平成26年8月30日〜9月3日
北アルプス・裏銀座縦走記

七倉・高瀬ダム〜烏帽子岳〜野口五郎岳〜水晶岳〜鷲羽岳〜三俣蓮華岳〜双六岳〜樅沢岳〜(西鎌尾根)
〜槍ヶ岳〜奥丸山〜新穂高温泉
 


あの石丸ガイドと行く北アルプス裏銀座縦走
第2部:水晶小屋から双六岳〜槍ヶ岳への道 


カシミールソフトを使った裏銀座縦走路地図
平成26年9月1日 水晶小屋〜鷲羽岳〜三俣蓮華岳〜双六岳〜双六小屋
平成26年9月2日 双六小屋〜(西鎌尾根)〜槍ヶ岳


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三日目(平成26年9月1日)

水晶小屋〜ワリモ岳〜鷲羽岳〜三俣蓮華岳〜双六岳〜双六小屋 (約7時間20分)

山小屋の朝食は登山者の早い出発に合わせて大体05時となる。水晶小屋は見る限り若い男性1人と女性2人で切り盛りし
ていたが彼らの起床は03時半頃だろうか。


朝食を手早く済ませて小屋の外に出る。鷲羽岳の左に見える槍ヶ岳は相変わらず上半身を隠していた。おにぎり弁当の配給
を受けて06時例の石丸準備体操の後霧深い縦走路へ向かう。初日の夜も昨夜も少し雨が降った様だが朝までには止んでい
たので少々の霧くらいは我慢しなければならない。小屋の裏手からワリモ乗越まではほぼ下り坂になる。槍ヶ岳の土台部が
見えるので晴れていたら良い眺めだろう。


  
 やっぱり槍ヶ岳は雲に隠れている  右前方は鷲羽岳              出発前に石丸準備体操

  
  縦走尾根を下る  でも槍は見えず                    ウラシマツツジの紅葉が気になる


        振り返ると水晶小屋のある赤岳から黒岳の尾根が聳える


  これから歩く縦走尾根  手前のコルがワリモ乗越とワリモ岳   奥に鷲羽岳

06時37分「ワリモ北分岐」の黄色い標識を横切る。ここは高天原、或いは祖父岳経由で雲ノ平、その向こうの薬師岳へ
の分岐点となっている。


 
        ワリモ北分岐                            稜線へ復帰してワリモ岳に向かう


   裏銀座縦走路を振り返る  左奥に水晶岳、 中央奥に水晶小屋のある赤岳、 右奥に野口五郎岳


   進行方向に鷲羽岳が尖がっている   右奥のトンガリ頭は笠ヶ岳だろう


ワリモ岳 (標高2,888m)

暫くして稜線部に復帰すると左手にはワリモ沢が切れ込んでおり、北鎌尾根の向こうに大天井岳が見える。稜線の先に少し
尖った岩峰が見えるが恐らくワリモ岳と思われる。


07時06分ワリモ岳頂上の角棒が岩に立てかけられており登山道の左側に小高い岩峰がある。自由の効く最後部で歩いて
いるので大急ぎで岩場を這い上がり何の標識も無い標高2,888mのワリモ岳山頂を踏む。


急いで本隊に復帰すると少しヤバそうな岩棚を通過していた。ここに間違いやすい尾根が右手に下りておりご夫婦が間違っ
てその尾根を下ってしまい声をかけながら戻っていた。


ワリモ岳を越えると後は鷲羽岳までの細尾根が見渡す事が出来、手前に1つピークがあるがそれは右手をトラバースする様だ

   
  ワリモ岳の標識がありその左上にピークがある             ワリモ岳ピークへこっそり上る 北側に水晶岳

  
  ワリモ岳から南側 鷲羽岳  左奥の槍ヶ岳は相変わらず雲の中      ワリモ岳を右手に巻く岩場


鷲羽岳 (標高2,924m)日本百名山

07時26分手前のピークを越えると右手が崩壊気味の崖を持つ荒々しい鷲羽岳の本峰の登りとなる。

07時50分三角点を持つ岩だらけの鷲羽岳山頂に着く。三角点名は「中俣」(三等三角点)だ。ここで鷲の姿で各自記念写真
を済ませてガスが湧いた岩尾根の急傾斜を下りて行く。
鷲羽岳からの下り道は前面に鷲羽池の向こうに槍ヶ岳と穂高連峰、正面
に三俣山荘、その奥には双六岳、三俣蓮華岳、少し右手にはカールを持つ黒部五郎岳などのパノラマが見渡せるのだが全て霧の
彼方である。



         鷲羽(わしば)岳の雄姿を眺めながら自分の足で近づいていくこの幸せ

 
       近づくと結構右側が切れ落ちている             岩がゴロゴロした山頂   三角点名は「中俣」

   
        エントツ山の鷲姿〜                          町子の鷲姿〜〜  ガチョウか!?

鷲羽岳から南南西にある三俣山荘に向かっては標高差400m程の急な下りとなる。08時40分向かって背の高いハイマツ
林が現れ、この辺りが鷲羽岳と三俣蓮華岳の間に横たわる黒部川源流部となる。水が豊富なのは容易に想像出来る地形で咲い
ているフウロソウやミヤマダイコンソウなども大きくて瑞々しい。08時53分ハイマツ林の中に建つ山岳救護所のテレビド
ラマで撮影に使われた三俣山荘に着いた。


 
   鷲羽岳からの下りになると急に霧が濃くなる                   ドンドン下っていく


                花崗岩の白い岩とハイマツの緑が美しい

 
   水が豊かな場所はハイマツも背が高い                  水が豊かな場所はフウロもデカい

 
    緑の中に三俣山荘の赤い屋根が見える                       三俣山荘

小休止の後向かいの三俣蓮華岳へと向かう。登山道は水が豊かなキャンプ場を抜けて沢筋のゴーロ状上りとなる。

  
 テン場は三俣蓮華岳の北面にあり水が豊かだ           三俣蓮華岳の緩やかな斜面から鷲羽岳を眺める


                   黒部源流の地にある三俣山荘と鷲羽岳


三俣蓮華岳 (標高 2,841.2m)

やがてハイマツの間にコバイケイソウが群生する平坦な地形となり、正面に少し小高くなった長い稜線が見える。ここのコバ
イケイソウもご多分に漏れず花を付けた形跡は見られなかった。


10時00分三俣峠の黄色い標識があり、左に双六山荘への巻道が続く。石丸リーダーが巻道へ入っていかないかドキドキし
たが「稜線ルートを進みます」と言ってくれたのでホッとする。


   
コバイケイソウの群生地があったが花を付けた形跡は見られない   10時00分 三俣峠   当然尾根道で山頂を目指す

山容は急に岩っぽくなり10時20分三角点のある三俣蓮華岳に着いた。三俣蓮華岳の山頂には反り曲がった標識が立ってお
り、ここは富山・岐阜・長野の県境となっている場所だ。山頂から5分ほど進むと別の立派な三俣蓮華岳の標識が立っていた。
おそらくこの場所が黒部五郎岳への登山道分岐点との意味合いがあるのだろう。


  
   三俣蓮華岳の山頂付近になると岩だらけ               三俣蓮華岳の三等三角点名は「三ッ又」

  
 10時20分 山頂標識が曲がっている三俣蓮華岳            黒部五郎岳、薬師岳への分岐にも山頂標識がある

三俣蓮華岳から丸山への下りは少し切り立った細尾根があり、左(東)斜面には雪渓が多く残っており、そこがシナノキンバ
イやハクサンイチゲのお花畑になっている。霧がますます濃くなり写真を撮る気にもなれない。丸山らしいなだらかなピーク
となり草地の中にライチョウがいる。


  
   三俣蓮華岳を下ると雪渓が残った細尾根となる             イワギキョウの色が鮮やかだ
   
  
 雪渓の斜面にはシナノキンバイやハクサンイチゲが咲いていた   左手が切れ落ち、右手がなだらかな尾根を進む

  
    丸っこい平原部の丸山                          おっ  草地にもライちゃんがいるのか


双六岳(標高2,860.3m)

11時10分少し霧が薄くなると前方に丸っこいピークが見え、これが双六岳と思われた。花崗岩の大きな岩がゴロゴロして
くると又ライチョウが現れツアー仲間のテンションが上がる。11時45分霧深い平坦なピークに二等三角点「中俣岳」があ
り「双六岳」へ到着した。


双六岳という名前は味があって魅力的だが、この山を大きく東側を迂回する巻道ルートや直下を東に巻く中道ルートがあるっ
て事は登山者にとってこの尾根ルートは山歩きに関してはあまり魅力的で無いのかも知れない。



                    凡庸だがデカい双六岳が姿を見せた

  
   凡庸な双六岳も岩場を出して意地を見せる                   山頂手前の双六石(?)


                        11時46分 双六岳山頂に立つ

地形図通り、双六岳は細長い台地が南東の槍ヶ岳へ向かって延びている。今日は周囲の山並みは何も見えないがここは色んな
山雑誌に取り上げられている槍・穂高絶景展望台地なのだ。


三俣蓮華岳から真南に進んでこの緩慢な双六岳に至るが、ここから南東に向かう細長い台地へ乗る。山頂部から別に南に向か
っても双六南峰へ尾根が延びているので標識を良く確認する必要がある。そして標高2,811mの舌状台地東南端から急角
度に左に折れて今度は北東部に向かって急な傾斜を下りて行く事になる。今日は頼りになる石丸ナビゲータのお蔭で安心だが、
一人歩きで視界が悪いと道迷いが発生しそうな場所だ。


平原部を歩いていると少し小雨がパラつき雨合羽を着る。大森さんはここで防空頭巾の様な秘密兵器を取り出して嬉しそうに
解説するが、周りの反応はイマイチだった。それより私がザックに取り付けていたモンベルの外付け型ゴミ収納袋の方に皆さ
んの評価が上がった様だった。
12時20分、台地の突端へ出て左側の崖状になった岩場ルートを下りて行く。

  
     双六の平原も一面の霧だ                      大森さんの秘密兵器 帽子付ザックカバーの登場だ〜

  
  双六岳の南東端より北東側に切れ込んで岩場を下る       水晶小屋の朝食おにぎりを食べながら休憩する

 
      双六岳の南東端ピーク   あ〜〜 ここを翌日ライトをかざして上る事になる

12時35分中道分岐まで下りて昼食休憩となる。私はどうしても槍・穂の姿を諦めきれずに坂の途中でおにぎりを頂く。し
ばらくして展望は諦めて皆さんに合流して巻道分岐を通過して双六小屋へ向かう。


  
          向かいの樅沢岳                          双六小屋がコル部に見える


黒部の交差点 「双六小屋」

ハイマツの斜面を下ると前方に樅沢岳とのコル部が見え、そこに建つ大き目の双六小屋の赤い屋根と右(南側)へ向かって延
びる弓折岳〜抜戸岳〜笠ヶ岳への登山道が見えた。
13時20分双六小屋の中庭に下り立ち、石丸リーダーの号令でクールダ
ウン体操を行なう。


双六小屋は槍ヶ岳、笠ヶ岳、黒部五郎岳・水晶岳の交差点であり、おまけに地形的に水が豊富なので登山客が多く人気の山小
屋だ。
二階に割り当てられた部屋は綺麗で我々のグループだけで使用する事が出来た。外は展望に優れず、時間も早いので談
話室に集合して懇談会とり、ほとんどのメンバーは生ビールを注文して飲んでいる。


メンバーの中で女酒豪は文句なく川本さんで初日の烏帽子小屋でも一人でビールを飲んでいるのを目撃されいる。さて男酒豪
となると大谷さんだろうか。昔男は黙ってサッポロビールという宣伝があったがそんなイメージでお酒が強そうだった。石丸
ご夫婦も根は好きそうであるがガイドという役目がら少々自重気味である。和田さんはお酒を飲まなくても陽気であるが、酒
が入ると尚楽しい。おしゃべり町子とコンビを組んだら最強で誰も止める事は出来ない。談話室ではいやに静かにしていると
思いきや二人揃って生ビールを飲んで討ち死にしていた。


山口御大と大森さんは普段から山の集まりで楽しくお酒を飲んでいるらしい。山口さんの武勇伝と大森さんの酔ってますます
難解な話術は心と時間の余裕がある時にじっくりと聞きたいものだ。お酒をあまり飲まない宮内さんと私は登山者の中ではご
く少数派に属するだけに気が合ってボケとツッコミに明け暮れる。


談話室も次第に賑わって来たので2階の部屋でまったりとした後、17時に夕食となる。ここも天ぷらを主体にソーメン汁や
野菜の煮つけなど山小屋らしくないメニューであった。


  
        立派な山小屋 双六小屋                 町子さんと和田さんが酔っぱらって揃って討ち死に〜〜〜

  
        双六岳の夕食                            チーム石丸の割り当て部屋で寛ぐ

部屋に帰って石丸ガイドのNHK日本百名山ロケでのオフレコ裏話や皆さんの山登り歴やとりとめのない話で盛り上がりなが
ら就寝する。



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四日目 (平成26年9月2日) 裏銀座コースの終点、槍ヶ岳へ

双六小屋〜樅沢岳〜(西鎌尾根)〜千丈沢乗越〜槍ヶ岳山荘(約5時間10分)
槍ヶ岳山荘〜槍ヶ岳山頂〜槍ヶ岳山荘  (約1時間)
槍ヶ岳山荘〜ヒュッテ大槍〜槍ヶ岳山荘 (約2時間)

暁の出撃

昨夜からの予定通り03時30分起床して隣の宮内さんに「双六岳へ行ってきます」と告げてこっそり山小屋を抜けだす。こ
のツアーで一番楽しみにしていた双六平原から眺める槍穂の風景をどうしても諦め切れなかったのだ。あわてて外に出てきた
のでペットボトルを忘れた事に気づき、小屋横にある水場で水をがぶ飲みして出発する。当然外は真っ暗で満天の星が降りそ
そぐ登山道をペツルのEライトを頼りに昨日下りてきた山道を上り返す。


トラバース分岐を過ぎて岩場の急斜面を上り平原部に着く。ツアーの小屋出発が06時予定なのであまり遠くまでは行けず、
05時を限度として平原から小屋に向かって戻らなければならない。


04時30分東の地平線がうっすらと白み始める。だがまだ写真が撮れる程の明るさにはなっていないのでじっと我慢して待
つ。写真家ならこう言う待ち時間は慣れたものだろうが、素人の私にはとてもとれも長く感じる。樹林帯が遠いので鳥の囀
(さえ)りはあまり聞こえず台地を吹き抜ける風の音がして草が揺れている。04時50分になると槍ヶ岳と穂高連峰のシル
エットはかなりくっきりして来た。薄暗いが手前に横たわる台地の向こうに北アルプスの名峰が屏風の様に立っていた。この
ツアーに来て初めての晴天に恵まれて目の前の山並みに納得しながらも山小屋へ帰らなければならないプレッシャーを感じる。



         04時50分 地平線に色が付き槍ヶ岳のシルエットが現れる  


     少し明るくなった写真で双六岳の平原を出現させる(写真加工)   これが昼間に見たかった景色だ
              北鎌         槍ヶ岳  大喰岳 中岳  南岳       北穂     奥穂     間ノ岳  西穂

 
     夜明けまで待てずに左手の岩場へ向かう              05時22分 朝日が表銀座より昇る

日の出までここに居たかったが05時になったので後ろ髪を引かれる気持ちで台地を去る。急いで急な岩場を下りている
と単独登山者とすれ違い挨拶を交わす。トラバース道の合流点辺りまで帰ると05時22分朝日が大天井岳の左手から出た。

双六小屋に05時30分頃着いたので朝食にも間に合った。


樅沢岳 (標高2,755m)

05時50分石丸準備体操の後、小屋のすぐ南東側に聳える樅沢岳へと向かう。ツアー以来の晴れ上がった朝で気持ちが良い
のでみんな朝から機嫌がいい。双六池の向こうには笠ヶ岳が見えている。手前には抜戸岳とその北西尾根の壁が出来ている。
その左側には乗鞍岳と御嶽山も見える。


  
    双六小屋で石丸準備体操 いい天気〜〜                双六池の向こうに笠ヶ岳が見える


             乗鞍岳   御嶽山(奥             抜戸岳 弓折岳   笠ヶ岳

06時35分やっと槍ヶ岳のトンガリコーンと、その右側に奥穂高岳から西穂高岳のギザギザハートも連なって現れみんなの
テンションが一気に上がる。思えばずっと雨には遭わなかったが涼しさと引き換えに大縦走の醍醐味である北アルプスの遠望
が霧に隠されて来たのだ。


どんな名ガイドであっても、山ツアー中に雨が降り続いてずぶ濡れになったり、霧で展望が全くなかったりするとツアー客に
満足を与える事は出来ない。その点今回の石丸裏銀座縦走ツアーは本日の晴天を持ってツアー客から満点を与えられる事にな
った。


  
 お〜〜〜〜 槍ヶ岳のトンガリが現れてチーム石丸のテンションが上がる  (今朝 苦労して見てきた形なんだけど・・・・・)


                        三俣蓮華岳     薬師岳(奥)    祖父岳           鷲羽岳

樅沢岳 (標高 2,755m)

06時45分ピーク手前に樅沢岳の標識があり、ハイマツが生えた2mほど盛り上がった山頂部に上がる。山頂標識の立つ樅
沢岳の広場は展望所となっており振り返ると鷲羽岳と三俣蓮華岳の吊り尾根があり、その後側に祖父岳、更にその奥に薬師岳
が「今度は来いよ」と顔を覗かせている。水晶岳は残念ながら鷲羽岳の後ろに隠れている様だ。


  
        樅沢岳はこの奥上だ                             鷲羽岳をバックに樅沢岳の山頂標識

西鎌尾根

樅沢岳の山頂を廻り込むと、樅沢岳の東峰ピークを避けて登山道が右側をトラバースしながら西鎌尾根へと下って行く。正面
には北鎌尾根の独標から槍ヶ岳が見えて、その手前に西鎌尾根がジグザグに続いている。やっと裏銀座の終点部を歩く事にな
るのだ。ここまでの初山ツアーは長い様で短く楽しい山行だった。


登山道にはウスユキソウ、イワオウギ、トウヤクリンドウなどが足元に沢山咲いている。07時20分振り返るとさほど急な下
りとは思わなかった樅沢岳の東峰が結構な角度でそそり立っていた。


 
     樅沢岳南面の御花畑を下る  奥は鷲羽岳               ウスユキソウとヒオウギ


                  西鎌尾根へと進む我がチーム石丸

  
   樅沢岳を下る  奥は焼岳と乗鞍岳                           樅沢岳を振り返る



           硫黄乗越に向かって下るチーム石丸

07時33分草木が生えていない平らな裸地に「硫黄乗越」の標識が立っている。硫黄尾根と西鎌尾根との合流点は前方に見
えるが硫黄沢の源頭部という意味だろうか。標識には双六小屋へ2時間、槍ヶ岳へ4時間とあるので約3分の1まで歩いて来
たのだ。右手には奥丸山の西側を通って新穂高温泉へ至る左俣沢の谷が切れ込んでいる。


  
     07時33分 硫黄乗越通過                          チングルマと槍

07時55分、登山道は硫黄尾根の合流点近くのピーク、左俣岳を右に巻いて 先の尾根に出る。その後更に下り坂となり08
時22分これを下りた平地に「左俣乗越」の標識があった。ここから双六岳まで3時間、槍ヶ岳まで3時間で丁度半分まで歩
いて来た事になる。宮内さんが「槍に手が届きそうですねえ」と言うので「いや〜 ジャイアント馬場でも届かんでしょう」と
ボケる。


  
    硫黄沢           硫黄岳   赤岳                    中腹に鏡平山荘   左俣沢側

  
   硫黄尾根の基部ではルートが右を巻いて前方で復帰           槍が次第に近づいてくる


 チーム石丸の「おしゃべりMWコンビ」 いや〜良く喋って良く笑って良く採って(キノコやブルーベリー) 底抜けに明るい

その後、稜線を右に巻けば左俣沢沿いに笠ヶ岳や乗鞍岳、左に巻けば北鎌と槍ヶ岳と言った具合に同じような景色を見ながら
ひたすら歩く。


09時28分岩尾根ピークの右側を巻くと鎖場が現れた。西鎌尾根は東鎌尾根に比べて比較的アップダウンも岩場も少ない。
千丈沢乗越手前の岩ピーク付近の10分程が唯一の岩場だろうか。


  
 西鎌尾根の終盤は鎌と言われるだけに細尾根となる        09時28分 鎖場が出現  (逆光で手をかざしております)

  
           岩場の難所を進む                            ここを上がれば千丈沢乗越は近い


    西鎌尾根も千丈沢乗越に近づくと小槍が結構デカい風景となる    右は穂高への南稜線にある大喰岳


千丈沢乗越

槍ヶ岳も次第に小槍の岩峰とセット姿になり09時52分懐かしい千丈沢乗越に着いた。ここは私が初めて槍ヶ岳に登った時
に新穂高温泉から一気に飛騨沢をこの千丈沢乗越に来た思い出の地だ。あの時は登山靴を忘れて通勤靴で来てしまったが、千
丈沢乗越から風が冷たく慣れない重いザックで槍ヶ岳までが遠かった印象がある。


   09時50分 千丈沢乗越に到着〜〜  これで槍ヶ岳の東西南北ルートは全て歩いた事になる

今回のツアー仲間はここまで快調に歩いて来ておりまだまだ余裕の表情で頼もしい。千丈沢乗越から見る槍ヶ岳は孤高のトン
ガリコーンには見えない。小槍は大槍の左隣に肩を並べているし、テン場がある肩も結構盛り上がっている。下側から見ると
手前の岩場が大きく見えるのである。まあ孤高のトンガリコーン姿は西鎌尾根歩きで散々拝んで来たので何の不満もない。

ひたすら大槍終着駅に向かって岩尾根歩き続ける。槍ヶ岳山荘付近では荷揚げと荷卸し作業の為かヘリコプターが何かを吊っ
て飛来している。


尾根部からは左手に裏銀座を縦走して来た山々が見えるが、途中からは登山道が少し右手をトラバース気味に付いているので
大喰岳や飛騨沢を眺めながら歩く事になる。


 
    さあ 最後の登りやで〜                           左手にニセ槍が聳える


             左手には今まで歩いて来た山々が見える

平たい岩屑の急傾斜にジグザグを切るルートに沿って上っていく。途中で他のグループから落伍した単独女性を励ましながら
二人追い越す。以前韓国のツアーが中央アルプスでバラバラに別れてしまい遭難事故があったが、ガイドが付いた山ツアーで
はありえない状況だ。


11時05分小槍側から槍の肩に到着する。小槍と大槍の揃い踏み姿の前で皆記念撮影をするが大谷さんのデジカメ電池が切
れかかったのでこちらのカメラで撮影してあげる。


 
     地味〜〜な歩きも必要なのよね                   槍も見えない岩屑の急登をひたすら登る


   裏銀座ツアーの花道はトップをサブリーダー町子に譲る優しいネコ背の隆(りゅう)ちゃん    さあ 皆さん ゴールやで〜〜

  
     来たがな  来たがな 5度目の槍ヶ岳                 大谷さん 初めての槍 !  おつかれさん !

槍ヶ岳山荘で部屋割りの後、荷物をデポして石丸リーダーの指示で早めに槍ヶ岳の山頂へ向かう。

ここで岩場が不得意な川本さんが小屋でみんなが登ってくるのを待つと言う。個人的にはそんなに混雑していないので確保し
て登る事は可能だと思ったが、ここはツアーガイドの最終判断なのでそれに従う。本人も皆に気を遣って「以前何度も来てま
すから・・・」とけなげな態度に感謝する。


槍ヶ岳山頂へ

日本人なら一度は富士山に登りたいと考える様に、山登りをする者にとってあこがれはこの槍ヶ岳山頂の穂先に立つ事だろう。
私にとっては5度目の槍ヶ岳だが何度来てもワクワクするものだ。北鎌尾根からも槍ヶ岳に這い上がったが最後がちょっとあ
っけなかった印象がある。但しこの槍ヶ岳山頂への登山ルートは鎖や鉄梯子が整備されているので混雑さえなければ比較的安
全だ。


  
   さあ いよいよ裏銀座ツアーの画竜点睛へ向けて        第一鉄梯子を上る  後方に槍の肩小屋(槍ヶ岳山荘)

  
  まあ 落石さえなければ安全なルートだ                     最後は2段式鉄梯子

   
   山頂の鉄梯子は混雑を避ける為上りと下りがある                イェイ !

30分程で山頂に着き、石丸ガイドが集合写真を各自のカメラで手早く撮ってくれる。記念撮影場所の祠付近は狭く、細長い
場所を尖ったて不安定な岩の上を通って入れ替わらなければならない。槍ヶ岳の山頂は初めての人はゆっくりしたいだろうが、
山頂部もそこそこ混んでいるのですぐ下山する。岩場は下りの方が危険なので慎重に下山する。山頂往復で約1時間程だった。


      ヤッタ〜  やった〜  槍ヶ岳〜    長い裏銀座歩きもこの頂点で報われた

 後:エントツ山、ジェントルマン大谷、宇宙人大森、長老山口、夢見る和田
 前:しゃべくり町子サブリーダー、仏(ほとけ)の軍曹宮内 、撮影者:世界の石丸ガイド


 
ザックが背中にあるときはこんな前向き姿はダメよ          下山専用鉄梯子

 
   特に岩場は上りより下りが気を遣う           上りと下りの交差点



ヒュッテ大槍へ オコジョに遭遇!

今回の山ツアー最終目的地「槍の穂先」も無事終了し山荘のテラスで乾杯する。実はデジカメのバッテリーは余分に持ってき
たのだが、SDカードの予備を忘れてしまった。先ほどから不要と思われる画像を削除しながら写真を撮影していたが、明日
の分が厳しい。途中の山小屋や槍ヶ岳山荘の売店で聞くが電池は売っているがデジカメカードは置いていないと言う。
石丸リ
ーダーに相談すると予備のカードを貸してくれた。


テラスから下方に見える殺生ヒュッテやヒュッテ大槍を眺めながらサブリーダーが「ヒュッテ大槍には素敵な野外テラスがあ
りおいしいコーヒーが飲めるのよ みんなで行きませんか?」と言い出した。


夕食まではまだ随分時間があり、みんな元気が余っているので「行こう〜」と話がまとまる。一度部屋に帰りベッドで休んで
いると気持ちがダレて(ほんまに行くんかな・・・)と思う雰囲気だったが、暫くして「行きましょう〜〜」と嬉しい誤算の
声。



                     槍ヶ岳山荘の展望テラスより

小屋を出ると午前中に見たヘリコプターが又荷物を吊って戻ってきた。小屋の人達が忙しそうに走り回っている。13時30
分、槍ヶ岳が覆いかぶさりそうな南側から東鎌尾根へ進む。眺めた時はすぐそこに見えたヒュッテ大槍だが、いざ歩くとこれ
が結構遠い。


半分ほど進んだ岩場で「オコジョがいる」と声がした。すると岩の隙間からスリムな姿を現してる。これがまたすばしこく動
き回るので写真を撮りにくい。鳥であればヒガラの様にチョコマカ動き回る。岩の隙間に入れば出てこいと覗き込み、ハイマ
ツに潜り込むと出てこいと茂みをゆする。この有様を見かねた山口長老が「ここはオコジョのテリトリーであり、我々がそこ
へ踏み込んでいるんだからそっとしておくべきじゃないのかな」と我々の愚行をたしなめる。しかし愚行がお得意の我らの事、
千載一遇のシャッターチャンスに聞く耳を持たない。(すみません 山口さん)


  
13時30分ヒュッテ大槍に向けて出発 ヘリが荷物を運んでいた   西鎌に比べて東鎌の方が数段厳しい岩尾根だ

 
  本来右下に見える殺生ヒュッテに泊まる予定だった          お〜〜 懐かしい北鎌が見える

   
    槍の横ではヘリの荷卸しが続いている                出てこい ♪  で〜てこい ♪  岩のおこじょ ♪

 
きゃ〜〜 オコジョ  おこじょや〜〜  こっちむいて〜〜「君達ここはオコジョのテリトリーなんだからそっとしておこじょ」(山口)

初めてみるオコジョの出現に気を良くした愚行集団がヒュッテ大槍に着いたのは14時35分の事だった。 「さあ 展望
テラスでおいしいコーヒーを・・・・」
あれ? テラスも無いし食堂に入ってもインスタントコーヒー飲み放題500円也
何じゃ こりゃ !! ここはオコジョに免じて誰も町子サブリーダーに文句を言わない。値段分のインスタントコーヒー
やレモンティをたらふく飲んでお宿へ帰る。


  
う〜〜ん オコジョもいいけど おごじょも捨てがたい               オトギリソウのぼんぼり咲き

  
      おいしい本格的コーヒーをテラスで・・・・・・・あれ?  500円でインスタントコーヒーをセルフで飲み放題って言われても・・・・・

槍ヶ岳は東側に傾いているので、こちらから見る姿は鋭く対称形になり迫力満点だ。タカネオトギリやイワギキョウを愛で
ながら15時37分槍ヶ岳山荘に帰りテラスで再度缶ビールで祝賀会を行う。


  
はるばるやってきてインスタントコーヒー飲んで カエロ〜かえろ〜           イワギキョウ様


                こちらから見る槍も端正でいいねえ

 
  槍ヶ岳の逆相部は崩壊した岩が溜っている                お疲れ〜  カンパ〜〜イ


2階部屋は入口側から私、大谷、宮内、大森の順番に陣取り、その他のメンバーは1階のベッド。向かいの2階にはアベッ
クが二組で下には島根から来たと言うグループだった。1階に下りる梯子は真ん中の大谷、宮内の間にあり、通常より広め
のスペースにホッとする。17時からグループ別に大食堂で夕食となるので垂直の梯子を下りる。


この梯子段の段幅が狭くてツルツル滑りやすい。大谷さん、宮内さんと「今まで槍ヶ岳の岩場を事故なく登って来て、山小
屋の梯子で落ちたらシャレにならんわねえ」と大笑いしながらその写真を撮り食堂に向かった。食後に夕方の風景を見れた
らと外に出るが霧が厚く垂れこんで全く視界がなかった。19時ごろカーテンを閉めて就寝する。


   
   槍ヶ岳山荘の割り当て部屋 (大型2段ベッド式)           おちゃめな魅力の石丸ツアーガイド
  

  
    大森さん 笑ってるよ  ここから夜中に落ちたのだ             槍ヶ岳山荘の夕食


真夜中の出来事

03時半頃、ドス〜ンという大きな音がして誰かが2階から落ちた様だ。2階のカーテンはそのままなので横の大谷さんに
「向かいの2階から誰かが落ちたらしい・・・」とヒソヒソ話す。その内、大騒ぎになって下から声がする。我が石丸ガイ
ドの声で「動かない方が良いですよ そのままじっとして!」と言った後、サブガイド町子に「小屋のスタッフにすぐ連絡
して」と指示している。さすが我がリーダーや! 他のグループ登山者の転落事故にも果敢に活躍しているぞ。 その内、
落ちた人の声がした。「あのね わたし〜 だいじょうぶと思うんですよ〜」 あれ? あの声と口調は我が隊の大森さん
じゃないの?
向こう隣の宮内さんに小声で「まさか大森さんですか?」と聞くと「その様です」と答える。

どうも寝たぼけて自宅のベッドと間違えて梯子段を使わず直接下りようとして転落した様だ。「あのね〜 腰を〜打ったみ
たい ですが〜 どこが痛いか わからないんですよ〜
2階の荷物は〜 勝手に触られると〜 どこに何があるかわからな
くなるんですよね〜
そのまま動かさないでください」 う〜〜ん ここまで冷静なら心配ないやろ

場合によってはヘリコプターの手配をしなければならない立場の石丸リーダーは一番肝を冷やした事だろう。 大事に至ら
なくて本当に良かった。



裏銀座縦走記 第一章 烏帽子岳〜水晶岳〜双六岳は     ここ  

裏銀座縦走記 おまけ 奥丸山〜真穂高温泉下山コースは   ここ  

   

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