大山 振子沢からユートピアお花畑へ  2015年7月20日

文殊堂〜文殊越〜鳥越峠〜駒鳥小屋〜振子沢〜ユートピア避難小屋〜元谷〜横手道〜文殊堂



カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図  文殊堂〜振子沢〜ユートピアお花畑〜元谷〜横手道〜文殊堂 (9時間45分)

今回の山行はユートピアお花畑へ文殊堂から鳥越峠〜振子沢経由で訪問し、帰りは砂滑りで元谷に下り、横手道をぐるっと反時計
回りで文殊堂と計画。ちょっと長丁場になる為、前日大山へ行き登山口等を確認の後、文殊堂駐車場にて車中泊とする。

  
 大山の環状道路沿いにある文殊堂 (三ノ沢近く)   前日、文殊堂裏の駐車場で車中泊


7月20日05時に文殊堂を出発、大山環状道路を三ノ沢を越えてカーブ標識の立つ場所に「文鳥水」という標識が立っている。
ここは「鳥越峠」やろとこのマニアックな標識にダメ出しをしながら05時15分道路から左手の薄暗い道に入る。

最初は文殊谷の沢伝いに草深い踏み跡が続く。まあ今日一日全てが草深い道を歩く事にはなるのだが・・・


カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 文殊堂〜駒鳥小屋まで約2時間15分

文鳥水
と文殊越

05時33分 樋を伝って上から水が流れ落ちている。他にこのルートには水場が無いので恐らくここが文鳥水だろう。この谷を
詰めると05時50分峠部に出て白い鉄製のポールに何やら木製の標識がある。サッパリ字が読めなくなっているが、白いポール
にマジックで「ここは文殊越」と鳥越峠へ矢印が書かれていた。


   
大山環状道路の三ノ沢を過ぎた場所が登山口 カーブ標識が目印  05時15分 文鳥水の標識に従い左手の登山道に入る

  
 草深い沢沿いに踏み跡が何とか付いている          少し沢を歩く場所もあるが水は殆ど無い

  
  確かに20分程で「文鳥水」に着く                文殊沢沿いに歩く

  
 05時50分 標識に出合う 標識の字は読めない       ポールにマジックで「文殊越」と書かれていた  

鳥越峠

文殊越から鳥越峠までは深い森の中に続く踏み跡やテープを頼りに左手の山裾をトラバース気味に進む。06時36分「鳥越峠
に上がりつく。ここは西側尾根にキリン峠、東側尾根に烏ヶ山、正面を下れば駒鳥小屋と言う四差路交差点となっている。境界標
石があるが三角点では無い。

  
本当に草深い道ではあるが踏み跡は見える       所々にテープが置かれている森の中

  
白いポールが倒れているが標識の文字は読めない     ここは倒木が多い


 最後は尾根に向かって上ると 06時36分 「鳥越峠」に着いた 秋はここまで草深くは無い

  
 境界標石が有るので目印になる            正面の振袖山方向に向かって下って行く


駒鳥(避難)小屋と加勢蛇(かせいち)川上流部

鳥越峠からロープが置かれた急傾斜を下ると暫くなだらかなトラバース路となる。つまり西側のキリン沢との境にある小さな尾根
に沿って歩く事になる。一応踏み跡やテープも見られるので何とか進めそうだ。07時06分ルートが右に振って急傾斜を谷に向
かって下る。谷部で岩が出る場所ではロープも見られるので古くから岳人が歩いているルートなのだろう。


07時27分壁に石が埋め込まれた雰囲気のある「駒鳥(避難)小屋」に下り着いた。貼り紙を見るに国有林である国が鳥取県の
中央総合事務所に貸し出している場所らしい。直ぐ下に流れる谷は加勢蛇川(かせいちがわ)の上流部で「本谷」(本流)と呼ばれ
る。加勢蛇川は下流部に地獄谷や大山滝、一向ヶ平がある事で知られている。

   
 急な下りなのでロープが置かれていた       雪で幹が曲がっている 歩きにくい〜〜

  
 この大きな木を過ぎた辺りから右手に向かって下る   少し沢っぽい場所を下っている様だ

  
 登山道が沢の様相を呈して来た           ヤマアジサイかサワアジサイか知らんけど・・・

  
 滑りそうな場所にはロープが置かれている        沢の本流が近づいた音がする


 こんな所にメルヘンチックな小屋だ事 07時23分 登山口から2時間15分かけてやっとここに着いた


振子沢分岐と振子沢


 カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 駒鳥小屋から振子沢をユートピア小屋まで

振子沢分岐

駒鳥小屋は鉄砲水や雪崩を避けて少し高台に設けられている。さてここから適当に沢部へ下りて少し上流部にある振子沢に向か
う。沢に下りる途中には粗末な木の梯子段などもある。小屋から10分もしない内に沢に下り着くと岩がゴロゴロした沢を上流
に進む。

右手は振袖山が競り出し、左手は槍ヶ峰などがある槍尾根で挟まれた谷だ。10分程沢を詰めると右手の岩盤が消えて少し開けた
場所が振子沢の分岐となる。と言っても水量に乏しいので明確な合流点は無く、適当に右からチョロチョロ水が出て来る付近の藪
っぽい場所を右手に入っていく感じだ。大岩の上にテープを巻いた小石が置かれているがこれとて大水で流されてアテにはならない。

07時50分倒木や土砂が堆積した沢分岐を右手の振子山に沿って入って行く。注意深く辺りを見るとアルミ角材の標識らしき物
が立っていた。(後に伊予の鈍亀さん達と歩いた時にこれが遭難碑だと分かった)藪っぽい場所を奥に進むと沢水の流れる場所に
出て左手(右岸)に渡って道が続いていた。


  
小屋から下流方角に踏み跡と梯子がある              この辺りは沢が広がって草地になっている

  
 二つ目の木梯子がある                      沢に近づいた様だ

  
 水量は少ないので何処でも歩ける 加勢蛇川の本谷      ホソバノヤマハハコがあるって事は標高がそこそこ高い

  
 ダイセンオトギリかフツーのタカネオトギリかよう知らん     右手の岩壁が無くなると振子沢分岐が近い

  
上流部は槍ヶ峰東間部からキリン沢、壁沢、本沢に別れる   下流を眺めるとこんな風景です

  
 大岩の上にテープが巻かれた小石が分岐マーク?       振子沢入口を入ると遭難碑ケルンが立っている


振子沢  

振子沢は加勢蛇(かせいち)川の源流部の沢で、西の槍尾根と東の振子山〜振袖山尾根との間を分かつ。同じ場所にある沢としては
南側から「キリン沢」「壁沢」「本沢」があり一番北側にあるのが「振子沢」になる。

オカトラノオ、ウリノキ、サンカヨウの実などを眺めながら右岸沿いの踏み跡を歩くと08時30分沢に出る。水は少ししか
流れていないのでここからは沢を歩く様だ。暫く沢を歩いていると左手に山腹から落ちる滝が見えるがその方向には進まない。
そこを過ぎると谷の両側が次第に迫って来てV字谷となって来て岩もデカくなる。

08時50分正面に樹林帯が現れると谷が右手にカーブする。そのまま谷を進んでいると09時を過ぎた頃から右手に尾根筋
が見えて来る。暫くして沢が左右二手に分かれる分岐に来たのでユートピア避難小屋に近くなる左手の小沢を進む事にした。
ここは右手に進んでも振子山の縦走路に出る事が出来た様だ。


  
 クガイソウの咲く沢部を左側(右岸)へ渡る            沢に入って前半は水場になる様な水量がある

  
  ウリノキの花を見ると新居浜太鼓台の房を連想する     草や灌木の間に踏み跡を辿る

  
 サンカヨウはもう実になっていた                   08時30分 踏み跡が無くなり沢の中を歩く

  
 左手の斜面奥に滝が見える(そちらには進まない)        沢の両岸が次第に迫って来る

     
 水が少なくなると大きな岩が現れる             ゴーロ帯を上流へと進む

  
前方で沢が右手にカーブする様だ                  歩いて来た沢を振り返る やはり曲がりくねった谷だ

   
 次第に沢幅が細くなる 時々テープも見られる    正面がユートピア小屋がある稜線部だろう


「象ヶ鼻」分岐手前の尾根に上がり着く

09時20分シモツケの群落やオオバギボウシの咲く斜面の踏み跡を辿って稜線を目指す。やがて稜線が近づいて来るとクガ
イソウの群落が現れる。この辺りの地形はなだらかなので右手の振子山(ふりこせん)稜線部方角に何処を這い上がっても良い
のだが、花が沢山咲いている場所なので幾筋かの踏み跡を辿って稜線部を目指す事になる。
 

10時13分ユートピア小屋と振子山・大休峠縦走路分岐に出てホッとする。文殊堂を出発して5時間かかった事になる。この
分岐を少し左手に進むと岩場があり国土地理院には記載されていないが標高1、550mが「象ヶ鼻」と昭文社地図には記載
されている。

  
  シモツケの群落がある                        稜線が近づくとオオバギボウシが多くなる

  
 振子沢の開けた上流部を振り返る  正面右が振袖山でその裾野から沢を詰めて来た事になる

  
 ギボウシの咲く斜面を稜線部へ上がって行く          10時13分「象ヶ鼻分岐」に着く  ここは縦走路の分岐点だ

  
 象ヶ鼻と呼ばれる1,550mピークの岩場              ダイモンジソウ

ユートピア避難小屋付近のお花畑を眺めて上宝珠越へと下る

ガスと小雨の中ダイモンジソウ、シモツケ、シコクフウロ、クガイソウ、コオニユリ等を眺めながら尾根を進むが天候が悪い
ので10時26分「立入禁止」の標識で素直に引き返す。

霧の中に浮かぶクガイソウ等のお花畑を眺めながら10時42分「ユートピア避難小屋」に着いた。小屋の回りでは多くの
登山者が雨具を羽織って休憩していた。

お花畑を眺めた後、11時前に分岐からトラバース道へ下る。このトラバース道ではヤマアジサイ、クサボタン、シモツケ等
が咲きダイセンキャラボクの幹が登山道に横たわっている。

   
   コオニユリ                             シコクフウロ? ダイセンフウロ? 兎に角デカいフウロソウ

  
  クガイソウはここのお花畑のメインフラワー            シモツケ

  
  オオバギボウシ                           10時26分 例の標識付近までやって来た

  
  雨と霧で先へは進めないので引き返す              クガイソウもぼ〜〜っとしか見えない

  
 10時42分 ユートピア避難小屋に着く              結構な数の登山者が雨具を着て休憩中だった

  
 シモツケソウ(草)は今から色付きそうだ                 シモツケ(木)は今が盛り


   シシウドとクガイソウはギボウシと共にユートピアを飾る

  
11時前、右手にギボウシを実ながらトラバース道を下る      ヤマアジサイやシモツケがトラバース道を飾る

  
 トラバース道の目玉はクサボタンだ                 ダイセンキャラボクの幹が横たわる


上宝珠越から元谷「砂スベリ」へ

11時20分「上宝珠越」に着き、ここから砂スベリへ下りて帰る事にする。ロープが置かれた斜面を元谷の一番東側の支沢
へ下りる。ここは土砂が川の流れの様に谷を埋め尽くしさながら富士山の砂滑り状態になっている。しかし一ヶ所段差がある岩
場が現われ気を付けなければならない。

11時40分沢が元谷や天狗沢と合流し幅が広くなる。前方に見える孝霊山と日本海を眺めながら砂防堰堤の間を下って行く。

  
 上宝珠越へ下る                           上宝珠越から煙った日本海を眺める 左奥が孝霊山

  
 上宝珠越から元谷へ下る                      元谷へ下る斜面から砂滑りを眺める


        最後は崖を太いロープを頼りに砂地へ下りる  


  いよいよ砂滑りを下って行く  年々砂が減って岩が増えている様だ

  
 登山者が歩く場所に跡が付いている              谷幅が狭くなっている場所で難所の岩場がある

  
  岩崖っぽい場所を振り返る                   その後も少し崖が続く

  
 恐らく右手(左岸)の崖部が崩れたのだろう          11時38分 沢が合流して幅広い川原となる

  
日本海側の天気が回復して来ている様だ               砂防堰堤の横を抜ける


 障害物競争の様な砂防ダム群を下って行く  山はまだ雲が厚くかかっている


元谷大堰堤から大神山神社へ下山し大山寺口へ

12時前に川原を下っていると右岸の段丘上に大きなケルンが見えた。前回はそのまま河原を下ったのだがケルンの方に寄って
みる。そこから踏み跡の小道があったので下る。

12時16分「元谷大堰堤」に着く。ここは「大山行者道」との合流点でもある。ここから「中の原スキー場」へ向かって道路
があるが、整備された沢沿いの登山道へ下って12時40分行者道の登山口でもある「大神山神社」(おおかみやまじんじゃ)
に着く。

石畳の参道を下り大山寺参道を途中からショートカットしてモンベル大山店横から12時58分元谷に架かる「大山寺橋」を
渡る。天気は少し回復してここから弓ヶ浜を見る事が出来た。


  
右岸段丘の上にケルンがある そこへ行って見る        大山寺40分(下流側) 上宝珠越50分(上流側)の道しるべだった

  
 歩きにくい川原を通らない道が有った                結局 大堰堤に出る


 大堰堤から大山北壁を振り返る 向かって一番左側が砂滑りの沢  稜線部は雲の中

  
大堰堤の右岸から舗装道路が中の原へ延びる         12時18分 道路は歩かず沢沿いの登山道を大神山神社へ下る

    
 沢に沿って整備された登山道                    12時33分 ユートピア小屋分岐と合流

  
 行者道・宝珠尾根ルートの登山口に着く(大神山神社の裏手)   歴史のある「大神山神社」

  
700mの神社石畳参道を抜けると大山寺の山門前となる    大山寺橋の横にあるモンベル大山店


  大山寺橋からも弓ヶ浜が見えた

 
横手道(旧作州街道) 横手道入口から大山環状道路経由文殊堂まで約1時間45分

さて、車を置いた文殊堂まで旧作州街道「横手道」を歩いて帰る事にして自転車は持って来なかった。「横手道」は山陽地方
(岡山方面)からの大山寺へ至る古道で標高800m程野大山裾野を横掛けするのでその名が付けられたと言う。確かに大山は
北側に振子山〜矢筈ヶ山〜甲ヶ山〜勝田ヶ山〜船上山の長い尾根が続く為、大休峠を登れない参拝者はこの水平な横手道を歩い
たのだろう。

13時10分横手道に入ると標識があり桝水(ますみず)高原まで2.0km。大山寺まで0.8kmとある。直ぐに「石の
大鳥居」を通過する。すると「三輪平太の墓」と地蔵や水場がある。三輪平太は江戸末期、大山寺(現在の大神山神社奥宮)
建立時宮大工として京都から呼ばれた。所が地元大工からの嫌がらせを受け設計の手直しをせざるを得ず責任を感じて自死した
秘話がある。いじめ問題は古今東西時代に関わらず人間社会に存在していたんだなぁ。

大いなる自然と歪弱な人間を感じながら古道を歩く。

13時35分車道から横手道に通ずる合流点を通過する。ここにも横手道に関する解説板が置かれていた。ここは野鳥の道でも
ある様でデカい望遠レンズを構えて野鳥撮影をされている人が居た。ホタルブクロの咲く古道には「一町地蔵」と呼ばれるお
地蔵さんが時々見られた。大山寺を開いた金蓮上人(きんれんしょうにん)が地蔵菩薩(大智明権現だいちみょうごんげん)を
祀った事から地蔵信仰が起こり近隣から寄進されたという。


14時00分桝水スキー場上の展望所を通過する。直ぐ下にリフトで来れる展望台があって大勢の観光客が弓ヶ浜などの景色を
楽しんでいた。


     
 13時10分車道から横手道に入る                道標7には「大山道」(横手道)と記されている 桝水高原まで2.0km

  
  直ぐに石の大鳥居を潜(くぐ)る                 京都の宮大工 三輪平太の墓と地蔵が有った

  
 少し草深い所もあるが全体的に歩き易い              歴史の散歩道って感じ?

  
 13時35分 車道からの道が延びて来ている          桝水高原まであと1kmになった


 大山道の由来が記されている。大山道は5道(尾高道・川床道・坊領道・溝口道・横手道)の相称らしい

  
 大きな望遠レンズで野鳥を撮影している人が居た             一丁地蔵が残っている

  
 寄進した村の名前が彫られているが良く読めない          ホタルブクロの咲く横手道を歩く

  
 14時00分 桝水スキー場の上に出た               バイクで横手道を走っている人も居る様だ


 ここからも米子市の町や弓ヶ浜と美保ヶ関が見渡す事が出来る

  
 環状道路へ向かって下って行く                  14時18分 大山環状道路に出る

14時18分大山環状道路に合流しここからは遊歩道は無い。車道を歩いて一ノ沢〜二ノ沢〜三ノ沢を下から眺めながら14時
55分文殊堂駐車場に帰りついた。


  
 大山環状道路には歩道が無いので少々危険だ               一ノ沢を通過〜

  
県道45号線(大山環状道路)は鏡ヶ成、蒜山、関金方面と延びる   二ノ沢を通過〜  大山の稜線部は雲の中

  
秋に黄葉が美しくなる細めのブナ林                 三ノ沢を通過すると車を置いた文殊堂はすぐ傍だ


文殊堂から鳥越峠〜振子沢を詰めてユートピアお花畑へ、帰りは上宝珠越から砂滑り〜大神山神社〜元谷〜横手道〜文殊堂の
バラエティに富んだ周回コースを約9時間45分で楽しんだ旅だった

追記)、大山上宝珠越から沢に下る「砂すべり」ルートは2022年現在崩壊が激しい為に通行止めになっております。


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