北海道日本百名山1座目「後方羊蹄山」(しりべし山、マッカリヌプリ、蝦夷富士)1,898m

2022年7月18日(月)晴れ

登山口:羊蹄山自然公園(真狩キャンプ場) 無料駐車場、管理棟に登山者も使えるコインシャワー・トイレ有り 

登山ルート:真狩コース〜お鉢巡り〜往復  行動時間 約13時間25分    標高差 約1,528m



 
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図  後方羊蹄山 真狩コース

北海道日本百名山巡りの第1座は上陸地・小樽に近い「後方羊蹄山」(こうほうようていざん)とする。何でこんな変な名前何だ
ろう? わざわざ後方なんて付ける必要がどうしてあるのか不思議だった。

要するに飛鳥時代この地に蝦夷を治めた安倍比羅夫(あべのひらふ)という将軍の省庁があった地が後方(シリベ)羊蹄(シ)と
いうアイヌ由来の地名で、ここにある山だから後方羊蹄山と地図に記されたらしい。羊蹄とはタデ科のギシギシを意味し、ヒツジ
とは全く関係が無い。以来、アイヌ語の「マッカリヌプリ」とか「しりべし山」とか呼ばれたりした。

地元でもこんな名前は読みにくいとの事で「羊蹄山」(ようていざん)と記されたり呼ばれたりする様になった。又、成層火山
整った形から「蝦夷富士」との異名を持つ。ちなみに成層火山とは同じ様な場所にある火口から幾度も噴火を繰り返す事で火砕流
堆積物が層状に積み重なる火山の事。その為円錐形に形造られ山頂付近は急峻で長い緩やかな裾野を持つ。代表格は富士山。

当初西側の半月湖登山口から倶知安コースを上って真狩コースを下山する事を考えていたが、現地で確認すると両バス停が遠くて
不便だと分かり、便利な自然公園キャンプ場からの真狩コースピストンにする。

登山口〜5合目 樹林帯約3時間

 夜中まで降っていた雨は明け方には止んでいたが中腹からガスがかかっている。05時10分真狩キャンプ場の舗装道路を上に進
む。前日は日曜日と言う事も有り沢山の大きなテントがキャンプ場に並んで家族連れで賑わっていたが、今日は少し減っていた。

キャンプ場道路の突き当りに登山口があり、標識や登山届の箱がある。昨日から明け方の雨で笹が濡れて足元がぬかるんでいるし
少し藪っぽいので不安になるがすぐにフツーの登山道が現れる。暫く樹林帯を進むと結構急な斜面になるが登山道は階段状に整備さ
れていた。ここは1合目から9合目までの各標識が設置されているので時間の目安になる。


  
真狩キャンプ場にある登山者用駐車場にて車中泊        登山口はキャンプ場の奥にある

  
05時10分登山口に入る 最初は少し藪っぽい         すぐに針葉樹林帯と笹の登山道となる

基本的に笹とダケカンバなどの樹林帯の道で北海道名物のデカい「ラワンブキ」も出てくる。この日本一デカい蕗(ふき)は足寄
(あしょろ)町、螺湾(らわん)川に多く見られる所から名前が付けられたと言う。上流から植物の成長に必要な窒素、リン酸、カ
リウムやマグネシウム、カルシウムなどの養分が平均河川の10倍程あるのが巨大化の要因らしい。後に歩く日高の幌尻岳登山道で
も見られたので北海道の川はミネラルが豊富って事だろう。

余談になるが、アイヌ民族の間で語り継がれて来た小人の妖精、コロボックルはこの(大きな)「蕗(フキ)の下の人」という意味
らしい。


  
 ここのフキは「ラワンブキ」と言うデカい葉っぱだ            細いダケカンバの林が続く

  
 ヤマアジサイはここではエゾアジサイと呼ばれる 良い色をしている 結構クルマユリも山頂まで多く見られた 葉っぱが輪生している

2合目を過ぎると登山道は右へトラバースするので笹の茎が足元に出て滑るので歩き難い。時々霧の中から現れるクルマユリの色が
眼を引くがマイズルソウやサンカヨウは既に実を付けていた。

08時やっとダケカンバの幹に吊るされた5合目の標識を目にする。う〜〜ん ここまで3時間、結構時間がかかっている。

  
塗れた笹斜面をトラバースするので滑って歩きにくい        マイズルソウは実になっていた

  
アザミは変種が多いのでよく分からない チシマアザミかも    少しピンクがかったヨツバヒヨドリ 蝶は見当たらず

  
 07時10分4号目の標識を通過                  やはり火山の山らしい登山道だ

  
 サンカヨウも実を付けていた                    08時00分 やっと五合目標識に出合う

5合目〜山頂稜線部 約3時間10分

薄暗い笹の樹林帯を辛抱強く進んでいると09時過ぎに展望が少し開けて雲海が広がっている。天候が回復している様だ。09時
30分大岩があったので上がって雲海をゆっくり眺める。この大岩を回り込むと八合目の標識があった。この辺りから四国ではお目
にかかれない「イワブクロ」が現れる。この花は樽前草とも呼ばれ、後に歩く他の北海道の山、特に火山質の岩場で多く見る事に
なる。分類的にはオオバコ科とかゴマノハグサ科とか言われているがピンと来ない。東北と北海道に咲く花で、最初は珍しかったが
この後、北海道のどこの山でもフツーに見られるので有難味が薄くなった。それより大柄で紫色をしたチシマフウロが美しい。


  
オトギリソウも変種が多く、ここではイワオトギリが多い     セリ科のデカいのはミヤマトウキかな(エゾニュウってのもある)

  
 09時15分7号目に着くと青空が広がる              定番のゴゼンタチバナ


 岩の上に立って雲海を眺める 雲の間から真狩村の畑が見える

8号目付近から登山道は崩壊気味の砂礫地を避けて次の9号目まで大きく左へ回り込んで迂回する。樹林帯を抜けて砂礫地となると
俄然イワブクロが幅を利かせる。チシマフウロやクルマユリの花を眺めながら10時23分やっと9合目標識に出合う。
ここは左手
に避難小屋が見えて、その手前にエゾカンゾウのお花畑が見えるので帰りに寄り道をする事にした。


  
8号目付近になると砂礫地が出て来る               この辺りの岩場にはイワブクロ(岩袋)が一杯咲いている

  
 チシマフウロは色も形も美しい                     オニシモツケ

  
 暫くイワブクロが咲く砂礫地が続く                  雲海が広がり高度感がある

  
 やはり大柄なチシマフウロが目を引く               10時23分9号目に着いた

九合目から山頂部の稜線部まで今度は等高線が緩い右側へ曲がって登山道を詰めていく。この辺りがお花畑となっており写真撮影
などで時間がかかった。北海道の山は九合目から山頂までが結構遠い。マルバシモツケ、クルマユリ、チシマフウロ、ウメバチソウ、
イワギキョウ等を眺めながら上がっていくと前方に羊蹄山・山頂部の丸いピークが見えた。


  
左手避難小屋方面に黄色いお花畑が見える             マルバシモツケ

  
  ウメバチソウ                                イワギキョウ


  山頂稜線部をバックにクルマユリが咲く


小さなコケモモが登山道の脇斜面に咲いていたので無理な体勢で写真を撮っていると上から下りて来た年配の登山者に「そんな
のこの上に何ぼでも咲いてますよ」と言われる。確かに最初に現れた貧相な花を無理して撮った後、もっと綺麗な状態で撮り易い
場所に沢山咲いているのは良くある事だ。

カラマツソウ、キンバイソウ、ウコンウツギ、エゾノツガザクラ、ハクサンチドリ、キバナシャクナゲ、コケモモ、ゴゼンタチバナ
と撮影に忙しくしていると11時15分やっと山頂部の稜線部に着いた。


  
 ナガバキタアザミかな?                        カラマツソウ

  
  キンバイソウ                              ウコンウツギ


    エゾノツガザクラが最初の北海道百名山で見れたのが嬉しい

  
 ハクサンチドリとカラマツソウ                      キバナシャクナゲ(ちょっと終盤で白っぽい)


          コケモモ群生の中にゴゼンタチバナが咲く


   11時15分 真狩コースの山頂部に到着する  奥の火口は父釜  登山口から6時間かかった


  迫力ある羊蹄山の主火口、父釜 直径700m 深さ 200mあるらしい 底には少し水が溜まっていた

真狩コース山頂部〜お鉢廻り(反時計廻り)〜羊蹄山山頂〜三角点「雲泉」〜真狩コース下山口 約2時間45分


カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図  羊蹄山お鉢廻り  約2時間45分

真狩コースの稜線部に上がるとすぐ前に大きな父釡が見える。富士山を少しコンパクトにしたようなお鉢になっている。どちらから
回ろうかと思案して、先にハードそうな岩場がある反時計回りに決めて溶岩っぽい茶色の岩場を少し上がって行く。ヒメイワタデ、
メアカンキンバイ等を眺めながら結構ハードな岩場を進む。途中で見晴が利く場所ですり鉢状の大きな父釡を眺める。

白い花が見えたので登山道を離れて岩を回り込むとどうもイワウメらしかった。近くに少し派手目なイワオトギリも咲いている。

  
 反時計回りに右手のピークに向かう            最初のピークにはケルンの石積みがある


 雲海を眺めながらゆっくりとおはち回りで羊蹄山の山頂へ向かう

  
    ヒメイワタデ                            岩コースで山頂へ進む

  
 右手のピークが羊蹄山の山頂だ                  山頂までずっと岩場が続く

  
    メアカンキンバイが岩の間に咲いている           正面の羊蹄山山頂へ中々近づかない


  歩いて来た稜線部を振り返る  正面のコル部が這い上がってきた真狩コースの分岐だ


             やっと山頂が近づいて来た


           父釜の全容が見える  正面奥が側火口の母釜だ

  
    毎度お馴染み イワブクロ                イワウメかコメバツガザクラが終わった場所にイワヒゲが花を咲かす


この辺りに咲くオトギリソウはハイオトギリと言うそうだが葉っぱの黒い斑点はよく見えない ベンケイソウやウメバチソウもある

  
 山頂手前のコルには葉っぱに産毛が沢山あるウスユキトウヒレンやミネヤナギの綿毛がある
 

「羊蹄山」山頂(1,898m)と一等三角点「真狩岳」(1,892.22m.)

前方に標柱が立った岩ピークがあり登山者が沢山見えるのでそこが後方羊蹄山の山頂だろう。ミネヤナギの綿毛が足元にある岩場を
下ると「喜茂別コース」下山標識があり、その上にある岩ピーク、羊蹄山山頂(1,898m)に12時50分到着した。記念写真
を東京から友人の結婚式に北海道へ来たついで登って来たと言う若者に写真をお願いする。

その後、少し先にある一等三角点「真狩岳」を踏む。三角点の向こうには「京極コース」下山標識が立っている。この辺りからガス
が湧いて来て一瞬不安になるが岩場がほぼ無く歩き易い砂礫地の稜線なので何とかなるだろう。やはりここは霧が良く発生するのか
石のケルンや標識が立っている。



  あと一つ岩を回り込めば登山者が居る羊蹄山の山頂だ


 まあ羊蹄山の山頂と言っても火口周囲のピークの中で一番高い場所だから立派な場所では無い

  
山頂基部は喜茂別(きもべつ)コースの下山口となっている   狭い岩のピークに山頂標識が立つ


          12時45分 北海道百名山の第一座「後方羊蹄山」に立つ


山頂から少し進むと13時07分 一等三角点「真狩岳」 1,892.22mを踏む 正面に見える羊蹄山山頂より6m程標高が低い

  
 三角点の横にウスユキトウヒレンがへばりついている     これは鰐(ガク)が細いのでイワギキョウ 

  
 三角点のすぐ奥に京極コースの下山口標識が立つ       むむっ 少しガスって来たぞ

  
  お鉢廻りは霧が出やすいのでケルンが積まれている   13時22分父釜と母釜の分岐 ここから左へ父釜の縁を回る近道も有る


13時22分、直径700m、深さ200mの父釡から小さ目の側火口母釡の外周へと進む。13時30分登山道のロープの角にあ
る三等三角点「雲泉」(1,843.4m)を踏む。三角点から5分程歩くと「ヒラフ下山口」(倶知安ルート)の標識があり、そ
の辺りが大きなチシマフウロ等が咲くお花畑になっている。イソツツジやコケモモが咲く登山道を過ぎるとハイマツ帯があり、その
向こうの斜面がキバナシャクナゲ群生地となっていた。


  
 母釜には雪渓が少し残っていた                  三等三角点「雲泉」 1,843.4m

  
 チシマフウロが咲く歩き易い登山道                13時36分 父釜復帰の分岐点に出る  

  
 イソツツジとコケモモ                          ハイマツ帯の向こうに最後のお鉢廻りピークが見える

  
 最後の上り斜面がキバナシャクナゲの群生地だった      ギリギリ花期に間に合った様だ


   既に終わっている花も見られるが斜面に広がるキバナシャクナゲの群生地だ


キバナシャクナゲ群生の斜面を上がると何か建物の跡が有り、ここが倶知安=比羅夫(ひらふ)下山口の分岐点になっていた。そこ
から平たい溶岩に沿って下ると14時00分真狩コース下山口に帰りついた。昼食休憩や花の撮影などでお鉢廻りの周回に2時間
45分もかかってしまった。


  
最後のピークには何か建物が有った跡が残こされていた   ここが倶知安ルート=比羅夫(ヒラフ)ルートの分岐点になっている

  
 火口縁に溶岩の平たい岩が続く                  サマニヨモギ 様似(さまに)は日高地方の地名

  
  火口・父釜の周辺に沢山の花が咲いている          14時00分真狩(まっかり)下山口に帰り着く


真狩コース下山口〜キャンプ場登山口  約4時間35分

9号目付近のエゾカンゾウ群生地へ寄る 

下山口から25分程下ると9合目に着く。そこから登山道を外れて右手の避難小屋方面に下りエゾカンゾウの群生地へ行ってみる。
小さな沢部を越えて左手に道を外れて黄色い花が斜面に広がる場所に着く。前日雨のニセコアンヌプリでニッコウキスゲの群生地
を見たが、今日は天気が良いのでオレンジ色が青空に映える。20分程寄り道をして9合目に帰り、下山を続ける。


  
 エゾニュウ、ヤマブキショウマ、クルマユリを眺めながら下山   肩部から9号目へ下る


  9号目から登山道を外れて避難小屋方面へ下ると斜面にオレンジが点在する

  
  エゾカンゾウの群生地                       チシマフウロやハクサンイチゲもお花畑に咲いていた


   エゾカンゾウのお花畑を訪問する

この山には幹が太くて白っぽいダケカンバが多く、雪の為か曲がりくねって美しい形をしている。ガスは残っているが平地に広がる
畑の緑が垣間見る事が出来た。樹林帯の登山道は比較的歩き易いのだが、4合目を過ぎると笹のトラバース箇所が出て来て足元が不
安定で歩き難い。眼下には下界の風景が広がっているのだが、いくら歩いてもウンザリする程中々近づかない。緩い灌木帯となり
17時45分やっと二合目まで下って来た。


最後は階段状に整備された急傾斜を下って暫く歩くと18時35分登山口に帰り着いた。雨上がりのぬかるみと靴の中敷きを替えた
為に出来た両かかとのマメで結構予想より時間がかかった。


  
 8号目手前にある大岩、この上から往路で雲海を眺めた   曲がりくねったダケカンバ

  
 この登山道には手作り感のある合目標識が置かれている   麓が霧の間から見える

  
笹の中に付けらえた登山道は歩きにくい              ん? ブナ? これも幹をよく見るとダケカンバらしい

   
シロバナニガナと黄色いタカネニガナ                 下の方になるとダケカンバ帯が多く見られた

  
  笹のトラバース路が結構長い                   灌木帯に入るとゴールも近い

  
 17時46分 2号目を通過                      18時11分やっと1合目まで帰って来た

  
 最後は整備された急な傾斜を下る                 18時35分 マメにやられた両足を引きずりながら登山口へ着いた
  

真狩キャンプ場の登山者用駐車場で車中泊(二泊する

一旦駐車場の車まで帰り、道具を置いた後キャンプ場の管理棟横にある洗い場でドロドロになった靴を洗う。今回の失敗は登山の
中敷きを取り替えた事だった。靴(スカルパ)は去年剱岳の岩場で靴底が削れてグルーを塗って補修したのだが念のためにワーク
マンプラスで厚めのフカフカ中敷きを買い今回ぶっつけ本番で使った事だった。

これで踵の位置が微妙に変わってしまい、登山途中から靴ズレが両足踵に出来て歩行に支障が出た。下山して一旦靴を脱ぐと痛く
て運動靴も履けない状態になっていた。

下山時間が遅かったので当日の移動は止める事にした。キャンプ場管理棟でコインシャワーを浴びもう一泊ここでゆっくりと車中
泊をする。
当初、羊蹄山の次は大雪山の旭岳、十勝岳、トムラウシ山を回る計画だったがここの天気が安定しない。そこで
てんくら」でAラ
ンク日が数日間安定していた最北の百名山、利尻島に向かう事にした。


 北海道百名山の旅 ルート図



















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