在する訳はこの辺りの地形に関係があると想像出来る。西側は大登岐山〜兵庫山〜玉取
山〜大森山、東は三つ足山〜工石山〜白髪山に囲まれて袋状になっており、汗見川の谷間を南風が佐々礼尾山の南面に向かって集ま
って駆け上がる。直前で大森山と佐々礼尾山の複雑な南尾根で谷が尚も狭まり強風が吹きあがって樹木の生育を許さない事が笹原が
存在する理由だろう。
佐々礼尾山は北側にある佐々連鉱山(昭和54年閉山)と名前に因果関係がある筈だが、どちらの名が元祖か良く分からない。
12時15分なだらかな笹原を登って佐々礼尾山に着くと登山者が2人帰り支度をしていた。話をするとどうも今朝、白髪隧道の西
口で給水中にトンネルの中に入って行った車の人達だった。見ると年配で大柄な男性はザイルを体に巻きつけている最中でその手際
は熟練者だった。徳島から来たと言うので「ひょっとしてやぶ山歩きさんですか?」と尋ねるとビンゴだった。
私が山のHPを始めた頃、色んな先輩方のHPを拝見させて貰ったが、徳島のやぶ山歩きさんもその一人だったのだ。帰りを急がれ
ているお二人を見送って中川峠へと進む。
11時30分手前のピークへ向かう ピークは結構笹が深い
この辺りのブナも小振りだが美しい 右手(南側)が笹原、左手(北側)が樹林帯の佐々礼尾山
12時15分 佐々礼尾山で徳島の「やぶ山歩き」さんに会う
いつまでもお元気で山歩きを続けてね〜 お二人を見送る
12時30分佐々礼尾山の東端に出て南南東へと尾根を下る。大森山からずっとなだらかな北斜面には立派なブナで賑わっている。
15分程下ると最初のコル部に出るが、以前に中川峠の水場確認に来た時に善次郎さんから紹介された「大ブナの駄場」を見に来た
時に歩いた林道がすぐ左手に見える。 この林道へ下りたら中川峠まで楽ちんなんだけど・・・誘惑に負けずに前方のピークを目指
して紅葉の樹林帯を進み13時15分1,392mピークに達した。右手後方には大登岐山が両翼を広げている。前方には中川峠
から向こう側の稜線、つまり奥工石山〜三つ足山〜カガマシ山の稜線が屏風の様に立ち並ぶ。
前回6月4日にこの尾根を歩いた時も最後のピークから猛烈な笹藪にルートを失ったが、今回も尾根の縦走路が分からなくなり少し
北側にズレた様だ。まあこの尾根は北側に林道が並走しているのでいざとなったら左へ下れば林道に下り着くから安心だ。
12時26分中川峠へ向かう 峠は奥のピークの向こう側 気持ちの良い縦走路
12時45分 1,392mピーク手前のコル 左手に林道が延びる 林道への楽ちん誘惑に勝って縦走尾根へと進む
この界隈もブナがとても美しい 紅葉の樹林帯を1,392mピークに向かう
結構イケる風景だ この辺りはとても雰囲気が良い
ピークが近づく いや〜〜美しい場所だ 13時10分 1,392mピーク手前
中川峠
14時00分広い林道が尾根をクロスする「あすなろ峠」に出る。林道を右手に進めば水場に近いのだが、やはりここは縦走路
を意識して藪尾根へ入って行く。1、244mピークを越えて14時15分「中川峠」に到着する。
中川峠へは北の愛媛県側にある集落「中之川」から林道をへて登山道がここまで延びている。南側は登山道を下ると坂瀬林道から
さめうらへ至る。
さて、問題は次の水場が野鹿池山まで無いって事だ。ここは翌日の栃尾山北尾根の藪格闘に備えて水の補給が必要だ。本日2度目
の給水ロスは痛い所だがフルに水を確保する為にザックを置いて水場に下る。
13時20分 1,392mピークを越えると中川峠へと下って行く (その手前にあすなろ峠ってのがあるけど・・・)
急に笹藪が濃くなりルートが怪しくなって来た 14時00分 林道交差点「あすなろ峠」を通過する
14時08分 中川峠のコル部が見えて来た 14時15分 ザックを置いて水場へ向かう
佐々礼尾山付近の林道網と中川峠の水場
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 中川峠界隈
14時30分水場に着いてビックリポン!! 水が無い〜〜 一滴も上から落ちてないぞ どうする? 取り敢えず涸れた沢を下流
に向かって下る。チョロチェロ水が現れるまでの10分が長かった。野地峰より少し効率が良い程度で浄水器へ採水してペットボト
ルへ移し替える。
15時05分急ぎ足で中川峠へ帰り、毎度お馴染み重たくなったザックを背負ってお地蔵さんに挨拶の後斜面に取り付く。県境尾根
は右手のブッシュにあり藪っぽい上にブナ無さそうなので、ここは以前と同じく美しいブナ斜面を選ぶのは当然やね。
むむっ 沢が干上がっているぞ・・・ 下流まで下がって水を発見
三つ足山 1,452m 県境尾根の三叉路交差点
30分程で稜線へと這い上がり左手の三つ足山へとやや上りの尾根を進む。15時50分1,389mピークを越えると又次のピー
クが待っていた。16時15分2つ目のピークを越えると前方に三つ足山の鋭いピークが見える。この下り斜面を15分程降下する
と平坦なコル部に着き県境杭を追いながら正面の山塊へと進む。
このコルには地図上では左右に登山道が横切っていて、北側は中川峠への登山道に合流、南側は三つ足山の南側尾根を巻いて仁尾ヶ
内林道へ続いているのだがもうそれを確かめる余裕は無い。
三つ足山へは少し南へ振りながら高度を上げて、最後は歩き易い岩場を這い上がる。17時05分やっと山頂部へ到着する。とても
傾斜が急でキツい上りだった。
南へ続く工石山(奥工石)1,515.9mから白髪山1,468.6mへの交差点となる重要な位置を占めている。
三つ石山の北外れに出て慎重に方位磁石を出して北東部への尾根を確認する。緩やかに下る斜面は深い笹原となっており獣道を辿っ
て進む。次第に岩っぽい二重尾根となり中央の凹み部には水が溜ったりして鹿の棲家の雰囲気が漂う。その凹んで平らになった場所
はテントを張るにはいいのだが、鹿が夜に沢山うろつくので右側の尾根を笹が薄くて平らな場所を探しながら下る。
17時35分辺りが薄暗くなって来たのでブナの樹の横でビバークする事にしてザックを下ろす。少し整地が必要で条件は良い場所
では無いが、タイベックシートを敷くと生地の強度があるのでまず笹株や小木がシートを突き破る事は無い。逆にその突き上げでテ
ント内に敷いた銀マットに穴が空く事が多い。
中川峠のお地蔵さん その右側に石組みの祠跡の様な物があるので適当にその辺りから南へ取り付けば良い
適当に南へ斜面を上る 傾斜は緩やかだ
この辺りは笹が低いので形の良いブナを伝いながら歩く
15時35分 稜線へ這い上がる 三つ足山が見える
16時30分 三つ足山手前のコルを通過 三つ足山へはムーチョ急登りだ ゼイゼイ言いながら這い上がる
16時50分 山頂付近に来ると傾斜がやっと緩やかになる 17時05分 三つ足山の山頂へとうちゃこ〜〜
三つ足山から北東へ方角を変える カガマシ山が夕陽に染まる 下り斜面は笹が非常に深い
10分程笹の斜面を下ると二重尾根になって右側を歩く 陽が落ちる前に何とかビバーク地を確保したい
形の良い尾根だが、笹がまだ深くてビバークテントが張れない 17時35分 ブナの根元にビバーク地を決定
2度の給水ロス時間の為に今回もカガマシ山まで到達出来なかった。テントを張った後お湯を沸かしてスープとアルファ米の食事を
する。夜にシカが辺りをうろつく音や鳴き声がするがあまり気にならなくなった。
ヘッドランプを赤色灯モードにして明日の行程地図を眺める。さて野鹿池山まで行けるだろうか・・・・
ビバーク地−カガマシ山−栃尾山−笹ヶ峰−三傍示山−南尾根基部林道部(立川越)ー尾根にてビバーク
直線距離:12.319km 沿面距離:12,642km 累積標高差:2,188m
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 三つ足山〜立川越
04時に目を覚まして又ダラダラと室内の片付けにかかり05時にテントを撤収する。昨夜どう考えても野鹿池山までの行程は厳し
そうだったので早めに出発する事にした。
この日の為に買った200ルーメンのエナジャイザーHDL200をおでこから照らして05時10分ビバーク地を出発する。カガ
マシ山までの尾根地形は右手が切れ落ちて、左手は緩やかな場所もあるがほぼ細尾根となっておりヘッドランプ歩きでも大丈夫だろ
う。
05時30分右手前方が白んで赤みを帯びた空が見え1,358mピークのシルエットが浮かび上がる。所々に小さな藪や倒木、シ
ャクナゲなどがあり効率は悪いが何とかルートを見つけながら歩き続けた。
ヘッドランプを直接おでこに付けると光がメガネのレンズが反射して前が見えずらい。面倒だが帽子を被ってその上からヘッドラン
プを頭に巻き、帽子の鍔(ツバ)が灯影を作らない様に内側へ折り込む。 200ルーメンの光量は尾根歩きに限っては威力を発揮
してくれる。
06時05分になると東の空が太陽の昇る兆しが現れる 尾根に陽が差し込む
カガマシ山 1,342.9m 三等三角点「大戸山」(1,342.53m)
06時を過ぎると空が明るくなって周りの状況が見えるので歩き易い。やはり太陽の恩恵は熱も光も計り知れない。06時20分山
際から太陽が顔を出し木々を橙色に染め始める。岩っぽい細尾根が続き木々の切れ間から右前方にカガマシ山の台地が見える。
境界杭などを確認しながら緩やかに尾根が右カーブを描き低い笹の中に付けられた踏み跡を進むと07時25分カガマシ山の三角点
に到着した。以前はこの辺り一帯背の高い笹が見られ三角点も笹藪の中に立っていた。それが2年前にここを歩いた時にはのっぺら
ぼうだったので余りの景色の変わり様に三角点を通り過ごしてしまった。その為、直前の栃尾山北面の水場チェックの時に念のため
この三角点を確認していた。
辺りはシダしか生えていない開けた場所となり果て、何故2年前に見過ごしてしまったのか不思議だが、分岐や標識の見落としは往
々に発生する。
あてられている」とある。尚 三角点名は「大戸山」となっている。
06時45分石標から右に回り込む 尾根は左が自然林、右が植林地帯となっている
07時25分 カガマシ山の山頂に着く (ビバーク地からここまで約2時間かかった)
カガマシ山を過ぎると左手に三ッ足山が見えて支尾根も北に延びている。昨日歩いた県境尾根の「三つ足山」と同じ読みだが、やや
こしいので北側にある方は「三ッ足山」とカタカナ書きにして分別しているのだろう。
ブナの配置された尾根を進みこの三ッ足山分岐を過ぎると08時1,233mピークから少しの間岩尾根が現れ東南東へなだらかに
下がって行く。
が逆転し、南側の緩斜面が檜などの植林地、北側の急斜面が自然林となる。
今年、この辺りの北斜面にある水場チェックに来た時に1,233mピークから北東部へのシャクナゲ尾根を下りたが急斜面でとて
もその先にある水場など縦走時に使えないと諦めたのだった。
られて単調な尾根歩きを慰めてれる。
尾根は以前と比べて相当笹が後退している 07時52分岩が現れ1,233mピークが近づく
栃尾山 1,222.3m 三等三角点「栃尾」(1,221.99m)
カガマシ山を過ぎて東南東に向かって一直線に伸びる尾根は右手の緩斜面に植えられた檜林の縁に沿って歩けば迷う事は無い。一部
笹藪が残り、県境尾根が荒れた植林地帯に少し踏み込む場所があるが、左手の急斜面沿いを歩いてもやがて県境尾根の標石に出会う。
08時25分北側(愛媛県側)の県道5号線登山口から県境尾根への合流点、栃尾峠にある私設道標を過ぎる。少し上り坂になり支
尾根が縦走路と合流するピーク辺りに達すると胸の高さ近くまで積まれた石垣の上に赤いペンキが塗られた山標石がある。いつもこ
の石積み標石を通るので変化の無い尾根の通過点ランドマークになる。
一旦コルへ下がった後、再び緩やかな上りを笹藪を抜けて進むと09時05分栃尾山の奥座敷・三角点に着いた。もしここに三角点
が無かったならば栃尾山とは分からないだろう。栃尾山の尾根はここから南の仁尾ヶ内集落に向けて落ちて行くが、栃尾山三角点か
ら向こうは笹藪となって踏み跡が切れているので間違って進む人は居ないだろう。
左手には美しいブナと紅葉の屏風絵が並ぶ 08時26分 石組のランドマーク
山頂としてはいかにも藪に囲まれた殺風景な栃尾山だが、縦走ルート上からは重要な中継地点となる
縦走第二の難関藪 栃尾山〜笹ヶ峰の渡り廊下
栃尾山から土佐・笹ヶ峰には北東へ続く尾根に乗らなければならない。栃尾山に何度か来ていないと周りが深い笹藪だらけなので一
体どちらへ行ったら良いのか途方に暮れるだろう。隆起や褶曲と一口に言うが、実際山を歩いていると造山活動の複雑さを思い知ら
される。
この栃尾山から笹ヶ峰の左肩1、029mピークまでには石鎚山系東部で大登岐山に次ぐ大藪が待っている。ここは思い切って栃尾
山三角点付近から左手の笹藪を東へ突入するしか活路は開けない。まさに藪の壁に向かって「突撃〜」である。
栃尾山と次に進む笹ヶ峰の間には県道5号線「川之江・大豊線」が通っておりコル部の下側を笹ヶ峰隧道が抜けている。この笹ヶ峰
隧道を挟んで西側(愛媛県側)には栃尾山・カガマシ山の登山口があり、東側(高知県側)には有名な土佐街道(北山越)と呼ばれ
る笹ヶ峰登山口がある。今年になって3度、新宮からこの県道5号線を使ってカガマシ山、栃尾山、笹ヶ峰、三傍示山へ土地勘を養
う為に通っていた。
さて付近を偵察の後、三角点近くに腰を下ろし朝から殆ど何も口にしていなかったので厳しい藪歩きを前にして行動食を取る。
09時35分身の丈をゆうに越す笹藪に突入してもがきながら10分程下ると前方が開けて意外にも木々と笹の美しいテラスとなっ
て進むべき方向が示されているのでホッとする。この渡り廊下は最初少し東気味に尾根が張り出して、前方に見えるテラスから北東
部へ細尾根が落ち込んでそれをクリアすると藪尾根がコルまで続く。先に述べたように笹ヶ峰隧道はこの渡り廊下のコル部直下を抜
けているのだ。そしてこのコル部から1,029mピークまでが地獄の笹藪となる。
10時10分テラスの北端から渡り廊下の全様が見渡せる。尾根の両側には植林地帯に覆われて一見何の変哲もない場所に見える。
高知県側の斜面には広い伐採地が一見ガレ場の様に白い肌を見せている。植林の上端を歩けば藪を回避出来るかも知れない。でもそ
んな手抜きをすれば県境尾根の縦走価値が下がって後悔する事になるだろう。
帰する。
しばらく藪が現れてガッカリしたり藪が薄くなって喜んだり天国と地獄を繰り返し10時40分急に前方の尾根が消えてオロオロす
るが、ここから又左手に回り込んで尾根が続いているのが見える。10分程で笹ヶ峰隧道の真上、この渡り廊下の最低部コルを通過
するのだがそこからがハイライトの笹藪となる。10cm程の獣道を探りながら藪を進むのだが長くは続かない。モンベルのリール
式登山靴は調子が悪い上に靴の中は笹屑の侵入で益々滑る。
人間の記憶って良いのか悪いのか実に儚い物だから前回の苦労を既に忘れ去っており、のこのこと懲りずに又やって来て新たな苦悩
を体感する。
ザックが太くて硬い、まるで中高年男性の願望の様な笹の茎に引っかかり全く前に進めない。折れて笹に引っかかった木の枝でさえ
大きな障害物となり、靴が密生した笹の根元に取られて足がすっぽ抜ける。渾身の力を込めて正面の笹壁に突撃する。突破と玉砕を
繰り返し比較的平坦な場所に11時50分到着し、倒木で出来たスペースに倒れ込む。やっと1,029mピークに到達した様だ。
09時35分分 とにかく北側の藪に突っ込む ブナ林が尾根を示しているのでそちらに向かう
10分程藪を下ると下界が開けて安心する でも 笹藪はあくまで深くて溺れそうだ
栃尾山を振り返るの図
10時10分 第一テラスよりこの渡り廊下の全容を眺める
テラスの左手から下側の尾根に下りる 10時35分 細尾根を進む
10時40分過ぎに尾根が少し左手に振る 11時05分 コル部へ来ると猛烈な藪 獣道を探す
たすけてくれ〜〜 溺れる者藪をも掴む 11時20分 ノックダウン ササダニ? 知るか〜〜〜
11時30分 大きな倒木に乗って栃尾山を振り返る まあいつまでも地獄は続かんやろ 天辺が見えてきたぞ
11時50分 1,029mピークに辿り着き笹屑を払い休憩する ピークからは少しだけ稜線を外して歩く
うがいで貴重な水を消費する
笹ヶ峰 1,027m 古来交通の要所、参勤交代(北山越)の道
前回はこのピークを越して暫く北へ真っ直ぐ進み引き返したお蔭で尾根に沿って少し北側にズラせば笹藪が殆ど無い事が分かった。
背丈の低い笹に変わった灌木地帯を尾根に沿って境界杭を確認しながら東へと歩く。藪が有る無しで歩くスピードが大きく違ってく
る。
ど注意が必要だ。丁度この地下を高知自動車道の長〜い笹ヶ峰トンネルが南北に通っているのだが当然トラックの通る音は聞こえて
来ない。
そのコル部から笹ヶ峰の肩に上ると12時25分、とりとめのない尾根上に四等三角点「笹ヶ峰」1,015.86mがある。笹
ヶ峰・山頂部の一角にあるこの三角点ピークを笹ヶ峰としてもよさそうなものだが、一般的には土佐街道横にある1,027mピー
クに山頂標識が立てられている。不遇なもう一つの笹ヶ峰を後にして10分ほど尾根を北東に進むと最後は若干の傾斜を上り12時
35分ブナの樹の下に山頂標識がある「笹ヶ峰」に到着した。ここには当然三角点は無く、代わりに赤いペンキで塗られた石標があ
る。
れいほくネーチャーハントが立てたこの山頂標識には標高1,016mと書いてあるが恐らくこれは先ほど通って来た四等三角点
「笹ヶ峰」の標高を記したものと思われる。このピークは三角点より高い場所にあるので山渓「四国百名山」にある1,027m
が妥当だと思われる。
一方、山渓分県ガイド高知県の山では笹ヶ峰の標高は1,020mと記されているし、同じ愛媛の山では笹ヶ峰の三角点はこの山頂
に置かれて標高は1,016mと記されている。
マイナーな存在ある事かを物語っている。
山のガイドブックがこんな有様だから山頂にあるリョウブの枝には笹ヶ峰・四等三角点と書いた登山者の私設アクリルプレートが
ぶら下がっている。どうも笹ヶ峰の四等三角点がこの山頂から南西方向に離れた所にある事を知っている登山者は少ない様な気が
する。
っと見て来たんじゃろう。
さて時間も12時40分となり先は長いし水もそんなに残っていないので笹ヶ峰で記念写真を撮ってすぐ土佐北街道へ下りる。こ
の場所には土佐藩主の歌碑とか北が伊予国、南が土佐国を示す大きな標木が立っており歴史ムード一杯なのだが、今年の四月に東
京の修一兄貴と土佐北街道を歩いてみたが石畳以外に当時を偲ばせる物は殆ど残っておらず結構退屈な道だった。
1,029mピークを東に少し下ると快適な尾根が待っている 感覚的には若干尾根を左に回り込んで笹ヶ峰へと進む
12時25分 傾斜を少し上がった尾根に三角点「笹ヶ峰」がある 三角点から10分程で「笹ヶ峰」山頂へ到着
12時35分 笹ヶ峰の山頂 奥に見えるのはカガマシ山だろうか
三傍示山 (さんぼうじやま、さんぼうじさん)1,157.8m , ( 三等三角点「大吾山」 1.157.71m )
この土佐北街道を挟んで真東の方角に細い踏み跡が三傍示山へと続いている。少々荒れてはいるがブナなどが立ち並んで中々の縦
走路である。しかし青い荷造りビニールテープが10m毎に現れてウンザリする。
ップダウンがありザックが重い。
13時26分前方が開けた場所に三角点の標柱があり石柱には黄色いペンキが塗られている。地図を出して確認するがこんな場所
に三角点は無い。この新設(?)三角点のある場所から前方に壁の様な稜線が見える。下見でここを歩いた時は反対方向から、そ
れもザックが軽かったのでキツイ印象は全く無かった。所が重いザックを背負っての上りは足が進まず時間がかかった。
13時55分南に県境尾根が下る事実上の三県分岐地点に着きザックを下ろす。ここから7分歩いて三傍示山の三角点を訪問する。
この三傍示山の三角点は正確には愛媛県と徳島県の県境部にあり高知県の土地地ははここには無い。三角点の設置目的は測量の為
だからそう都合良くドンピシャの三県境界部に置かれていないのは当然だろう。
12時40分土佐街道へ下りて向かいの三傍示山へ向かう 快適でわかり易い道なのにやけにテープが多い
以前は藪だったが刈り払われて快適な道になっている でも10mおきに付ける荷造りテープはイカンやろ
13時26分 何故か地図には無い三角点 奥が三傍示山 13時55分 縦走尾根分岐に着く ザックを置いて三傍示山へ
14時02分 三傍示山の山頂に寄る 三等三角点「大吾山」 ウィッシュ〜〜
縦走尾根(阿土県境尾根)の下りでチョンボ!
14時10分事実上の三県分岐地点に帰り、ここからは愛媛県とサヨナラして高知と徳島の県境尾根を南に下る。今まで比較的快
適な県境尾根だったが急に藪っぽくなる。この尾根ルートには多少不安があったので事前に歩いていたのだが、その時は下から登
ってで全く問題が無く安心しきっていた。ところが獣道の様な尾根をドンドン下っていると途中で県境杭が見当たらなくなった。
獣道は続いているがどうもおかしいと思いGPSで位置確認をすると南東へ続く尾根に乗ってしまった様だ。脱線場所からショー
トカットを試みるが藪と灌木でうまくいかない。
結局30分程ロスして15時05分県境尾根へ復帰し今度は境界杭を確認しながらひたすら南へ下がる。この尾根にはルートを外
した支尾根の張り出し部以外には難しい場所は無かったのだが、以前歩いたという油断と、やはり下りは注意が必要だったと反省。
15時50分一旦林道(布生山線)に出るが又尾根に復帰し16時00分尾根が再び林道(布生山線)に合流する。
14時10分三県分岐三叉路交差点から南へ下る 最初は笹の中を下る
ちょっとした植林を抜ける 自然林となる
14時30分 何かおかしい? 支尾根に入り込んだ様だ 15時05分 県境尾根に復帰してホッとする
県境杭(くい)を食い入るように確認しながら下る よしよし 県境杭があるある〜〜
15時53分 林道「布生山線」に出る 一旦尾根に復帰するが又すぐ林道に下りてしまう
「立川越」交差点、 怪しげな場所で緊急給水
三傍示山の南尾根を下ると貧弱な林道(布生山線)に合流しそれを進むと三叉路が交差する場所に出る。三叉路には「終点・林道
浦ノ谷 平線」の白いポールが立っている。ここから左手に少し上がった峠部が「立川越」と呼ばれる場所だとむらくもさんのH
Pで知った。この峠から西側には浦ノ谷を下って有名な「旧立川番所書院」へ至る林道が続く。一方東側へは藤川谷川を下って大
歩危へ出る県道が延びている。
地図を見ると破線の道が土佐北街道や阿波池田方面へ続いているので、高知から徳島へ抜ける山道だったと地理的に想像出来る。
さて、時間は既に16時となり次の給水場所、野地池山まではどうやっても届かない。当初の縦走計画より数日で全体的に4時間
程遅れて来てしまった。林道・浦ノ谷平線の舗装道路を歩けば多少遅くなっても野鹿池山の登山口まで行けるのだが、やはりここは
どうしても尾根縦走を続けたい。
この峠部が分水嶺になっており西側の沢までは非常に遠く、東側・白川谷川の水場はここから30分以上林道を下がらなければな
らないし・・・困った困ったコマドリ姉妹〜〜〜
この声がこまどり姉妹に聞こえたのか、ふと耳を澄ますと左の溝からチョロチョロ音がしているではないか。まさかこんな所で・・
半信半疑で5m程斜面を下ると錆びたデカい鉄管から水が落ちている。もしこれがが街中ならば下水菅にしか見えない。でもここ
は山中で民家も皆無・・・ちゅうことは林道の保全用水抜きに違いない! いやそう信じよう。
く無い。鉄管の割れ目から落ちる水をじっと観察する。
完全に山水・沢水やんかいさ
左手に溝?沢?もどきの窪地があり水の落ちる音がする う〜〜む これが水場と言えるだろうか? でも採水する
野鹿池山への尾根に這い上がってビバーク
時刻は16時45分、この林道沿いは平らな場所が多くてビバークにはうってつけなのだが、翌日の黒滝山から吉野川へ下る行程
に不安があったので少しでも進んでおきたい。
立川越から県境尾根の取り付き場所は少し複雑で、正確には三傍示山の南尾根を下り切って林道・布生山線に合流すると左手に見
える藪へと入り込み峠部で林道と合流する。このごく短い藪歩きはあまり意味がないので林道を峠部まで進んで行くと右手に土捨
て場の広場への道がある。
これを広場まで上がると右手から県境尾根に取り付く事が出来る。ここは既にチェック済みだった。16時55分土捨て場を左手
に見ながら藪っぽい細尾根を這い上がると20分程で東西に延びる主尾根に合流した。ここまではリハーサル済みだったがこれか
らの尾根は初歩きとなる。
植林地帯がやけに暗いので17時30分少し平らな尾根部でビバークする。水を確保出来たので心穏やかにお湯を沸かしてアルフ
ァ米のわかめご飯とクリームスープを作る。
林道「布生山線」を三叉路へと進む 三叉路から歩いてきた林道を振り返る
正面が県境尾根 三叉路を左に進む 林道から右の土砂捨て場へと進む この奥、右手より支尾根に取り付く
土捨て場の右隅に廃道がありこれを入って尾根筋へ這い上がる 支尾根を上って行く
17時15分 尾根筋へ這い上がる ここから歩き易くなる 17時20分 暗くなったので急いでビバークテントを張る
思えば今日も長い道のりだった。テントに入ってからも翌日の行程を地図で何度も眺めながら眠りについた。
縦走8日(10月21日) ザ ロンゲストデイ 約13時間40分行動
ビバーク地−野鹿池山・西峰−水場―野鹿池山・東峰−黒滝山−吉野川への尾根で日没、彷徨の末沢でビバーク
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 立川越ビバーク地〜吉野川ビバーク地
朝04時過ぎに目を覚ます。夜にシカが鳴いていたのでこの辺りにも沢山いる様だ。
行動食に手をやるが乾いたビスケットの類は水分が欠乏している体はそれを受け付けなかった。水は確かにセーブ気味ではあるが
必要量は補給しているつもりなのだがやはり運動量が多いので体脂肪や水分が体から抜けているのを感じる。
今まで4泊5日が縦走の最多日数であったが、今日で早くも未知の8日目を迎えた。ゆっくり歩いて体力を維持しているものの一
日当たりの歩行時間が長いので体もさぞやビックリポンだろう。
心配だった体の異変はさほど感じないが、やはり水分が欠乏しているのか便秘になっている。普段の生活では野菜をモリモリ食べ
るので快食快便なのだが、まあ山歩きではこれはどちらかと言えば歓迎されるべきものかも知れない。
立川越〜野鹿池山の尾根部
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図
05時30分ヘッドライトを点け、「今日も頑張るぞ〜」と気合を入れて出発する。急登を15分程上がるとピークの右外れに四
等三角点「浦ノ谷山」を確認する。真っ暗の為写真撮影失敗しこれは後日確認に行く事にする。三角点ピークを過ぎると尾根は基
本的に左側:植林、右側:自然林のパターンになり2つ程小ピークが続く。ピークから急降下すると06時15分左手に並走する
林道に最接近するコルを通過。
ライトを点けてビバーク地を出発 05時45分四等三角点「浦ノ谷」958.74m (写真は後日撮影)
左が植林 右が自然林のパターンが続く 左下に林道が見える (恐らく林道が見えるのはここだけ)
この後標高差110m程の過酷な上りがまだ充分に目覚めていない体をムーチョいじめる。ヘロヘロになって台地へ這い上がると
石標と07時20分境界石と杭の塊があり南への支尾根に注意を促す。この笹に覆われた台地の平らな県境尾根を15分程東北東
へ進むと929mコーナー・ピークに又同じような石標と境界杭の塊がある。う〜〜ん ここで少し悩んだ。不思議な事にここか
ら北へ下る尾根に境界杭が続いて見えるのだ。しかし進む県境尾根の方角はここから東南東に変わる筈でそちら側の地形は2重尾
根の様になって分かりにくい。
ここは地図の県境尾根方角通り2重尾根へと進むと先の尾根合流点あたりから又赤い県境尾根が現れた。そこからは稜線部が灌木
藪が続き、若干左下に藪を避けて進む。笹藪が所々出現するが長くは続かない。概ねこの尾根は問題なく歩く事が出来た。
森の様な景色はこの尾根には少ない 急な上り坂
徳島県境杭 高知県境界杭
大地へ上がると笹が深い平地が続く そのコーナーに標石や杭の塊がある ここから右手へ進む
境界杭が現れるとホッとする 時々ブナも現れる
灌木の藪が有るが少し左へ外して歩ける 08時20分 むむっ 林道じゃん!
08時20分突然尾根筋に林道が出現する。GPSで位置確認するが地図には記されていない林道だった。右手が開けて眺めが良
いので野鹿池山の西端から南側へ落ちる尾根が見渡せる。そしてすぐ先の尾根には四等三角点「鎌の谷」(1,075.15m)
があるのでそこまではひどい藪に入って確認の後、すぐ右手の林道に下りて先を進む。どうもこの林道は尾根の直ぐ近くを平行に
走っているのでこれが出来てからは境界割出し作業は行われていない様だ。
08時35分前方の植林尾根が広がって林道が右へ逸れて行き、正面の尾根が高度を上げる。ここが尾根への復帰場所と決めて這
い上がる。
08時20分 明るい林道へ出て行動食を取る 少し藪尾根に入り三角点「鎌の谷」を踏む
尾根筋に続く林道を歩く 08時35分林道が尾根筋を外れる場所から再び尾根に上がる
野鹿池山 (西峰) 1,303m
野鹿池山 (東峰) 三等三角点「糠池」1,294.40m
這い上がった植林の細尾根には大きな岩があり野鹿池山への懐へ入って行く。この標高差200m以上の上りは重いザックを背負
うと非常にキツくてスローもションの様な歩きになる。所々にある低木に掴まりながら体を押し上げる。09時05分一旦平らな
場所に這い上がり、その後右手の植林境界にそって若干右へ曲がりながら更なる高みへと進む。
笹が深くなった自然林の急登を喘ぐと美しいブナが現れ、その向こうに背中を向けた標識が立っていた。09時50分標識の表側
に回り込むと「野鹿池山(西峰)1,303m」とある。
野鹿池山「西峰」への尾根に取り付くと急登に喘ぐ 09時05分頃 一旦平坦なピークから右手へ曲がって進む
右手の植林地帯に沿って再び急な上りとなる ブナが現れ笹が深くなると「西峰」が近い
09時50分 野鹿池山の西峰に到着 奥側から歩いて来て標識を振り返る
西峰から東峰へは野鹿池をぐるっと左へ回り込むのだが、尾根から低地部に下りると注意が必要となる。地図を見ると西峰ピーク
から東へ進めば東峰へ簡単に行けそうなのだが、ここには背丈が2mもあろうかという笹藪が生い茂り、笹刈りの曲がりくねった
ルート通りに歩く事を強要される。大きな倒木を潜って進むとスズタケの刈り払い道に赤いペンキで頭を塗られた境界石が頼もしい。
低地部から直接野鹿池山の登山口へ行く道は無く、一旦東峰近くまで上らなくてはならない。10時10分標識の無い野鹿池山登山
口分岐に着き、ザックをデポして給水道具を一式持って水場に向かう。昨夕、緊急給水した立川越の水場は余りにも貧弱だったので
残量が十分では無かった。
なだらかなスロープを下りて登山口の鳥居を潜って右手にある水場のホースを見る。う〜〜ん下見に来た時の勢いは無く、思いだ
した様に水が不整脈の如くホースから出ている。何はともあれただただ補水が出来る事に感謝する。ここには快適な休憩所がある
のだが昨日ここまで到着叶わず利用出来なかった。鳥居に向かって水神様にお礼を述べてザックを置いた分岐まで帰る。
美しいブナを右手に見ながら尾根を東に進む コル部に向かって最後は尾根を少し左手にトラバース気味に下がる
猛烈なスズタケの刈り払い道を進むと境界石柱がある コル部から少し上ると野鹿池山の登山口への分岐がある
野鹿池山の登山口には鳥居がある 登山口にある水場 ゴムホースからあまり水は出ていなかった
野鹿池山登山口にある立派な休憩所 あ〜ここで寝たかった 湿地帯への祠までは木道が敷設されている
野鹿池山・三角点(東峰)から黒滝山まで約2時間10分
11時10分三角点のある野鹿池山・東峰に着く。三角点名は「糟池」でこの湿地帯が昔糟池と呼ばれていたのだろうか。
ここから次の黒滝山まで真東へ尾根が延びて行くのでルートは少し荒れ気味の場所はあるものの境界割出などの名残もあり問題は
無い。11時32分山では珍しい八角形の石標を通過。その後美しい黄葉を眺めながら歩くと12時過ぎに岩場の向こうに急傾斜
の下りがあり、その降下点の岩に赤いペンキが塗られた境界標石がある。ここから暫く転げるように下る。
ここを下ると左斜面が緩やかになっておりその伐採地には鹿害予防のプラスチック枠で若い植林樹が保護されている。遠くから見
るとさながら野戦墓地の様に見え、そのすぐ下側に鉄塔があり更に藤川谷川を挟んだ集落なども見渡せる。
左手に野戦墓地を見ながら尾根を進むと12時18分尾根部にある鉄塔に到着。鉄塔には四国電力「新改幹線NO.73」でこの
辺りの山をグドウジ山と記されている。地図上に野鹿池山と黒滝山の丁度中間部に電線がクロスしている場所だ。
11時10分 野鹿池山・東峰を通過 三等三角点名は「糟池」1,294.40mとなっている
11時32分珍しい8角形の標識があった 12時00分頃から荒れた下り坂となり赤ペンキの標石が数個現れる
急傾斜を下りると左手に伐採後の植林帯がある 12時18分尾根に鉄塔があり黒滝山への標識も立っている
石鎚山系の東端部「黒滝山」 三等三角点黒滝山 1,209.64m
ブナが散在するなだらかな尾根を進むと12時30分「シャクナゲ群生地」分岐標識が立っている。泉保さんの地図に「黒滝山越」
と記されている場所だろう。ここから右手に尾根を外してシャクナゲ群生地への支尾根への道が続いている。今年の5月に事前ル
ートチェックに来た際にシャクナゲ尾根へ行ってみたが裏年らしくあまり花は見られなかった。
ピークから振り返ると尾根のデコボコが沢山あるが恐らく一番奥が西峰だろう。
12時30分シャクナゲ群生地への分岐を通過 1,112mピークから野鹿池山を振り返る 一番奥が西峰だろう
ピークを越すと次のコル部には「羽瀬・平越」と泉保さんやれいほくネーチャーガイドブックに記されて尾根をクロスする旧阿土
街道がある筈なのだが荒れた植林に道が消されてよく分からなかった。コル部からはなだらかな尾根道となり13時20分ワイルド
な黒滝山に到着した。ザックを下ろして10分間東側と南側へ開けた山並みを眺めながら休憩する。
この黒滝山は石鎚山系をず〜〜っと剣山へ向けて辿って行くと、最西端の山名がある山である。吉野川まではまだ無名峰が続くのだ
が一応石鎚山系の最西端と捉える事が出来る。
12時53分羽瀬・平越のコルに着くが両サイドにある道はわからなかった 13時20分石鎚山系の最西端「黒滝山」に着く
13時20分 石鎚山系の西の果て、黒滝山に縦走8日目で到着 でもまだこれから吉野川まで安心できない
大誤算 ! 黒滝山から吉野川は長かった 途中で無念のビバーク
黒滝山(1,209.64m)から三角点大砂子(1,196.33m)まで 約 2時間30分
吉野川へと続く尾根を眺めるがまだ相当の山並みが続いている。当初の漠然とした希望では黒滝山にお昼頃に着きたいと思って早朝
から歩き続けて来た。しかし野鹿池山まで予想以上のアップダウンで時間がかかった。
13時30分大まかに吉野川へ向けて下って行くのだから4時間程あれば何とかなるだろうと黒滝山を出発した。黒滝山から暫くは
下り坂だったが次のピークからはほぼ水平に左手が植林、右手が自然林のアップダウンが続く。
14時10分植林地帯に入り突然左手から林道が現れて尾根部へ合流し、すぐに又左手下方に幻の様に消えて行った。地図を見る
と破線が尾根を横断している場所だったが林道はクロスしないで左から現れ左へ下りて行った。
笹が足元に現れる植林地帯を尚も進むと14時40分またもや左手から林道が現れて左へ消えて行った。30分程前に見た林道が
ここまで延びて来ているのかも知れない。
黒滝山から東側にはまだ尾根が沢山ある 自然林を下ると左側:植林 右側:自然林の尾根となる
自然林の紅葉を楽しみながら歩く 14時10分尾根の左手に林道が現れる
その後植林地帯の尾根を進むと16時40分又林道が現れる そこからは自然林を含む急な尾根を上がる
大歩危と土佐岩原とのターニングポイントの台地
笹が足元で少し藪っぽくなった上り坂を登り切ると14時55分スーパーのレジ袋が木に吊るされている。最初はここから南側の
三角点へ下る目印かと思ってGPSと地図を確認すると、ルートを左へ振るというサインだった。
近づいたので右手へ下りる尾根替えの場所を慎重に見ながら歩く。
西に傾きかけた陽を浴びた明るい自然林を注意深く歩くが右手に下りる道が分からない。尾根道が北東へ降り出したので仕方なく
15時20分南側へ向かって斜面を下る。こう言う場合は思い切って斜面を下れば高い場所に尾根を発見出来る。右手に尾根を発
見してそちらへ向かうと直ぐに作業道が現れて助かる。
14時55分 レジ袋の掛けられた東へのターニング尾根 右手に進むべき三角点ピークが見える
台地の外れから南へ下る尾根筋を探しながら進む まっすぐ尾根筋を進むと北側の南日浦へ続くのでここで無理して右手に曲がる
県境尾根の杭らしき物があったのでこれから右手(南)に進む 踏み跡を発見してトラバースすると三角点尾根への稜線が見える
四等三角点「大砂子」 1,196.33m
15時30分作業道が尾根に合流して植林地帯を南東に進む。やがて自然林となり上り坂をヘロヘロ歩くと15時55分四等三角
点「大砂子」に到達した。
黒滝山からこの三角点まで2時間半もかかった事になり愕然とする。やはりこのルートを事前に予行演習しなかった事が大いに悔
やまれた。
15時30分 三角点への尾根に合流する あ〜〜しんど アップダウンが多いので疲れるわ〜
三角点ピークへの最後の上り 16時55分 四等三角点「大砂子」を踏む
四等三角点「大砂子」 1,196.33m ピーク ここまで来ると土佐岩原へのルートが明確になる
林道に下り立つも続く尾根がわからず・・・とほほなビバークに
三角点から東に続くほぼ自然林の快適な尾根に乗りゆっくりと下って行く。ここにも所々木製の境界杭があり最後はルートが不明
になると16時30分林道に下り立った。
落へ続く。後で考えるとこの林道を利用すれば合理的だったのだが、尾根歩きを意識する余りこの林道の利用は選択肢には無かっ
た。
15分程尾根と平行に続くこの林道を歩くと先で2度程ジグザグを切った後右手に大きく尾根筋を離れて行く。
16時08分境界杭を拾いながら下る 16時30分 広い林道に下り立ち15分程それを下る
さあ、ここから又尾根に乗って下ろうとするが不思議な事にその尾根が見つからない。林道の東端から又左手後方に見える尾根に
上り返してそこから忠実に尾根を下って林道に又下りるがやはりそこから続く尾根は見当たらない。まさかこんな簡単な場所で・・
夕暮れが迫り途方に暮れる。いつもの自由奔放な山歩きとは違い今回は石鎚〜剣山縦走のルートを意識する余りの苦悩である。
17時10分思い切って林道の曲がり角から東へ向かって下ってみる事にした。尾根が不明な時の手法である程度下って尾根を見
つける私流の算段だ。 少し下ると尾根らしき地形になり境界杭などが現れたので足早に斜面を下る。すると17時30分又地図
には無い林道に下り立った。GPSで位置確認すると予定のルートより北側に逸れていたのが分かった。「温泉〜 お風呂〜
ラーメン〜」と歌いながらコンパスも見ず足早に娑婆へ急いだ罰が下されたのだ。
16時45分林道の曲がり角に来るが下がるべき尾根が見当たらない 尾根部と思われる場所を下る
17時20分下側にあった林道へ下り着く ここからその前に見えた尾根部を下がる(この時方角がズレた)
林道から南側へ斜面を下りようとするがどこも崖の様な地形で無理。仕方なく歩いて来た尾根をそのまま下る事にした。境界杭な
どもありヘッドランプで確認しながらドンドン下ると18時00分更に下側の林道に下り着いた。
う〜〜ん GPSで位置確認するとこの林道を伝って月が美しく輝く南へ方向修正するしかないのだが、この時間から吉野川へ到
着するには少なくとも後2時間はかかるだろう。この時点で温泉やラーメンは夢と消えた。人間諦めると気が楽になる。ザックを
下ろして林道に座り込みここでビバークするかどうか思案する。地図を眺めると東へ少し下ると沢がありそうだ。午後から心は既
に吉野川に飛んでいたので水の心配をしなかったが、最後の焦りで結構喉が渇き水も残りが心もとない。それに目薬を差した後に
顔を水で洗わなければならない。
重いザックを林道にデポしたい所だが、真っ暗な中でこの場所に戻ってこれる保障は無い。仕方なく18時20分ザックを背負っ
て沢筋へと向かう。18時45分予想通りサラサラと沢音がするので右手に植林地を下って沢に進む。
ここには水の溜まり場があってゴムホースが下の集落に向かって延びている。実にいい水場だったので林道へは上り返さずここで
ビバークする事にした。
気持ちいい〜〜 温泉には入れなかったけどまあいいか。
17時30分又林道があった う〜〜ん ややこしい場所だ 吉野川への斜面とそれを挟んだ対岸の山筋が見える
18時00分暗い林道へ下り着く ここでビバークするか悩む 19時11分 沢で水を汲みお湯を沸かして石鎚山系最後の夕食を取る
岩から流れ落ちる有り余る水がリッチな気分にさせてくれ、その命の水を汲んでお湯を沸かす。残った食糧の中からワカメご飯と
スープとコーヒーを作り、多少無念な出来事を反省しながら眠りに着く。
縦走第9日目(10月22日) 約3時間10分行動
ビバーク地−土佐岩原・可動ベースキャンプ
直線距離:4.365km 沿面距離:4.510km 累積標高差:932m
カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図 吉野川への道
吉野川シャバにて半ドンの休養日
さて、今日は土佐岩原までなので楽ちんの行程となった。昨日は吉野川へ到着しようと多少焦って歩いたが、冷静に考えてみれば夜
遅くに吉野川へ下りても次なる剣山系への準備もあり非常に無理なシチュエーションだった。デジカメの予備電池4本はほぼ無くな
り充電もどこかでしなければならない。
地図を見るとビバーク地のすぐ下に林道・下名大田口線が通っている。でもここは昨夜下りた上側の林道へ上り返して尾根道を歩か
ねばならない。
06時30分ビバーク地を出発し急な植林地帯を上り返す。07時に元の林道へ這い上がり、南(=左手)へと上り坂に向かって進
む。道は未舗装だが両側に立つ植林は綺麗に枝打ちされている。その林道を25分程歩くと林道が右に曲がって切れ上がるコーナー
に出たのでそこから東南東へ向かってプチ尾根を下る。植林と雑木の歩き易い斜面を下ると08時15分立派な舗装道路に下り立った。
沢近くに張ったビバークテント 植林の急坂を元の林道まで這い上がる
林道に這い上がり南へ向かって歩く 07時25分林道が右に切れ上がって行くのでそこから尾根に入る
林道のコーナー部から又尾根筋を下がる 08時15分広い舗装道路に出る( 林道・下名大田口線)
GPSで位置確認すると未だ南へ向かわなければならない場所にいる。舗装道路を歩いて南へと向かうと08時30分右手にお墓が
ありその上に民家がある。ここに大豊町の通行止め看板があり「林道・下名大田口線」が山側崩壊の為通行止めとなっていた。ここ
から左下にセメント舗装道路が下りており、そこに立てられた標識には「大久保バンゾウ線」となっている。惑わずこのセメント道
路を進むと畑の向こうに吉野川を挟んで剣山系の山々が見える。畑の横から道をショートカットしながら下って行くと道が右手にカ
ーブして茶畑などがある民家の下側を通る。
三角点「大砂子」から吉野川へ下るルートの検証
後日、この三角点から最初に合流した林道をそのまま下ってみると、上記に記した地図の青線を辿って「林道・下名大田口線」を逆に
歩いて、この民家のある「大久保バンゾウ線」の場所まで容易に来ることが出来ることがわかった。従ってこのエリアはどちらにして
も県境部は通らない訳だからあっさりと割り切ってこの林道ルートを通るべきとの結論に達した。
大久保バンゾウ線を下ると
の物音か匂いに反応してバウワウ気が狂った様に吠えたていた。飼い主らしき声がするが特に犬をなだめる様子もなく天下の公道を歩
く登山者が悪いかの様に冷たい。足早に通り過ぎて道路を回り込むと09時00分カーブミラーの二又に出た。
まだ上の方でしつこく犬が吠えているので少しでも早くこの場を去りた所だが又GPSを出して位置確認すると土佐岩原はまだ南側
にあるのでこの二又道路は右手に進む。
点在する大久保集落を抜けてひたすら歩き09時25分国道32号線沿いにある民家や作業場の裏手に出た。
道を歩き「大岩橋」を渡る。石鎚山系から剣山系へと繋ぐ吉野川に架かるこの橋から水量に溢れた美しい川面を眺めながら長かった
石鎚山系が終了した実感に包まれる。
08時30分 この家が分岐を左へ下がる目印だ この家の前のセメント道を左下に下りる
吉野川を挟んで剣山系側が見える 08時47分 茶畑を抜ける
08時57分 左下の犬小屋から物凄く吠えたてられる 09時00分 ゴミの収集場所にあるカーブミラーを右折する
09時23分 国道32号線の裏手にある路地に着く 10分程国道筋を川下に歩く
ハッピーラフト マークさんとの出会い
09時40分土佐岩原へデポした移動ベースキャンプ「ラッシュ」に帰り着く。ザックでナンバープレートを隠して写真を撮ってい
ると後ろから「写真撮りましょか?」と声がして外国人が立っている。
私が車をデポしたのはハッピーラフトと言うラフティングをしている事務所の手前にある空地だった。下見の時にJR土佐岩原の駅
前にデポしようとしたが白線で囲まれた正規の駐車場所は月極め駐車場となっていたので場所を変えたのだった。
車をデポした空地は看板がないもののハッピーラフトの管理地らしく、声を掛けてきたのはこの会社の代表者オーストラリア人のマ
ークさんだった。「不審車ではありません 山岳縦走中の為数日間置かせて下さい」とダッシュボードにメモを置いていたのを日本
人の従業員が見て持ち主が中々帰って来ないのでみんなで心配してくれていたとの事。
恐縮してお礼を述べて石鎚からここまで歩き、明日から剣山まで又続けると話した後、四国の自然、吉野川の美しさなどの話題に花
が咲く。
土佐岩原駅への「大岩橋」を渡る 車を停めた場所でマークさんが心配そうに出て来てくれた
土佐岩原にデポしていた愛車ラッシュに用意していた剣山系縦走用のザックや追加食料、予備登山靴
簀子(すのこ)は車中泊用 剣山系縦走中はJR土佐岩原駅前の広場に置く
マーシーさんとシャバ食
マークさんに何度も頭を下げた後、移動式ベースキャンプにてモンベル・大歩危店へ行き、故障したリール式登山靴の応急修理が出
来ないか汚い靴を持って店に入る。若い女性店員に相談するとやはり預けないと修理は無理との事で諦める。外に出ると連絡をして
いたマーシーさんが来たので隣の徳島ラーメンの店で豪華なラーメン定食を食べる。
マーシーさんとは今まで四国のマイナーな場所を一緒に歩いて来たので、この経験がベースになって今回の縦走計画、実行が出来た
面が大いにある。もちろん単独無支援縦走なので料金は私が払った。ここまで9日間の苦行を聞いて貰った後念願の日帰り温泉サン
リバー大歩危へ向かう。
もちろん各水場で体を洗ったり、テントの中で除菌ウェットシートで体をスリスリしては来たものの石鹸が使え湯舟に浸かれるお風
呂は別物だ。
モンベル大歩危店でスタッフの女性に撮ってもらう 隣のラーメン定食を一緒に食べる
お祭り男 勝ぼうずさんも現れる
長い間ボコボコ泡の出る湯舟と洗い場を往復した後脱衣場でデジカメの充電をしていると携帯電話が鳴り見覚えの無い番号が着信し
た。出ると「勝ぼうずです エールを送りにバイクで土佐岩原の橋の上で待ち構えており、もう1時間も待っています」と言う。
やぶ山歩きさんと10月19日昼佐々礼尾山で会ったのだが、その時の写真を掲示板に日付・時刻入りで掲示板に貼ってくれたのを
見て私が土佐岩原の橋を渡る日時を計算してやって来たと言う。
翌日から始まる剣山縦走へ向けて色々段取りを考えていたが私にエールを送りにわざわざ徳島からバイクで来てくれた人をむげには
出来ない。急いで土佐岩原へ帰り、喫茶店でコーヒーとピザを食べながら勝ぼうずさんが徳島から東京のスカイツリーまで歩いて行
った話などを聞く。勝ぼうずさんは自分も含めて非日常的な度肝を抜く話に血が湧いてくる様だ。
土佐岩原で半日の遅れは翌日から再開される剣山系縦走へ向けての程よいリフレッシュになった。
まあ 遠い所をバイクでわざわざ アンタも好きねえ ビザとコーヒーで中間パーティをしでリフレッシュ
土佐岩原で勝ぼうずさんを見送った後、翌日の段取りやデジカメのバッテリー充電、次の日に出発する岩原神社を確認し、車の中で
荷物の入れ替え作業を遅くまで行い車中泊となる。
石鎚山系は9日を歩き続ける長い日々だった。天気に恵まれ過ぎて水場のトホホな経験も過酷な藪歩きも煌めく錦秋の中を歩きも全て
この山域の自然そのものを味わう事が出来た。次の剣山系は石鎚山系で体験した様な過酷さは無いと思うが自分の中に残りの体力がい
かほどのものかを知る旅となるだろう。
石鎚ー剣山 単独無支援縦走の概要は ここ
第一章 石鎚〜大田尾越(第一ベースキャンプ)は ここ
第三章 土佐岩原(第二ベースキャンプ)〜剣山は ここ