上高地をベースに焼岳と常念岳へ  平成28年10月29日〜11月2日


カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図  焼岳と常念岳

第二章

10月31日〜11月1日 
徳沢〜蝶ヶ岳〜常念岳(小屋泊)〜横尾〜小梨平(上高地)

カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 蝶ヶ岳〜常念岳



10月31日 徳沢〜長塀山〜蝶ヶ岳〜蝶槍〜常念岳〜常念小屋  ( 約11時間 )

05時30分起床して少し離れたトイレへ行く。昨夜会ったアメリカ人はまだ寝ている様なのでテント付近では抜き足差し足で静かに
歩く。テントに帰ってサブザックに小屋泊に必要な物だけ詰めて出発の準備をする。06時になると辺りは明るくなりやがて梓川を挟
んだ対岸に聳える明神岳の天辺が朝陽を浴びてオレンジ色になる。


06時25分蝶ヶ岳への登山道、長塀尾根へと入る。昭文社の地図では徳沢〜蝶ヶ岳のコースタイムは4時間30分となっており、蝶
ヶ岳から常念岳は5時間程なので夕方までには常念岳へ着けるだろうと計算する。急坂にはモミ類の大木が多く根っこが網の目の様に
登山道を埋めている。林床は笹に覆われているが登山道は所々木梯子などで整備されているので問題は無い。08時10分からは明確
な尾根が確認出来ない斜面となりシラビソ林に続く登山道を頼りにひたすら上る。



   徳沢野営場にテントをそのまま置いてサブザックにて常念岳へ出発する ファイントラック・カミノドーム2

  
   明神岳が朝日を浴びる                         06時25分 徳沢園の奥に蝶ヶ岳の登山口がある

  
   ツガ類の根っ子が張り出した登山道                  時々平坦な場所もある


長塀山(ながかべやま) 三等三角点「長塀」(ながかべ)2,565.12m

  

08時50分東に振った登山道はここで長壁山への尾根部を北に進む。09時00分切り株に標識が掛けられており徳沢まで3km、
蝶ヶ岳まで3kmの中間点を示している。
地図上の直線距離ではまだ蝶ヶ岳への距離が長いのだが、明らかに等高線がこの辺りからな
だらかになっている。掘れこんだ登山道には石が敷き詰められて整備されている。


09時30分頃平らな地形に水が溜まって、昨日からの冷え込みで分厚い氷が張っている。更になだらかな尾根筋の樹林帯を進むと09
時50分「長塀山」の標識と三角点に出会う。


標識には日本語、英語、ハングル文字で徳沢・上高地4.4km、蝶ヶ岳1.8kmと描かれていた。やはり北アルプスは韓国からの登
山者が多いのだ。すると右手が開けてそこから何と富士山が見えた。この辺りは湿地帯らしく右手に又大きめの池がある。


  
09時00分 徳沢から3km、蝶ヶ岳まで3kmの中間地点標識      窪地には水が溜まり凍っている


09時55分 長塀山(ながかべやま)に着く  徳沢から4.4km、蝶ヶ岳まで1.8kmだ

  
    おおっ  富士山が見えるぞ                    10時00分 右手に池がある

更になだらかな樹林帯を進むと10時15分登山道脇の木に「蝶ヶ岳まで1km」標識が掛けられていた。左手の樹林帯越しにも池が
見えるのでそれを気にしながら歩いていると前からイギリス人が地図を片手に下りて来た。「どうしてこんな場所を知ってるの?」と
聞くと軽井沢に住んでいると答えた。何にしても上高地近辺の山は外国人にも人気の様だ。



  
 10時15分 蝶ヶ岳まで1kmの標識がある              そこへ軽井沢に住んでいるという英国人が地図を片手に下りて来た


蝶ヶ岳 2,677m 槍穂展望所

10時30分登山道の右脇に大きめの池がありおそらくこれが地図に書かれている「妖精の池」だろう。

これを越えると樹林帯を出てハイマツに変わり前方の視界が一気に開け丸っこい山頂部が見える。何気なく左手を見ると何と槍ヶ岳が
尖がっているではないか! 急いで更に高みへと進むと槍穂がデ〜〜ンと並んでいる。おぉ〜〜〜  これが槍穂展望所、蝶ヶ岳か〜〜
見える尾根を歩いたと言う実感が更に感動を大きくする。


眺めては写真を撮り、写真を撮っては又眺める。いくら眺めても飽きる事の無い雄大な風景だ。南側を見ると昨日登った焼岳とその向
こうに乗鞍岳が見える。う〜〜む マンダム!!


10時55分ハイマツ林の間を抜けて稜線部へと進む。先程から槍と穂高に目が釘付け状態だ。ハイマツ林を抜けると赤い蝶ヶ岳山荘
とその向こうに常念岳が良く見える。

11時03分バックに槍穂が控えていなければ平凡な尾根ピーク「蝶ヶ岳」山頂に到着する。この場所は従来「長塀の頭」と呼ばれ
るこの付近の最高点である。


  
   又富士山が右手に見える                      10時30分 地図には妖精の池とある  金の斧を下さ〜〜い

  
  樹林帯を抜けてハイマツの丘に出る                 左を向いてビックリポン!  あれ〜〜  槍じゃん


         前穂高岳    奥穂高岳 涸沢岳    北穂高岳 (大キレット)  南岳      中岳  大喰岳 槍ヶ岳


 大キレット        南岳             中岳   大喰岳    槍ヶ岳       北鎌(奥)           西岳


前方の尾根はハイマツで緑が多い  蝶ヶ岳ヒュッテから常念岳へ続く尾根が見える  その奥には大天井(おてんしょう)岳

  
            昨日登った焼岳                                  今から進む常念岳

  
   徳沢方面への下山口標識                         11時05分蝶ヶ岳山頂に立つ


  蝶ヶ岳山頂はこの辺りのなだらかな尾根最高点 2,677mで「長塀の頭」と呼ばれていた場所らしい  奥に穂高が並ぶ

 
       槍〜〜〜 アップにするとド迫力〜〜    正面が槍沢だ〜〜


            御岳山                           乗鞍岳             手前右は霞沢岳か?


ここから北側へ下がった場所に蝶ヶ岳山荘があり、稜線が少し右側に触れてその向こうに常念岳が比較的近くに構えている。常念岳は
右手(東側)へ前常念岳への尾根を持っているので台形に見える。その奥には横通岳、東天井岳、大天井岳らしい山塊が続いている。

東側には安曇野の町が広がり、里が見える山は情緒がある。

11時15分蝶ヶ岳小屋の横を抜けて先の尾根道が続く。なだらかなピークを越えると前方が開けて常念岳への尾根筋には結構アップ
ダウンがある事が分かる。天気が良い日には快適な尾根歩きが楽しめる最高の場所だ。



                     槍穂をバックに記念の一枚を撮って頂く


       蝶ヶ岳ヒュッテの向こうに右手に張り出した台形の常念岳   奥が大天井岳か

三等三角点「蝶ヶ岳」2,664.48m と蝶槍 

11時45分横尾分岐の標識に出会う。帰りはここから横尾に下山する事になるので周りの景色に注意する。振り返ると右手に明神岳
があり梓川の流れの向こうに焼岳とその奥に乗鞍岳、更にその左奥に御嶽山が並ぶ。ハイマツの尾根を進むと前方に又なだらかなピー
クが見えそれを上がると三角点があった。ここは三等三角点「蝶ヶ岳」で標高は2,664.48mだ。尾根の最高点「蝶ヶ岳」は小
屋の南側にあった山頂標識部で標高は2,677m地点だ。


この三角点を過ぎると前方に尖った岩山が見える。ここまで来ないとこの「蝶槍」の存在は明確に確認出来なかった。12時22分岩
っぽい蝶槍に到着する。この辺りは左手を見るといつも槍穂が並んでいる贅沢な尾根筋なのだ。そしてここに来ると常念岳への尾根が
急激に下がって中間部に一つ低い樹林帯ピークがある事も又知らされる。


  
  11時15分蝶ヶ岳ヒュッテの横を通過                  なだらかに見えて尾根には結構起伏がある

  
   前方に尖って見える所が蝶槍かな?                尾根は小さなピークがあるだけで前方が見えなくなる

  
  11時45分 横尾分岐 明日はここを下る予定            振り返ると明神岳〜焼岳〜乗鞍岳〜御嶽山が並ぶ

  
   前方になだらかなピークが見える                  そこから振り返ると尾根が2重稜線になっている事がわかる


   三等三角点「蝶ヶ岳」 2,664.48m  奥に富士山が見えるから左奥が八ヶ岳、右奥が南アルプスかな?

  
   なるほど これが蝶の槍ヶ岳か〜                         蝶槍に近づく


    12時22分 蝶槍の山頂に到着  ここもバックに槍穂が控えている

 
        蝶槍まで来ると、常念岳の手前に一つピーク(2,592m峰)がある事がわかる 常念岳は裏側に長い尾根を持つ


2,592m峰

ダケカンバが並ぶ斜面に向かってハイマツの登山道を下る。しばらくして針葉樹の樹林帯に入り尚も下る。12時57分鉄のパイプ梯
子を下りて草地のコル部に着く。次のピークへと樹林帯を進んで斜面から振り返ると蝶槍が見える。
前方のピーク付近は草地になって
おり13時40分高みに着くと標識があり「2,592ピーク」と記されている。



   ダケカンバの帯へ向かって左へトラバースするので槍ヶ岳が正面に見えるぞ

  
  次第に向きを北側の常念岳への尾根へ向かう           ダケカンバの樹林帯に入る

  
  なおも樹林帯の中を下る                         12時56分 パイプ製の梯子を下りるとコル部の草地に着く

  
  コル部から比較的なだらかな次のピークを目指す          ピークの峠部に出る


           13時40分 2,592m峰について蝶槍を振り返る

  
常念岳 日本百名山 標高 2,857m

前方に見える常念岳は右に張り出した尾根の為に丁度大天井岳の形に良く似ている。それでも尾根は一筋縄とはいかず更に樹林帯の小
ピークを越えて行かなければならない。


14時10分樹林帯の尾根がハイマツと岩に変わり、岩に赤ペンキのマークが現れる。花崗岩の大きめの岩が出現し一挙に山の相が変
わってきた。いよいよ常念岳の山域に入った様だ。手前に岩ピークがありまずそれに向かって岩山を這い上がって行く。14時40分
この岩ピークの左を巻いて上部の岩尾根へ出て行くルートとなった。この辺りに来ると槍ヶ岳は手前の赤岩岳、西岳、赤沢岳の表銀座
によって基部が遮られている。


15時25分左手トラバース路の岩場を回り込むと前方に高度差があまり無くなった常念岳の本体が現れる。15時50分大岩の上で
休憩し蝶ヶ岳方面を振り返ると沢山のピークがある事がわかる。また富士山も確認する事が出来た。
ガレた緩やかな岩場を登って行く
と16時10分常念岳に着いた。


     
  シラビソなどの針葉樹林帯を下る                    常念岳の直下まではまだ樹林帯の尾根が延びている        


            常念岳は花崗岩が多いので雪を被ったように白い色をしている


  
   14時10分樹林帯を抜けて岩尾根に変わる             花崗岩の大きな岩が目立つ   


      岩尾根の上に常念岳が迫力満点で立ちはだかる  こう言う風景は身震いして最高だ

  
    岩尾根ピークに向かう                         振り返ると蝶槍までの尾根が見える

  
  前方の岩ピークは左手を巻く                      ここまで来ると槍ヶ岳の手前に西岳から延びる尾根が現れる

  
  15時25分 岩ピークを巻いて常念へ一直線                    右手には安曇野の街が広がる

  
   15時50分  山頂を前にちょっと休憩〜〜               ナメクジ岩を過ぎる

  
   あと少し〜  あとちょっと〜  もうすこし〜〜            おぉ こんな時間の山頂に誰か居るぞ


    16時10分 日本百名山「常念岳」へとうちゃこ〜〜


    常念岳の祠   後ろには大キレットをセンターにパノラマが広がる

常念坊

ウィキペディアによると「古くは乗鞍岳と呼ばれていた。常念岳の由来は、昔、毎年暮れに不思議な常念坊という山姥が酒屋に酒を買
いに来たからという説や、坂上田村麻呂がこの地に遠征した際に、重臣である常念坊がこの山へ逃げ込んだとされることから付けられ
たという説など、いくつかの説がある。春に前常念岳の東北東の雪の斜面に、とっくりを手にした坊さんの黒い姿の常念坊の雪形が見
られ、安曇野に田植えの時期を知らせる雪形とされている」と解説されている。


又、日本アルプスガイドによると「春の彼岸をすぎる頃、安曇野から望む前常念岳の東壁に、黒染めの衣を着た念仏僧が左を向き鉢を
持った姿として現れます。この雪形を「常念坊」と言い、
4月中旬になるとその姿はくっきりとなってきます。
雪形の名前の由来は、江戸時代山麓の堀金村にあった正福院・本覚時の僧「常念坊」が常念岳を開山したことに因みます。望見期間は
4月上旬から中旬で、この雪形が出ると安曇野で田植えが始まります。」と記されている。
常念岳の山名由来である常念坊の解釈に諸説ある事がわかる。


         この常念岳で北アルプスの日本百名山は全て登った事になる  シェ〜〜〜

常念小屋へ下る

山頂には常念小屋から山頂へ登って来られた登山者が1名居て記念写真をお願いする。この山頂を懐かしがりながらも寒いので下山す
ると言うその男性に小屋到着が遅れる事を常念小屋に伝えて貰った。安心してゆっくりと周りの景色を楽しんだ後、16時30分小屋
へ向かって下りる事にする。


山頂を出発してなだらかな岩斜面を下ると「三股」登山道分岐標識に出会う。ここから前常念岳を経由して安曇野の三股登山口まで5
時間程で下れる様だ。最初私もこの三股から常念岳〜蝶ヶ岳の周回も検討していたルートだ。山頂からは常念小屋は見えないが、岩の
ペンキを頼りに15分程で張り出した尾根の先端まで下りると小屋の赤い屋根が見えた。


前方の横通岳と常念岳のコル部(常念乗越)に小屋が建っている。眼下に見える小屋は岩斜面を下っても下っても中々近づかず結局
17時25分薄暗くなった小屋にやっと到着した。小屋の横にはテントが一張りあった。あ〜テント泊だと今晩は寒いやろなあと思う。

  
  夕暮れの安曇野   早く小屋に下りなくちゃ〜    三俣ルート分岐  本沢沿いを安曇野へ下りるルート
  


    北側に見える北アルプスの山々  常念小屋は張り出した尾根で見えない

  
  岩クレの斜面を振り返る              近くて遠い物なぁに ? それはね 山小屋よ

  
  日暮れと槍ヶ岳が同じくらい気になる         いや〜〜ん まだあんな所なの?

 
遅れる連絡を登山者に言づけていたので小屋の人がお疲れさんと愛想よく迎え入れてくれた。常念小屋は小屋仕舞い準備の為に若いス
タッフが沢山いるが登山者はさすがに少なく、通された部屋17号室(定員12名)には何と他の登山者は居なかった。う〜〜ん 
シーズンが違えば山小屋ってこんなに快適なのね。


夕食は登山者と話をしながらハンバーグとコロッケを頂く。部屋に帰ると寒いので毛布を二人分使って暖かく眠る事が出来た。

      
17時25分 フラッシュを焚かないと写真が撮れない時間です     常念小屋27号室 え? 山小屋の部屋って山の名前じゃないの?


  
  あんりゃ  12人部屋に一人っきりなのね 寒そう・・・          ハンバ〜〜〜〜グ  



11月1日 常念小屋〜常念岳〜蝶槍〜横尾〜徳沢〜上高地(小梨平)

夜中から強風が吹き窓がガタガタ鳴っていた。

05時30分朝食の呼び出しがあり食堂に向かう。あまり早朝は食欲が無いのでテント泊の場合は朝食は抜く事が多い。だが山小屋や
ホテルで予約していれば不思議と勿体ない事もあり食べる事が出来る。脳の中枢と胃の受け入れがアンバランスなボクちゃんなのだ。

部屋に帰って窓を見ると一面の雪である。06時25分小屋に挨拶をして外に出ると一面の雪景色となっている。寒波が来ると天気予
報で言ってたけど一晩で山の様相はガラッと変わった。この程度の急変動は大した事はないが、北アルプスの天候急変は気を付けなけ
れば命にかかわる事もある。小屋前の広場では若いスタッフが嬉しそうに雪景色の写真を撮っている。


  
  勿体ない精神で朝食を食べる                      06時25分常念小屋に挨拶をして出発する

  
  おひょ〜 一面の雪景色じゃん                     小屋仕舞いの若い従業員も嬉しそうだ


雪の常念岳へ

アイゼンは当然用意していないが、雪もそう深くないので大丈夫だろう。北アルプスで思わぬ雪山の出現に少し興奮する。常念岳への標
識横を抜けて少し急な岩傾斜をジグザグに登って行く。残念ながら槍ヶ岳方面は昨日の展望は無く低く雲が垂れ込めている。


07時25分小屋の眺めに別れを告げて一段上側の緩い岩スロープを進む。山頂近くになると小屋泊りの人が居るのが分かる。08時
00分山頂に到着すると、昨日ここで会った人が友人を連れて又ここまで登ってきていた。この人たちは小屋へピストンし安曇野側に
あるヒエ平(一ノ沢)へ下山すると言う。


  
こちらから見る常念岳はなだらかな印象だ(山頂部は見えない)   06時40分標識に従って雪山へ進む


元々花崗岩の砂で白っぽい常念乗越なのだが今日は雪で真っ白だ  赤い小屋の屋根も雪に覆われている

  
  安曇野側は少し見通しがある                      槍ヶ岳方面は全く見えない

  
   常念小屋に別れを告げる  横通岳も真っ白だ          07時30分常念岳の本体を目指す

  
山頂には小屋から来た二人の登山者が居た               蝶ヶ岳方面を見る  これなら問題なく下れそうだ


  08時過ぎに常念岳に着く  昨日の展望が記憶に残っているので雲の中を想像する


         まあ しゃ〜ないわなあ 雪雲が常念山脈にかかってないだけマシと言うものよ


  
常念岳の山頂標識は風に飛ばされない様に重しが付けられている  帽子が飛ばされてあわや谷底へ・・・慎重に取りに行った


常念岳から蝶槍へ

「瞬間風速が30mあるそうですから気を付けて下さい」と言われて別れを告げ蝶ヶ岳方面へ下山を開始する。あっという間に帽子を
飛ばされたが幸い崖の所に止まったので急いで拾いに行く。ここからの下山は強風との戦いだった。時々風で吹き飛ばされそうな体を
屈めてタイミングを見はかりソロソロと下山する。


この山域は岩山ではあるがクサリ場などは無くて比較的安全な場所なのでゆっくりと進みすれば危険は無い。雪で岩のペンキが消えた
場所では慎重に歩き単純な稜線部の高度を下げて行く。
09時00分ナメクジ頭岩ピークを右手に巻いて下る。しばらくして一瞬の青
空が現れ喜ぶがすぐに期待外れだった事が分かる。



           08時10分 蝶ヶ岳方面へと下山開始する

  
 強風に吹き飛ばされそうな稜線をゆっくりと下る             西風が強いので稜線の右側(西)の見通しが良いので助かる

  
  アイゼンが無いので慎重に歩く                      09時00分 ナメクジ岩を右に巻く


                      一瞬の青空が見え常念岳を振り返る

すると上から若い単独男性が下りて来たので先を譲る。09時30分ハイマツの影でその男性が休んでいるので少し話をする。この男
性は燕岳方面からやって来て昨夜常念小屋のテン場で泊まった人だった。昨夜は寒くて風が強くて眠れなかったそうで、私は小屋泊り
にして正解だった。横浜出身でいわゆる世界中バックパッカー生活の末に現在はミヤンマー在住で何やら商売をしているとの事。
こういう話は面白いが人生の参考にはならない。


雪山は初めてらしく不安で私の足跡を必死で追って来たらしい。この後も不安なので一緒に歩かせて欲しいと言われて横尾まで旅は道
ずれとなった。
10時少し前に又一瞬の晴れ間が出て喜ぶが常念岳は見えるものの槍ヶ岳方面はやはり標高が高いので雲に覆われてい
る。


  
  若い男性が上から下りて来たので先に行って貰う               少し青空の兆しが現れる

  
 「やっぱ不安なんで一緒に歩かせてもらいますわ〜」           槍穂方面は相変わらず雲が飛ばない


             振り返ると常念岳がちゃんと見えだした

  
   う〜〜ん 槍穂の標高が高いので雲が切れないわ         やっぱりダメか〜〜

10時10分樹林帯まで帰り着き、次の中間点ピークに向かって上る。10時55分2,592mピークに着くと愛空も現れるが相変
わらず槍ヶ岳の稜線は雲の中だ。


一旦コルへ下がり樹林帯を蝶槍へと登り返す。常念岳はクッキリと青空の元見えているが昨日見たダケカンバの上に聳える槍の姿は無
い。雲に隠れたその姿をイメージしながら右手を眺めながら右手からハイマツを回り込んで12時03分蝶槍に到着した。


  
10時10分樹林帯へ入る                           コルから2,592mピークへ登り返す

  
10時55分 2,592m峰に到着する                       蝶槍を眺めながらコルまで又下がる

  
    常念岳はクッキリ見える                        やっぱり槍穂の稜線は見えないわ

  
      蝶槍直下を這い上がる                      12時03分 蝶槍に着きミニ三脚で記念撮影


横尾分岐を下る

ここまで来ると蝶ヶ岳への尾根はなだらかで丘の様に見える。昨夜からの雪でライチョウらしき足跡が見える。今回この北アルプスで
はライチョウを見かける事が出来なかったが何とかその足跡だけは見る事が出来た。


12時25分尾根の北側にある「横尾分岐」標識に着く。ここから西側の尾根伝いに約2時間、樹林帯を横尾山荘まで明瞭な登山道が
続く。バックパッカーの波乱万丈な人生模様話はこの退屈な道中に大きく貢献しあっと言う間に13時30分「なんちゃって槍見台」
という標識まで下り立って槍ヶ岳の穂先を見る事が出来た。
その後も退屈しのぎに身の上話を聞きだしながら歩き14時32分横尾分
岐まで至り、ここでバックパッカーと別れる。


  
         ライチョウの足跡                         蝶ヶ岳方面への平坦な尾根を歩く


                           蝶槍〜常念岳〜横通岳方面は良く見える

  
12時25分 横尾分岐から右手に斜面を下りて行く               直ぐに樹林帯に入る

   
   彼のザックは日本にはないオスプレー・アトモスだった            雪の樹林帯をどんどん下る

  
   13時30分 なんちゃって槍見台まで下る                お〜〜 本日お初の槍様〜〜


             少し槍穂付近の雲が飛ばないがありがたいお姿〜〜

  
      槍ケ岳の東側表銀座の尾根                         やはり気になる槍ヶ岳


       14時05分 槍ヶ岳に別れを告げる  中央の中尾尾根の左側は横尾本谷か

  
  笹原が現れると横尾は近い                         14時32分 横尾分岐に下りつく

  
    横尾から橋を渡ると涸沢方面だ                     屏風岩の右手に南岳付近の雪山が姿を見せる

梓川の川沿いを歩き15時37分徳沢園に帰り着きテントを片づける。時間的にここでゆっくりしても良いのだが、小梨平まで行けば
お風呂に入れるのだ。16時10分テントを片づけて徳沢を出発する。途中で森のリゾート小梨に電話するとテントの受け付けは18
時までお風呂は18時30分までと言われた。むむっ ギリギリの時間じゃ〜



                 梓川沿いの美しい風景を眺めながら徳沢へ向かう

  
      川沿いの遊歩道をひたすら歩く                  15時40分 徳沢園にとうちゃこ〜〜


    テントは木立の中で私の帰りを待っていた   さ〜〜  大急ぎで撤収やで

  
  16時10分 テン場のマユミの木を後にする                   河川敷は少し明るい

ザックを背中できしませながら急ぎ足で小梨平を目指し17時30分過ぎに到着。テント泊の受付とお風呂の申し込みをしテントを近
場に設営して荷物を放り込み風呂場に駆け込む。温泉の雰囲気は無かったがサッパリして気持ちが良かった。テントに帰りお湯を沸か
して残ったフリーズドライの食事とスープを作る。


  
物悲しい夕暮れの登山道を小梨平へ急ぐ        17時30分小梨平でテントを張ってお風呂に直行(写真は翌日に撮影)

もう翌日のスケジュール地図を見る事も無いのでゆっくりと今回の旅を思い出しながら眠りにつく。

エピローグ

11月2日はゆっくりと起きてドリップコーヒーを入れる。お世話になった小梨平リゾートを散歩した後、07時20分梓川沿いへ出
て雪の穂高の山を眺める。稜線部は雲に覆われているが冬の北アルプス雰囲気は十分に楽しめた。


  
  朝はテント内の土場でゆったりとドリップコーヒーを入れる     昨夜は暗い中で遊歩道の近くでテントを張った

  
  小川を横切ってリゾート小梨平のある梓川沿いへ向かう    小梨平の受付に挨拶をする。 ここにはゴミ箱も設置されている


                         梓川から穂高の風景


      いや〜〜〜 今回の旅は我ながらグッドアイデアの素晴らしい旅だったぞ   しぇ〜〜〜

河童橋を過ぎて左岸をゆっくりバスターミナルへ向かうとインド人が山に向かっているので話しかける。「どこへ行くの?」「奥穂高
へ行きます、雪はどうでしたか?」「こちらは常念岳でしたが積雪量は大した事はありませんでした。でも奥穂高は結構積もってると
思います」と言うと「そしたら槍ヶ岳へ行こうかな」と言いながら別れた。


しばらく焼岳を見ながら川縁を歩くとオレンジ色の僧侶姿をした集団が川にいる。「何処から来ましたか?」「タイランドです」「そ
んな恰好で寒くは無いですか?」「大変寒いです」と言いながら川の石の上から河童橋の写真を撮っている。



                    静かなる河童橋と雪を被った焼岳

  
       インド人が穂高へ行く 元気でな〜〜                おい おい 寒くないの?


               又来るぜ  晩秋の上高地     焼岳よ 上高地の俯瞰をありがとうよ


上高地バスターミナルへ着き08時50分に中湯温泉行のバスが来たので乗り込む。午前中なので乗客は少ない。30分程して車に帰
り景色を眺めながら帰途につく。


  
 08時50分定期バス上高地を出る                     09時25分中の湯バスターミナル裏のラッシュに帰る

  
         中の湯温泉                             シメはやっぱりとろろ蕎麦

今回、上高地をベースにした北アルプスに残った2つの百名山、焼岳と常念岳を巡る旅は大成功だった。常念岳では山小屋泊となった
が上高地で2夜、徳沢で1夜のテント泊で宿泊費は大幅にセーブする事が出来た。カラマツの上高地もリッチな気分で楽しめたし、常
念岳では雪山も経験出来、成果の多い山行となった。



第一章 上高地から焼岳は     ここ   


  

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