剣山から東へ  一ノ森〜肉淵峠〜榧(かや)ノ丸〜日奈田峠を繋ぐ(1泊2日)


カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 剣山の東側 日奈田峠まで

プロローグ

石鎚〜剣山系は西の引地山・皿ヶ峰から石鎚山系を野鹿池山・黒滝山まで、更に吉野川を跨いで三方山から剣山まで繋いで来た。
石鎚〜剣山縦走)そこで気になるのは剣山・一ノ森から東側の山域となった。


今年、マーシーさんと那賀山地縦走をした時に「奥槍戸山の家」から平行に並ぶ次郎笈〜剣山〜一ノ森〜日奈田峠〜天神丸〜高城
山のラインが気になったが体力不足で周回は無理だった。


そこで、今回は1日目に剣山〜次郎笈〜奥槍戸山の家をピストンし、一ノ森界隈でテント泊して2日目に日奈田峠をピストンする
事に決めた。


問題は一ノ森のテン場だが、ヒュッテに電話すると既に予約が入っており利用出来ないと言われた。マーシーさんにその事を告げ
ると、まあ一ノ森から東に下がった場所にビバーク出来る場所位はあるだろうって事で気楽に構える。


集合場所は前回貞光付近で大失敗をしたので今回は堅く川之江のイオンモール跡の駐車場にする。このショッピングセンターは既
に閉鎖されているのだが、駐車場は今の所開放されているので集合場所としては助かる。
令和2年8月8日06時30分川之江で
落ち合って高速で美馬IC経由国道438号線で見の越に向かう



令和2年(2020年)8月8日(土) 前哨戦

見ノ越〜(リフト)〜西島駅〜剣山(ザックデポ)〜次郎笈〜奥槍戸山の家ピストン〜一の森(テン場)

09時過ぎに見ノ越に着き、リフト駐車場の2階が空いていたので駐車し準備する。車のナンバーを見ると四国外が多い。ザック
が重たいのでリフトで西島駅まで上がる。今回は水を相当余分に運んだ為にザック重量が18kg程になってしまった。


09時30分頃西島リフト駅に着く。先日 kuirenaikai さんの空撮写真にあった様にこの近くにテン場が点在しているのだが、
ここにテントを張ると2日目の日奈田峠までが遠くなってしまう。やはり一ノ森までは進む必要があり、重たいザックを背負って
トボトボと剣山へと向かう。


剣山 一等三角点「剣山」 1,954.95m

10時00分剣山に到着して広い展望板の隅にザックをデポし、マーシーさんのザックと百円ショップのワイヤー錠で繋ぎ、身軽
になって次郎笈に向かう。登山者は思ったより少なく、密にはなりそうにも無くホッとする。

天気は悪くは無いが雲が湧いてきており風が強い。

  
行場分岐を剣山へ思いザックを背負って歩く         頂上ヒュッテが見える

    
  大剣神社への分岐には狛犬が置かれていた               これも天空の鳥居だ  


 剣山のたおやかなる山頂  ザックをデポする展望所は右上のウッドデッキだ

  
 ザックを百円ショップのワイヤー鍵で結びつける       確かに三角点のある場所は1、954.95mピークである                       


剣山〜次郎笈  約1時間

10時22分三角点から西側のテラスに出て次郎笈を眺める。形の良い上品な扇型でどっしりしている様に見えるが、縦から見る
と結構薄っぺらい。遠くから見ると太郎(剣山)のどっしりした形と次郎(次郎笈じろうぎゅう)の良い形のセットで同定がし易
い。



        剣山の西端から見る次郎笈は男前だ


次郎笈 (じろうぎゅう) 四等三角点 次郎笈 1,930.01m

11時18分次郎笈峠を経て次郎笈の山頂に到着する。石鎚から尾根を歩いて13日目にこの次郎笈に立ち、西側の山並みを感慨
深く眺めたのはもう5年も前の話だ。四国で標高が1,900mを超える山は愛媛県では石鎚山、二ノ森、徳島県で剣山と次郎笈
の4山となっている。愛媛の二ノ森より少しだけ標高が高いので四国では第3位の高さを誇る。

山頂には単独の外国人や、高知から来られたアウトドア一家がお揃いのシェラカップなどをテーブルの上に出して食事中だった。
新型コロナ感染流行で旅行スタイルから家族キャンプをするレジャータイプが増えているみたいだ。ユーチューブでもやたらキャ
ンプ関係の動画が多い。

  
  次郎笈峠へ向かって下りていく            剣山から下る傾斜は結構キツい

  
 剣山系独特の岩                    次郎笈の肩へ向かう

  
 次郎笈のピークに人影が見える            懐かしい次郎笈の山頂 1,930.01m

  
 アウトドア一家と奥に外国人              剣山〜二ノ森〜一ノ森が並ぶ


次郎笈から奥槍戸山の家をピストンする。(往復約3時間)


カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図  次郎笈〜奥槍戸山の家ピストン ログ図


次郎笈〜奥槍戸山の家 約1時間20分

次郎笈から奥槍戸山の家までは真南に続く尾根を下るのだが、出だしが急なので一旦東側に伸びる尾根を下って途中からトラバ
ースして南尾根に乗る。
11時25分細い尾根を東側へ進むが、他に次郎笈からこちらに向かう登山者は居ない。

剣山系特有の白い岩が点在する細尾根の登山道を東に下る。笹は背丈が低くルートは明瞭で左手には剣山から二ノ森、一ノ森、
槍戸山が並ぶが余り特徴のある形ではない。

  
次郎笈から東尾根を下る 先端部まで行って右へ折り返す   剣山系特有の白い岩と剣山・二ノ森、一ノ森

  
 東尾根の肩部から次郎笈を振り返る          東尾根からトラバース路へ折り返す

11時45分東尾根を折り返してトラバース路に入ると白骨樹の前方に南尾根のコブが見える。途中で岩がゴロゴロ転がるゴー
ロ帯の谷部を横切る。次郎笈の北側斜面には水場が一か所あるのだが、この北側斜面にある小沢には水が流れてはいなかった。


12時02分南尾根直下になると右手に岩壁が現われ、その横を抜けて少し下ると枝振りの良い大ブナが立っている。多くのブ
ナは太い幹を長めに伸ばしその上側に枝を広げるのだが、黒岩山の八方ブナとか新九郎山分岐の千手観音ブナの様に幹の下から
枝を広げている。



次郎笈東尾根の切り替えし部から南尾根のコブと新九郎山分岐ピーク、新九郎山、更にその奥に石立山が霞む


        東尾根のトラバース分岐から二ノ森、一ノ森、槍戸山を眺める

  
 トラバース路に入る 南尾根のコブの左側を回り込んで行くルートだ   ガレ場を通過

  
南尾根を回り込む場所には大岩やアルミ板の橋がある         立派に枝を張るブナ

12時10分前方に那賀山地の付け根、1,646mピークから新九郎山との分岐ピーク(ここも標高1,646m)と新九郎
山が見える。すぐ先にホツツジの咲き残りがある展望岩場があり、「奥槍戸山の家」の駐車場からスーパー林道が延びている。

12時30分マーシーさんがガレた沢部の分岐から登山道を外れて右手に見える1,646mピークに向かうと言うので別れる。
マーシーさん四国の超1,500m峰制覇を一応目指しているらしい。
このピークは那賀山地縦走時にはトラバースしてピーク
を踏んでいなかったのだ。私は山の会で石立山へ行った時に那賀山地縦走の下見をして既にこのピークを踏んでいた。


  
12時11分 登山道を少し外れた岩展望所がある          ホツツジがまだ咲き残っていた


岩展望所から奥槍戸山の家駐車場、てっぺんが剥げた1,646mピーク、新九郎山を眺める

そのガレた分岐を進むと「奥槍戸山の家」はすぐ近くに見えるのだが、道が大きくジグザグを切るので中々近づかない。登山道
には普段あまり気に留めなかったリョウブの花が沢山咲いていた。ブナと岩の自然林は美しいのだが、その上部にある草地は鹿
の食害で斜面が崩壊気味である。

12時45分奥槍戸山の家に裏側から回り込む。何も欲しくなかったので入り口だけを覗くとETが椅子に座っていた。ほどな
くマーシーさんが1,646mピークから下りて来たのでバス停みたいなトイレ横の休憩所で行動食を取る。


  
 コケと岩のガレた斜面を横切る                    リョウブが白い花を沢山咲かせていた

  
 山の家近くの登山道では巨木が沢山見られた            12時46分 マーシーさんと合流


奥槍戸山の家〜次郎笈 約 1時間30分

マーシーさんがビールを買いに山の家に行くと言うので、「もしかき氷があれば教えて」とお願いする。残念ながらかき氷は無
かったので結局中には入らず仕舞いで13時20分今下りて来た次郎笈登山口に向かう。

苔生した登山道を又ジグザグに上がりダケカンバの尾根筋に入る。枝を広げた大ブナを通過し14時06分大岩が立つ南尾根部
先端を回り込みトラバース路に入る。すると南尾根から延びる違った形の次郎笈の姿があった。白骨樹の並ぶトラバース路を進
み14時25分東尾根に取り付く。


14時50分次郎笈の山頂に戻ると数組の登山者が居られた。奥から歩いてきた我々を見て岡山のご夫婦から「どちらの山へ行
かれてたんですか?」と聞かれる。う〜〜ん こんな時は答えに困る。「奥槍戸山の家の次郎笈登山口へ行ってました」確かに
登山口へ向かって下山して又戻って来るってヘンなルートではある。

  
 早速マーシーさんはビールを調達           奥の休憩所で昼食休憩

   
 高の瀬に向かう「剣山トンネル」          奥槍戸山の家はスーパー林道を走るライダーの休憩所だ

  
13時20分 次郎笈登山口から上り返す        一旦尾根部に出るが、すぐにトラバース路になる

  
13時48分荒れたトラバース路を沢部で折り返す    南尾根に復帰してこの先で尾根の右手を進む


13時58分 チェックポイントの大ブナを通過する

  
 アルミ板を渡る              14時08分 大岩を回り込んでトラバース路へ向かう


次郎笈南尾根のコブとその奥に次郎笈 登山道が南尾根を直登せずトラバースして東尾根に向かっているのが見える

  
 這い上がりたい衝動を抑える 体力温存〜        東尾根から次郎笈山頂へ向かう


 14時55分 次郎笈に帰り着く  


次郎笈〜剣山 約50分

14時55分次郎笈を後にして、剣山へは何度も歩いた道なので淡々と下って、コルから登って15時45分剣山に帰る。次郎
笈展望所の大岩で記念写真を撮った後三角点山頂の横を抜けザックをデポしたウッドデッキに帰る。ザックを繋いでいるチェー
ン鍵を外して、大きく重たい荷物にウンザリする。


  
 剣山へ向かって黙々と歩く                      15時45分剣山まで帰り着く


剣山〜一の森  約50分

16時10分ザックデポ地から又トボトボと曇りがちな稜線沿いを一ノ森へと向かう。泉保さんの山地図によると最初のピーク
は「塚ノ森」と呼ばれているらしい。ここは先日讃岐の花仲間と歩いた時にピークを踏んでいるので当然トラバース道を歩く。

北側のトラバース路に入るとまだ細いダケカンバが鹿の食害で軒並み枯れている。鹿が一頭逃げる様子も無くこちらを見ている。
普通動物は結構かわいいものだが、この荒れたダケカンバ林を見ると素直にはかわいいとは思えない。

16時35分右手に祠を見ながら二ノ森ピークを通過して岩場を下ると測候所職員の雪崩殉難碑があり、そこが行場分岐となっ
ている。ここから左手のヒュッテ近道へと進み作業リフトの横を抜けて16時58分一ノ森ヒュッテ前に到着する。



 手前から経塚ノ森〜二ノ森〜一ノ森  ちょっと水を多めに持って来過ぎた〜 重い〜〜

  
 鹿がじっとこちらを見ていた                      二ノ森の祠を通過

  
 16時57分 一ノ森避難小屋と小屋に着いた           これ最高のハンモックじゃん!


果たして野営地は何処に?


さて、問題は今日の野営地だ。取り敢えず念のためにテント場を見に行く。一ノ森へ何度も来ているが野営地に来るのは初めて
だ。事前に剣山の野営地を調べると西島駅付近のテン場は管理者が居ないので先着順で使える。一ノ森のテン場は一応ヒュッテ
が管理しているとの事だった。

野営地と思われる場所に来るとテントが一張りも無い。17時を過ぎても予約者はテン場に着いていないのか? それとも・・・

上に居たマーシーさんに大声で「テン場にテントが無いので管理人さんに確認して〜〜」と頼む。その間に空き地にザックを下
ろして私も急いでヒュッテに向かう。すると管理人さんが「京都から団体さんがテン場の予約があったのだが、急病人が出て山
行がキャンセルになった」と言う。ラッキー!! ラッキーついでにマーシーさんはヒュッテで冷えたビールを買い込んでいる
ぞ。

ヒュッテ管理人さんによるとテン場使用料はトイレと水を使わせて貰う為に管理費500円を徴収させて貰っていると言う。確
かに野営地は石が多くて整地は行き届いていない。

辺りは深い熊笹に覆われて天気が崩れて来ている。もしここのテン場が利用出来なければ途方に暮れる所だった。京都の急病人
よ 有り難う お大事に


  
 一ノ森のテラス ここにテントを張る訳にもいかず        17時00分一ノ森の野営場に着いた

  
 ラッキーにも野営場にキャンセルがあって使用出来た     10分程でツェルトを立ち上げる


 成程、ここに前室があるのね  
 マーシーツェルト:ブラックダイヤモンド ディスタンスシェルター  長さ 241cm 幅 147cm 高さ 104m 重さ 725グラム(本体)
 エントツ山ツェルト:ファイントラック カミナモノポール2      長さ 210cm 幅 120cm 高さ 103cm 重さ 890グラム(本体)

一応、宴会を予定してこちらも大量の水や缶チューハイなどを準備して来た。夕陽などは望むべきも無いガス一色の景色なので、
ツェルトを設営していざ宴会〜〜!と言う時になって雨が降り出した。アンラッキー〜〜〜


結局外での宴会は中止となり各自ツェルトの中で寂しい一人宴会となった。新型コロナ流行が無ければどちらかのツェルトに入
って宴会となるのだが・・・

天気予報は南海上の台風が影響して急変した様で、強い風と雨粒の音が明け方まで続いた。おまけに夜中に鹿が数回近くまで来
てピイピイと甲高い警戒音を鳴らして煩く、雨音も相まって良く寝る事が出来なかった。



令和2年(2020年)8月9日(日)一ノ森から東へ

一ノ森幕営地〜池の窪〜肉渕峠〜榧(かや)の丸〜日奈田峠 約3時間50分


 カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図 一ノ森〜日奈田峠ピストン ログ図

夜通しテントに落ちる雨音で星空は諦めた。朝方、一ノ森独特の雲海と日の出を僅かに期待するが、深く霧が立ち込めてせめて雨
が降っていない事を感謝する様な朝となった。


ガスバーナーでお湯を沸かしてコーヒーとビスケットで朝食を済ませて縦走の準備をする。周りの笹は雨にぐっしょり濡れている
のを見てマーシーさんは「今日は(縦走)ダメですね」と弱音を吐く。「何言っとんじゃ 行くぞ〜」とレインズボンを履く。

マーシーさんは「私は雨具を持って来ていません」と言う。「え?どういう事?」「だって天気予報がピーカンの晴れだったのに」
と素人登山者になっている。


06時20分一ノ森ヒュッテの前に出るとマーシーさんはタイベックシートを腰に巻きつけて笹濡れを防ごうと前掛けの様にして
いる。「八百屋のおっさんと山歩きかい」と言いながら笹藪になっている富士ノ池ルートに入る。



一晩中雨と風に揺れたテント、更に近寄る鹿のひずめと警戒音などで寝不足気味の朝だった

  
 雨は何とかが止んだ様なので06時15分出発する           空にはまだ黒い雲が覆う

  
 エントツ山さんが行くぞ!って言うもんだから しぶしぶ・・・   まあシルエットでも撮っとこうか

  

「にくぶち峠」分岐

このルートは随分前の冬に当時一ノ森ヒュッテの管理人内田さんに誘われてヒュッテの点検に付き合って歩いた事がある。今は歩
く人が少ないのか出だしは藪の様相だった。下り傾斜に入ると少しマシな登山道になった06時33分、右手に「にくぶち峠」と
書かれた標識があった。え? ほぼ踏み跡も消えた笹薮だ。肉渕峠へのルートは少し地形が複雑で尾根に乗るのに苦労する。
テープの痕跡があるものの踏み跡が笹薮に消えて明確では無い。


少し右手に入り込み過ぎたので、鹿の食害で倒れた樹を乗り越えて左手の尾根筋へと向かう。障害物と濡れた笹の為に魚屋のおっ
さん風前掛けはその機能を発揮出来ずマーシーさんのズボンは腰辺りまでずぶ濡れである。


  
深い笹薮を抜けると富士ノ池への登山道が明確になる      天気も次第に回復気味だ  奥は赤帽子山

  
さて、にくぶち峠の分岐は何処じゃ?                ギョヘ〜 これが道? ぐしょぐしょの笹薮じゃん

  
 踏み跡はあっちに向かってるけど? 獣道かな       兎に角歩き易いので笹薮に無数に伸びる踏み跡を辿る

06時50分左手に進んで根元から倒れた倒木の辺りからは何とか尾根筋に乗った雰囲気がある。笹原の踏み跡を辿って下って行
くと07時08分針葉樹の岩場に入る。そこから更に笹原を下ると二重尾根になっておりどちら側を歩けば良いのかはっきりしな
い。取り敢えず左手の尾根を進むとテープも所々に残置されていた。

  
 ひどい状態やなあ 軒並み木が倒れている       木が枯れると根の張りが弱くなり風で倒れる

  
右手の尾根はにくぶち谷に消える短い東尾根だ       左手の低い尾根を下る 奥の天神丸方面は霞んでいる

  
 ガスが飛んで一ノ森の東尾根が見える       樹林帯の岩場に入り化粧まわしの身だしなみを整える

  
 低い笹のなだらかな尾根を下る            右手にも尾根が並走するけど前方のピークで合流するだろう

池の窪

07時20分になると樹林帯の尾根となる。尾根は依然として2重尾根を呈して複雑であるが踏み跡が何とか見える。急な傾斜を
下りると尾根が落ち着いて前方の高い尾根に挟まれた窪地の様になっている。この辺りには土壌が良いのかデカいブナなどの大木
が立っていた。すると07時43分左手に水がかすかに残った池が現れる。この辺りが泉保さんの地図にある「池の窪」だろう。



  
 07時30分 針葉樹林帯の尾根に入る         07時43分 窪地へと下る


 07時45分 左手の窪地に少し水が溜まっている様だ  ここが池の窪と呼ばれている場所か?

  
 榧(かや)の木かな?               又、窪地に水がうっすらと溜まっている


肉渕(にくぶち)峠

左手に続く窪地を過ぎると岩尾根が左手に回り込んでいく。知らぬ間に天気が良くなって頭上にはダケカンバの枝葉の上に青空が
広がっていた。ブナを主体とした大木の立つ広くて快適な尾根をゆっくり下っていくと08時32分コル部に「肉渕峠」の標識が
あった。峠名は南側の那賀川水系坂州木頭川の支流「にくぶち谷」から取られている。泉保さんの地図にも、現場の標識にも漢字
で「肉渕峠」となっている。昭文社2002年版四国剣山では「肉淵峠」と記されている。まあ、渕は淵の略字みたいな物だから
同じような事だろう。


泉保さんの地図(イメージをトレースする山歩き地図・剣山・三嶺)や先に挙げた昭文社2002年版には両側にそれぞれ林道に
下りる道があるのだが、ざっと見る限り明確な踏み跡は見当たらなかった。特に左手は結構切れ落ちた急斜面である。昔歩かれた
道が次第に消滅しているのだろう。

尾根を歩いて見ると石鎚山系であれば笹や草に覆われていそうな林床にはほぼ植物は見られない。


  
 池の窪から尾根が左に巻きながら上がっていく          暫くの間 岩尾根が続く

  
  ダケカンバの枝葉が青空に映える                 ブナが立つ気持ちの良い尾根だ

  
 この辺りが一番雰囲気が良い尾根だった           緩やかに尾根を下って行く


   08時32分 「肉渕峠」を通過する  地理的に見ると北の「富士ノ池」、南の「岩倉」を結ぶ峠


樹木が切れた隙間から左手下を眺めると吉野川系穴吹川を挟んで道路の行き止まりに建物が見える。かつての剣山表参道、富士ノ
池登山口にある龍光寺剣神社だろう。


龍光寺は江戸時代〜明治に剣山を修験の山としてプロデユースし、山伏(先達)が信者(旦那)を募って富士ノ池から一ノ森を経
て剣山へと導いて、剣山観光の立役者となった。富士ノ池の龍光寺付近には登拝者用の宿舎(旅館)が立てられ賑わっていたそう
だ。「剣山物語」の中に剣山ヒュッテの初代経営者の新居熊太」氏もこの富士ノ池で茶屋を経営していた様である。石鎚で言えば
河口(こうぐち)的な存在だったのだろう。今はその役割を見の越側の頂上ヒュッテやリフトに変わっている。


08時45分尾根が少し右手に回り込むと林床に緑の葉っぱが沢山ある。どうも周りに生えている木の幼木で、恐らく鹿が嫌いな
毒気でもあるのか見事に青々と尾根を覆っている。


  
 肉渕峠を過ぎると上り傾斜となる                   振り返ると木々の間から一ノ森が見える


  右下に林道終点にある建物が見える 富士ノ池にある大剣神社か?

  
 ブナのコケが白樺の様に美しい                08時46分尾根が右に曲がるコーナーに幼木の葉が見える


 鹿の食害から免れた青々とした葉っぱ きっと毒気があるのだろう

09時00分地形図にある1,421mピークに来ると、後方の展望が開けている場所に出たので今朝出発した一ノ森を振り返る。
いつも山歩きの時に自分が歩いてきた山を振り返ると結構人間の歩ける距離に驚いたりする。すぐにピークを左に曲がると今度は前方
が開けた肩部に出て、日奈田峠やその向こうに尖った天神山が見える。

  
  平和な尾根が続く              1、421mピークには例の鹿も遠慮する幼木の葉が広がる


 一ノ森(奥中央)から歩いて来た尾根を眺める

  
 直ぐに今度は前方が開ける               日奈田峠の向こうにある天神丸が見える


三等三角点「榧ノ丸」(かやのまる) 1,452.46m


その後も平らな尾根が同じような景色で続くと、少し上り坂になり09時26分「榧ノ丸」(カヤノ丸)に着いた。一ノ森から日
奈田峠まで唯一三角点のあるピークだ。


「榧」(かや)の木はイチイ科の常緑針葉樹で緻密で狂いが少ない所から碁盤や将棋盤の高級品に使われている。途中で榧の大木
を見たが、現在では非常に少ない樹木となっている。

  
 ブナが並ぶ平坦な尾根が続く              ヒメシャラの木も時々出て来る

  
 今日最後のピークへと上って行く            09時26分「カヤノ丸」の三角点に着く


 一ノ森から唯一の三等三角点峰「榧(かや)ノ丸」 1,452.46m


さて、榧ノ丸から尾根が二手に分かれて、日奈田峠へは右手に進まなければならない。マーシーさんと雑談しながら尾根なりに進
むと北へ向かう間違い尾根を下っている事に気が付いた。私のスマホは電池が切れて途中から使用不能になっており、スマホ地図
の確認はマーシーさんに任せていた。最近はスマホ地図に頼る弊害で紙地図やコンパスを見る事が少なくなってしまった。その弊
害でこんな凡ミスが多く発生する。榧の木が立つ分岐まで上り返して東へ下る。

  
 尾根を間違って引き返し日奈田峠への尾根に復帰     尾根をドンドン下って行く

日奈田峠

榧ノ丸から細尾根になり、スーパー林道が右手に見える。尾根の左手は崩壊している場所もあり地盤が脆そうだ。10時07分右
手から延びてくる未舗装林道に合流すると「木屋平(こやだいら)村」と「日奈田峠」の標識が立っていた。道路の反対側には
「木沢(きさわ)村」の標識も立っている。

北部の穴吹川沿いには川上地区があり、南部の坂州木頭川沿いには岩倉集落がある。往古にはこの二つの集落を結ぶ峠だったのか。
一ノ森を出発して3時間半ほどさしたる休憩も取らずに歩いて来たので日陰を探して行動食タイムとする。するとダートのライダ
ー集団が剣山方面に走って行った。成程、この辺りは登山者と言うよりはバイクの聖地なのだった。一ノ森からゼイゼイ言いなが
らやっとこの峠に辿りついた年配登山者と、神山から雲早トンネルを抜けスーパー林道を剣山へ向けて颯爽とバイクを飛ばしてこ
の峠を通過する若者ライダーが会釈を交わす。

当初は天神丸まで足を延ばそうと考えていたが、いざここに来てあそこまでピストンする気が失せていた。「ここまで剣山スーパ
ー林道が来ているから次回改めてこの続きを歩こうか」と計画はあっけなく縮小された。確かにピストン縦走は効率が悪いのだが、
それよりも老化による気力の喪失が次第に忍び寄ってくる。


  
 尾根の左手がザレた場所もある              次第に尾根が細くなる

  
 10時07分 日南田峠に着いた            剣山スーパー林道が尾根をクロスしている


  今日のゴール 「日奈田峠」 北側が「木屋平(こやだいら)村」、 南側が「木沢村」
 
日奈田峠〜一ノ森 約3時間10分 帰り道の方が何故か早かった

10時23分日奈田峠を出発して一ノ森へと引き返す。確かにピストン山行は足跡が伸びずに効率は悪い。しかし行きと帰りでは
景色が違うし、新しい発見もあるので余裕があれば往復歩くのが望ましい。

峠から細尾根に入ると林道で樹木が伐採されているので肉渕谷を挟んで一ノ森と剣山が見える。う〜〜む、結構遠いなあ。一ノ森
から真東に尾根が延びているが、これは肉渕谷が坂州木頭川の合流する辺りで消失する。

  
 日陰で行動食休憩をする バイクの集団が走り去った  10時23分 日奈田峠を出発する


      細尾根から一ノ森を眺める(中央奥) 右奥は剣山

  
   急登を喘ぎ尾根分岐へ向かう            分岐付近には境界杭なども見られる


10時43分行きしに間違った尾根分岐に到着し、辺りを眺めるとちゃんと三角点方面から来て右手に曲がるテープなども見られ
た。やはり一人の時と違って仲間と歩いている時は雑談などで注意散漫になる。

10時45分三角点「榧(カヤ)ノ丸」を通過。尾根にはブナに交じって榧と思しき木が立っている。しばらく歩くとマリモの
様な丸いコケに覆われた場所に着く。どうも鹿の生息地にはこんな荒れてポコポコした土壌にシダやコケが生えている事が多い。

11時10分鹿の食べない幼木の葉っぱで覆われた尾根を通過する。富士ノ池や一ノ森を枝の隙間から眺めながら歩くとヤマジノ
ホトトギスが沢山咲いていた。マーシーさんは「行きしに見てたけどタヌキの溜め○○の近くだったので言わなかった」と言う。
確かに・・・


  
10時43分 間違った分岐を確認 右に曲がるテープが有った  10時45分 三角点「榧ノ丸」を通過

  
     立派なブナが立つ                     自然林が気持ちが良い

  
 砥石権現でも見た丸いコケ                      一ノ森(中央)が遠くに見える

  
 鹿の嫌いな葉っぱが尾根に広がる                  退屈しのぎにお馬さんごっこ

  
 肉渕峠へ向かって下って行く                    我々の山行では珍しい花の写真 ヤマジノホトトギス

11時32分肉渕峠を通過すと暫く上り傾斜が続く。すると行きしには気付かなかったサルノコシカケがブナに沢山付いていた。
この辺りは立派なブナが沢山立っており、12時07分1,500mピーク付近に着くと大きな岩が点在する尾根に変わる。

10分程歩くと細い木々の林床に背丈の低い笹が現われ平らなコル部に下りる。この「池の窪」コル部を過ぎると一ノ森へ向かっ
て尾根登りとなる。広いコル部ではルートが少し分かりにくいが赤い境界杭やテープなどが見られるのでそれに従う。


  
 11時32分 肉渕峠を通過                     前方の1,389mピークに向かって上って行く

  
 サルノコシカケが沢山生えている                標高1,500m尾根付近になると岩尾根になる

  
  10分程岩尾根が続く                        12時15分岩尾根が終わると右手が窪地になる

  
  榧の木と思われる                         12時17分 池ノ窪を通過

  
 岩の樹林帯を進む (テープも散見される)             岩尾根になるとマーシーさんの足が早くなる

  
 樹林帯の裸地を上る                         樹林帯の中に笹が出て来る


12時35分笹道になるが、この辺りは背の低い笹なので歩き易い。その後針葉樹林帯の中で岩場を歩いたり笹原になったりとし
ながら高度を上げて行く。

12時53分いよいよ最後の笹原尾根となり視界が開けて前方に分岐のある稜線が見える。朝下った時にはルートが良く分からな
かったが、上りになると倒木で荒れてはいるがスムーズに這い上がる事が出来た。下りはルートが難しいが、上りは比較的簡単だ。

13時15分肉渕峠・富士の池コース分岐に帰り着く。15分程でテン場に帰り休憩がてら片付けにかかる。

  
 12時35分 快適な笹道となる           樹林帯の岩場を通過

  
 次第に笹が高くなって来るが、この辺りはまだ歩き易い  一旦樹林帯に入る


  樹林帯を抜けて笹原となる 正面の稜線へと向かう


 一ノ森・東尾根ピーク向こうに並ぶのは平家平〜青ノ塔か


  日奈田峠方面を眺める  中央奥に高城山が見える  次回はあの辺りを歩く事になる

  
 荒れた笹斜面を適当に歩く テープも散見される      倒木を乗り越えて稜線を目指す

  
 まとわりつく木                    もうすぐ稜線だよね


  これが「にくぶち峠」〜「日奈田峠」への正式ルートです ヒドイ〜〜〜

  
 登山道に着きましたよ〜               13時14分 にくぶち峠分岐に帰り着く

  
 一ノ森ヒュッテまであと少し〜            13時30分 テン場に帰り着く

  
 ツエルトはまだ少し濡れていた            行動食休憩の後、片付けにかかる


一ノ森〜剣山行場ルート〜西島駅〜リフト〜見ノ越  約2時間

14時30分一ノ森ヒュッテの管理人さんに挨拶をした後、避難小屋の軒下にザックをデポして山頂と三角点を訪問する。先日ア
カリプタさんや讃岐乙女隊と来た時に三角点を踏んでいなかったのだ。


  
 一ノ森の山頂へ2日目に登頂〜                  三等三角点「一ノ森」(1,879.55m)を踏む

14時50分殉難碑分岐から右手の行場コースに入り今年2度目のキレンゲショウマを見学しながら16時15分刀掛け分岐に着
く。確かリフトの最終時間は16時30分だ。今までトボトボと歩いていたのだが、まだ間に合うと分かると急に元気になり小走
りで西島駅に向かう。一度上りにリフトを使ってしまうと毒を食えば皿までって気持ちになって一刻も早く下山して帰路に着きた
いと思う様になる。


リフトの座席で大きなザックを抱えると滑り落ちそうになるのでポールを必死に握ってしがみつく。ニッコウキスゲやキレンゲシ
ョウマを眺めながら疲れた足を振り見ノ越に帰り着く。


  
 14時50分 行場分岐 (測候所員の殉難碑がある)      石灰岩質のザレ場


  この時期は木レンゲショウマですよね

  
 16時15分 刀掛けの松  まだリフトに間に合う〜〜     ザックを抱くと不安定で椅子から滑り落ちそう・・・


色々手抜きの山行ではあったが、奥槍戸山の家〜次郎笈、そして一ノ森〜日奈田峠の2ルートに足跡を残す事が出来た


 
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