那賀山地縦走 (その1)
スタート:奥槍戸山の家
ゴール: 五倍木(ふしのき)大橋
メンバー:エントツ山 & マーシー
カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図 那賀山地縦走図
1日目:奥槍戸山ノ家〜新九郎山〜不入山〜久井谷山〜折宇谷山〜中内山〜権田山〜
2日目:ビバーク地〜勘場谷・水場〜大久保山〜岩倉山・ピストン〜岩倉峠〜平家平〜ボぼたもち山〜青ノ塔(ビバーク)
3日目」青ノ塔〜六郎山〜カロート山〜五倍木(ふしのき)大橋
プロローグ
那賀山地とは
数年前から権田山の山筋縦走を計画し、水場をチェックしていた。計画では奥槍戸山ノ家に自転車を置いて出発点の四季美谷
温泉近くの五倍木(ふしのき)に車で引き返して縦走を開始すると言うものだ。マイナーな山域に詳しいgakugaku さんにその
話をすると「そりゃ 那賀山地と言うにかわらん」と教えてくれた。
確かに地図を見るとこの権田山〜平家平山域の南側には那賀川本流が高知県境・日和田まで延びている。
去年歩いた海部山地(日和田から南へ赤城尾山〜西又山〜甚吉森〜湯桶丸〜金瀬〜吉野丸〜鰻轟山〜霧越峠山域)の北側はこの
那賀川本流から分かれた支流が網の目の様に入り込んでいる。
一方、権田山〜平家平山域の北側は那賀川支流の坂州木頭川が五倍木から西へ延びて最後は槍戸川と名前を変えて剣山・次郎笈
の南側、奥槍戸山ノ家付近の源流地に消える。
更に奥槍戸山ノ家の横にある剣山トンネルの東側を地図で見ると高ノ瀬峡から那賀川支流が丸石まで回り込んでいる。つまり
権田山〜平家平山域はルグッと那賀川水系に囲まれている山域だから「那賀山地」と呼ぶにふさわしいと言うかこれしか無い!
(槍戸アルプスと言う呼び名もあるらしいが、なんでもかんでもアルプスの名を冠する風潮はあまり好きでは無い)
去年(2019年)4月5日に意気揚々と電動自転車を積んで那賀山地縦走に出発するも、四季美谷温泉を過ぎて道路工事中で
全面通行止めに遭う。工事関係の人と交渉するが車はもとより自転車も人間の通行もダメと言う。仕方なく諦めて翌日第二案の
高縄半島の縦走に切り替えた経緯がある。
今年になって春に那賀山地を縦走すると言う話をマーシーさんに言うと「是非私もお供させて下さい。どうせなら続いて奥槍戸
から次郎笈に登って剣山〜一の森〜榧(かや)の丸〜天神丸〜樫戸丸〜高城山〜しがきの丸〜五倍木と周回しましょうよ 2泊
3日か3泊4日で行けるでしょう」と景気の良い事を言う。内心、そんな日程で歩けるか〜と思いながらもその周回に興味を持
ったその直後、赤星山を重たい荷物を担いでトレーニングしたと言うマーシーさんから「やっぱり 周回縦走は私には無理です。
赤星山だけで足がパンパンになりました」と連絡が入る。
と言う事で、元の私が立てた計画に戻って二人で歩く事に決める。
第一日目:奥槍戸山ノ家〜新九郎山〜不入山〜久井谷山〜折宇谷山〜中内山〜権田山〜綱付山(勘場山)ビバーク
歩行距離 約15km 行動時間 約九時間
カシミールソフトを使用したGPSトラックログ図 那賀山地縦走1日目 奥槍戸山の家〜権田山東部ビバーク地
マーシーさんの仕事休みの都合で連休の金・土・日と日程が決まるが、3日目の日曜日は雨予報になった。そこで急きょ行程を天気
の良い1日目〜2日目に景色の良い奥槍戸から権田山を歩き、雨の3日目に標高の低い六郎山〜カロート山〜下山と変更する。これ
が結果的に吉と出た。
初日出遅れる〜
縦走出発点の「奥槍戸山の家」は四国中央市からも高松からもいかにも遠い。グールグマップで検索すると3時間半かかる。早朝に
脇町・岩津橋の北詰にあるコンビニで06時に待ち合わせる。マーシーさんから電話が入り別なコンビニに居ますと言うので、ややこし
いから岩津橋を渡った192号線沿いで待ち合わせる事にする。いくら待っても来ないので連絡するとカーナビがないので相当下流ま
で行ってしまっていた。それからも色々あって合流するのに小一時間もかかってしまった。
雲早隧道を過ぎ、巨岩の転がる沢谷川を下って大釡の滝や轟の滝には目もくれず193号線沿いの五倍木(ふしのき)大橋付近の道路
沿い空地の隅にマーシーさんの車をデポする。
以前、権田山付近の水場調査時に縦走下山地の五倍木集落にある大師堂まで車道があるのを確認していたのだが、付近に民家が存在す
る為コロナ騒動のこの時期なので駐車を遠慮した。
そこからマスクを付けて窓を開けた私の車で坂州木頭川〜槍戸川沿いに続く木沢上那賀線(県道295号線)を進み09時30分頃や
っと奥槍戸山の家に着く。コロナ対策の外出規制の為か付近に車は無くバイクが2台程停まっているのみだった。
奥槍戸山の家が縦走の出発点だ
奥槍戸山の家〜新九郎山分岐(1646mP) 約 40分
09時50分いよいよ那賀山地の縦走を開始する。ここから新九郎山分岐までは去年5月「山と元気の会」で丸石〜中東山〜石立山の
縦走に来た時に一人で歩いていた。休憩所から遊歩道が裏手の1646mを巻いて南へ延びている。一部荒れているがそう問題にはな
らない程度だ。左手には槍戸川の谷間に目指す権田山〜平家平の稜線が見える。
10時06分ツキノワグマ生息の大きな看板が立つ稜線部へ合流した。ここは泉保安夫さんの地図によると「久留目の太尾」と記され
ている。尾根筋に上がると南側に新九郎山とその右手向こうに石立山が見える。
この山域縦走ではセットと見なしているので縦走最初のピークとして訪れる事にしている。
尾根には背の高いブナが並ぶが、笹は無く土壌が露出している。笹枯れは現在の剣山系の特徴で歩き易いのだが、何となく殺伐とした
印象は否めない。
09時50分 遊歩道入口へ入る 1646mピークをトラバースして遊歩道が続く
槍戸川の谷間 右手奥が那賀山地の縦走尾根だろう 10時06分 ツキノワグマの看板が立つ「久留目の太尾」=稜線部に着く
新九郎山 石立山 縦走尾根に入る
何か変に曲がった木がある 怪獣みたいな木やなあ
色んな形の樹が立っている 地面は笹や草はほぼ無い 新九郎山が近づいて来た
新九郎山分岐と千手観音ブナ
右手に新九郎山のピークとそれに続く尾根が近づき、ゆるやかな上り坂を上がると10時30分左手に立派な枝を広げたブナが立つ
1646mピークに着く。(奥槍戸山の家を出発して直ぐ裏手のピークと全く同じ標高だ)ここが新九郎山への分岐となっており、
以前偵察に来て引き返した場所だ。分岐ピークは広場になっており、鹿も食べない固くて細く栄養が少なそうな草が牧草地の様に沢山
生えている。
次郎笈をバックに立つ千手観音ブナは丁度黒岩山の八方ブナ(玉ブナ)と良く似て立派な物だ。
千手観音ブナの標識がある 次郎笈(じろうぎゅう)をバックにデカいブナが立つ
新九郎山分岐1646mピークの目玉 千手観音ブナ う〜〜ん 右手の長い枝がいつまで持ってくれるのか
新九郎山方面(南側)へと進む 分岐ピークは牧草地みたい 進む東側の尾根は同じような標高だ
縦走尾根分岐(1646mP)から新九郎山へピストン (1時間15分)
分岐広場の南端に重たいザックをデポして、身軽にポシェット姿で新九郎山へと向かう。10分程でコル部に下るがブナの芽吹き前
なので冬枯れの景色だ。コルから緩やかな上り傾斜となり天然ヒノキ越しに振り返ると縦走路の奥にやはり次郎笈が聳えている。
新九郎山へ向かって下る 新九郎山は南北に縦長いので近そうに見える
新九郎山へ向かう
立派な天然檜を振り返ると次郎笈 山頂付近はダケカンバが多い
三等三角点「新九郎山」 1,635.34m
新九郎山のピークに近づくと、分岐を同じような枯草の広場になっている。細長い尾根を奥に進むと11時10分ダケカンバが並び
石立山をバックに立つ山頂標識と三角点に到着した。グルッと山頂を見渡すとこのピークはダケカンバに囲まれている様だ。
帰りは次郎笈を見ながらダケカンバの台地を自由に歩いてコルに下り、岩が点在する分岐への急登を喘ぐ。
し、見るからに重たそうなザックを目にすると気が重くなる。
三等三角点「新九郎山」の山頂 バックに石立山
縦走最初の三角点でしぇ〜〜 次郎笈を見ながら引き返す ここも牧草地の様なピークだ
次郎笈 剣山 一の森 槍戸山
1646mピークに向かって引き返す 空身とは言え結構きつい上り返しだ
新九郎山分岐〜権田山〜ビバーク地 約5時間
少し休憩の後12時00分縦走を東へ向かって再開する。暫く草地が続き1646mPを降りると又元の地肌になる。相変わらず尾
根にはブナ、左手には次郎笈〜剣山〜一の森の眺めが続く。次郎笈の東側にある剣山と一の森、槍戸山が同じ稜線上に見えて特徴が
無いが、標高が高いので谷筋には白い雪の筋が残っているのが見える。
11時50分 ザックをデポした分岐に帰る 12時00分 草地を東に向かって歩き出す
左手に出発した奥槍戸山の家が見える 山の家から次郎笈までは結構近そうだ
古いブナは幹や枝が折れたりするのが多い ブナの立つ尾根を進む
左手には次郎笈が並んで歩く さすがに大ブナが多い 形の良いブナもある
アンテナの立つ剣山の南面には雪が残っている 右手が広場になった尾根に入る
「池の休憩所」四等三角点「くるめ」 1,624.05m
12時20分尾根の右手が凹んだ平らな草地になっており、「こんな場所でビバーク出来たらええのになあ」と言いながら歩く。
すると三角点の白い木柱があり金属プレートが埋め込まれた三角点「くるめ」があった。泉保安夫さんの地図にはこの辺りが「池
の休憩所」と記されているので先程の窪地には雨が降ると水が溜まるのだろうか? 近くには朽ちかけたベンチも見うけられる。
三角点名は先ほど通過して来た「久留目の太尾」に由来するのだろう。奥槍戸山の家からの遊歩道はどうやらここまでみたいで、
その後はベンチ跡の様な物は見当ら無かった。
ブナの並木道を進むと三角点があった 「池の休憩所」の池とはこの右側の窪地かな?
12時23分四等三角点「くるめ」を通過する 「くるめ」は久留目の太尾から名が取られているのだろう
三角点「くるめ」は「池の休憩所」と呼ばれている様で次郎笈と剣山展望所だ
不入山(いらずやま) 1,653m
暫く草地とダケカンバの尾根が続く。12時40分前方の不入山ピークの左手尾根筋に幾つかのピークが見えるが初めて歩く山なの
で容易に同定が出来ない。右手にも左手にも尾根が見えるので一体どっちに曲がって縦走路が続くのかも良く分からない。
立ち木が少ない荒野の様な稜線の先にあるピークへと向かう。すると12時45分「南つるぎ地域活性化協議会」の名が記された山
頂標識に着いた。何でも剣山の南面(南つるぎ)の活性化を目指した活動を積極的に行っている団体らしい。確かに民家の多い北側
の穴吹川流域から剣山へは舗装道路も整備されて人の交流も多い。それに比べて「南つるぎ」は奥になると未舗装になり一部のダート
バイクや車が入り込むマニアックな山域だ。
四季美谷温泉、ファガスの森、奥槍戸山の家などを核として南つるぎ活性化を目指しているのだろう。縦走中、この会が設置した山
頂標識にずっと出会う事になる。
三角点「くるめ」から草地を東へと進む ダケカンバもデカい物が見られる
前方に不入山の奥が見える 尾根にダケカンバが立っているとホッとする
殺伐とした不入山(いあらずやま)が近づいて来た
12時45分 不入山の山頂標識に着く バックに次郎笈と剣山 はげ山なので見晴らしが良い
東側を見ると茶色いコケがびっしり生えた尾根の向こうの下がった場所に不入窪(いらずくぼ)の禿地が続き、その向こうに尖った
久井谷山が見える。
事が出来る。一番奥に見えるのは平家平だろう。
枯れたイタドリらしき藪が曲がりくねった尾根を覆い尽くす。13時を過ぎたので藪が切れた辺りで日陰を探して倒木に座って昼食
休憩を取る。縦走初日はコンビニで買ったおにぎりで簡単に済ます。
13時25分デカいブナを過ぎると又草地になる。リョウブなどの木は全て鹿の皮ヘギで枯れて倒れてしまっている。これは剣山系
の主稜とも良く似た光景だ。
ピークに見えるが歩いている限りはなだらかな台地の印象だった。大きなブナが立つ場所を過ぎると倒木が散乱する灌木帯に入る。
茶色いコケが生した尾根 先に不入窪〜久井谷山(尖ったピーク)〜中内山・権田山、 左に大久保山、奥に平家平
不入窪に向かってゆっくりと下っていく 白骨樹は何とも言えない美が存在する
12時53分急に枯れたイタドリの藪になる この辺り一面が枯れたイタドリの藪になっている
13時26分 大ブナの横を抜ける
イタドリの藪が終われば今度は枯れた草地になる
不入山 次郎笈 剣山 奥に 天神丸 高城山
相変わらず立派なブナが点在する 13時42分 倒木で尾根が荒れてくる
久井谷山はちょっと汚いピークだった 三等三角点「久井谷」1,536.23m
13時50分尾根が右手に回り込むコルがあり、ここが泉保安夫さんの地図にある「北川峠」だろう。昔は南側の那賀川流域にある
木頭北川からこんな場所を経由して木沢村や更には穴吹川流域の村々を繋いでいたのだろうか?
北川峠のコルから少し南に張り出しているピークへ上がると13時55分イタドリの藪中に三角点峰「久井谷山」の山頂標識と出合
う。ここの山頂標識も不入山同様「南つるぎ地域活性化協議会」が設置した物だった。久井谷の名は南側の那賀川支流「久井谷川」
から取られている様だ。
荒れた久井谷山の東側稜線には右手に折宇谷山が南側にその支尾根を張り出しており、その左に中内山が見える。この辺りの縦走尾
根はまるで山火事の跡の様に黒く枯れた木々の残骸が立つ。槍戸川の谷を挟んだ左手には一の森から東に続く剣山系東部のカヤの丸、
樫戸丸辺りが続いている。
荒れた灌木藪を少し南側に振りながら下る 北川峠らしきコルからピークに上がる
枯れたイタドリみたいな茎が立つ斜面を上がって行く 13時56分 三等三角点「久井谷」をストックタッチ
三等三角点「久井谷」 1,536.23m は汚(きったな )い雰囲気の山頂やった 奥は天神丸かな
荒れた大地のその向こうには 右手に折宇谷山、その左手に中内山が見える 左奥は岩倉山だろう
大きな倒木の残骸が恐竜の化石の様に尾根に横たわる。14時50分白っぽい岩が転がる上り傾斜になるとトリカブトらしき緑色の
葉が初めて地面に見える。立ち木にも石灰岩にも苔が生えた独特の風景が続く。
15時05分ミズナラの大木の脇を通りぬけて5分程休憩を取る。出発が遅れた割には歩き易い尾根なので距離が伸びている様だ。
この分なら水場までは無理にしても権田山までは行けるだろう。
時々出現する大ブナ この山域は多少の起伏は有るが高低差も無く歩き易い
槍戸川(坂州鬼頭川)を挟んで 中央に天神丸、奥に樫戸丸 高城山が並ぶ
恐竜の化石みたいに大木が尾根に横たわる
倒木の間を抜けて進む 初めての尾根に生える緑は毒のあるトリカブトだった
折宇谷山(おりゅうたにやま) 三等三角点「折宇谷」 1,652.96m
この辺りで初めてヒメエンゴサクやマルバコンロンソウ、ネコノメソウに出会う。又、不思議な事にバイケイソウの葉っぱが齧られ
ていた。又マグロの頭の形をした石灰岩も立っている。
今迄見た様な枯れた草に覆われた傾斜を上っていくと15時33分「折宇谷山」に着いた。ここにも南つるぎ地域活性化協議会の
山頂標識が立っている。三角点名は久井谷山と同じく南側に流れる那賀川から延びる支流「折宇谷川」から取られている。地区名と
しては「木頭折宇」と呼ばれる集落が那賀川沿いにある。銅山川沿いにもおなじ折宇地区名があるので曲がりくねった場所に付けら
れた名前だろうか。10分程休憩の後15時45分出発する。
コケが生えた石灰岩が立ち並ぶ ヒメエンゴサクですか?
この辺りに転がっている樹の残骸はミズナラだったのね
あなたはマルバコンロンソウでええのかな? ネコノメソウにしとけ
まさかのバイケイソウが齧られているぞ 那賀の大マグロ
先に見えるピークが折宇谷山じゃろね 最後の上り傾斜を喘ぐ
15時33分 折宇谷山に到着する 三等三角点「折宇谷」 1,652.96m ここは小綺麗なピークだ
中内山 1,651m
折宇谷山から尾根が少し北東側に藪っぽい灌木帯を下ると右手に権田山から南に延びる尾根上にある三角点ピーク「綱付山」(地形
図には勘場山とある)が見える。ブナが沢山立つ岩尾根を上がって16時17分次の曲がり角ピークに着くと、又南つるぎ地域活性
化協議会の山頂標識「中内山」に出合う。
ここは南側にある栩(くぬぎ)谷川中流にある「中内集落」からその名が取られている様だ。北側の木沢村(那賀町)から道がある
のでやはり昔からの峠として木沢村側から見ると中内へ抜ける山って事で中内山の山名が付けられたのだろう。
権田山の先から南側に伸びる綱付山の尾根が見える ミズナラの荒れた尾根を下る
キジムシロやろね 前方に中内山が見える
サルノコシカケが白くなっている 北東方向に向かって尾根を上がる
16時17分 「中内山」に到着する ここまで来ると権田山は近い
権田山(ごんたやま) 四等三角点「権田山」1,605.45m
デカいミズナラ、ブナ、ヒメシャラの立つ平坦な尾根が東に続く。1、591mピークの手前にはつい最近まで四国最大の大ブナが
あって(全国でも5位)那賀山地の場所を説明する時には権田山のブナがある山地だと言えば大体の山好きな人なら理解出来た。だが
数年前に加齢の為に倒壊してしまって今はその残骸さえも残っていない。
ブナを見ながら権田山へ宇買う 平和の鳩と綱付山
在りし日の権田山の大ブナ
2010年9月26日撮影 (by エントツ山)
同じく 2010年9月26日 撮影 (by エントツ山) 10年前には確かに存在していた
かつて大ブナが立っていた場所を通過 ミズナラやヒメシャラが立つ
それでもそこそこ立派なブナやミズナラが立つ尾根を進むと16時55分殺風景な尾根に権田山の標識が立っていた。かつての森を
知っている私としては何じゃこりゃ!と思う山頂風景だ。大ブナの御利益で四国百名山にもなっていた権田山ではあるが、目玉が無く
なった今からは人気が凋落の一途を辿るに違いないと予言出来る。
2005年改訂版、そして2018年最新改訂版にも権田山の名前は載せられていない。
徳島県の登山者にもこの権田山は忘れ去れてようとしているのだろう。山渓「四国百名山」で山歩きをスタートさせた私としてはこの
馴染み深い山の名が消えていくのは寂しい。但し、那賀山地の縦走路と言う視点で捉えると、この権田山は中間部の位置と水場を持つ
山としての価値は残る。
まあ 今はこの位のブナで満足しておこう
ミズナラもデカい胴回りの物がある 振り返ると次郎笈・剣山が随分遠ざかっていた
あれは権田山三角点じゃな ちょっと殺風景になっちゃって 16時55分 権田山とうちゃこー う〜〜ん 足が上がらん!
四等三角点「権田山」 1.605.45m 確かに今は魅力に欠ける山頂部になってしまった
ビバーク地
さて、この時間になるとそろそろビバークする場所を考えなければならない。縦走尾根から南に外れた綱付山(地形図上には勘場山と
記されているが)に寄り道をしなければ水場付近でのビバークは可能だ。それにマーシーさんは既に以前この綱付山へは行った事があ
ると言う。私は「初めての山なので行く」と言うと「付き合います」との返事が返って来た。
権田山から登山道分岐のコルまで下がって次のピークへと進む。17時22分少し狭く埃っぽいが平坦地があった。先に進んでも岩場
があったりするので景色の良いこの肩でビバークする事に決めた。マーシーさんは「翌朝勘場山(綱付山)へ行きましょう」と言うが、
翌日のスケジュールを考えるとここで先にツェルトを張ってから今日中に勘場山を空身でピストンしようと提案し合意に至った。
ビバーク地は南側が気持ちの良い景色が広がっていたが、思ったよりも傾斜があり土埃がする場所だった。マーシーさんのツェルトは
中国製のストックシェルター、私はモンベルのモノフレームシェルターをそれぞれ設営する。私はアルミペグを使うが地面がスカスカで
頼りないので倒木などで補強する。マーシーさんはその辺に転がる木の枝でペグを作って使っている。
右手に綱付山が縦走路から外れて南に張り出している 例の鹿も食べない草が地表を覆っている
ブナに交じってヒメシャラも結構立っている これはシロヤシオ でもこの山域には非常に少ない
前方に見える綱付山への分岐ピークへと向かう 途中で樹林帯が切れた辺りがビバーク地
荒れた急傾斜をコルに下る 17時13分 権田山登山道分岐を通過 登山道は北側に下る
ビバーク地を探しながら分岐ピークへと向かう あの小ピークを越えた辺りにしようか
17時22分 少し平坦な場所があったのでここでビバークする事にしよう (写真は翌日撮影)
マーシーさんはネットで買ったストックシェルター 私はモンベルのモノフレームシェルター(設営が楽)
ビバーク地より綱付山ピストン 約1時間
18時取り敢えず荷物をツェルト内に放り込んで綱付山へ向けて出発する。岩が多い登り傾斜を進み、18時13分縦走路ターニング
ポイントの1,636mピークを通過し右手(南側)に伸びる尾根を早足で進む。
地面を平らにしたり、何やかやで30分程かかってツエルトの中に山道具を収納し、18時頃 綱付山へ空身で向かう
岩っぽい尾根を分岐ピークに向かう 倒木などで荒れた斜面を進む
綱付山 三等三角点「綱付山」 1,633.9m
二人ともヘッドランプを持たずに来たので急ぎ足で細尾根を南へ進み18時28分「綱付山」へ到着する。地形図には勘場山と記され
ているのでマーシーさんもこの山が勘場山と思っていた様だ。マイナーな山は三角点名が山名になる場合が多いので、やはりここは
「綱付山」が呼び名に相応しい。それに権田山から平家平へのクランク型ターニングポイントにある三角点の点名が「勘場」で、そこが
勘場峠と呼ばれたりしているので尚更だ。
そそくさと三角点で記念写真を撮り夕陽に向かって引き返す。18時38分夕日が次郎笈の左肩に沈むので足を止めて暫く眺める。
綱付山への細尾根を南へ進む 綱付山にとうちゃこ〜〜 眼鏡を車に忘れたサングラス姿
18時28分 三等三角点「綱付山」 1,633.9m 本日6基目の三角点を踏む
太陽が次郎笈に沈む 山で迎える夕日は特に物悲しい 今日もあわただしくも楽しい一日だったなあ
夕日が次郎笈に沈んでもまだ辺りが薄明るい内にビバーク地へ急いで帰らなきゃならない ヘッドランプを忘れた〜
次第に薄暗くなってくる尾根を下って18時56分ビバーク地に帰り着く。マーシーさんは私の車にメガネを置いてきたので夜もサン
グラス姿なので余計に暗いだろう。ツェルト内を片づけながらお湯を沸かしてインスタントラーメンの準備をする。その間、マーシー
さんは既にビールを一本空けて飲んでいる。私も少しだけ欲しくなったので「飲みさしじゃ無いのを少し頂戴」と言って2本目のピール
を空けて少しだけコップに注いで貰った。あ〜〜 一口目のビールは咽喉が渇いている時はおいしい。
ビバーク地へ急ぎ足で帰る 18時56分 ビバーク地へ帰り着く
さあ、お湯を沸かして夕食にしようか 明日も天気が好さそうじゃ
ツェルト越しに今日一日を振り返りながらバカ話をして21時頃就寝する。
那賀山地縦走 第2部 2日目 ビバーク地〜大久保山〜岩倉山〜勘場〜平家平〜青ノ塔
3日目 青ノ塔〜夏切山〜六郎山〜カロート山〜五倍木(ふしのき)大橋 は ここ