2009年 平成21年6月6日  石鎚水晶尾根を這い上がれ


成就社ー八丁坂分岐ー雪タル・八丁坂古道ー水晶尾根分岐ー水晶尾根ー石鎚三角点
ー弥山ー成就社

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石鎚水晶尾根 = 石鎚三角点(左上ピーク)より北側に延びる尾根

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この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを使用したGPSトラックログ図 

ロープウェイ乗り場 07;40h − 八丁坂分岐 08:28h −水晶尾根取り付き点 10:00h −
緑反射板 12:30h − 石鎚三角点 14:00h −弥山 15:00h −成就社ロープウェイ 17:20h

昭文社の石鎚地図を見ると、石鎚三角点から北へ伸びる尾根に「水晶尾根」の名がある。

以前から冬の成就社参道を歩いていると西側の急な尾根に緑の反射板が見え気になっていた。その地図を
見ると確かに北側斜面に高瀑(たかたる)から成就八丁坂まで点線のルートがあり難路と記されている。

しかしながら、2万5千分の1地図にはこのルートは表示されていない。果たして道はあるのだろうか?


平成21年6月6日マーシーさんを誘ってここを歩く事にした。西条から山に入ると雨が降り出し案の定
マーシーさんが「雨降りに山へ行くのは嫌じゃ〜」と聞き分けの無い駄々をコネだした。
それを無視してロープウェイ乗り場へと進む。「ホンマに行くんですか?」とまだ諦めの悪い相棒に
「成就社まで行って決めようや」とロープウェイに追い立てる。

7時40分のロープウェイに飛び乗り成就社駅に着くとやはり天気が悪く雨と霧。午後から天気が回復と
いう天気予報を信じて出発。

八丁坂から雪タルを経て高瀑へ至る古道は以前雪が残る時期に二人でチェック済み。

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         八丁坂分岐  水晶尾根にはここから下りるんですよ〜

成就社を経て08時28分分岐に張られているロープをくぐって斜面に下りてゆくと、思いの外しっかり
とした踏み跡がある。これが二つ目の支尾根をいつまでも下って行くので林業作業道かとちょっと不安に
なりGPSでチェックするが定かではない。

他に踏み跡も見られないのでこれを進む。しばらくすると斜面沿ってにほぼ並行に左へと踏み跡が続くので
これが雪タルへの古道だと確信する。所々に現れる崩れた沢部には丸太が2〜3本置かれてあり、確かに今は
荒れてはいるがかつては道としての整備が行われていた事を物語っていた。


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     斜面とほぼ平行に道は続く                 沢には丸太が架けられている

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    所々に倒木の障害物がある                   沢部は結構荒れている

09時6分比較的大き目の沢に出た。水深はそう無いので渡るには問題がない。10m程下流の対岸に道らしき
様子を見つけるとそこには赤テープも見られた。


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         綺麗な沢に出る                   少し下流に向かうと対岸に踏み後が続く

この沢を対岸に上がると植林地帯となりちょっと迷う所だ。地図の破線は下流に少し向かうのでその通り進むと
造林小屋跡があり、この左手を更に進むと沢沿いに踏み跡が続いていた。やはりここにも崩壊した沢部に丸太が
置かれており、倒木もあり道は荒れているものの、踏み跡を外す程の心配は無い。



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    沢を対岸に渡る (赤テープあり)                    造林小屋跡

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   小屋はほぼ倒壊している                     石垣が綺麗に組まれて残っている

しばらく進むと意外な風景となった。そこでは岩の斜面をダイナマイトで砕いて回廊を造っているのだ。お金をかけて
こんな所に何の為の道やろか? 廊下の風景を楽しみながら更に進むと09時30分滝を伴った狭い沢が現れる。

ここを抜けて植林地帯を進むと整然と石組みされた崖などがあり、立派な道が続く。地図では熟達者コースとあるが、
ちょっとねえ・・・・。 あれ? 道が藪っぽくなってきたぞ。


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       おっとっと                             岩棚の道やんけ

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   エイリアンみたいな木やなあ                 お〜 ダイナマイトの穴が空いちゅうにかわらん

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         何か 銅山峰の上部鉄道跡・・・・みたいな〜   違うかぁ〜〜

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  沢の岩が滑となり滝を作って作っている            意外としっかりした道が続く

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 石垣で整備された植林の作業道?               シャクナゲも見られる


そろそろ水晶尾根への取り付きが近いと話していると道が二股に分かれている場所に差し掛かった。綺麗な道は右へ
下がる。これは恐らく老之川への道だろう。ここは藪っぽい雪タルへの左側を上がる道を進む。
切り透し部で再度GPSで位置確認。 まあ大体こんな所が相場やろ。

水晶尾根とは似つかない殺風景な尾根の取り付き部だ。覚悟を決めてここから取り付く事にする。


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テープを挟んで左の藪道と右の道に湧かれる。         ウン  このあたりから取り付きましょか


いきなり植林地帯の相当急な斜面を這い上がっていく。当然道などは無いがいつもの尾根歩きである。長い急斜面を
我慢すると少し傾斜が緩やかになりホッとする。

やがて石楠花(シャクナゲ)の花が現れると岩場も出て来て、四方八方に伸びた枝で進退が窮まる場所もあった。

今までシャクナゲの花に対する印象は良くなかった。何せこの密集する枝の藪にはほとほと手を焼かされて来たし、暗く
陰気な空間に数少なく付けた不釣合いなハデくるしい花は毒々しくもありあまり好きになれなかった。

しかし初めてお目にかかる樹全体に溢れる如く咲き誇る様は間違いなくツツジ科の美しさを持っておりこの花に対する
悪い印象を払拭するに十分だった。


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    お〜〜い  これ上がろうよ〜                    げ〜〜 厳しい傾斜や

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     シャクナゲの花が現れる                     緑に満ちたスペースもある

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   やっぱ  ブナは景色を柔らかくする                  ここに老木ありき


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       これこれ  この風景これが尾根歩きの楽しみじゃとて


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       ワレ 森の樹と戯れん                      礎石もある

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         ええ風景じゃないの 水晶尾根

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    シャクナゲの花が相変わらず多い              シャクナゲが現れると急な崖も当然セットで現れる

笹が出て背の高いモミの林を持つコル部に付いた。ガスが次第に薄れて来ると前面に壁の様な山塊が現れた。
 ぎょへ〜〜  ここを這い上がるんかい!!

左手のスペース越しに見上げると例の緑色をした大きな反射板が見えた。しかしここからとんでもない笹の斜面を
這い上がる事になる。

笹原というものは遠くから見るとなだらかで柔らかく美しい。しかし一旦その中に踏み込むと、とんでもない苦戦を
強いられるのだ。石鎚山系の笹は元気で大きい。水中から水面へ手を掻き分けて飛び出す様に、足を蹴りながら両手
で笹を掻き分け、それを掴んでは自分の体重を引き上げる。

当然息が切れてヘロヘロになりながらも、「歩めば届く」と念じながら苦行は続く。コルからそこに見えた反射板まで
30分近くかかり、見上げると堂ガ森のそれのようにデカいものだった。全体に緑色のペンキが塗られている。
ここでしばらく行動食を取り休憩とする。



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     上の方に緑の反射板が見える                  急登の前の平和な風景

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    いいブナの風景                         笹薮に埋まりながらマーシーさんが来る

 


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     東のお向かいには快適な石鎚成就社登山道が見える

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   12時30分 反射板に着く                         近くで見ると結構デカい

東側を見ると成就社よりの一般道が尾根伝いに見え、登山者がその楽チンな別世界を歩いている。自分達がいる
水晶尾根とこの成就社の参拝道の間にはもう一つ急な岩尾根を挟んでいる。この人を寄せつけない岩尾根にも
ピンク色のシャクナゲが美しく咲き誇っていた。

Falcon さんから今年南予の山でシャクナゲが爆発しているって第一報があった後、色々な山仲間からシャクナゲ
情報が寄せられた。確かに予想を遥かに超えた美しさだった。

緑の反射板から更に傾斜がとんでもなく急になる。笹も更に強くなり足を抜きながら腕力で強引に一歩づつ上昇し
ひたすら苦行をしながら三角点を目指す。


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エ〜〜ン  笹が無ければ崖じゃ〜                 マーシーさんも深い笹にもがいている

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白骨林が増えてくる。 そういえば弥山を下りるときこちらを見ると白骨林が沢山見えたわ


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  いや〜〜ん  これってほぼ崖じゃないの          ウスノキさん  こんにちわ

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    崖に沿って這い上がる                    イワカガミが元気をくれる  あんがと〜

第一難関の岩場に出る。右手を這い上がると頭上の岩がオーバーハングしている。「アチャパー こりゃアカンわ」
とマーシーさんに左手へ迂回してルートを探してもらう。すると「こちらからは這い上がれますわブヒブヒ」の天の
声。慎重に崖を下りて左手に迂回する。シャクナゲの枝を掴みながら岩のズレに足を掛けて這い上がる。

若いイワカガミが岩場に沢山咲いている。岩場の上に這い上がると眼下にシャクナゲの花が広がり絶景である。
来て良かったなあ・・・

少しだけ感傷に浸った後更に上を目指す。


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げっ  岩がオーバーハングしている ここは無理!    ナンゴクミネカエデ(?)に這い上がってコースを変える

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   幼きイワカガミ達よ  元気で暮らせよ              いや〜〜ん  こわ〜〜い 下を見たらイカン!


最後の岩場も又右手には断崖絶壁に守られており、ここも左手に迂回してルートを探す。石楠花(しゃくなげ)の枝や
幹を頼りに這い上がる。ここにもシャクナゲの花が咲き誇り同じような写真のオンパレードをおいわさんの様に撮って
いると先行するマーシーさんが上から「稜線へ着いたようです」と声がする。

シャクナゲの枝に合わせて体をくねらせながら這い上がると14時00分石鎚三角点近くの稜線に這い上がった。東ノ冠岳
とも呼ばれる石鎚三角点のピーク近くを散策していると土小屋から西ノ冠岳経由でご夫婦が来られたのでマーシーさんと
二人で記念写真を撮って貰う。


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          お〜〜  石鎚三角点の要塞が姿を現した

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     さあ あと一息やなあ                        最後の崖に取り付く

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     右手は崖で無理でっせ                    左手を岩と藪の弱点を付きながら這い上がる

一週間前グランマー啓子さんとグランパがここに来て撮った写真に比べて、日当たりの良い場所は既に花の盛りを
過ぎていた。弥山があそこまで俗化してしまった今、三角点のある石鎚北岳(東ノ冠山)の白骨林とシャクナゲ風景
が手付かずの自然を残す石鎚原風景と言えるかも知れない。

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 シャクナゲ崖を這い上がる             お〜〜 石鎚三角点を極める

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  ここが這い上がったポイントです         ガスが少し飛んで成就社登山道が見える

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   これも石鎚の姿か     弥山風景


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           尾根に続く白骨林とシャクナゲ


水晶尾根を這い上がった達成感で当初考えていた西ノ冠岳のお花畑を訪ねる気力が沸いて来ず、弥山で濡れた登山靴
を脱いで靴下を絞る。横でマーシーさんがシャバの倍もするビールを山頂売店で買ってブヒ〜〜〜と喉を鳴らていた。

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   石鎚水晶尾根の取り付き部を見る       弥山に向かう



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          ミツバツツジに彩られた石鎚天狗岳



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広島ホームテレビの三人娘にニヤけるマーシーシー        天狗地蔵とツーショットの相棒マーシー

石鎚水晶尾根  

今回 八丁坂から雪タルに続く古道が思いのほかしっかりしていて快適なものだった。次回は雪タルまで行程を
伸ばしてその辺りの尾根から西ノ冠岳まで這い上がる新たな目標が出来た。

奥深い石鎚の新たな魅力を思い知った歩きが出来、満足の一日だったた。
マーシーさん お付き合いありがとう
いや〜〜  石鎚って本当にいいですねえ

   
      
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