山と元気の会 ちょっと詳しい 黒部渓谷・「下の廊下」 遠征記 by エントツ山   (パート1)

さて、黒部川・下ノ廊下って北アルプスのどの辺りにあるんでしょうか? 四国に住む我々にとって黒部川は子供の時に見た
石原裕次郎の「黒部の太陽」でその名を知った位だ。山歩きを初めて北アルプスへ行く様になっても登山口は黒部川沿いに
は無い。北アルプスの北部へ足を延ばすようになって「黒部源流の山々」なんてロマンチックな響きを感じるようになった。

下の図をみると後立山連峰の西側に沿って日本海に流れていますね。 或いは立山〜剱岳の東側って事も言えます。



1日目:扇沢〜黒部ダム〜内蔵助沢出合〜黒部別山沢出合〜白竜峡〜十字峡〜S字峡〜東谷吊橋〜仙人谷ダム〜
阿曽原温泉小屋(約9時間半)


2日目:阿曽原温泉小屋〜折尾谷出合〜大太鼓展望台〜志合谷砂防トンネル〜鉄塔広場〜水平歩道入り口〜欅平
   (欅平〜宇奈月温泉は黒部渓谷トロッコ列車)


プロローグ

今年の夏に「山と元気の会」で黒部源流の山・水晶岳から読売新道を奥黒部ヒュッテのある東沢谷出合へ下り、黒部川沿
いを黒部ダム(黒四ダム)まで歩いた。同じ山の会で今度は黒部ダムから欅(けやき)平まで、黒部・下の廊下を歩く山
行が計画されており、それに参加した。


「黒部・下の廊下」のベースとなっている黒部川・関電管理歩道について

黒部川は北アルプスの奥地から急斜面を下り日本海に向かって水量豊かに流れるので近代になって水力発電所用のダム建
設が検討されて来た。黒部・下の廊下は基本的にはそのダム建設の調査用、資材運搬用に開削された道を登山道として利
用するもので、下流の「水平歩道」と上流の「旧日電歩道」の2歩道から構成される



水平歩道」(下流側)とは

東洋アルミナムと言う会社(富山県)がアルミニウム製錬用の水力発電所建設の調査目的で、欅(けやき)平から仙人
谷ダム
までの約13km、標高約1,000m付近に沿って1920年(大正9年)に開通させてダム建設調査用の作業
道(東洋アルミナムは8年後、日本電力に吸収合併された。)


旧日電歩道(上流側)とは

同じく水力発電所建設の調査目的で日本電力(大阪)が仙人谷ダムから現在の黒部ダム上流の平(たいら)までの歩道
約16.6kmを1929年
(昭和4年)に開削した。ちなみに「平」とは現在黒部ダム湖上流にある「平の渡し場」付近
の事を言う。

戦後、日本電力(日電)の施設や水利権を1951年(昭和26年)に関西電力が引き継ぎ、1963年この中部山岳国
立公園内に黒部ダム建設の際、当時の厚生省からその建設条件として水平歩道と旧日電歩道、更にダム建設による登山道
が水没する黒部ダムから平を経て奥黒部ヒュッテがある東沢谷出合までを登山者向けに維持・整備を義務付けた。


この厚生省の粋な計らいのお蔭で今回歩く欅平から黒部ダムまでの「下の廊下」は関西電力の費用で毎年数千万円をかけ
て維持管理されている訳である。但し雪深い場所だけに雪解けの初夏からその作業が始まるので実際に使用(通行)出来
る期間は秋の1〜2ヶ月間で、雪の条件によっては数週間になる場合もあるらしい。


さて、今回歩く「下の廊下」のルートは二日に分けて、第1日目は黒部ダムから仙人谷ダムを通過して阿曽原温泉小屋ま
での約14.7km、第2日目は阿曽原温泉小屋から欅平までの約9.3kmとなる。


何故関電施設がある少し開けた仙人谷ダム付近に山小屋が無いのか少し不思議な気がするが、この為に黒部ダムから阿曽
原温泉小屋までのルートは結構長くて大変になる。


平成30年10月24日 水曜日(小雨・曇り) 第一日目

扇沢〜黒部ダム〜内蔵助沢出合〜黒部別山沢出合〜白竜峡〜十字峡〜S字峡〜東谷吊橋〜
仙人谷ダム〜阿曽原温泉小屋(約9時間半)


メンバー :CL中村、 SL佐藤、 運転 真鍋(和)
     (男)久保、大島、尾形、秋友、多田、原、真鍋 (女)吉田、切山、福田、川田、勝井、沖野、尾形、秋友、土佐、濱崎、本田 

  
   カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 黒部渓谷・下の廊下

前日、高松を早朝出発して島崎藤村の小説「夜明け前」の舞台となった中山道の馬籠宿を見学し、そこから日本百名山であ
る恵那山を眺める。その後扇沢に近い七倉山荘にて前泊する。七倉山荘は読売新道から黒部ダムへ下りた時も扇沢からここ
に宿泊した「山と元気の会」の常宿だ。

  
 中山道 馬籠宿に立ち寄る                     馬籠宿の展望所で恵那山をバックに真鍋さんと

 
 前泊地 七倉山荘                 夏場はバーベキューだったが秋・冬は鍋の夕食 

登山当日は朝方から雨が降り少し憂鬱だが天気は次第に回復するとの事で安心して宿を出発する。
真鍋(和)さんの運転す
る会のバスは紅葉の間を抜けて07時前には扇沢に着いた。


扇沢から黒部ダムに向かうトロリーバスの始発は07時30分でこの後は30分毎しか無い。一日目の行程が長いので下の
廊下への登山者はこの始発に乗らなければ夕暮れまでに阿曽原温泉小屋への到着は不安となる。
脚力に自信がない登山者は
前日に黒部ダムへ抜けて20分程遊歩道を歩き「ロッジくろよん」に宿泊する方法もある。これなら早朝薄暗い内に黒部
ダムを出発する事が出来る。


扇沢に到着すると周りの紅葉がとても美しく、たまに青空も姿を見せる。ここは立山・黒部アルペンルートの起点としても
有名な場所だ。私も相当前にツアーでこの扇沢から黒部ダム〜黒部平〜大観峰〜室道〜美女ヶ原〜立山へトロリーバス、ケ
ーブルカー、ロープウェイ等を乗り継いで忙しい観光旅行をした事がある。当時見たであろう扇沢駅の記憶は既に無く、後
立山連峰の縦走をした時に樫原新道を下る途中で扇沢駅付近を眺めた記憶だけが残っている。


  
トロリーバスの始発に間に合う様に扇沢に着く          ここでは少し天候が回復して朝日に輝く紅葉が見られた


                            扇沢の紅葉


今回下の廊下を一緒に歩く「山と元気の会」の皆さん 77歳から64歳までのシルバー登山者だ


時間前に順番待ちと言う事で構内に並び関電トンネルを16分程で黒部ダム駅に着く。と言ってもコンクリートのトンネル
内なのでダム湖は全く見られない。ダム湖へ上がる分岐をまっすぐ進みコンクリート構内から右岸側に出る。
扇沢では天気
が回復気味だったが、黒部川の谷間には雲が棚引き小雨も降るので広場で全員雨具を装着する。


  
07時30分始発のトロリーバスで扇沢を出発する         黒部湖駅に着くとダム堰堤方面の左には曲がらず
                                       真っ直ぐトンネル内を進むと鉄柵があり左手に登山口がある

  
 黒部ダムから登山口を出ると、あれ? 天気が悪い     全員雨具装着して出発準備をする 右手に古いトンネルがある

08時前に登山口を出発し広い砂利道を5〜6分程下って行くと「旧・日電歩道」の標識がありそこから左手に登山道が黒部
川に向かってジグザグに下る。
天気は優れないが霧が谷間に棚引き、濡れた木々の緑や黄色がしっとりとした秋の風情を造り
出す。晴天も良いがこんな風景も心に沁みる。


  
 広い未舗装道路を下る                        08時05分 旧日電歩道の標識から山道を下る

  
 黒部川の谷間には霧が棚引く                    紅葉の急斜面を下っていく


黒部ダムの下流を左岸に渡る

08時20分黒部川の川沿いに下り付くと川を左岸に渡る木橋が見える。近づくとそれはコンクリート製橋桁の残骸の間を
繋いだ物だった。昔はここに大きな橋がかかっていたのだろうか。左手に延ばされたロープを頼りに黒部川の流れに渡され
たしっかりとした厚い木の板を歩く。橋を渡る後半になって左手に黒部ダムが見える。この時期にも観光放水を行っている
様だ。しかし角度の関係でダムの全体が見えないので前回、黒部ダムの真上から眺めた時の迫力は余り感じられなかった。


   
 木橋は意外としっかりしておりロープを張られている     08時25分 渡渉橋から  おおっつ 黒部ダムが見えるぞ

  
この時期にも観光放水をしている様だ                 黒部川の下流を見る この辺りは谷部は浅い


08時30分全員黒部川を渡り終えて左岸に広がる川沿いの樹林帯に入る。山間には霧が流れて幻想的な風景だ。08時
45分川面に近づき、山の斜面から雪などによって押し出され堆積した岩場を抜ける。川面を振り返ると幽玄の世界が広
がっていた。う〜〜ん それにしても良い時期に、絶好のタイミングでここを歩けるものだ。


  
 河原の森を下流に向かう                       山際には霧が煙の様に流れている

  
 なだらかな斜面はブナなどの黄葉が広がる            08時45分川面に土砂が押し出した場所を通過する


    振り返ると幽玄の世界が広がる  小雨の沢もいいもんだ


峡谷の名の通り黒部川の両岸は切り立った岩がそそり立っており、その斜面にしぶとく生えた木々が冬の前に黄金の色を
放っている。
09時00分曲がりくねった岩壁の遥か前方に最初の小滝が左岸に見え、抉られた道がその間を抜けている。
この辺りは「丸山」(2,048m)の東壁と呼ばれている場所らしい。「下の廊下」最初は川面に近い場所を歩くのだが、
急な岩斜面に出会うと少し川面から離れて岩壁に道が開削されている。


  
 岩崖に生えた広葉樹の小木が全て黄葉している        なだらかな森を形成する斜面も美しい

  
09時00分 正面の登山道沿いに最初の滝が現れた       岩壁に近づくとルートは少し川面から上がっていく


           左岸の岩壁を穿った下の廊下が黒部川に沿って刻まれる

09時10分その小滝の手前に谷部がありガレ場になっており桟橋が架けられていた。崖の上を見ると岩壁の間から水が
落ちてきている。
そこから5分程進むと先ほどから眺めていた滝に差し掛かり、それを越えると木々の間を道が延びる。

  
 滝の手前にガレ場があり桟道が架けられている     ガレ沢の上部は双耳岩となっておりその間から水が落ちる


          上流方面を振り返る

  
  09時15分 最初の滝を通過            露岩帯から川岸の樹林帯へと入っていく

内蔵助谷出合


09時27分内蔵助(くらのすけ)谷出合(分岐)に到着する。ここから西に延びる細い登山道は内蔵助谷沿いを内蔵助
平に出て、そこから立山の真砂岳へ至るルートとハシゴ谷乗越を経て剣沢へ至るルートに分かれている。


この内蔵助谷出合から黒部川は大きく東側に湾曲して流れており、しばらく黒部川の川面に近い場所を歩く。すぐにビバ
ーク用のテン場に利用されている場所があった。確かにテント泊だと前日に扇沢から黒部ダムへ出てこの内蔵助谷のビバ
ーク場所でテントを張れば阿曽原温泉小屋までの時間配分が楽になるだろう。でも沢の音がうるさいので寝られるかどう
か・・・(一応この国立公園内のテント泊は禁止されている)


09時35分内蔵助谷を渡るが、こんな沢沿いに道が延びているのが不思議な程険しい谷だ。この後は少し広めの黒部川
に沿って川面の紅葉を楽しみながら歩く。



          内蔵助谷手前を振り返ると鋭い丸山・東壁が聳えていた

  
  内蔵助谷の手前で一旦登山道が川面近くへと下る       沢近くの黄葉に包まれる

  
内蔵助出合より北の内蔵助平へ向かって分岐する登山道   黒部川の川面近くに下がって進む

  
09時30分 ビバーク地があった(あくまでビバークに使用)   09時35分 内蔵助谷にかかる木橋を渡る

  
内蔵助(くらのすけ)谷は岩がゴロゴロしていた           この辺りから両岸が切り立って来る


09時50分川幅が狭まると早瀬となって白い飛沫の急流が現れる。この場所はガレ場となっており雨に濡れた岩を注意
深く乗り越えて行く。
対岸の谷からは滝の様な水が流れておりそれを眺めながら歩いていると09時55分岩屋が有り祠
は見当たらないがお酒や花が祀られている。う〜〜ん ここもビバーク場所と言える。地図で確認すると鳴沢小滝と新越
沢の中間に記されている「別山岩屋」とは位置的に違う様である。

  
  両岸の岸壁が切り立って来る            カエデやナナカマドが色づいている


  09時45分 前方の川幅が狭まって両岸の岩壁が迫り急流になっている

  
 09時55分 デカいガレ場を渡る           対岸の谷間に滝が見える  鳴沢だろう

  
 09時55分 登山道の左手に祠が祀られていた           対岸は絶壁が続く

両岸を切り立った岩が迫る川面をどんどん進む。10時15分広い川辺で少し休憩する。雨は止んだようだが谷の上部は
霧に包まれ全く見えない。黄葉が広がる左岸沿いの道と右岸の絶壁に並ぶ緑の針葉樹の色が対照的だ。右岸の絶壁は川面
から黄色い炎の様な黄葉が上に向かって緑の針葉樹へ向かって延びている。登山道には数少ないがナナカマドの赤い実も
垂れ下がっていた。


  
ナナカマドの鮮やかな赤が黄色主体の黒部川を引き締める     10時15分 川縁で休憩(ナッチーさん撮影)


     黒部川の秋は峡谷に入る前も美しい  川辺で景色を眺めながら休憩する皆さん

  
  カエデの色も微妙に黄色や赤っぽくもなる                ブナやカツラは黄色一色


             紅葉の木々は美しいがその中を進む登山道は厳しい


10時35分対岸に大きな滝が現れた。上部には落差のある滝水が岩壁を穿ち下方にも滝を作っている。登山道の標識に
は「鳴沢小沢」とある。この辺りの左岸上方は黒部別山(2,353m)から南へ延びる尾根上のピーク、南峰(2,
300m)があり、その更に南側は大タテガビンと呼ばれる大岩壁となっている。ガレ場を抜けると川幅が狭まり、ナナ
カマドの紅葉越しに迫力のある激流となっている。

その後、榛ノ木(はんのき)平と呼ばれる川縁の登山道を進むと10時50分雪渓の大きな欠片(かけら)に出会う。


               鳴沢小沢のナメ滝が対岸に見える

  
  こういう標識が無かったら場所が特定しにくい          川幅が狭まり急流となる

 
                   草紅葉の向こうに早瀬が音を立てる


            川面から大岩壁のへつり道へと進んで行く

  
 10時50分 ここで初めて雪渓が残って転がっていた     いよいよ「へつり道」へと入る  これが別山岩屋だろうか

岩壁のヘツリ道に入る

10時50分前方には垂直に近い大岩壁を穿って開削された登山道が見える。この場所が岩屋になっているのでひょっと
して地図に記載されている「別山岩屋」になるのだろうか。ここからがいよいよ黒部峡谷・下の廊下の真骨頂「屏風岩の
大へつり」へと向かう難所が始まる。
11時00分一旦草付きの登山道になると「新越沢合流点」の標識があり、対岸に
は落差も水量も申し分ない新越ノ滝が見える。


すると左岸側にも滝が現れ登山道はこの滝を割いて延びていく。ここは登山道の下側も滝になっており、岩が雨に濡れて
滑りやすく気を抜けない迫力満点の場所だった。昭文社の地図を見るとこの辺りが大タテガビン沢と言うのがあるからき
っとここだろう。この難所を越えた辺りから振り返ると新越ノ滝が土を被った雪渓越しに良く見えた。


   
10時52分 岩壁のへつり道に入る                 げ〜〜っ  神様 落石がありません様に 
                                        ここが中ノガビン沢かな?


   美しい〜〜   厳しい〜〜  美しい〜〜〜  厳しい〜〜〜

  
  対岸には常緑針葉樹も紅葉の間に見られる          ブナはどこにあっても良いもんだ

  
 ん? クロモジの向こうに立派な滝が見えるぞ (新越の滝)  11時00分新越沢(対岸)合流点の標識に出会う


       左岸の登山道も滝を越えてるやんけ  すんげえ光景や〜  これが大タテガビン沢だろう

  
    登山道、ナメ滝の上流                     対岸の新越の滝を撮影する真鍋さんとCL中村さん


      左岸の滝道を越え、今度は右岸を振り返ると 「新越の滝」が正面に見える 雪渓も転がっている


11時10分足元が切れ落ちた場所には丸太を組んだ桟橋が作られている。この辺りでは谷までの高度差もありアトラク
ション性満載だ。左岸は切り立っているので上部が見えないが、右岸の断崖絶壁は岩場に頑張って生えている木々の黄葉
に彩られて難攻不落の岩壁だ。登山道の危険場所はほぼ左手にはワイヤーが張られているので安心感がある。ある登山ツ
アーではこの針金にカラビナを掛けながら歩くガイド指導があるらしいがそんな事をしていては日が暮れる。左手グロー
ブの指でワイヤーをなぞっていくので十分である。


  
  対岸の岩盤は紅葉で赤茶けている                 川岸には大きめの雪渓が残っている

  
 足元が切れ落ちた場所には桟道が付けられている        岩を削ったへつり道が続く


  岩盤が切れ落ちたり崩落している場所は桟道となっている

  
   上を眺められる場所も岩壁が切り立っている              黒部川の流れを振り返る


11時17分又雪渓の大きな欠片が残っている場所に出る。雪渓の上部は茶色い土が被っているのでティラミスの様であ
る。沢部では左岸でも岩壁の上部を見る事が出来るが、雪で削られるのか表面がツルツルで滑らかに見える。


11時30分、前方の谷がV字型になり登山道も岩を削ったへつり道が続く。この辺りが「屏風岩の大へつり」と呼ばれ
る場所なんだろう。頭上は刳り貫かれて天井岩になっているので落石の心配は無さそうだが大きなザックだと引っ掛る恐
れがあるので注意が必要だ。先ほどからその大きなザックを担いだ単独登山者を追い抜かせて、前方の我が隊員に「安全
な場所で抜いて貰ってよ〜!」って叫ぶのだが余裕が無いのか全く聞く耳を持たない。お蔭で黒部別山谷までこの単独登
山者に謝り続ける結果となった。

私は普段個人山行をしているのだが、あちこちの山で団体登山者に出会う。概ねマナーが良く後ろから近付くと追い抜か
せてくれる。でも時々屋久島の様な人気の山ではツアー登山者やそのリーダーの振る舞いに嫌な思いをしてきた経験もあ
る。その為、自分か団体登山者の側に立つと個人登山者に迷惑を掛けない様、必要以上にナーバスになる様だ。


足元の岩盤は概して安定しており大山の様に崩れる心配は無いが、所々で崩壊部がありここも注意を払わなければならな
い。


  
 ドライドックに入った船の様な雪渓の欠片               スラブ岩の上に続く登山道


             屏風岩の「大へつり」 旧日電歩道の見せ場だ

  
 へつり道の前 単独登山者も前に出れない            へつり道の後ろ  CL中村さんがしんがりを務める


    正面の左隅が黒部別山沢の出合となる    迫力ある断崖絶壁が続く

  
  う〜〜ん  何とも言えず狭い登山道だ            天井岩が覆いかぶさる テント泊の個人登山者は荷物がデカい

  
  登山道に咲くリンドウ 別な場所でも1輪あった        登山道に咲くダイモンジソウ ここではあまりお目にかからない

  
 圧倒的な自然の中では人間は小さい              時々 緊張を強いられる場所もある


   黒部別山谷(左のコーナー)を挟んだ向こう側の絶壁に登山道が延びている


黒部別山谷(沢) 出合

11時45分消えかけた字で「黒部別山沢」の標識に出会う。すると沢部を挟んだ向こう側のへつり道から団体登山者が
こちらに向かっているのが見えた。丁度この沢筋で行き交わす事が出来そうなのでホッとする。


黒部別山沢(谷)は西側の黒部別山(2,353m)の北峰(2,284m)から落ちる短い沢で通常雪渓が遅くまで残
る場所らしい。我々が通過した時は残雪は無く岩や土砂が露出していた。


谷部へ降りる場所はスラブの崖になっており5m程フィックスロープで下る。こんな足場もあり何でもない場所でも慣れ
ない人が多いと時間がかかる。丁度お昼になったのでここで昼食となった。沢の向かい側斜面が不安定なので落石の恐れ
があるので少し離れて各自散開しておにぎりやらパンを食べる。対岸からは浅原温泉小屋から来た団体登山者が荒れた斜
面を下りて交差出来た。


  
11時45分 黒部別山沢 の標識が掛っている       沢を挟んだ向こう側から団体登山者がやってくる ジャストタイミング

  
 黒部別山沢 上流にはガスがかかっている             沢に向かってスラブ岩を下りる

  
 谷に下りるエントツ山 (ナッチーさん撮影)             スラブ岩を見上げると美しい紅葉が見える

12時15分簡単な昼食休憩を終えて沢から崩れかけた斜面をフィックスロープを頼りに登山道まで這い上がる。すると
下流側にも黒部別山沢の標識が掛っていた。この辺りは黒部川の幅が狭まりそそり立つ両岸の岩壁とその間を白いしぶき
を放って流れる沢水で正に峡谷と呼ぶに相応しい風景だ。


その左岸岩壁に沿って遠目では一見危なっかしい下ノ廊下の線が続く。対岸に切り立つ草付きの岩盤はいわゆる草紅葉で
赤茶けて見える。眼下には青く澄んだ黒部川の水が白い泡を立ててゴーっと流れるたまらない風景だ。この付近の対岸は
「赤ムケの壁」と呼ばれているそうだ。


  
 落石の心配が無い場所で昼食休憩                  12時15分 対岸の登山道へと這い上がる

山の会だから色んなレベルの人達が参加しており、その年齢層も長期休暇が可能な年配者が殆どだ。最高齢は77歳の女
性が二人居り、その他にも70歳代が5人、最年少ですら64歳だ。皆さん様々な職業経験者で社会貢献をされて来た訳
だが、こんな場所では裸一貫の体力勝負となる。

この高齢集団が登山装備に身を包むと結構サマになっており曲りなりにもドンドン歩いている。さすがに段差がある場所
では渋滞気味ではあるが年齢を考えると大したもんだ。


全員が、切れ落ちた足元には黒部川、その紅葉に覆われたV字峡を歩く緊張感と満足感に包まれている。

  
    黒部別山沢を過ぎてもへつり道は続く             真下には黒部川の清流が流れる

 
   佐藤SLを先頭に元気に歩く「山と元気の会」  結構高齢参加メンバー  ようもこんな場所を歩き通せたものだ

  
  切り立った岩壁を穿った下の廊下                 黒部別山沢付近を振り返る


              対岸は「赤ムケの壁」 と呼ばれる岩盤が立つ 

白竜峡

12時38分岩場の足元が悪くなると桟道となり、それを過ぎると一旦川面近くまで下がる。その後又へつり道になり次
第に高度を上げると12時45分、黒部川の両岸が非常に狭まって来る。こんな場所は廊下とかゴルジュとかと呼ばれる
らしい。急流は白い泡となって岩の間を落ちていく。少し流れが落ち着いた辺りに「白竜峡」の標識と出会う。恐らくこ
の標識は下流側からくる登山者用に設置されたものだろう。
対岸を見ると岩に黒い斑点の陥入岩が散りばめられていた。四国
の面河にもこんな雲母の様な斑点が見られる。

     
  厳しい桟道が続く                           12時40分 一旦川面近くに下がるが直ぐに又へつり道になる

    
  次第に前方の両岸が狭まって行くぞ                     黒部川の両岸が迫りV字峡谷となって来た

  
  ひゃ〜 丸太が5本で助かるわ〜                むむっ まるで竜の様な川幅じゃ  狭っ〜〜


       白竜峡の「下ノ高廊下」   いや〜〜  この自然アトラクションは興奮するぜ!

  
  黒部川の急流が白い竜の様にうねり下る           12時50分 対岸に滝が落ちる  タル沢だろう

  
参道は5本の丸太を組んでくれているので恐ろしい事はない    流れが少し落ち着いて来た様だ

  
 12時57分 あれ? こんな所に白竜峡の標識がある  白竜峡の標識は下流側からの登山者用みたいで流れが緩やかになる


13時頃になると天候も次第に回復して、周りの岩肌には樹木が多くなり黄色く輝いて来る。確かに白竜峡を過ぎると黒
部川の両岸は若干なだらかな傾斜になり樹木が多く生えている穏やかな景色に変わっている。相変わらず桟道がある山道
が続くが、足元に樹木や草が生えていると安心感があり、地名も広河原と言う場所らしい。対岸の錦繍も見事だし、紅葉
という面ではこの辺りが最高の景色ではなかろうか。



   対岸の岩壁には草木が紅葉し、上部には常緑針葉樹も生えている

  
 対岸の遠景  岩壁上部の斜面は紅葉に覆われている      左岸も谷の傾斜が緩くなって紅葉の森となる

  
  少し穏やかになった登山道を進む                この辺りは水の碧さに登山道の紅葉が良く映える

  
白竜峡を過ぎて道が穏やかになるが時折崖部が現れる    白竜峡から十字峡の間が最も紅葉が美しい谷だろう

  
 川幅が十字峡に向かって少し狭まって来る             登山道はカツラなどの黄葉が美しい


十字峡

13時37分少し荒れた小沢を渡る場所に来ると前方が渋滞している。この辺りの黒部川は直線に近いので渓谷の遠くま
で見渡すことが出来る。小沢を通過すると又へつり道となりスラブに渡された桟道なども出現する。


13時50分水が上から落ちる沢を渡る。ここが登山解説書にある「滝のシャワーを浴びる」場所だろうか。でも残雪の
無いこの時期はずぶ濡れになる心配は無かった。
俄然登山道には樹木が増えて来るとビバークに適した平地がある。普段
テント泊をしているとビバーク出来る場所を探すのが性(さが)となっている。すると14時00分有名な「十字峡」に
着いた。


十字峡は黒部川本流に向かって、東側からは鹿島槍、爺ヶ岳などを源流とする「棒(ぼう)小屋沢」と西側から剱岳・別
山などを源流とする「剣沢」が丁度十文字にクロスする場所だ。登山道を少し下れば展望所があるのだが、先を急ぐ団体
登山の為諦める。ここには剣沢にかかる吊り橋がありこの橋の上からも十字峡の概要を眺める事が出来た。



      黒部川の下流方面を見る  十字峡に向かって沢幅が狭まって行く

  
 13時45分 ガレ沢の上方を眺める                ガレ沢を渡る 雪渓が残っていると危険な場所らしい

  
岩場に桟道が付設されている場所を通過 奥に滝が見える   13時50分 滝のあるガレ沢を通過する 
                                       ここは水量が多いと水しぶきを浴びるらしい

  
  登山道は木々の生えた中に入って行く               おっ 十字峡手前にビバーク地があったぞ

  
        吊り橋へと下る                      あれが十字峡だろうか


 「十字峡吊橋から十字峡を眺める  手前が剣沢、奥から棒小屋沢が流れてくる  黒部川本流が右から左へ流れている

この「十字峡吊り橋」を渡ると登山道は垂直の大岩壁を抉った迫力満点のへつり道を楽しめる事となる。この辺りにはカ
ツラの樹が沢山あり紅葉した丸い葉っぱが登山道を埋め尽くす。青空も少し見られる様になり東側に聳えている後立山連
峰方面を見上げるが霧が未だ残っており直接確認する事は出来ない。黒部川から高く離れた紅葉の樹林帯を進む。

  
 十字峡吊橋は真ん中の踏み板が広いが良く揺れる      紅葉越しに十字峡を空中散歩


      十字峡を渡ると又大岩壁のへつり道が現れた 節理がよくわかる

  
  切れ落ちた断崖から見る黒部川の川幅は広い       桟道も丸太3本だとちょっと気を使う

  
 カツラの葉 黄色が腐食して来るとこんな色に     周りが木々に覆われると安心感があるが退屈する

  
 時々青空も顔を出すが高い稜線部はガスが消えない  十字峡の下流側になると川幅が広くなっている

今まで黄葉が大部分だったが、次第にカエデの鮮やかな朱色も目立つ様になる。フツーに近い登山道に少し飽きて来ると
14時35分再び岩壁を抉ったへつり道になり嬉しくなる。眼下に黒部川が見下ろせる場所に出ると、見事な紅葉が青い
水、白いしぶきの川面を飾る。対岸の斜面も緑や黄色、赤のパッチワークになって美しい。


  
 黄色の中にカエデの赤が混じってくる                基本 樹木が切れると岩盤が現れる


          14時40分になると眼下の黒部川が峡谷になって来た


    対岸の岩壁が迫り岩肌の裂け目や岩に纏わる紅葉が美しい


     黒部川・下ノ廊下は厳しくも美しく、そこを歩いた者を大いに感動させる


     様々な種類の広葉樹がこの時期一斉に色づき黒部川を飾る

作廊谷

垂直の断崖に刳り貫かれた登山道を進んでいると14時50分「作廊谷合流点」の標識に出合う。作廊谷? 樹木が茂っ
てそんな沢は見えない。後で調べると作廊谷(さくろうだに)は黒部第四(地下)発電所の上部にある谷の名前で、関電
黒部見学ルートで使用される関電専用道路「黒部トンネル」の終点が「作廊谷(さくろうだに)」駅で、ここから発電所
まではインクライン、つまりケーブルカーの様な物で下っていくそうだ。

地形図で言えば左岸の半月沢の対面にある沢って事になる。
すると登山道の足元が切れ落ちて真下に青い水を湛えて流れ
る黒部川を高度感たっぷりに眺める事が出来る。


  
   川幅が狭まった黒部峡谷                      14時50分「作廊谷合流点」の標識と出会う

  
 5本の桟道なら安心感がある                     谷は切れ落ちて深い  落ちたらアカン〜〜♪

15時00分前方に大きな岩が崩れかけた「半月沢」が現われそこを通過する。この辺りの岩石は大きな四角い節理をし
た花崗岩の様に思われる。岩壁にはダイナマイトを差しこんだ穴の跡も残っていた。すると足元の岩盤が剥げ落ち、天井
からも尖った岩が突出した難所が現れる。そこには「半月峡」の鉄板標識が掛けられていた。黒部川がビミョウ―に湾曲
している事からそう名付けられたのだろうか。


  
   イワカガミの紅葉ってこんな色?                半月沢の凹みから対岸を眺める


  15時00分 荒れた半月沢を渡る  ここに雪渓が残ってたら厄介そうだなあ

  
   ダイナマイトを差し入れた穴の跡 花崗岩やろねえ      げっ〜 足元の岩節理が剥げかかっているよ〜

  
      半月峡の鉄板標識                               半月ねえ ?


15時05分、半月峡から少し進んだ所に「S字峡」の標識が現れた。確かに眼下の谷筋は湾曲しているがS字になって
いるかどうかはドローンでも飛ばして確認するしかない。
すると左岸の絶壁道の向こう、右岸側になにやら戦時中のトー
チカを思わせるコンクリートの穴が見える。まあ私は戦後生まれだからトーチカって写真で見ただけなんだけど・・・


美しい紅葉に彩られた黒部川の岩壁に何とも無粋なコンクリート構造物は関電・黒部第四地下発電所からの送電線だった。
でも冷静に考えればこの関電施設のお蔭で登山者も安全のこの桃源郷を歩く事が出来るのだから有り難くこのダブルホー
ルを拝まなければならない。


  
 絶壁とは言えない場所も滑り落ちたら下まで転がるぜよ    15時05分 今度はS字峡の鉄板看板が掛っている


     確かに眼下の黒部川は大きく湾曲しているなあ

  
 これは少し上流部やから半月峡付近かな       垂直岩盤へつり道は続く  奥に黒四発電所からのケーブル出口が見える


  15時10分下流を眺めると対岸の岩壁から二つコンクリートの穴が見える  「人見平」が近づいたのだ

S字峡を過ぎてもしばらくは断崖絶壁の細道が続く。特にスラブ岩が剥き出しになっている斜面などは結構緊張感を持っ
て通り過ぎる。15時25分くだんのトーチカがグッと近くで対面する事になる。電線が延ばされた穴の上には赤い関電
ロゴと金色でそれぞれ黒四発電所と関西電力の文字が書かれている。カツラなどの落ち葉が堆積して滑るのを注意して歩
いていると15時30分「新北陸幹線No.乙1」への送電線巡視路標識があり巡視路が鉄梯子で上に延びている。



       前方にスラブ岩があり気を付けて通過する   左手にワイヤーがあるので安心だ

  
 この辺りでは又川幅が広くなる                     上から噛みつかれそうな天井岩

  
   今回のしんがりを務めるCL中村さん              やっと登山道が落ち着いて来た


手前には関電ロゴマークと「K四発電所」、 向こう側には同じく関電ロゴマークの下に「関西電力」と金色で書かれている

  
  アップするとこんな形をしていおり、中から電線が延びる    落ち葉が沢山広がった登山道を進む

  
15時30分 新北陸幹線 No.乙1への巡視路標識        ここから黒部川へ向かって下る


東谷吊橋を渡り仙人谷ダムから人見平へ

関電・新北陸幹線、送電線巡視路標識から急な下りとなり木梯子の整備道を下りると鉄塔を通過する。この奇妙な形をし
た鉄塔の向こうには更に奇妙な形をした例のトーチカが二つ口を開けていた。


15分程急坂を下ると黒部川の東谷出合に架かる「東谷吊橋」を渡る。東谷は後立山連峰の盟主・五竜岳から鹿島槍岳を
源流とする沢でこの吊橋付近で黒部川に合流する。美しい紅葉に包まれた黒部川を空中散歩して右岸に渡ると広い作業道
となる。この辺りは五竜岳〜東谷山から西に派生する尾根が黒部川に少し突き出した地形になっている。川沿いの洞門を
歩き雲切谷を左手に見ながら作業道を進むと16時10分仙人谷の下側にある少し小ぶりな「仙人谷ダム」に着く。


仙人谷ダムは欅平に建設された黒部第三発電所用のダム施設で、ここから阿曽原まで工事用や導水トンネルが日本電力に
より戦前に建設されている。


  
急な下りだが鉄塔巡視路になっているので整備されている    奇妙な鉄塔の向こうに電線がトーチカより延びている

  
  黒部川の近くまで下りる                      15時45分 東谷吊橋を渡る

  
五竜・鹿島槍付近を発する水が東谷出合で黒部川に合流する  吊り橋は先に渡った十字峡吊橋と同じ型式だった


    長い東谷吊橋に揺られながら黒部川の右岸に広がる紅葉の森に向かう

  
落石、雪崩防止に作られた右岸の洞門を抜ける          左手に雲切谷を眺めながら川沿いを歩く


    16時10分 「仙人谷ダム」に着く  このダム堰堤を左岸に渡り返す  下流に関電専用鉄道の鉄橋が見える


登山道はこのダム堰堤を左岸に渡り返す事になる。巨大な黒部ダムも迫力があるが、小さな仙人谷ダムもそれなりの味が
ある。ダム上を左岸に渡り切った所でコンクリート施設構内に入る。構内には「旧日電歩道」の標識がある。途中、近代
化産業遺産の標識が掛けられた施設内を進むと、高熱隧道(こうねつづいどう)に繋がるトンネル横を通過するのだが、
熱風が吹いておりメガネが曇った。


高熱隧道は黒三発電所建設へ向けてのトンネル工事で最大166度Cの地熱岩盤に遭遇してダイナマイトの爆発や宿舎の
雪崩事故も含めて多くの犠牲者を出した難工事の国策産業遺産だ。現在は導水施設などの為に温度は下がっているそうだ。


関電専用鉄道の線路を横切るのだが踏切遮断機などは無い。関電トロッコが通る時は作業員が出て通行止めにするのだろ
う。16時17分やっと暗い施設構内から外に出る。狭く暗い場所から出た時の解放感は何とも言えない。5分程の暗い
構内通過であったがとても長く感じられた。

  
  ダムの上を左岸に渡り返す             下流部は飛竜峡の峡谷へと続いている

  
    ダム施設内のトンネルを通行する         この辺りは洞門になって金網越しに外が見える

  
高熱隧道は平成19年に近代化産業遺産となったらしい   関電専用鉄道の軌道を渡る 信号も遮断機も無い

  
高熱隧道へ続くトンネルだからメガネが曇る       16時17分 外に出てホッとする


いよいよ「阿曽原温泉小屋」へ

振り返ると雲切谷に滝が落下するのが見えた。この辺りは「人見平」と呼ばれる平地で16時20分関電人見平宿舎の立
派な建物の横を通過する。この建物の外れから登山道が始まり梯子段などが敷設された急登となる。今まで水平か下りの
道を歩いて来たメンバーからは「キツイ〜」の言葉が漏れる。でも時間的にも距離的にも大した事は無く、少しダレた体
を引き締める山歩きらしい体感が得られる。16時42分新北陸幹線No.3鉄塔への巡視路を分けると傾斜も緩くなり
「水平道」となり、16時50分コンクリートの「権現峠トンネル」を潜る。




     人見平からダムを振り返ると関電専用鉄道の鉄橋の向こうに「三枚滝」が見える

  
  立派な関電・人見平宿舎の横を抜けて登山道へ向かう   16時23分 登山道へ入る  ここは鉄塔巡視路だ


   本日最後の試練、権現峠への急登を頑張る ちゅうか本日初めての上り坂だ

  
関電 新北陸幹線No.3鉄塔への巡視路が左へ分岐する     ブナの美しい水平道に入る

  
   16時50分 コンクリートの権現峠トンネルをくぐる      その後、少しの間味のある水平道になる

  
    カツラの黄葉  この落葉も凄い量だった           ブナの黄葉も美しい


阿曽原温泉小屋 (標高800m)

17時00分やっと阿曽原温泉小屋への下り坂が始まる。人見平から上った分をここで下らなければならない。道はそれ
程悪くは無いが急な斜面をジグザグに下りて行く。小屋が上から見えないので黙々と薄暗くなった下り坂を進む。

阿曽原温泉小屋は戦前、欅平から仙人谷ダム間のトロッコ軌道建設時に作業員宿舎が立てられていた場所で、当時のコン
クリート基礎を利用した収容人数50人のプレハブ小屋である。但し秋の混雑時には宿泊客が200名程になり食堂が寝
室に利用される事もあるそうだ。黒部峡谷トロッコ列車の欅平から黒部ダムまでの下ノ廊下にはこの阿曽原温泉小屋しか
存在しない事と、国立公園内にある下ノ廊下では原則テント泊は禁止されているので頼るのはこの阿曽原温泉小屋とその
野営場しかないのだ。

積雪の為にプレハブ小屋は7月中旬に組み立てられ10月29日の宿泊までの営業となり解体される。主たる利用客が目
的の下ノ廊下が通れるのは秋の僅かな期間なので大混雑となる。一応予約制となってはいるが、個人の飛び込み客なども
有って部屋のやり繰りが大変らしい。

ブログなどで良く見かける露天風呂はこのトンネル掘削作業で最高166度の硫黄を含む高熱岩盤に突き当たり難渋した
という「高熱隧道」から引かれている訳では無く、新黒三発電所への送水トンネル掘削時の土砂出し用の横坑からの熱水
を引いているとの事。


緯度が四国より高い分日暮れが早く次第に薄暗くなった17時17分「阿曽原温泉小屋」に到着した。小屋の前では愛想
の良いおばさんが靴の番号札を一人づつ「お疲れ様でした」と言いながら渡してくれる。入り口の右手に靴箱があり、登
山靴が沢山並んでいるので間違わない様に札を付けているのだ。左手にある受付から顔を出したご主人が「え〜〜っと 
20名全員で一部屋使って下さい ハイ 4号室へ まあ こんな時期ですからね」一部屋を我々の会で使わせてくれる
のか・・・と思ったがそれが甘い考えだった事がすぐ解る羽目になる。



  
 17時00分 やっと阿曽原へ向かって下りになる         薄暗いのでライトを点けている人もいる

  
 17時17分 やった〜 阿曽原温泉小屋に着いた〜〜〜   靴の番号表を貰って入口右手の靴箱に置く

ギシギシ音を立てながらプレハブ4号室に行くと布団をキッチリ10枚敷くスペースしか無い。う〜ん 布団一枚に二人
って訳だが、そうなると夜にトイレへ行く通路が無い。仕方なく出口近くに配置された私のスペースを通路にする為、隅
っこのスペースでシュラフに包まって寝る事にした。


荷物も部屋に置けないので荷物室(兼、乾燥室)へ行くが既に多くのザックや濡れた衣類で一杯だが、ここも何とかスペ
ースを確保する。温泉好きな連中は真っ暗な中、結構遠い露天風呂まで下って行く様だが私はノーサンキューだ。アルコ
ール除菌シート風呂でスッキリとする。


 
 ベトナム難民収容所? いえ ここは山小屋です       いったい どんな組み合わせで寝たらいいのよ? ボーゼン

19時少し前に我が会の夕食順番が来てカレーを厨房窓口で支給される。質素だがお代わり自由と来たもんだ。ご主人か
ら我が会が以前、登山者の少ない時期に来てくれて助かったとお礼を述べられる。


  
阿曽原温泉小屋のお代わり自由のカレーライス         確かここのご主人は山岳救助隊出身だったよね

さて、水は豊富なので歯を磨いた後は睡眠導入剤を飲んでシュラフに潜り込む。デカいイビキがあちこちから聞こえるが
何となく寝られた気がする。


下の廊下 2日目  阿曽原温泉小屋〜折尾谷〜志合谷〜しじみ坂〜欅平〜(トロッコ列車)〜宇奈月温泉 は  ここ     

 

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