雪の大山(弥山) テント泊 2020年4月15日〜16日
県営大山第一駐車場〜夏山登山道〜弥山(テント泊)〜夏山登山道〜行者道〜駐車場
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 大山夏山登山道〜弥山〜行者道
2020年4月15日 大山駐車場〜弥山
2020年4月、大山に雪が降ったとの情報があり、丁度その時に買ったテント「ニーモ ホーネストストーム2P」の使用具合を確認する
為に改装中の弥山避難小屋付近でテントを張る事にした。
このニーモ ホーネストストーム2Pは一応ダブルウオールではあるが940グラムと1kgを切る重さで、ザックや登山用具をテント内に
収納しても十分な広さである。勿論二人用の為、研治やマーシーさんとの山行にも使える。
大山橋から弥山への尾根には特に名前が見当たらす昭文社の登山地図にも「夏山コース」と記されているだけである。所がこの夏道
コースは主に冬に歩くルートとして知られている。
高松を朝ゆっくりと出発し11時頃 溝口ICを下りて雪を被った伯耆(ほうき)富士を眺める。下界は桜が咲いているが大山では雪が降
っていると言う四国では余りお目に架かれない光景だ。
下界は桜、山は雪
冬なのに夏山登山道? これ如何に?
11時30分雪が積もった駐車場を出発してモンベル横の大山寺橋を渡る。参道の様な広い道を進むみ右手の阿弥陀堂を過ぎると石仏
と石塔が立つ休憩所がある。そこを過ぎると12時05分1合目の標識となる。この標識にも「大山夏山登山道」と書かれているのでそれ
がこのルートの正式名である。
11時30分 大山公共第一駐車場を出発 大山寺旅館街を少し歩いて右手の大山寺橋へ向かう
モンベル横の大山寺橋を渡る 最初は参道の様な登山道
お馴染みの石仏と石塔 12時05分 一合目通過
大山は西日本屈指の登山者が多い山である。特に近くにスキー場がある関係で道路が雪かきされており冬山登山としても人気を誇る。
鳥取県や環境省などで行われる登山道の整備が整っており、四国の山と比べても致せりつくせりである。この為、標識も多く1合目から
9号目まで設置されているし、標高1000mからは100m毎に標識が立つ。
但し、日本海側にある為積雪が多く、森林限界を越えると強風が吹き荒れる日がある。これだけ致せりつくせりの整備をしていても悪天
候に遭遇して遭難事故も多い。でも登山口から弥山まで3km程でアルペンチックな別世界に立つ事が出来る魅力は半端では無い。
樹林帯のブナ林、森林限界を越えると一面の雪世界! こんなお得な山は他にあろうか?おまけに高松から高速を使うと石鎚へ行くよ
り相当近いのだ。
階段が無い場所は雪道が続く 12時27分 二合目通過 この辺りは階段の段差が見える
標高1,000m ここからは標高100m毎に標識が現れる 12時48分 三合目通過 大きなブナが多くなる
標高1,200m地点 左手の元谷方面が開けて三鈷峰と奥に甲ヶ山が見えて来る
13時25分五合目を過ぎると10分程で行者道との合流点「行者谷の分かれ」の標識に出合う。冬場は往路=夏山登山道を上り、
復路=行者道を下る登山者が殆どだ。
6号目付近には避難小屋があり、ここから上は森林限界を越えるので悪天候の時はここで待機をするか、引き返すかを思案する
場所となる。私も数回この上部で強風に遭い吹き飛ばされそうになった事がある。週末にはこの避難小屋付近で多くの登山者が
休憩されている。
13時25分 五合目を通過する 五合目のすぐ上に行者道分岐がある
前方、元谷の向こうに三鈷峰が迫力を持って迫る
次第に雪が深くなる 標高1,300m標識通過
13時57分 六合目避難小屋に着いた ここから視界が開ける
六合目避難小屋を過ぎると視界が開けて大山の素晴らしさを再認識させられる。弥山は手前の肩部で良く見えないが、正面に三鈷峰、
その奥に甲ヶ山が揃い踏みし、右上方には大山最高峰の剣ヶ峰が見える。近年雪が減り四国では一面真っ白な山々を見ることが少なく
なった。でも山陰地方の大山はちょっと違う。雪山を歩きたければ大山に来れば裏切られる事はほぼ無い。
手前から宝珠尾根、 ユートピア避難小屋から三鈷峰の尾根、更に奥には古大山尾根(甲ヶ山が見える)
14時00分 避難小屋の直ぐ上に六合目標識がある 更にその直ぐ上に標高1,400m標識
大山の主稜線が見える 一番左が剣ヶ峰
14時20分 七合目は雪に埋まっている 10分後に標高1,500m
登って来た大山夏道ルートの尾根を眺める
上方の急斜面 甲ヶ山 三鈷峰 剣ヶ峰
4月の雪は雪崩が発生しそうな危うさがある 斜面に飛び出している岩山は「別山」 その奥が剣ヶ峰
弓ヶ浜が霞む 右の山が孝霊山 稜線部が近くなる
八合目から標高1,600mを越えると弥山の肩部に上がり、急に傾斜が緩くなって雪原が広がる。左手の稜線近くにはダイセンキャラ
ボクの純林があるので木道が敷設されている。しかし冬場は深い雪に覆われて一面の雪原となっている。
大山の山頂には大きい避難小屋があるが、去年から耐震工事の為に小屋は使用出来ない。そこでこの機会を利用してテント泊を目論
んだ。
15時20分山頂小屋に着き、先に弥山三角点へと向かう。そこで先ず記念写真を撮ってからゆっくりとテント設営に取り掛かる。風が強
いので小屋の裏に設営する事にしたのだが、当然ペグが立たない。付近を眺めると少し土が出た場所に工事資材置き場があり、何に
使うのか分からない錆びた鉄板が2枚置かれていたのでそれをアンカーに借りる事にした。
後1辺はストックを雪面に突き刺し、残りの1辺は非常ドア横の鉄梯子が利用出来た。
14時50分 八合目を通過 殆どの登山者は下山している
木道が現れた でも弥山まではまだ少し先だ 標高1,600m 弥山が1,709.4mだからまだ標高差100mの登り
弥山の北壁は岩が剥き出して、稜線が湾曲している 標識が雪で埋まっている
尾根から山頂部の稜線へ上がった場所は傾斜がなだらかに見える 元谷へ斜面が落ちて行く
15時07分 やっと九合目を通過する でもまだ弥山までは随分距離があるぞ
三鈷峰〜ユートピア尾根の向こうに矢筈ヶ山と甲ヶ山が見える 大山山頂まで0.2kmだ〜〜
ここは皆さんソリで滑っている斜面 15時20分 やっと山頂避難小屋に着く 駐車場から3時間50分かかった
立入禁止看板にザックを立てかけて三角点へ向かう この辺りは雪がたっぷり残っているぞ
三角点へ向かう途中 三脚を使って自撮り成功〜〜
二ノ沢と三ノ沢 三角点の稜線を振り返る
やはりこの雪では稜線が緩んでいるので縦走は無理らしく誰も歩いては居なかった
大山南壁は落ちると二ノ沢へ一直線〜〜 避難小屋へ引き返す
風を避けて小屋の裏側にテントを設営する ダブルウォールと言っても片方が軽量化の為抉れている
片方はほぼフルにアウターでカバーされている まあこれで約1kgだから文句の付けようが無い
工事中の避難小屋を覗いてみる 櫓(やぐら)が組まれている
耐震構造に改築しているらしい テントに帰り前室でお湯を沸かす
真夜中の訪問者
大山の夕焼けは薄雲がかかり期待した程の美しさにはならなかった。でもそれなりの侘しさを湛えた山の夕暮れには違い無かった。
朝日の漲る活気の始まりとは違い、夕暮れは直ぐに訪れる静寂の闇を予感する。
夜景は米子の街にいつまでも灯がともり美しかった。何万人もの生活がある街の灯を眺めながら独りぼっちの山に無気力に佇む。
星を撮りたいと言う事で「星空撮影モード」があるキャノンのデジカメG7XマークVを買ったのだが、やはりセンサーの件で今一つ良い
写真が撮れないでいる。
夜中の01時頃、テントに帰り眠っていると、遠くから雪を踏みしめる音が聞こえて来る。目を覚まし耳を澄ます。何せ独りぼっちの大山
山頂なのだ。その足音が次第に大きくなりついにテントの前で止まった。(何だ〜 気味が悪い・・・)
すると「死ぬぞ」と言う男の声にびっくりしてライトを点ける。「冬にこんな薄っぺらいテントで寝てたら死んでしまうぞ!」とブツブツ言って
いる声がする。「あの〜〜 どちらさんで?」
聞くとそのベテラン登山者は夜間歩行訓練をしていると言う。全く人騒がせな訓練だ。でもこんな夜中に雪の大山に単独で登ってくるの
だから筋金入りの猛者だろう。色々山のうんちくを語った後、どこかに消えて行った。(最初から現れなければ良いのに・・・)
改めて冬用寝袋に潜り込んで寝る。
大山の夕暮れ この後、雲が沸いてきて日没は見えなくなった 弓ヶ浜がくっきり見える
夜の8時頃、赤色ライトを点けたテントと米子市の夜景 弓ヶ浜も見える
夜中の三角点ピークと剣ヶ峰 キャノンのデジカメだからあんまり星が映らない
赤色ライトに照らされるテントと避難小屋 真夜中の米子夜景
夜中にウロウロして無駄な星空撮影を続ける やっぱミラーレス一眼カメラが要るわ
星空撮影は諦めてテントへ帰る
2020年4月16日
弥山〜夏山登山道(五合目)〜行者道〜大神山神社〜駐車場
四月の空気は水分が多少多い為にくっきりとは晴れない。太陽が剣ヶ峰付近から昇ってくるのだが地平線か水平線に雲がかかり中々
太陽が姿を見せない。05時45分剣ヶ峰への稜線中間部のピーク近くから姿を現す。
多少絵的には不満があったとしても、山で迎えるご来光は厳かで清々しい。山頂避難小屋から下側に雲海も出てドラマを盛り上げてく
れる。ヒマなので山頂付近をウロウロ散歩して贅沢な時間を過ごす。時間に追われない山歩きってストレスも無く健康的だ。
06時00分テントに帰ってゆっくりとお湯を沸かして朝食=カップ麺を作って食べた後、コーヒーをドリップしてビスケットを齧る。う〜〜む
至福の時だ。通な人は豆を挽くらしいが、UCCの袋入りドリップコーヒーで十分香りも楽しめるし文句は無い。
テント撤収でちょっとしたトラブルが発生した。雪でペグが打てないのでストックを一本雪に突き刺してアンカーに使っていたのだが、その
ストックが雪が凍ってどうやっても抜けないのだ。少し左右に振りながら引っ張ると「ペキッ」と嫌な音がした。ブラックダイヤモンドのカー
ボンシャフトが折れてしまった・・・・・ やっぱりカーボンは軽いけど弱い。(結局修理に出すと7千円かかってしまった・・・・涙)
折れたカーボンシャフトをザックに仕舞って07時35分テン場を出発し五合目付近にある「行者谷の分かれ」に向かう。昨日登って来た
時より随分雪が解けている。
避難小屋の南側は雪が解けている 東の空に少し雲があって朝日が中々現れない
05時45分になってやっと太陽が雲から上がって来た
避難小屋裏のテントをそのままに少し辺りを散歩する これがテント泊の余裕だ
広がる雲海を眺めながら下山 ユートピア〜三鈷峰尾根とその向こうに矢筈ヶ山と甲ヶ山
三鈷峰と甲ヶ山をズームアップ
06時丁度 テントに帰り朝食と帰り支度をゆっくりと行う 鉄板は工事現場からスノーアンカーとして借りたので元に返す
07時35分 大山頂上小屋横から下山開始する 弥山雪原を肩部へと向かう
三鈷峰、剣ヶ峰、別山の揃い踏み 若干前日より雪が減っている
雪が解けると普段冬シーズンに見た事の無い木製階段の整備道が現れる
ここまで下ると三鈷峰の右手尾根にユートピア避難小屋が見える
中途半端に雪が残ると枝が邪魔で歩きにくい 09時07分 行者谷の別れに着く
大山「行者谷コース」を下山する
カシミールソルトを利用したGPSトラックログ図 大山・行者ルート
「大山行者ルート」の登山口は大神山(おおかみやま)神社の裏手にある。昔は大山寺が一大修行場の根拠地で、その修行僧が集まって
いた所が現在の大神山神社だったらしい。明治の廃仏毀釈令によって大山寺の修行場が神社(神道)に改宗されたのだ。
古来、修験者がこの場所から行者谷を経て大山へ登拝していたのだろう。それにしても宗教的な意味合いの「弥山」に奥宮や祠が見られ
ないのが不思議ではある。標高1,588m付近にあるらしい「石室」(岩小屋)が修行場であったのだろうか?
大山夏道の五合目付近から「行者谷の分かれ」(分岐)があり北東部への支尾根を標高差150m程下る。尾根はそこから北へ方向を変
える為、元谷へ向かって標高差120m程を一挙に下り10時05分「元谷大堰堤」に出る。
行者道は雪が積もっている方が歩き易い 少し藪っぽい場所もあるが一本尾根を途中まで下る
この尾根にもブナが沢山立っている 大山の山頂付近にガスがかかった様だ
09時30分 尾根が左手に曲がっていく場所から急斜面を元谷へ下る分岐標識 行者登山口まで1.3kmとある
最初は少し広い尾根もどきを伝う 右手上には剣ヶ峰付近が見える
この辺りから尾根を外して右手の斜面へ下る 標高1,100mの標識がルート確認となる
灌木の間を谷へ向かって下る 最後は急斜面となる
09時54分 谷部へ下り着く 50分程で行者谷の分かれから元谷へ下った事になる
案内板には大山のおいたちが書かれていた
ついでに案内板の地図も拡大表示する 南北逆転図 夏山登山道=青 行者登山道=赤
見事なブナ林の中を歩く 川原に出ると熊蜂の形をした芽吹きが続く
10時02分 元谷大堰堤近くまで下りて来た 行者登山口(大神山神社)まで1.0kmだ
う〜〜ん 大山北壁は雲の中だ・・・
元谷大堰堤の右岸に移動 行者道登山口まで0.8km、大山寺旅館街まで1.7km
元谷大堰堤〜行者道登山口(大神山神社)〜大山寺公共駐車場
元谷大堰堤の右岸から車道が中ノ原スキー場へと続くが、ここは10時22分、谷に向かって下り右岸の河岸段丘に点けられた登山道を
大神山神社へ向かって下って行く。冬場は登山道が分かりにくいが川原に下りないでそのすぐ上側の右岸沿いを歩く。途中でもう一段上
に上がると杉林に入る。
10時50分宝珠尾根コースとの合流地点に着くt標識が立っている。木の標識は古くなると字が読めなくて困るのだが、大山のそれは比
較的新しいのかメンテナンスが良いのかはっきり字が読める。分岐の要所にしっかりした案内板や標識が置かれている事は非常に助か
る。 この分岐から5分ほどで大神山神社の裏手に出てくる。
ここに行者道登山道の標識が立つ。ここから弥山山頂まで3.0km、大山寺本堂まで0.6km、旅館街まで0.9kmと記されている。
権現造りの立派な社殿にお参りして、帰りに余裕があるので大山寺本堂へもお参りして駐車場へ帰る。
最初は谷に向かって急斜面を下る 川面の少し上側を右岸伝いに歩く
右岸段丘の上側に沿って歩く 木の階段を上がって杉林の中に入る
宝珠尾根ルートとの三差路分岐に出る 杉の大木を仰ぎ見ながら歩くと直ぐに大神山神社の社殿が見える
大神山神社の案内書き
大神山神社奥宮にお参りする 明治8年大山寺から移設された神門 (扉が逆になったらしい)
長さが700mと言われる大神山神社の参道を下る 時間に余裕があるので大山寺にも寄ってみる
大山寺にもお参りする 私にとってはお寺も神社も隔ては無い 今度は大山寺の参道を下って車に帰る
山頂で一泊すれば本当にじっくりと大山夏山登山道と弥山の山頂、行者道を味わう事が出来た。主目的のテント、ニーモ・ホーネスト
ストーム2Pは設営も簡単で広々として快適だった。ただ、冬場は生地が薄い分シュラフなどでカバーが必要だった。あと、風が強い
時の設営が一人では難しいケースがある様に思えた。
く。