平成26年8月11日〜14日
SEA TO SUMMIT 栂海(つがみ)新道を歩く

親不知〜白鳥山〜犬ヶ岳〜黒岩山〜朝日岳〜雪倉岳〜白馬岳〜小蓮華山〜白馬大池〜蓮華温泉(3泊4日)


 SEA TO SUMMIT 栂海(つがみ)新道を歩く


この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを使用したGPSトラック・ログ図 栂海新道周回図

8月11日(第1日目):親不知〜白鳥避難小屋          歩行 約 6時間20分
8月12日(第2日目):白鳥避難小屋〜朝日小屋野営場    歩行 約13時間
8月13日(第3日目):朝日小屋〜白馬岳頂上小屋 野営場 歩行 約 9時間30分
8月14日(第4日目):白馬頂上小屋〜蓮華温泉        歩行 約 6時間
蓮華温泉〜JR平岩駅:糸魚川バス        (約1時間)
JR平岩駅〜JR糸魚川駅: JR大糸線電車    (約20分)
JR糸魚川〜JR親不知駅: JR北陸本線電車  (約10分)

プロローグ:

日本アルプスの父「ウォルター・ウェストン」が明治27年33歳の時、新潟県の親不知(おやしらず)を訪れ
この場所を日本アルプスの起点と提唱した。


地図をじっくり見ると北アルプス・白馬岳から北側に尾根が伸びて雪倉岳〜朝日岳を経て更に尾根が黒岩山〜犬
ヶ岳〜白鳥山と続き、この親不知で断崖絶壁の形で日本海へ没する。


海抜0メートルから北アルプスを繋ぐ登山道がこの「栂海(つがみ)新道」である。まさに SEA TO SUMMIT
海から山の頂きを目指すロマンの道と言える。
この登山道は地元「さわがに山岳会」により1966年から19
71年にかけて整備されて現在も我々が歩ける状態が維持されている。


      
   SEA=親不知海岸 (海抜0m)                 SUMMIT=朝日岳 (標高2,418.3m ) 


随分以前に「つばくろ」さんからここの情報を頂き、いつかはここを歩きたいと考えていた。今年の夏、掲示板で
知り合った若手の「たけのこ」ちゃんからここを歩きましょうとお誘いがあり、渡りに船で即OKし一緒に歩く事
になった。彼の相棒「敏ちゃん」と3人の都合を調整して8月8日から出発の計画を立てる。


しかし丁度台風11号が西日本へ接近の為計画を変更。台風は8月9日夜四国と中国地方を横断し日本海へ抜ける
のを待って翌8月10日11時坂出コメリの駐車場に集合する。ところが瀬戸大橋が台風の余波で強風の為通行止
めとなり、敏ちゃんの車の中で待機する。14時30分やっと瀬戸大橋の通行止めが解除となり坂出を出発。渋滞
を避ける為敏ちゃんの機転で山陽道から姫路で中国道へ上がり、福崎ICより開通直後の舞鶴若狭道を経由して北
陸道へ入った。


金沢辺りを通過中の事、突然ハッとある事に気が付いた。「登山靴を車から積み変えるのを忘れた」のだ。恐る恐
るその事を2人に伝えると「マジですか〜 金沢のドンキホーテ(24時間営業)に寄りましょうか?」(敏ちゃん)
「私の通勤靴使いはります?」(筍ちゃん)
「何でもいいから貸してくんろ〜」(エントツ山)この際サイズがど
うでも今履いているサンダルよりはマシだ。あ〜〜良かった


敏ちゃんの愛車Xトレイルはディゼルエンジンのマニュアル車なので運転は往復共に敏ちゃんがしてくれる。ご苦
労なこっちゃ


北陸道・親不知IC手前「朝日」ICで下りてコンビニへ寄り夜遅く親不知の天険コニュニーティ広場の駐車場へ
着いた。無料駐車場は親不知観光ホテルの前にあり、ここが栂海新道の起点になっている。辺りを調べると近くに
東屋があり、車中泊の敏ちゃんを残し「たけのこちゃん」と私はザックを持ってここで野宿する事にした。


  
天険コミュニティ広場の東屋とウォルター・ウェストン像             天険広場より親不知の西側海岸を見る



第一部     栂海(つがみ)新道(平成26年8月11日〜12日)

1日目 (親不知〜尻高山〜坂田峠〜白鳥小屋)

2日目 (白鳥小屋〜犬ヶ岳〜黒岩山〜長栂山〜朝日岳〜朝日小屋野営地)

平成26年8月11日

親不知登山口〜尻高山〜坂田峠〜白鳥小屋 (約6時間20分)

親不知・天険コミュニティ広場の東屋は崖沿いの遊歩道脇にあり結構広い。足元はグリ石が敷かれてデコボコであるが
石の表面が比較的平らなのでファイントラックのシュラフカバーを出して野宿する。ところが夜中に大きな雷の音がし
て激しい雷雨となった。雨が強風で東屋の中に吹き込んで来たのでなるべく中央部のセメント椅子の下に寄るが椅子の
足が邪魔になり潜り込めない。防水浸透性のあるポリゴンネストの性能を信じて多少濡れながら一夜を過ごす。



夜が明けても雨が降り続き、心配した敏ちゃんが傘をさしてやって来た。計画では1日目を目一杯歩く予定で暗い内か
ら出発する腹積もりであったのだ。昨夜は気が付かなかったのだが直ぐ横にウォルター・ウェストン像があった。東屋
からは西側の海岸線が見渡す事が出来、海沿いに張り出した道路や落石防止のトンネルなどが見える。東側は断崖絶壁
で垂直に切り立っており、日本海の荒波を砕け散らせている。


  
    一夜の宿 天険コミュニティ広場の東屋                 親不知海岸の断崖 (昔、この下を旅人が往来した)

06時30分頃になり雨も止んで来たので駐車場へ帰り出発の準備をする。

栂海新道の登山口は国道を挟んだ対面にあったが、ここは海抜ゼロメートルからの出発を目指して06時50分駐車場
の端にある遊歩道を親不知海岸へ下る。
標高差で80m程急な坂を下るが、落差がある滝が国道筋から大量の水を落と
していた。


途中で大正元年から昭和40年まで使っていた北陸本線の旧親不知煉瓦トンネルが残されていたのを見物後、海岸線の
狭い石だらけの親不知海岸に下りる。
日本海にタッチっても荒波の為タイミングが難しく三人で子供の様に大騒ぎをし
ながら手を海水に浸す。


   
  北陸本線の旧親不知煉瓦トンネ           親不知海岸までは遊歩道がホテル横から続く

  
     引き潮のタイミングを狙って手を伸ばす                  海抜0メートル 日本海にタッチ〜〜

無事日本海にタッチして駐車場へ上り返して重いザックを背負うと、トンネルから猛スピードで飛び出してくる車に注
意しながら国道を横断して07時40分いよいよ栂海新道へと入る。


鉄階段を法面へ上がると左手へ道があり、植林の斜面に入っていく。5分程歩くと広い林道がありこれを横切る。最初
の栂海新道は北陸電力の鉄塔保線道を利用させて貰っているので10分程で鉄塔を通過する。


  
  親不知観光ホテル前の国道を渡る           07時40分 いよいよ栂海新道に入る

 
    国道に沿って左手に登山道が続く
              直ぐに林道を横切る   正面の階段を森に入る

この辺りは自然林となっており朴(ほう)ノ木が多く、天狗の団扇みたいな葉っぱが沢山見られた。最初は急な上りで
タケノコちゃんは最初からテンションが高いが敏ちゃんは出始めが調子が悪い様で少しペースが遅くてこちらとしては
助かる。


 
   むむっ   これはトンボソウ(蜻蛉草)か                  爽快な自然林の中を歩く

「入道山」と「二本松峠」

その後、笹や灌木を持ったなだらかで緑深い登山道がくねくねと続く。
09時10分そんなとりとめのない平らな登山道脇に「入道山」の標識があった。確かに周りより少しだけ小高いのだ
ろう。ここを過ぎ10分程下り坂を歩くと植林地帯に変わり
「二本松峠」の標識に出会う。親不知・子不知の海岸線が
荒れた場合の迂回路「上路(あげろ)街道」の峠である。地質的にもこの峠を境に北側が「親不知火山岩類」、南側が
「尻高山礫岩層」となっているそうだ。


  
  09時10分 通りすがりの入道山                   09時20分 植林地帯になって二本松峠の看板がある

登山道は平坦な自然林へと変わり少し下り坂になると09時40分前方に舗装道路が現れこれを横断する。ここに糸魚
川ジオパークの標識があり、白鳥山〜朝日岳へは道路を横断して鉄階段のかかる前方へ、左は大平峠、右は山姥の里
(上路あげろ)と記されている。


道路の法面に架けられた赤い鉄階段を上ると又同じような自然林が続く。登山道は藪もなく細くて白い灌木林の中を続
いており傾斜も緩やかで歩き易い。


  
   09時40分前方に舗装道路が見える                    糸魚川ジオパークの標識あり

  
     比較的平坦な自然林の中を進む                      この細いのはブナ?


「尻高山」(677.4m)
心もち上りの登山道で退屈しのぎに大きなカタツムリを見つけて遊んだりしながら10時30分三角点のある「尻高山」
(標高677.4m)に着いた。
尻高山も三角点やお地蔵さんが無ければ知らずに通り過ぎる様な場所である。少し脇
に出ると日本海が見える。



                     10時30分 「尻高山」三角点

その後も北国特有の細い雑木林が主体の登山道を進むと11時10分峠部に着いた。

「旧北陸街道・坂田峠」は越中(富山県)と越後(新潟県)を結ぶ山周りの北陸街道で、親不知の海岸廻りの街道が荒
れて不通になった場合のエスケープルートであったと説明札に書かれていた。明治時代には近くに金山があり(東側の
橋立地区)この辺りも人の往来で賑わったらしい。


昭文社の地図に記されている歩行時間は親不知〜尻高山=4時間、尻高山〜坂田峠=1時間30分、合計 5時間半と
なっているがこれは間違いだろう。我々は親不知登山口から坂田峠まで3時間半で着いた。


峠には往時を思わせるお地蔵さんが鎮座しており、草深い旧道も確認出来る。すぐ傍に舗装道路が通っており、それを
横切って登山道へ入る。


この坂田峠まではタクシーで来る事が出来ると登山案内に書いてあるが、そんな Sea to Summit を台無しにする様な勿体
ない事など出来るかい! (お金の問題じゃない)



坂田峠」の言われは近くにある上路(あげろ)村の山姥伝説で、山姥の息子「坂田金時」から来ており、当然、坂田
峠から白鳥山へ向かって上る「金時坂」も同じ起源だろう。
でも坂田金時って足柄山の金太郎と同じ人物名じゃないか

  
             特徴のある林                              遠くに海が見える


      親不知の海が荒れた場合の山側トラバース道だった坂田峠

  
         坂田峠のお地蔵さん                         峠を越えると舗装道路を渡る


海道「親不知」と「山姥伝説」

古来、越中(富山)と越後(新潟)を結ぶ街道は日本アルプスから派生する厳しい山を避けて海岸を抜ける下道(した
みち)が使われていた。ところがこの下道も断崖絶壁の為海岸線の幅が極端に狭く、海が荒れる時は親も子供の事を構
っておられない程危険な場所となり、波が来ないタイミングを見計らって所々にある洞窟へと避難しながら海岸を渡っ
て行った、いわゆる「親不知・子不知」と呼ばれる天下の剣であった。


それでも海が荒れる冬場などには海岸線の下道は通行出来なくなり、その場合は新潟県側の青海(おうみ)から青海川
を遡り橋立〜金山谷〜坂田峠〜上路(あげろ)〜上路川〜境川〜境(富山側)と標高差600m、距離にして3倍強、
時間にして5倍程の迂回路を利用せざるを得なかった。


この様な厳しい環境の中で生まれたのが上路(あげろ)村の山姥伝説である。

昔、この村に都(京都)から舞の上手な美女(遊女のOB?)がやって来て村人に歌舞音曲を教えたのだが、この女性
が住んでいたのが何と白鳥山の中腹にある洞穴で、その子供が怪童「坂田金時」だという。実はこの女性が山姥(やま
んば)だったとの言い伝えである。


室町時代初期の猿楽者(能)世阿弥はこの種のネタを元に謡曲「山姥」を創作したらしい。それ以降、山姥伝説や金太
郎伝説が色んな形で各地で創作、脚色されていったと想像される。



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「金時坂」

さて、坂田峠を越えるといよいよ「金時坂」と呼ばれる標高差600m程の急登が現れる。

ここには階段やロープなどが敷設されているが、普段四国の急登に慣れているのでそんなにびっくりもしない程度の坂
である。それでもザックが重いので45分程この急傾斜を喘いで12時03分やっと「金時坂の頭」に上がった。
この
頃から又雨が降り始め、足元がぬかるんでくる。


  
            金時坂の急登                         金時坂の頭 (登りきった場所)

「しきわりの水場」と「やまんば平」

12時30分沢筋の水場らしき場所に着いて少し腰を下ろして休憩するが水は濁っており補給をしなかった。そこを出
発すると直ぐに正式な水場(しきわりの水場)があり、ペットボトルに採水する。近くにはハシリドコロの赤紫の花が
咲いていた。


13時30分 「山姥平」という標識が登山道の足元に転がっており、ここから右手に「山姥ノ洞」への脇道がある様
だ。
山姥のせいでもないが、辺りが急に暗くなり風雨が激しくなった。

  
   12時40分 シキワリの水場                    13時30分 山姥平 (木製の標識が地面に置かれていた)

  
         ぬかるんだ登山道                       雨に濡れながらも明るい2人


14時00分前方の急な傾斜の向こう正面に小屋が現れた。これが「白鳥小屋」たった。
一旦この避難小屋へ入り進むか止まるか思案する。地図で確認すると次の犬ヶ岳にある栂海山荘まで3時間半かかる。
途中で暗くなり風雨の中でテント泊ビバークする気にもならず、寝不足気味の3人は第1日目をここまでとすんなり決
定した.

小屋の裏手に回ると三角点があり、ここが白鳥山(標高 1,286.9m) という事になる。小屋の上には展望台もあるのだが
生憎の風雨で上がる気にもなれない。


白鳥避難小屋は比較的快適で誰もおらず一階の居間を3人で占領して休憩する。2階に上がると天井は低いが結構広く
布団や毛布が積まれている。たけのこちゃんは天真爛漫で子供の様に横になるとすぐ寝てしまった。


その間にトレランの人が軽装備で入って来てしばらく話をした後栂海山荘を目指して出て行った。どうも後立山連峰ま
で縦走する様で先を急ぐらしい。こちらは取り敢えず最低目標が白馬岳までなので気楽なもんだ。


大きなカメラを持った単独登山者がその後入って来た。この人は上高地まで歩くと言う。この荒れた天気に行くか止ま
るか相当悩んだ結果、我々の寛いだ様子に影響されたのか2階で泊まる事にした様で近くの水場まで水を汲みに行った。

夕食は総じてお湯を沸かしてアルファ米の袋に入れる主食とスープ位であるが、敏ちゃんはごはんとどんぶり具を別々
に作り一手間かけた食事に満足げだった。


夕食を食べて寛いでいると又単独登山者が入って来て2階に消えた。この人は翌朝我々が寝ている間に出発した様だ。

この避難小屋には小さなネズミが居て、夜中に顔の上を這われた。敏ちゃんも同じだったがたけのこちゃんは全く気が
付かなかったと言う。


  
   14時00分 白鳥小屋に到着  風雨が激しくなる       白鳥小屋の内部、トレランの人としばし雑談


平成26年8月11日

白鳥小屋〜犬ヶ岳〜黒岩山〜長栂山〜朝日岳〜朝日小屋野営地 (約13時間)

前日のツケを解消すべく小屋出発を04時30分として朝3時半に起床する。簡単な朝食を済ませて04時25分ヘッ
ドランプを点けて小屋を出る。敏ちゃんは白鳥の水場で補水する為に先に出ており、登山道を下がった水場分岐で合流
する。


  
 04時25分 白鳥小屋を出発                         坂を下ると左側に「白鳥の水場」がある

 
     怪しい色の朝焼け                           下駒ヶ岳への尾根は右側がザレている

「下駒ヶ岳」 (1,241m)

小屋から少し下り坂の尾根が続き、鞍部になる頃から左手が白み始めてやがて朝焼けとなる。あまり天気が良くないが
それなりの朝ぼらけで空気が冷たくて清々しい。
右手が切れ落ちた尾根を登って行くと、05時43分「下駒ヶ岳」
(標高1,241m)を通過する。


下駒ヶ岳のピークを過ぎると少し急な下り坂となる。そして次の菊石山へ向かってなだらかな上りが続く。尾根道には
この時期朝露に濡れたホツツジやオトギリソウが咲いている


  
     05時45分 下駒ヶ岳を通過                   下駒ヶ岳のピークからは急な下り坂 (ロープなどが見える)

06時18分三角点が見えて、すぐ傍に「菊石山」(標高 1,209.8m )の標識があった。足元が相変わらず湿って滑りや
すいが、美しい樹林帯を抜けると黄連乗越に「黄連の水」
の名前とその下につがみ山荘の水場と書かれた標識が立って
いる。犬ヶ岳にある栂海山荘での水はここで補給せよというメッセージだろう。
我々は既に白鳥山荘近くで水を補給済
みなのでここはスキップする。



 
  この辺りにはホツツジが沢山咲いている               06時18分 菊石山の三角点

  
      近くに化石は無いぞなもし                        菊石山を過ぎると美しいブナ林が続く


     この辺りのブナは雪国だけに四国のと比べると幹が細くて白い


 

  
    栂海山荘手前の水場「黄連の水」場                   水場を過ぎると登り坂となる


ここから少し上り坂を進むと07時02分「黄連山」と書かれた木製の標識があった。ここを過ぎると前方が開けて山
並みが見えたのでここで初めて少し休憩を取る。
前方に横長い山のピークが見えるのでこれが地形的に犬ヶ岳と思われ
る。


  
   07時02分 黄連山を通過                        明るい場所で少し休憩を取る  向こうが犬ヶ岳だろう

  
       前方に犬ヶ岳が姿を現す                          足元はあまり良くない



足元がジュルい登山道となりなるべく靴を濡らさない様に歩くと、次にダケカンバの美しい林が現れて元気が出る。又、
ギボウシやミヤマママコナ、ミヤマコゴメグサなどの花が見られた。犬ヶ岳への上りに入るとちょっとした岩場なども
ありロープ(テープ)なども設置されている。
山頂部へ近づくと樹林帯が薄くなりシモツケソウなどが現れる。


        犬ヶ岳への取り付き部では美しいダケカンバ林に癒される

 
     ママコナ                      コゴメグサ

 
 ロープなどが敷設された岩場や急登もある        稜線に出ると見晴らしが良くなる


08時18分平地部へ着くと緑色のペンキに塗られた立派な小屋があり「栂海山荘」の看板がかけられていた。
この小屋は栂海新道を開拓されたサワガニ会が管理する山小屋で予約が必要だ。でも天候の関係で泊まるか通過するか
よくわからない場合に予約を入れるのをはばかれる。
少し入口から中を覗かせてもらったが成程広くて立派なものであ
る。
天気が良ければ日本海まで見渡せる場所らしいが、すこし曇っているのでよくわからない。広場の下側に何か鉄製
の構造物があるので覗くと、ちょっと野趣あふれる豪快なトイレだった。


  
 08時20分 さわがに会が管理する栂海山荘に到着         使用に当たっては会に予約を入れる必要がある

「犬ヶ岳」(1,593m)

ホツツジとママコナの咲く登り坂を進むと08時36分細い赤茶けた尾根部に三角点があり「犬ヶ岳」(1,593m)に
到着した。ここまで来ると前方が開けて今から進むべき黒岩山から朝日岳の山並みが見える。アップダウンを繰り返し
ながら
少しピークを下ると右手に「北又の水場」がありここが栂海山荘の南側水場となっている。

 
     天気がよければ日本海が良く見えるのだが          栂海山荘から15分程進むと犬ヶ岳の三角点があった

 

              08時36分  「犬ヶ岳」三角点に到着


     前方が開けて遠くに雪渓を抱いた朝日岳らしい山が見える   遠い〜〜

 
   尾根ルートは一旦コル部へと下がる                   09時10分 北又に水場入口を通過する

「サワガニ山」( 1,612.3m)

前方には幾つものピークを持った赤茶けた土質の細尾根が続くが、この辺りから又ガスが出て視界を遮る。09時52
分サワガニ山(
1,612.3m)に着く頃には雨が少し激しくなり3人共雨具を着る。展望がない尾根を雨に濡れた足元のタケ
シマラン、ゴゼンタチバナ、アカモノなどの実を眺めながら無心に歩く。



         09時50分 雨が少し強く振り出し、サワガニ山の三角点で雨具を装着する


    タケシマランの赤い実                          ゴゼンタチバナの赤い実

10時40分高台に立ち、前方を見渡すと樹林帯の尾根にぽっかりと草原地帯がまるで水田の様に広がっている。
ガスに遮られているがその彼方には目指す朝日岳の稜線も見え隠れしている。


草原部に下り着くとニッコウキスゲやイワイチョウ、ハルリンドウが咲いている。また大きな葉っぱがあるので何か
と思えば水芭蕉の葉だった。
チングルマの花が咲く池があり、そこには「文子の池」と記された標識が逆さまになっ
て置かれていた。


 
 10時40分 栂海新道の真骨頂 湿地帯の草原が現れる     登山道がクッションの様で足に優しい

 
          ニッコウキスゲ                        ハルリンドウとイワイチョウの葉

 
       文子の池がひっくり返っている                  のどかな風景になる


                         ハクサンイチゲやチングルマが咲く池の畔 

「黒岩山」( 1,623.6m)

峠部の向こうには残雪の朝日岳が見える。この辺りはミズバショウの大きな葉が登山道の両側にたくさん並んでいた。

前方にピークが見えて、アカモモの実が登山道の脇を赤く染める坂を上ると11時30分三角点を持つ「黒岩山」(標
1,623.6m)に着いた。近くには環境省が設置したヒスイ峡(中俣新道)への分岐標識もある。


  おっ  彼方に朝日岳が見えるぞ          ミズバショウの大きな葉っぱの間を抜ける


               11時30分 「岩黒山」に到着

 
近くには環境省のヒスイ峠分岐標識がある         ここから黒岩平となり木道が敷設されている


ここから黒岩平と呼ばれる湿地帯となり要所に木道が敷設されている。湿地にはイワイチョウ、ミズバショウ、チング
ルマ、コメツツジ、イワショウブ、ギボウシなどが見られる。
しばらくすると池塘地帯となり紺紫のヒオウギアヤメが
現れた。


 
    アカモノは四国でもお馴染みで懐かしい気がする         チングルマの傘お化け群

 
           ワレモコウかいな                          ミヤマホタルイ (深山蛍蘭)

  
         イワショウブ                                       ギボウシ

    
こんな湿地帯にもコメツツジが・・                        あでやかな色のヒオウギアヤメ

 
ウスバスミレ ? この茎の長さはチシマウスバスミレかな       この湿地帯の圧倒的な主役はイワイチョウだ


「黒岩平」と「アヤメ平」の平地、湿地帯

その後も木道や草原を遮る針葉樹などがあり、その向こうに雪渓などもある。すると環境省の「黒岩平」標識が立っ
ていた。
この辺りは当然雪解け水が豊富で水場が随所にある。エゾシオガマ、ヨツバシオガマ、カラマツソウ、イワ
カガミ、チングルマとお馴染みの高山植物が多く見られる。
大き目の雪渓が現れるとツマトリソウ、キヌガサソウも
出て来て尚もゆるやかな湿地帯が続く。


 
    湿地帯の中に所々針葉樹の樹林帯がある                むむっ こんな所にクチバシ シオガマが?


    黒岩平の湿地帯 (池塘) 結局 雪解け水が豊富な場所なんでしょうね

  
         池塘独特の畔道                         雪渓に向かって木道が続く

 
黒岩平 キャンプ禁止の看板 (こんな湿気た所ではテン泊は出来ない    当然 水場が随所にある
 

14時を過ぎると少し上り坂となってくるが、シモツケソウ、ソバナ、ウツボグサなどが咲いている。14時08分
なだらかな階段状の上り道となり斜面にはハクサンコザクラ、イワキンバイ、ニッコウキスゲが咲いている。
この雪
田跡の湿地帯はあやめ平とも呼ばれる栂海新道の誇る御花畑だ。
ヒオウギアヤメ、イブキトラノオ、ハルリンドウ、
ウサギギク、ミヤマキンポウゲと種類も豊富だ。


 
        エゾシオガマ                            チングルマとイワカガミ

  
     ユキワリソウ 何とかコザクラ?                    ツマトリソウとウスバスミレ

  
      雪渓が残った沢沿いの登山道                         キヌガサソウ

     
   なだらかな上り坂を重いザックが堪える                    所々で樹林帯を抜ける

  
          シモツケソウとミヤマシャジン                          カライトソウ

 
   14時10分   階段状の上りとなる                  この辺りはニッコウキスゲが多く咲いている


     やっと前方に雪渓を抱いた山らしい風景が現れる


               ハクサンフウロ、エゾシオガマ、クルマユリなどのお花畑
 
 
    イブキトラノオやセリ科の花が咲く斜面を登る             ミヤマリンドウの色も鮮やかだ


               アヤメ平に咲くヒオウギアヤメ


                       シナノキンバイと雪渓
    
14時30分雪渓を渡ると、ハクサンコザクラ、ツガザクラ、キヌガサソウ、サンカヨウの実が見られる14時50
分ニッコウキスゲの斜面を登ると風衝帯となり、ミヤママツムシソウの群落とヤマラッキョウ、イワギキョウの花が
風に揺れている。



                    14時30分 雪渓を越える
     


     ハクサンコザクラとツガザクラのコラボ

 
   キヌガサソウの花とサンカヨウの実                  エンレイソウの実も四国では見たことがない大きさだ

 
ニッコウキスゲが咲く階段状の斜面、五輪山を左に見ながら登る     振り返ると黒岩平やアヤメ平の湿原が随分下に見える 

 
 ミヤマタデ、イワカガミ、マツムシソウ、イワツメグサ               イワギキョウが風に揺れる

長栂山」(2,267m)

15時02分 荒涼とした「長栂山」に到着。風衝地平原の向こうに丸っこい山のピークがありそこへ向かって登山道
が伸びている。
そこを進むと又池塘があり木道沿いにウやシロウマアサツキなどが咲いている。

丘を回り込むと又池が現れ、前方に丸い形のピークと白馬岳が見える・。木道の敷設された低地に下ると照葉の池など
沢山の池があり、ここが遅くまで残雪地帯である事がわかる。



             15時02分 殺風景な風衝地帯 「長栂山」に到着




 
     ミヤママツムシソウとウメバチソウ                 ミヤマシオガマとホソバツメクサ

 
      カライトソウと  シモツケソウ                             シロウマアサツキ 


               雪渓を残す池の向こうに白馬岳と旭岳   (右奥)

 
     照葉の池  (秋なら湖畔まで行くんだけどなあ)        前方の丸い山に向かって木道が延びる

 
  湿地帯と風衝地・吹上げのコルを結ぶ樹林帯             朝日岳の入口に当たる吹上げのコルが見える


15時30分樹林帯を抜けて再び風衝地帯に出ると10分程で「吹上のコル」を通過する。その名の通りここは吹き飛
ばされそうな強い風が吹いており、イワオウギやタカネマツムシソウ、ミヤマウイキョウ、ウスユキソウが頑張ってい
る。
吹上のコルから東側へは五輪山を巻いて蓮華温泉への「五輪尾根ルート」が続いている。この辺りにペンキで「日
本海へ」と書かれた大きな岩を通過するのだが、写真を撮っている間に2人が随分先へ行ってしまったので追いつくの
に必死でうっかりこの岩を確認するのを忘れてしまった。


 
    吹上のコル (朝日岳と五輪尾根への分岐点)                  日本海側を振り返る
   

 
     朝日岳へ向かってなだらかな登山道が続く              タカネマツムシソウが沢山咲いている

 
     ウスユキソウとイワオウギ                           ミヤマシャジンかな

ここから登山道は朝日岳の山塊を左手から回り込む。ハクサンイチゲ、コバイケイソウ。アズマギク、ミヤマダイコン
ソウの咲く斜面の向こうに大きな雪渓があり、そこから水が流れ出ている。先を行く筍さんと敏ちゃんが水場を去った
後、こちらも冷たい水を飲んでペットボトルに採水する。辺りは大きな雪渓が残り気温が低いせいか既に花期を終えた
ハクサンイチゲやミヤマダイコンソウなどの花がまだ咲いていた。また今年裏年で花が見られないコバイケイソウが2
株だけ見る事が出来た。



 
   朝日岳を左側から巻いて続く登山道(正面が白馬岳)  ハクサンイチゲの花が沢山残っているがコバイケイソウには花が無い

 
     大きな雪渓が残っている                      雪渓の末端部で水を採取する  冷たくておいしい


                  雪渓と御花畑  (チングルマとハクサンイチゲ)
 

栂海新道の終点 「朝日岳」 (2,418.3m )



16時30分「朝日岳」山頂(標高 2,418.3m)の広い山頂に到着し一足先に到着していた二人と記念写真を撮る。南側
には雪渓を抱いた白馬岳と旭岳が並んでおり、旭岳の右手には長い尾根を従えている。
更にその右手奥には剱岳と立山
が聳えている。絶景である。


栂海新道が親不知〜朝日岳とするならば、ここで我々の第一目的は達成された。


     朝日岳から南側風景    左から雪倉岳〜白馬岳〜旭岳〜小旭岳〜清水岳


     右へなだらかな尾根を持つ雪倉岳(左手前)の向こうに聳える白馬岳(中央奥)と旭岳 (右の尖った山)


                更に右手には立山と剱岳が見える (少しズーム)

さて、そこそこの感傷に浸りながらも今宵の宿を目指して稜線を西に下る。尾根が広いので木道がなければ少し迷うか
も知れない。木道が終わると荒れた山道となるがルートはしっかりしている。霧が出て朝日小屋がはっきり見えなかっ
が、再び木道が小屋らしき建物へ向かって延びている。水谷のコルで木道が二手に分岐する。右手が小屋へと続き、
左手は明日進む予定の水平道だ。

17時20分赤い屋根の朝日小屋に着きテン場の受付をしていると、さっそく筍ちゃんと敏ちゃんは素泊まり調理場で
ビールを飲んでそこにいるオバサマと仲良く話をしている。受付の女性は結構有名な人らしく、四国の山仲間もよく名
前を知っていた。


  木道に従ってなだらかな尾根を西側へ進む       少し荒れた登山道となる


     水谷のコル (左=水平道分岐)        17時20分 朝日小屋に着く


テン場は小屋から少し下った平地にありスペースは十分にあったが、細引きを補強する手頃な石が少なくちょっとツエ
ルト設営に苦労した。
風が強い時は自立式テントでないツェルトはペグを補強する石がないと不安なのだ。ツエルトを張った後、手早く敏ちゃんのテントで今日の歩きをお互い労いながら夕食を済ませる。

栂海新道の歩きは一応ここで一区切りとなるが、白馬までの行程が残されているので山行が終了した訳ではない。夕日を
見に西側の外れまで出かけるが、地平線はガスっぽい雲がかかりあまり美しい景色は見られなかった。


今宵の寝床 ファイントラックのツルトIIロング   朝日小屋のテン場風景  奥が朝日岳


               朝日小屋の外れで見る夕日


済んでみればあっけない栂海新道であったが、筍ちゃんと敏ちゃんのお蔭でこの地に来れた事を感謝し、明日初めて行
く白馬岳に思いを馳せながら眠りにつく。


栂海新道 第2部 朝日岳〜雪倉岳〜白馬岳は   ここ   


     

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