黒森山・東斜面(黒森バットレスSP〜黒森山〜黒森バットレス)周回
令和2年4月4日
プロローグ
新居浜のK2 沓掛・黒森
新居浜の国領川を大永山トンネルへ向かっていると、河又(こうまた)で足谷川が二又に別れ、車道が山手(チチ山北尾根の
末端部)に向かってヘヤピンカーブとなる。子供の頃、この辺りに住友関係の保養所があって親父と一緒に遊びに来た記憶が
ある。このカーブ手前辺りから右手に鋭く切り立った沓掛山(1,691m)と黒森山(1,678.5m)を眺める事が
出来る。
標高の割に鋭く立ちあがった沓掛・黒森の姿は実に凛々しく、特に冬場は雪がいつまでも残って一段と厳しく美しい姿になる。
そんな訳で二つの山の頭文字を取って個人的に新居浜の「K2」と呼ばさせて貰っている。

河又から見上げる冬場の沓掛・黒森は新居浜のK2だ
黒森バットレスとバットレスSP(スペシャル)
西条側・吉居からボリュームの多い斜面が沓掛・黒森に押し迫る。東側の切り立ったK2東壁を崩れない様に受け止めている
のがそれぞれ沓掛・北東尾根、黒森山南峰・東尾根、黒森山北峰・東尾根だ。
この黒森山の主壁が受ける東方向への圧力を受け止める控壁(ひかえカベ)=バットレスの役目を果たす2つの短い尾根を南側
(南峰)から「黒森バットレス」と更に北側(北峰)の短くて急峻な「黒森バットレス・SP(スペシャル)」と名付けた。
まあ簡単に言えばどの山も幾つかの尾根がバットレスの役目を果たして山塊を安定しているのだけど。
北岳バットレスの様に登山用語としてのバットレスは岩場に名付けられているのが有名だが、黒森山の場合は幸運にもこの補助
壁尾根の岩場はシャクナゲや天然ヒノキに覆われているのが特徴だ。
新居浜のそんなマイナーな山の尾根は説明するのに難がある。そこに固有名詞を付けてやれば親しみが湧くと言うものだ。

ダムの水圧を支えるバットレス 槍ヶ岳の山小屋にもバットレス工法があった
黒森山・南峰に至る「黒森バットレス」は既に2度這い上がっている。その時、黒森山・北峰に至る「黒森バットレスSP」
はどうみても垂直部が多くてシロウトが這い上がるのは無理だと思われた。
ここを過去2度這い上がっているマーシーさんに言わせると「一ヶ所だけ岩を乗り越える難所があり、そこを私がスリングで
作った鐙(あぶみ)を使えば後は問題無いでしょう」と言う。彼の問題無いでしょうの言葉は過去の経験上信用出来ない。
第一既に記憶が怪しいと言うか、ほぼ無いと思われた。
と言う事で、令和2年4月4日 黒森バットレス・スペシャルにマーシーさんの案内で能智さんと犬返仲間が歩けるルートチ
ェックに出かける事にした。
さくらなる橋〜電源開発鉄塔保線路〜分岐〜黒森バットレスSP〜黒森・北峰〜黒森山(三角点峰)
〜黒森・南峰〜黒森バットレス〜電源開発229番鉄塔〜さくらなる橋

カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 黒森バットレスSP〜黒森山〜黒森バットレス 周回ルート図
07時00分いつもの新居浜・山根運動公園で待ち合わせ、マーシーさんの車で清滝トンネルを抜けて河又のヘヤピンカーブで
県道47号線を右手に外れる。
そこから先は沓掛尾根沿いには車止めゲートで行けない。本谷川に架かる「さくらなる橋」方面へは落石で悪路となっている。
だからこの林道分岐に07時25分車を停める。
車を停めた場所から黒森山の東斜面が一望出来る。そこからキーポイントになる「229番鉄塔」を見つけて、マーシーさんが
能智さんにバットレスSPのルートを説明している。

車を停めた場所からの〜ちゃんさんに黒森バットレスSPのルート確認をするマーシーさん
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黒森バットレスとバットレスSPを少しズームしてみる
「さくらなる橋」と電源開発・伊新線鉄塔保線路
07時40分駐車地を出発し、林道を歩くと直ぐに国領川・足谷川の支流、本谷川に架かる「さくらなる橋」を渡る。数日前
の雨でトラックの轍でぬかるんだ場所を避けながら橋の上からさほど大きくは無い上流の谷を見上げる。本谷川は黒森山を源
流地として河又で足谷川に合流する。
橋を渡ると直ぐ左手に「電源開発・伊新線鉄塔保線路」の入り口がある。Jパワー伊新線は前にも述べたが西条の伊予変電所
と高知の新改中継所を繋ぐ電線で、そこから魚梁瀬ダムまで四国を縦断している。従って新居浜近辺の山には四国電力、住友
共電、電源開発(J−パワー)の三社鉄塔保線路が網の目の様に存在する。
さて、この「さくらなる橋」保線路入口に「黒森山」の登山口標識が立っている。この標識を立てた人の意図するルートは電
源開発の鉄塔保線路を231番鉄塔まで使い、「かけさこの尾」稜線伝いに黒森山の北肩部から三角点山頂へ至ると言うもの
だろう。事実、かけさこの尾と黒森尾根との合流点に「さくらなる橋」への同じ材質の分岐標識が立っている。
もし、ここに電源開発の伊新線鉄塔保線路が存在しなければそもそも東斜面の黒森山登山は成立しないと言う有り難い存在な
のだ。
07時43分鉄塔保線路に入り、岩がゴロゴロする荒れた山道を辿る。急斜面にはザイルなども置かれているが、これ位の場
所にこのザイルは勿体ない。やがて植林帯に入ると大岩が出現する。香川県にこんな岩があるとかならず注連縄で飾られてい
るだろう。
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07時40分 林道分岐から歩く 2分程で本谷川に架かる「さくらなる橋」を渡る
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本谷川は今回のバットレスSPルートまで続く 07時43分 電源開発・保線路入口に黒森山の標識が立っている
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少々ワイルドな鉄塔保線路だ ザイルが置かれている (ここに使うのは勿体ない)
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植林帯を暫く歩く ドデカい岩が並ぶ 08時08分 本谷川の沢筋に出る
08時10分大カツラが立つ本谷川を渡渉する。ここは先ほど渡った「さくらなる橋」の上流となる。水量はさほど多く無い
が水は綺麗で夏場なら飲みたい様な透明さだ。沢の雰囲気が良い場所だが、ここから上流は極端に水が少なくなる。
08時15分最初の保線路分岐があり右手の229番鉄塔方面へ上がって行く。地形図を見るとここから破線道が「さくらな
る橋」へと下っている。
08時35分ヤカンとペットボトルが置かれた二つ目の保線路分岐を右手に進む。ここを左手に進むと229番鉄塔で、右手
に進むと230番鉄塔やシャクナゲの尾に立つ231番鉄塔へ至る保線路だ。ここにも炭焼き窯跡が見られ、そこを過ぎると
ユキワリイチゲが林床に咲いていた。
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この沢のカツラにはシビレます 08時10分本谷川を渡渉する
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カツラの横を次の小沢へ向かう 水が有るのがこの上流部まで
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08時15分最初の鉄塔保線路分岐を右手に進む 右手の229番鉄塔への保線路を進む
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08時35分2つ目の保線路分岐を右に進む 炭焼き窯跡もあるでよ
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ユキワリイチゲが咲いていた 鉄塔保線路はまだ続くがマーシーさんの記憶違いで尾根を進む
鉄塔保線路と別れ、バットレスSP取り付き部へと進む
08時40分マーシーさんの記憶に従って北側の230番鉄塔へ続く保線路と別れて小尾根を上がって行く。すると5分後に
又保線路に合流した。う〜〜ん マーシー記憶媒体は容量が少ない。そこからいよいよ黒森バットレスSPへと向かう。この
分岐辺りは地形図では明確な尾根は読み取れないが、植林がパラパラと散見される小尾根があり、岩っぽい傾斜を上がって行
く。
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マーシーさんの記憶に基づいて尾根を進む 植林帯の尾根を上がる
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あれ? 保線路が沢筋から回り込んで来ているやんか 08時45分 ここが本当の保線路分岐 尾根筋に入る
右手は「シャクナゲの尾」の絶壁が続き、その尾根に立つ231番鉄塔が見える。08時55分最後の植林帯を抜けると岩と
苔の自然林斜面となる。驚くような大岩には苔が生し、ユキワリイチゲも咲いている。この辺りは地形図通りでゆるやかで平
和な斜面が続く。
本谷川は黒森山の中心部へと向かう谷で、言い換えれば南側の黒森バットレスと北側のバットレスSPを分ける谷だ。
09時03分本谷川の涸れ沢に下りて上流部へ少し進んだ後、右手に渡る事になる。ここも正確に言えば「しゃくなげの尾」
の付け根に向かう支沢との扇状地みたいな場所だ。ミズナラの様な落葉広葉樹が立ち並び美しい。
09時20分今日初めての休憩を3分間取る。一般的には1時間歩いたら10分休めとか言われるが、あまり休みを取ると歩
き出すのが大層になる。以前より歩くスピードも遅くなったのでそんなに休む必要が無いのも事実なのだが・・。尚も暖かい
日差しの中、気持ちの良い斜面を上がって行く。
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右手に「シャクナゲの尾」に立つ231番鉄塔が見える 08時50分 最後の植林帯を抜ける
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08時55分 自然林となる この沢にはカツラの木が多い
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ここにもユキワリイチゲが咲いていた 当然の事だが大岩が多いわ

石を積み上げるアートに挑戦するの〜ちゃん ネコノメソウ (能智さん撮影)
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中央にバットレスSPの先端部が見える 右手はシャクナゲの尾 本谷川の涸沢を暫く進む
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沢部の中州扇状地は美しい樹林帯となっている 沢筋に沿って高度を上げる
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束の間の平和な風景を楽しみながら徐々に高度を上げて行く
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あ〜〜疲れたび〜〜 二人とも現役労働者だからなあ 次第に傾斜が急になってくる
本谷川・右又の滝と岩穴
マーシーさんの記憶で「この先に滝があるんですよ」と言うとホントに09時30分正面の崖から水が割れ目を伝って落ちて
いる。この滝はどちらかと言えば「しゃくなげの尾」に属する岩壁だ。
さらに「この上側に岩穴があるんですよ」と言う。ひょっとして旭の岩屋みたいなものか?と思ったが09時36分その穴に
近づくと真四角な穴が岩を穿っている。明らかに人工の洞穴で恐らく鉱石の試掘抗と思われる。さてこの辺りから急斜面とな
りバットレスSPへの期待と緊張感が増してくる。
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09時30分 本谷川 右又 源流部の滝に着く
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う〜〜ん 何とか水は落ちてるねえ 更に左に回り込み上側の岩穴へと誘われる
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こりゃ人間が掘った穴じゃね フラッシュを焚くと奥で穴が塞がれている
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岩の斜面を這い上がって行く 右手の岩壁に近づいて行く様だ
いよいよ黒森バットレス・スペシャル
黒森バットレスSPは北峰に向かって短く立ちあがっている。09時50分その取り付き部の岩場に近づいたのでヘルメット
を装着する。ヘルメットは滑落と言うよりは仲間同士の落石による頭部を保護する目的で被る。
正面の岩場を避けて少し左手から尾根部へと回り込んで行く。天然針葉樹やリョウブなどが生えた斜面を這い上がる。
10時10分上方に尾根筋が見え、ザレて滑り易い急斜面に取りつく。今回は犬返仲間が歩けるルートチェックと言う目的な
のでマーシーさんに私の20mロープを持って稜線部まで上がって貰う。次回の時間セーブの為、このロープは残置して行く
事にする。
10時20分尾根部に到達すると面白い天然杉があったので少し遊ぶ。根元付近で2つに分かれて、それぞれの幹が更に上で
2つに分かれている。
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09時50分 ヘルメットを装着する 岩壁の左手を回り込みながら上がって行く
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急斜面をひたすら上がる 後続者への落石に気を付けながら這い上がる
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前方に尾根のコル部が透けて見える 次回の犬返仲間様にロープを張る

黒森バットレスSPはこの尾根から開始される (能智さん提供)
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10時20分能智さんに合図して尾根部に上がる 尾根部に上がると二又が二つ並んだ杉があった
さてここからシャクナゲと天然ヒノキと岩の細尾根急登が続く。もう崖の様な傾斜があるのだが有り難い事にシャクナゲや天
然ヒノキ等の木々が生えているので安全を保障してくれる。思っていたよりは歩き易いが、しかし這い上がりはしんどい!
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早速天然ヒノキとシャクナゲの這い上がりが始まる 岩にヒノキの根がへばりついている
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右へ左へ変幻自在に歩く シャクナゲの枝がザックに引っ掛かる
スペースが空いていると嬉しい 天然ヒノキとシャクナゲのコラボ尾根だ
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崖でも木があれば何とかなる 急斜面は四つん這いになって這い上がる
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左側にバットレスの岩峰が見える シャクナゲ藪でマーシーさんが隠れる
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う〜〜ん ここは何処から這い上がろうかな? 行けども行けども崖藪が続くぜよ
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11時10分 右手、「シャクナゲの尾」南岩壁を眺めながら休憩を取る
難所の岩場上の展望所で行き詰まる
11時23分マーシーさんが「鐙(あぶみ)を用意しますから、そこをクリア出来れば後は問題無いですよ」と言う場所に来
た。宣言通り、マーシーさんが先ずスリングで作ったアブミを崖上に取り付けて岩崖を這い上がり、私が持って来たロープを
引き取り更に上に進んでロープを木にセットする。マーシーさんお手製のアブミは揺れるし輪っかが閉じているので中々岩登
りに慣れていない私は靴が輪っかに入らず四苦八苦する。面倒なのでロープ頼りに岩を無理やり岩棚へ這い上がる。
その後、もうほぼ垂直に近い崖部を這い上がって行くのだが、ここには適度に立ち木が生えているので何とかなる。
11時40分灌木ヤブの急傾斜を這い上がると展望の開けた岩場の下に出た。この展望所から東斜面の229番鉄塔や西赤石
から東赤石、そして南側には黒森バットレスと沓掛北東尾根、その向こうにチチ山が見える。
マーシーさんが更に北側の尖った岩場に出て「ここは犬返仲間には無理ですねえ」と言うので11時50分場所を交代して上
を覗くがとてもじゃないが這い上がれそうにもない絶壁が続いている。
り立った崖で回り込めそうにも無い。二面楚歌じゃないの! これじゃあ何の為にアブミを使ってここまで来たのか訳が分か
らない。

木が生えているって安心感は半端ない (能智さん提供) どんどん崖を這い上がって行く (能智さん提供)
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岩は石鎚山と同じような節理を持った花崗岩の様だ
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11時23分マーシーさんがアブミをセットして難所を上がる ついでにロープも持って上がって貰う
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黒い太目のロープはブルータスしんちゃんに貰った物 その後も垂直な壁を這い上がる
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こんな崖でも立ち木があるので何とかなる 11時40分 黒森バットレスSPで唯一の展望所だった
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足元を見るとゾクゾクする様な絶壁だ 二本の白骨樹が場所確認のランドマークになる
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岩展望所まで恐る恐る出て下界を撮影する
岩展望所より南側を眺める
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右手に迂回して活路を見出す
まあ崖で行き詰ったけれど、岩展望所からの眺めは素晴らしくここまで来た甲斐は十分に有った。12時05分先程這い上が
った「あぶみ崖」まで戻る。途中、左手斜面を幾ら眺めてもこの辺りから尾根筋へ這い上がれるルートは無い。
そこでマーシーさんが最初に歩いたと言うルートに従って「あぶみ崖」の下側から右手の斜面へ崖を迂回して進む事にした。
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右手も崖で尾根筋へ這い上がる事も出来ない アブミ棚まで引き返す

12時05分 アブミ崖を下る むむっ マーシーさんのお手製アブミに足が入らない〜
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直ぐに尾根筋へ復帰するのは不可能な崖だ アブミ崖の下から滑り易い急斜面を迂回する
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12時15分 一つガレ沢を渡る ひょっとしてここを這い上がれば岩場の上に早めに復帰出来たかも
12時30分灌木ヤブを這い上がったマーシーさんに少し開けた草付きの崖部にロープを垂らして貰いそこを這い上がる。落
石を避ける為に間隔を空けて最後に続いて来た能智さんは体重の割には身が軽いので全く心配が無く、ロープの回収もしてく
れている。
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上に向かって這い上がれそうな場所まで進む 岩棚を伝って這い上がって行く
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マーシーさんにザイルを下ろして貰い草付きを這い上がる 12時40分能智さんが着いてロープを回収する
バットレスSPの尾根に復帰して黒森稜線部へ至る
そこからは三者三様 思い思いのルートで稜線を目指す。特に問題の無い灌木斜面を這い上がって行くと13時04分バット
レスSPの稜線部に復帰した。シャクナゲの藪だが文句は言えない。マーシーさんはもう少し手前で稜線へ這い上がった気が
すると言うが彼の記憶はアテにはならない。後から地形図を確認すると、確かにもう少し手前で稜線に這い上がれたかも知れ
ない。
13時15分ちょっとした崖部があって安全の為にロープを使うがその他は樹林帯の細尾根なのでシャクナゲ藪や灌木藪を避
けながら普段通りの歩きを続けて稜線を目指す。
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右手に見えるシャクナゲの尾が近くなった 斜面のスペースを選んで歩く
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黙々と尾根復帰を目指す やはり傾斜の緩やかな方に進むから尾根復帰が遅れる
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対岸「シャクナゲの尾」の岩崖を見るに、この尾根の右手は切れ落ちている筈だ ブナが雰囲気いい〜〜
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手付かずの自然は変化があって飽きない 13時04分 バットレスSPの尾根に復帰するとそこはシャクナゲ藪だった
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13時12分 ちょっとした傾斜がある マーシーさんに「折角ロープが有るんだから下ろしてよ」と頼む
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上りに使った最後のロープ場を上がる 稜線部に近づくと傾斜が緩やかになる
13時25分赤い境界杭の立つ「黒森・北峰」に上がり着く。「腹減った〜〜」とここに座り込んで昼食を取りながら帰りの
ルートを相談する。ガスバーナーでゆっくりお湯を沸かす余裕が無い時は少し重くはなるが山専ボトルが便利だ。カップ麺を
すすってマーシーさんが淹れてくれたコーヒーを大人のビターキットカットで贅沢に飲む。
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13時25分 能智さん 黒森・北峰に到着した マーシーさんも3度目に黒森バットレスSPに着く

黒森山・北峰は標高が約1,640mで本峰より少し低い インスタントラーメンにコーヒー、キットカットの豪華な昼食
下山ルートに悩んで黒森三角点を踏んで黒森バットレスを下る結論に
このまま三角点峰へ行かずにシャクナゲ尾根から鉄塔保線路を下るのが一番無難な選択だ。でもそれではピークハンターとし
て黒森山=三角点峰を踏まずに帰ると恐らく後悔しそうだ。と言って三角点へ行って又引き返すのも面倒だ。う〜〜ん 悩ま
しい。
14時00分北峰休憩所を出発し一旦コル部へ下がって、又上り返し14時08分以外に早く黒森山三角点峰に着いた。以前
マーシーさんと来た時に三角点標石や境界標石が3個転がっていて整理したが、今回も三角点だけは埋設されているが他の2
個は転がされていた。記念写真を撮って南峰へと向かう。
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黒森山本峰(三角点峰)へ向かう 14時08分 黒森山に到着
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黒森山から東側に見える赤石山系を眺める 三等三角点「黒森」 1,678.5m
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下りはあそこからネ 手前のピークは黒森・南峰 右奥は沓掛山 その奥がチチ山と笹ヶ峰
黒森・南峰から黒森バットレスを下る

去年 2019年(令和元年)3月2日に犬返仲間と上った黒森バットレスログ図 (伊予の鈍亀さん提供)
14時21分南峰に着いて適当に黒森稜線を左に外れてバットレスへと進む。このバットレスは基部では北側に向かっており、
途中から東側に曲がって長く延びる。ここも岩尾根にはシャクナゲや天然ヒノキなどが生えており岩場を避けて歩く事が可能
だ。14時30分地形図には明確な細尾根は読み取れないが、荒れた細尾根を下る。地形図では表現されていない地形変化に
現場では良く遭遇する。風をまともに受ける厳しい環境にある細尾根は根っ子や幹が四方八方に広がり植物を支えている。
要は人間様が歩ける様な思惑がここには存在しないのだ。
14時40分尾根が右手の断崖に近づきシャクナゲ藪がその細尾根を覆う。左手が少しなだらかなので迂回しながら高度を下
げる。すると先程這い上がって来たバットレスSPの断崖が見えて3人でしみじみと眺める。
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黒森・南峰からのバットレスは最初緩やかに北側に振っている 南峰に着き登山道を左に離れて、尚も左気味に下る
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14時30分地形図には明確な細尾根は無いが実際は細尾根のシャクナゲ藪である

尾根ってもフツーのイメージとは違うで〜 乗り越えたり、潜ったりと全身トレーニングになる
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枝を自由に広げる天然杉 細尾根を横倒しに延びる木の幹や岩を乗り越えて進む
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14時38分尾根部のシャクナゲ藪に阻まれて左斜面に逃げる 広々とした気持ちの良い斜面を下る
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黒森バットレスSPの上部を眺める バットレスSPの行き詰った岩展望所を探す
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う〜〜ん あの辺りで行き詰ったのかなあ? 尾根の先が切れ落ちる急斜面が近づく
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黒森バットレスSPの岩展望所を探す シャクナゲの岩崖に向かう
シャクナゲの横枝を避けながら下ると15時02分尾根の肩部に出て、ここから右手の東方向に尾根が振る。ここからは崖を
下るのだが、灌木ヤブが安心感を与えてくれる。景色は悪く、先を行く2人の姿が藪と崖で見えない程だが贅沢は言えない。
左に振ればバットレスSPが見え、右に振れば比較的穏やかな沓掛北東尾根が見えるが、標高はまだまだ高い位置に居る様だ。
15時12分崖の上に出てマーシーさんが右手から下って待っている。能智さんがヒノキに捕まってするすると下る。写真を
撮るからストップ!と声をかけるが「無理〜」と滑り下りた。面白そうなので私もマネをする。落ちない様に腕と太ももでヒ
ノキを抱え込むので家に帰ると擦り傷が出来ていた。
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倒木や灌木を掴みながら落ちる様に下って行く 尾根が右に振るのでマーシーさんから声がかかる

崖部も岩に沿って下る 崖でも木が生えていれば楽しいもんやで 無料アトラクション
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左に振ればバットレスSPの尾根が見える ルートを右に振れば沓掛北東尾根が見える まだまだ高度が下がらない

能智さん 写真撮るからちょっと止まって! 止まれるかい〜〜〜 じゃあ お次はわたくしめが・・・あれ〜〜滑る〜〜〜〜
15時25分先で左側ルートを探るマーシーさんが「ここは崖で無理です」と言うので私が右手を下るがここも断崖に阻まれ
る。能智さんが居る場所から「何とか下れそうです」と言うのでロープを使って中央突破する。ロープを渡す木が沢山あるの
で苦労は無い。崖下に下りて振り返ると去年登った時にスリングを架けて這い上がった記憶がある場所だった。
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15時15分ルートが右手の崖に進む ここならロープで下りれそうや

折角のロープ 使わせて貰いやす (の〜ちゃん) やっぱり上りより下りが難しいわなあ
15時52分大岩に沿って下る崖部があり、ここも記憶があった。一年前くらいはまだ記憶が残っている物だ。ただし上りは
簡単だが、下りのルートは難しい。こんな場所ではマーシーさんが俄然元気が出る様で自然にトップへ出ているので後続は楽
だ。
16時08分シャクナゲの崖下に幹が裂けて口の様になったヒメシャラがある。う〜〜ん ここも記憶にある。部分的に記憶
があるポイントを通過すると安心する。
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こんなワイルド尾根ではマーシーさんのスピードが上がる どこまでもシャクナゲが続く
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15時52分 おっ 見覚えのある岩の間を下る 崖の棚を利用して高度を下げて行く
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ここを下ったって事は以前ここを上ったって事? 信じられんわ 忙しくスパッツが乱れても直す暇もない

16時00分 見覚えのある崖を下る やっぱり這い上がるより転がり落ちる方が楽か〜〜
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マーシーさんが竜の目に (能智さん提供) 16時08分 笑いヒメシャラを通過
16時15分同じようなシャクナゲ藪の激下りで少し右手の崖を避けて左手に振って調子よく下りて行くマーシーさんを追う。
「さすが 斥候が居ると助かるわ」と思った瞬間、下から「ルートが間違ってま〜す」と声がかかる。どうも左手の支尾根に
入ってしまった様だ。下りはドンドン滑り落ちて行けるが、上り返しは無駄な気分でヘロヘロになりながら元の尾根分岐へ復
帰する。普段はショートカットで適当にトラバースするのだが、ここは崖が邪魔をして元に引き返すしか無いのだ。
少しバットレスルートに復帰して下っているとマーシーさんが座り込んで休憩を取っている。兎に角こんな尾根歩きは3人共
面白くてついつい休憩を取らない。歳なんだからもう少し休憩を意識的に取らないと駄目だと最近は思う。
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一見この尾根はルート上だと思うのだが左に振ってしまう どんどん左に振ってしまい、間違いに気づいて引き返す事になる
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16時25分 マーシーさんが腰を下ろして休んでいる そうそう もう先が見えたから鉄兜も休憩じゃ
電源開発・伊新線229番鉄塔
休憩の後、シャクナゲ藪を下ると16時34分やっと植林帯の入り口に着いた。黒森バットレスの尾根はこの先で消滅するの
で、植林帯を少し左手に進みながら電源開発229番鉄塔を目指す。植林帯を10分程左方面へ下ると鉄塔が見える。ガレ岩
の灌木斜面を横切って16時45分229番鉄塔に着いた。あ〜〜ここからはやっと道を歩く事が出来る。
この心理状態は喩えるなら、山歩きを目的に山をほっつき歩いた揚句に車に戻るとホッとする様な感情だ。ワイルドな藪尾根
を歩く目的でここに来て、疲れ果てて鉄塔保線路に出るとホッとする。決してこれを残念とは思わないのだ。
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どこまでもシャクナゲが追って来る 16時34分 植林帯に入る もう鉄塔は近い
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この尾根もかつてはシャクナゲが生えていたのだろう 16時40分尾根が右側の本谷川・左又に消えるので左手へ進む

16時45分 電源開発・伊新線299番鉄塔に向かう この鉄塔がK2東壁攻略のキーポイントとなる (能智さん提供)
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電源開発鉄塔巡視路はこの鉄塔をスキップする道もある 229番鉄塔を中心に「シャクナゲの尾」や「沓掛東北尾根」に行ける
229番鉄塔から保線路を「さくらなる橋」まで
鉄塔でヘルメットを脱いで保線路を気楽に歩く。16時58分今朝歩いた保線路と合流し、沢筋の花芽を見物に寄ったりしな
がら歩く。退屈しのぎにバカ話に花を咲かせながら沢を渡り17時36分保線路登山口に帰り着く。5分程林道を歩いてマー
シーさんの車に帰り今日の歩きを振り返りながら山根公園に明るい内に帰る。
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さくらなる橋には東側へ向かって下りる ちょっと雑木林で道が不明になるが今はテープが沢山見られる
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16時58分 朝右手に行った保線路分岐と出会う 17時16分 カツラの沢を渡る
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17時36分 林道に下り付く 17時40分 「さくらなる橋」を渡って車に帰る

右手のバットレスSPを上がって 黒森バットレスを下った
黒森バットレスSPを這い上がり、黒森バットレスを下る。この贅沢な山行はマーシーさんとの〜ちゃんさんのお蔭で無事遂
行された。
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