大座礼山へ這い上がれ (大座礼山南東尾根)
高野(吉野川)〜三滝山〜井野川山〜井野川越〜大座礼山〜大田尾越
高野〜三角点「高野」〜三角点「三滝山」〜井野川山(三角点「井川山」)〜三角点「大川」〜井野川越〜大座礼山〜県境尾根〜大田尾越
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 高野〜大座礼山南東尾根〜大座礼山〜大田尾越
プロローグ
大座礼山は東側の県境尾根、東光森山から見るといかにも鈍重な形をしており、あまり魅力的とは思えない。この山を有名にした
のは南東尾根にある大ブナの存在である。
私が山歩きを始めた15年程前は少し樹勢が衰えて来たとは言え青々とした葉を一杯に付けた大ブナ群に驚いたものである。残念
な事に最近次々に枯れて当時の面影は無い。
一方、西側の平家平からこの山を眺める大座礼山は、左肩が三ッ森山から続く県境尾根、右肩が井野川山〜三滝山へ落ちるなだらか
な南東尾根を抱えて扇型に中々良い形をしている。山名の由来は南西部にあるザレ場がある事から来ているらしいが、いくら目を
凝らしてもさしたるザレ場は見られない。
15年前の大座礼山の大ブナ 登山口から土を袋に入れて根元に撒く運動が行われていた
平家平(西側)から見た大座礼山と右手に吉野川へ向かって落ちていく南東尾根
以前、能谷山〜東門山〜西門山〜稲叢山を歩いた時に吉野川を挟んで北側にある厳しそうな岩山があるのを見て興味があった。
泉保さんのイメージをトレースする山地図を見ると「三滝嶽」(みたきだけ)と三角点「三滝山」とが記されており、その尾根
は井野川山を経由して大座礼山までほぼ一直線に続いている。
この大北川と吉野川本流との間に細長く続く南東尾根は大座礼山登山口の「大田尾越」に車をデポして自転車でピュ〜〜と高野
まで下れば周回が簡単である。しかしながら高野から大座礼山までの標高差が1,200m以上あり距離も長い事から縦走には一
日半を要する。
昨年単独縦走用にモンベルのモノフレームシェルターという600グラム程の宿泊道具を2万6千円で購入した。屋根型のツェル
トに比べて奇妙な形をしてあまり好きではないが縦走に使うには軽さこそが命であり正義なのだ。
ターIIというポールを2本差し込めば簡単に立ち上がる簡易テントも持っているが四国のヤブ尾根では多少場所取りに苦労する
場合がある。
と言う事でこの奇妙なシェルターを持って、東京から兄貴が帰省してお袋当番から解放された3月末にここを歩く事にした。
第一日目
高野〜三角点「高野」〜三滝嶽〜三角点「三滝山」〜井野川山〜ビバーク地 (約9時間)
カシミールソフトを使用したPSトラックログ図
朝04時頃、お袋さんが座敷で寝ている兄貴に「あんた 今日山に行くんじゃないん?」としきりに起こしている声で目を覚ます。
昨夜「明日友達と朝から山へ行ってくるわ」と話していた事を覚えていた様だ。一人で山へ行くなどと言うと異常に心配して電話攻
勢に遭うのでいつも友達と一緒に行くと伝えるのだ。ちょっと前の事も覚えられない母がこんな時に限って不思議に思い出して時間
も構わず兄貴をしきりに起こしている。「ボクは山なんかに行かんよ」と不機嫌な兄貴の声が聞こえて申し訳なく思いながらテレビ
や電気を夜通し点けっぱなしで寝ている自分の部屋にぶつぶつ言いながら引き上げていくお袋さんの足音を聞きながらウトウトする。
5時過ぎに今度は目覚ましの音に起こされてそ〜〜っと出かける準備をする。すると物音でお袋さんが現われて玄関先で何だかんだ
と大きな声を出して又兄貴を起こしてしまった。「見送りなど要らん」と押し問答の末にお袋さんに門から見送られて新居浜の実家
を出発。
新田橋の袂にあるコンビニで朝食のコーヒーとサンドイッチ、お昼のおにぎり弁当を買って大永山トンネル〜筏津を経由して大田尾
越へ向かう。コンビニで買うホットコーヒーの入れ物は柔らかくて蓋をキチンと締まらない(私だけ?)ので飲むときに横から必ず
服やズボンにこぼれてアッチッチ〜となる。(私だけ?)だから今朝も蓋をせずに運転をしながらコーヒーとサンドイッチを寝起き
の胃袋に流し込む。
06時半に大田尾越に着き前日から車に積んでおいた折り畳み自転車を出して準備をする。折り畳んだり又広げたりするのが面倒な
ので私の折り畳み自転車は折り畳んだことは無いと言う不憫な存在だ。
06時45分コンビニで買った昼食おにぎり弁当を天袋に挟んで自転車に乗って大北川沿いの県道6号線を軽快に下る。ザックは山
友ペーコちゃんが最期に担いでいた物を奥さんから形見分けして貰ったオスプレー「ケストレル38」だ。防寒着や一泊山道具を詰
め込むには38リッターザックは少し窮屈過ぎて弁当までは入らない。最近はスノーシューなどペーコちゃんの形見を背負っての山行
が多くなった。勿論死者の霊魂がそんな物に宿っている訳では無いんだけど、何となく懐かしい山友と一緒に歩く気になれる。
大北川は初めて見る沢だったが水量が豊富で至る所に滝があり美しかった。途中で何度も停まりながら滝や大座礼山への尾根筋を眺
める。尾根の東斜面は植林が多く途中の樹林帯では大規模な伐採作業がされており索道なども見られた。吉野川本流に沿った谷筋に
は夜の冷たさを象徴する様に霧がかかっていた。
途中、白滝の里への分岐が2つ程あり、下側の分岐からは以前、野地峰の水場調べに行った時に西条側からここへ来たのを思い出し
た。
礼山南東尾根の端っことなっている。
06時45分大田尾越を自転車で出発する 大座礼山方面はデカくて平凡な尾根に見える
尾根の東面では大規模な森林伐採作業が行われていた 吉野川から立ち上がる南東尾根が見える 尖がりは三滝嶽だろう
大北川の翁滝は迫力満点だった 大北川は沢山の滝を持つ清流だった
07時35分 白滝の里分岐(野地峰へ)を通過 次第に大北川は吉野川へと近づく
07時42分 早明浦ダムから来る県道17号線と合流 県道小松川橋を渡る
高野〜高野山〜三滝山 約5時間
県道17号線「小松川橋」を渡った右手に地主神社があり07時50分道路の法面に沿って石段を上がり境内裏から尾根に取り付く。
地主神社は「じしゅじんじゃ」と呼ばれる地元の神様を祀る神社で京都の地主神社が有名で大国主の命が祀られているらしい。読み
方は「じぬしじんじゃ」と呼ばれる場合もありここはどちらか定かではない。
07時45分小松川橋を渡った場所にある地主神社に着く 鳥居をくぐって境内に入りお参りをする
取り付き尾根は雑木に覆われているがスペースがあるので歩き易いのだがいかにも急登だけに息が切れる。
業道が伸びているので少し右手にこれを進むが尾根から外れていくので尾根に這い上がって復帰する。この辺りから植林帯となるが
あまり手入れされておらずに荒れている。この辺りの岩は少し白っぽくスレートの様な節理が逆相に刻まれている。
社殿の裏手から尾根に取り付く 取り付き部の藪を抜けるとスペースが出て来た
まあ総じて灌木藪には違いない 08時20分 左手から作業道が尾根を横切る
ん? ここは植林地帯か? スレートに使えそうな薄い節理がある 逆相なのでズレやすい
08時40分檜や赤松、アセビが倒木状態で歩きにくい。登るにつれて境界割出作業のピンクテープが現れる。手に持ったストック
は役には立たず仕舞うと必ず落とすので片手に2本握って空いた手を使って木々を掴みながら這い上がる。
うへ〜〜 歩きにく〜〜 何せこの尾根は急登が続く
09時20分平らな尾根筋に上がったのでスマホとGPSの地図を出して比べて見る。スマホには無料地図アプリ「ジオグラフィカ」
、GPSはペーコちゃんの形見「マップ60CSx」だ。GPSのバックライトを点ける操作を知らないので少し暗いがこちらには
今まで歩いて来た軌跡が画面で見える。ジオグラフィカも軌跡を地図に落とせるのだが電池を消耗するし無料限定バージョンで使っ
ているので現在地のみの表示にしてある。
特に登山口を探す時などは一々地図を出してGPSで場所を確認する手間が省けて非常に便利である。カシミールソフトにしてもジオ
グラフィカにしても山歩きに大変有用なソフトを開発してくれる頭の良い人がいて助かるわ〜
植林帯は境界割出し作業の跡が見られ比較的歩きやすい スマホとGPSを卜部てみる やはりスマホの方が見易い
四等三角点「高野」749.71m
地図を見ると北側にある三角点は近い。右が植林、左が自然林のパターン尾根となる。倒木や岩なども現れて地形のなだらかな割には
歩きにくい。岩尾根を歩いていると左手前方に厳しそうな3つの岩山が見える。う〜〜ん どんな所だろう?又、左手下には青々とし
た水を湛えた吉野川が見える。
俄然岩が多くなり09時30分眼前に岩壁が現れた。左手は絶壁で右手は何とか迂回出来そうだがここは岩の弱点を利用して這い上が
る事にする。ストックが邪魔なので先の岩に置きながら棚を進んで最後はストックを上に放り投げて這い上がる。重いザックが無けれ
ば苦労しないんだけど・・・
09時40分四等三角点「高野」に到着する。ここまで標高差400mを1時間50分かけて上がってきた。あ〜〜しんど
むふっ 歩きにく〜〜 木の根がのたうち回る岩の細尾根になる
はは〜〜ん あれが三滝嶽やな 岩峰が三つ並んどるわ 左下は吉野川ブル〜
むむっ こりゃどうするべえ ストックがちょっと邪魔だけんど這い上がるべし
09時40分 四等三角点「高野」を踏む 標識的な物はこれだけ
四等三角点「高野」まで登山口から標高差400mだのに1時間50分もかかった
三角点「高野」〜三角点「三滝山」 約 3時間15分
三角点「高野」を後に植林の細尾根を進む。基本的には尾根には良くある右手は植林、左手は自然林のパターンで、境界杭などもあり
ルートは明瞭だ。ターニングポイントは三滝嶽の山塊に入る最初のピークで右手から902Pを経由して大きな支尾根が合流してくる
場所だ。
10時02分右手に鉄塔が現れる。よく見るとそれは2本立っており林業用の運搬滑車台だった。
なると岩も出て来るが尾根のスペースは十分で歩き易い印象だった。
ここのアセビは日陰が多いので花は少ない 左が切れ落ちた断崖となっている 境界杭もある
基本的には植林帯と言える 急傾斜の左側は自然林、比較的穏やかな右手は植林のパターン
10時02分 右手に鉄塔の様な物が・・・ 良く見ると2本あり上が繋がっているワイヤー滑車台だった
10時26分 岩が上り斜面に出て来る デカい切り株
10時57分 山の主 地形図には細尾根は無いのだが・・・これが山歩きの現場だ
三滝嶽 〜 三滝山 (みたきやま) 三等三角点「三滝山」 1,110.67m
11時10分前方に大岩が現われて尾根が右手から合流してくる。岩を避けて右手の尾根筋へ這い上がって合流した左手の尾根へと進
む。ここから赤い境界杭が時々立つ三滝嶽への東側にある肩ピークへと荒れた尾根が続く。次第に岩尾根の様相になり特に左手が切れ
落ちている。
11時25分尾根を進むと4m程の岩崖に突き当り恐々右手の少し低い場所からずり落ちる。シャクナゲの細尾根が続きザックが引っ
かかり中々前に進めない。11時30分又岩崖に行き詰まり、ここも右手に回り込んで下側の尾根に下りる。すると右手が開けて前方
に井野川山、大座礼山、その右手に東光森山〜野地峰〜黒岩山〜大登岐山の県境尾根が並んでいるのが見える。
ピークに向かって岩っぽい荒れた尾根を詰める スマホソフト、ジオグラフィカで現在地を確認すると尾根の合流点付近だった
11時10分尾根合流部が大きな岩になっているので右手に迂回する 尾根の大岩を交して左手へ上がって行く ツララが残っている
岩尾根になると樹木が減って少し見通しが出て来る 東光森山から野地峰方面 左手がスッパリ切れ落ちている
11時20分 第一岩場に行き詰る 灌木を手掛かりに降下 するとシャクナゲの岩尾根になる
うへ〜〜 灌木藪にザックを引っ掛けられながら進む 11時30分 第二岩場に行き詰る 右手から灌木を利用して下りる
大座礼山への尾根筋が見える 大田尾越の向こうは西赤石〜前赤石付近か? 手前右手には東光森山からの予土県境尾根
白滝の里方面 野地峰〜黒岩山から大登岐山へと続く予土県境尾根
滝→ダキ→嶽→岩峰 ?
11時35分前方に尖ったピークが見える。恐らくこれが三つの岩尾根の真ん中にある三滝嶽だろう。三滝嶽の由来は山腹に小金滝と
いう有名な滝などがあるところから名付けられたのだろう言う人がいる。しかし、小金滝は相当西側に離れた場所にあるし、すぐ南側
斜面は切り立った崖である。古来修験者の間では厳しい岩山を滝とよぶ風習があり、下から眺めると見事な岩山ピークが三峰並んでい
る。私見としては三滝嶽の由来はこの三つの岩山から来ている様に思える。
そんな事を考えながら10分程歩いていると、又岩崖で行き詰まりこれも右手から下の尾根筋に下りる。ここが東ピーク(第一ピーク)
の西端肩部で吉野川に架かる三ッ石橋が眼下に眺める展望所となっていた。稜線から眺める景色的にはここが一番三滝嶽の呼び名に相
応しい場所だった。
今までザックを藪に引っ掻けられながら尾根を無理に進んで来たのでここで谷から吹き上がってくる涼しい風を受ける。あれ?下ろした
たザックの天袋の間からコンビニのレジ袋が飛び出して風に揺れている。な〜ぬ〜? 慌てて天袋を留めてあるにハーネスを外すと・
・・挟んでいた弁当が無い、無い? やっぱり無い・・・
「母さん、僕のあのおにぎり弁当どうしたでしょうね? ええ今朝 自宅から大田尾越へゆく途中、コンビニで買ったから揚げと卵焼き
が入ったあのおにぎり弁当ですよ 母さん」 ふと森村誠一の「人間の証明」のテーマが頭に浮かんだ。人間の証明では失くしたもの
は帽子だったが、弁当を藪に喰われて「ドジ人間の証明」をしてしまったのだった。
前方に三滝嶽(真ん中ピーク)が見える 11時37分 第三岩場に行き詰る これまた灌木を利用して降下
おっ 吉野川に架かる「三ッ石橋」が見えるぞ (スマホ写真) ありゃ〜 コルに向かって又崖やがね
第一ピークの端から「三滝嶽」を赤松越しに眺める 尾根筋は樹木に覆われているのが少し期待外れかな?
赤松越しに前方のピークを眺めながら岩の傾斜を下る。今度は前方に千枚板の様な節理を持った白っぽい大岩が現われて右手を迂回し
てコル部に下りる。そこから荒れた急傾斜の灌木ヤブを這い上がって行くとピーク近くになって涸れたスズタケが現れた。辺りにはと
ても植林したとも思えない様な荒れた杉か檜の幼木も雑木に混ざって乱立している。
12時10分三峰の真ん中ピーク付近に到着するが、どこにも「三滝嶽」の厳かさは無い、どちらかと言えば汚いヤブのピークである。
この(恐らく)三滝嶽ピークの西端に出ると尾根が右手に曲がっているので前面が開けている。何とそこから石鎚山が見えるではないか!
ひょっとすると修験者の山「三滝嶽」は石鎚遥拝所の意味合いがある場所だったのかも知れない。
正面には三峰目の三角点「三滝山」が三角に尖って見えている。しばらく失くしたおにぎりの事を未練がましく惜しみながら石鎚を眺
めた後、右手の尾根を下る。シャクナゲの群落を回り込んで、今度は尾根の途中から左手へ直角に曲がって三滝山へと方向を変える。
岩尾根の右斜面には手入れがされていない植林が続く。
直ぐに大岩にぶつかり右手を巻いてコル部に下りる コルからの上りは灌木の藪で小さめの植林も混在する
スズタケは枯れて汚い尾根だ 山頂付近の岩っぽい尾根
12時15分 三滝嶽の山頂付近に到達 特に標識などは見当たらなかった(見失ったのかも知れない)
三滝嶽の西端に出ると次の三角点峰「三滝山」が現れる 奥に左から手箱山、筒上山、後方中央に石鎚山が見える その右手前は伊予富士付近か?
確かに雪を抱いた石鎚山だ
12時37分突然尾根の樹に「登山口」の標識が現れる。でも付近は踏み跡も無いし、東側に延びる林道は三滝山を越えた向こう側の
尾根を下る筈だし、全く意味がわからん標識だった。又枯れたスズタケが現われ尾根の風景を汚す。岩とそれに張り付いてクネクネと
根を伸ばす木々のおどろおどろしい生命力を感じさせる尾根だ。荒れた植林が現れると12時55分やっと三等三角点「三滝山」に着
いた。付近は雑木に覆われ展望が無く長居の必要もない場所だった。
尾根が右側に曲がっているのでそれに沿って下る シャクナゲ藪が現れるので右手からやり過ごし、下側で左側へトラバースする
シャクナゲ藪を左手に回り込む ここがポイントだ 尾根をうまく繋ぐと岩が出て来る
12時37分 登山口の標識が現れる 右手から這い上がるルートがあるのか? 岩の上をクネクネ這いまわる木の根
スズタケ、灌木、植林の複合尾根じゃん あっけなく三角点「三滝山」に到着
12時55分 三等三角点「三滝山」(みたきやま)に到着する 吉野川から見上げた厳しさは無い
三滝山〜井野川山 3時間
三滝山を過ぎると標高差も余り無い、主に右手に植林帯で足元には枯れたスズタケの単調な尾根が続く。
道が尾根と平行に走っているのだが地図には載っていない。この林道は石ころだらけでとても普通の車では走れそうにも思えない。暫
くして尾根は左に張り出したピークに向かって上っていく。すると今まで枯れていたスズタケが元気な笹ヤブに変る。笹薮に倒木が重
なってヘキ癖しながらピークへ向かうと次第に岩山の様相に変って笹が減る。
植林と枯れたスズタケの尾根となる 13時25分尾根のすぐ右手を林道が並走する
直ぐに尾根が左上へ上がって行く ヤメテ〜 いやよ 嫌々 こんな藪
お〜 こんな場所で右手に野地峰、黒岩山辺りが見えるじゃん で・・・正面を見つめると うげ〜〜
13時33分 岩が現れて藪が薄くなり助かる〜〜 で・・・ 今度は結構な植林地帯に
林道と4度交差する
ピークを過ぎると密生した植林帯となり藪は薄くなって歩きやすくなる。13時52分右下に先ほどの林道が続いているのが見える。
すると又深い笹薮が出現してウンザリする。
3分程林道を歩くと前方に尾根筋が現われて林道が尾根から右手に外れて行く。左手上方には井野川山への南端ピークが見え、そこか
ら北に尾根が方向を変える場所だ。
近くに林道があると尾根に取り付く人は先ず居なくなり荒れているのが香川県境歩きで経験済みだ。やはりスズタケと灌木ヤブの尾根
を10分程格闘すると又林道が尾根を横切る。この林道は尾根の直ぐ傍を平行に走っているので尾根の高さを見ながら少しだけ林道を
歩く。次第に尾根が高くなって行くので斜面に取り付いて尾根に復帰する。やはりここもアセビが花を付けている灌木ヤブだった。
15時00分又林道が尾根を交差してガッカリする。この山域は勿論山歩きのフィールドではなく作業林道はブルで押して造り易い場
所を選んで高みを目指すので文句は言えない。
3分程林道を歩くが尾根との高度差が少し出て来たので又尾根へ復帰する。要するに歩く林道が再び尾根を横切るかどうか保証はない
のだ。灌木ヤブを進むと15時10分4度目の林道との出合いとなる。
13時42分 植林地帯となる 植林の中には大岩(おおいわ)も多いわ
13時52分右手に先ほどの林道が再び現れる 14時00分 おえっ 又 元気な笹薮が現れた
笹が枯れている場所も結構多い 鹿の仕業か? 急な上り斜面を進む
14時33分 最初の林道に交差する 左手に井野川山らしきピークが見える
14時40分 林道と別れて左手の尾根に入る スズタケと灌木のコラボ藪尾根を進む
14時48分 2回目の林道交差部に出る 意地で灌木尾根へ這い上がって苦労する
灌木尾根に癖癖(へきへき)しながら進む 15時00風 やっぱ又 3回目の林道と交差したよ〜
林道は結構尾根に沿って続いている 15時05分 尾根と微妙な間隔なので又尾根に這い上がる
う〜〜ん ムーチョ 歩きにくいじょ でも尾根歩きに来たんじょ 15時10分 ほら やっぱり! 林道と4度目の交差した
井野川山 三等三角点「井川山」1,342.00m
尾根沿いの林道を3分程歩くと15時13分、車を回す為の広場になっておりここで林道の最終点となった。あ〜〜やっと林道の呪縛
から解放された。先に続く笹ヤブ尾根を眺めて嬉しい様な悲しい様な気持ちになる。
分程すると足元が良くなり境界割出作業のお蔭か歩くにつれて尾根道が現れる。
15時25分赤ペンキで塗られた石標がありそこからは俄然歩き易い縮林尾根となる。勿論ここも右手が植林、左手が自然林のパター
ンだ。15時35分正面に岩が現れてどうしようか?と思いながら近づくとロープが置かれて左側から這い上がる様になっていた。そ
こから少し上り坂を歩くと赤ペンキで塗られた境界石標があり、境界割出の赤いテープも見られた。
ミズナラの大木が残る植林尾根を進むと15時50分三角点にまで赤ペンキが塗られた井野川山にやっと到着した。山頂は少し広めだ
が見通しはあまりない。ここの標高は1,342mだから高野の登山口から標高差1,000mを丁度8時間かけて登って来た事にな
る。あ〜〜しんど 久しぶりに休憩をする。
昼食のおにぎり弁当を落としたので孫のおやつ「とんがりコーン」を小袋から手の平に落としてまとめて口に放り込む。むせて3分の1
程が口から飛んで行った。縦走で大事なのは「水」で、今回は3リッター持ってきた。いつも縦走時は節約しながらチビチビ飲んでいる
のだが、今回はゴクゴクと飲んでとんがりコーンの粉砕粉を流し込む。
尾根沿いの林道をしばらく進む 15時13分林道の最終広場に着く ここが井野川山の登山口(?)
林道終点部から藪尾根に入る 灌木藪と笹薮 こりゃどうならい?
林道終点から10分程で境界割り出し作業で歩きやすくなる 境界割り出し作業をすると境界標石も赤いペンキが塗られている
チチ山・笹ヶ峰 沓掛・黒森山 左が自然林、右が植林のパターン
正面に岩壁が現れ、ロープで左側から上の段に這い上がる ミズナラの大木が残されている
そこそこ美しい尾根風景 正面には大座礼山へ向かって尾根が高まっていく
まあ時々は岩が出てアクセントとなる 井野川山手前になると又平和な尾根になる
15時50分 井野川山に到着する 三等三角点「井川山」 標高差は登山口、高野から約1,000m 所要時間は8時間だった
あ〜〜しんど ちょっと寝ころんで休憩する 16時05分 井野川山からはビバーク地を探しながら歩く事にする
16時05分左上に続く大座礼山へと出発するが、ビバークする場所も気になる所だ。地図を見ると三角点峰「大川山」の手前からは
東側の尾根筋より破線が合流して続くので快適な尾根道がありビバーク場所には苦労は無いだろうと勝手に予想する。
井野川山からの下りは笹薮ではあるが笹の背丈が低くて獣道もあり快適に下る。10分程下ってコル部に来ると大きなヌタ場があった。
こんな場所でビバークは御免こうむる。
井野川山からは境界割り出し作業がされていないが笹の丈が低いので歩きやすい下りとなる
16時12分 デカいヌタ場があった 植林地帯の左端に沿って歩く
コースをミスして30分のロス
カシミールソフトを使用したGPSトラックログ図 井野川山を過ぎた付近のミスコース図
井野川山を下ってから植林帯の左端に沿って尾根道が続く。この場所は尾根がクランク状にくねっており通常の尾根縦走のやり方通り
にピークからピークを繋いで歩く。16時15分左手に飛び出た1,340mピーク@に向かう。前方にデカくて黒い影が見えるので
近づくとツガの大木が倒れて根っこが土や石を抱えたまま転がっていたのだった。
ピーク@から獣道に沿って北の方角に少し尾根を下るが、前方に見える尾根の高みに到底繋がるとは思えない。地図を出して現在地を
確認すると進行方向の北側は谷になっており、どうも歩く場所が西側にズレていた様だ。こんな場合はトラバースせずに元に引き返す
に限る。16時25分下った尾根を登り返してピークに出てそこから北側に延びる尾根を下るが、更に右手の高い場所に植林の尾根が
見える。再び軌道修正して16時45分元のターニングポイントに帰る。結論は左手のピーク@に進んではいけなかった様だ。
左手にピークがあるのでそれに向かって進む 黒い塊が見えるので近づくとツガの大木が倒れた根元だった
ピーク@にはツガの樹が沢山倒れている 獣道に沿ってピーク@を北に下る
リョウブ属「噛んだろか木」 どうもヘンだ 正面の尾根へ向かって下り過ぎる様だ
地図を出して地形を確認 う〜〜ん もっと手前から北方向やった 植林地帯まで戻って北へ進む
少しコル部に平地があったがここにもヌタ場がありビバークはパス 少し藪いているが植林帯の左端に沿って高みへと進む
尾根の繋ぎ場所でビバーク地を見つける
ピーク@へ進み余計に次の尾根を繋ぐ作業がややこしくなった。ピーク@の付け根まで引き返し右手にある植林帯に沿って薄い尾根筋根を次のピー
クAがある尾根の壁に向かって上がる。コル部に一ヶ所比較的平らな場所があったが近くにヌタ場があったので先に進む。
分稜線部に這い上がるとギリギリモノフレームシェルターを張れるスペースがあった。少し先を調べるがずっとスズタケのヤブである。
最終的にこの場所で野営する事に決める。
翌日、この野営地より先に良い場所があったら残念なので気を付けて歩くが結局井野川越までず〜っと笹薮で野営地のスペースが無か
った。万事塞翁が馬! ミスコースに依って最良のビバーク地を得る結果となった。
17時00分次のピークAに這い上がると僅かなスペースがあった シェルターを張る為に小石や木の枝を除いてなるべく平らにする
ビバーク論 テント泊やフォーカスト・ビバークのススメ
ビバークと言えば不測の事態や行動予定が大幅に狂って山で一夜を過ごす事が一般的な定義である。これは Forced Bivouac (強いられ
た野営・予期せぬ野営)(フォースド・ビバーク)と言われる物で行動計画の失敗による停滞でマイナスなイメージとなる。ちょっと
した道迷いなどで夕暮れとなり不安にかられて遭難救助要請がされたりする場合が四国でも時々新聞などで目にする。
私がお勧めするのは Forecast Bivouac ( 予測された野営) フォーカスト・ビバークというもので、あらかじめどこかで野営する事を
決めてそれの準備をしておくスタイルである。個人的にはIntentional Bivouac (意図的なビバーク)と言った方が良いと思うのだが・・・
その為にはまず山小屋に隣接する正規の野営場でテント泊の経験が必要である。この経験が近くに山小屋や指定野営場、水場がない四
国の山で活きてくる。
非自立式モノフレームシェルター
モンベルのモノフレームシェルターは元々現在廃盤になったダブルウォールのモノフレームシェルター・ダイヤという物をエマージェ
ンシー仕様としてシングルウォールにし軽量化したものだ。形は何と言うかミノムシを横にした様なもので日本人には違和感がある。
元々外国ではテラノバ社のレーサーとかヒルバーグ社のアクトとか結構馴染みが深い形らしい。
モンベルのドームシェルターIIは同じくシングルウォールだがポールを2本交差させて自立するが、このモノフレームシェルターは
両端をペグダウン(固定)しなければならない非自立式だ。しかしながら樹木の多い四国の山では強度的に問題は無く設営もツェルト
に比べて相当簡単な上に中央部を斜めに通したポールのテンションで内部も結構広く保つ事が出来る。欠点は頭部や足部が絞られてい
るので多少窮屈感は否めない。
元々「野宿よりは快適」をモットーとしているので軽さや設営の簡単さを求めると色んな不便には目をつぶらなければならないのだ。
お昼の弁当を落としたので夕食は豪華に(?)お湯を沸かして野菜チャンポンを作る。結構ハードな歩きをしたがあんまりお腹が空か
ない。コーヒーを入れようとしたが案の定コッフェルをひっくり返してお湯が足らなくなったのでペットボトルのお茶で我慢する。
要所は締まっておけば後は地を出して大ざっぱで良い。そんな生活を68年続けて来た。
藪山の為に夕焼けの爽快さは無いが、夜になってシェルターのジッパーを開けると木々の間から半月が明るく輝き星が瞬く。贅沢な時
間とかロマンチックな感傷とかそんな大袈裟で繊細な心根はみじんも無いが何となく生きている喜びを実感する。
準備体操も整理運動も筋肉マッサージもせずにいつも通り眼圧降下目薬を差して朝からの長い歩きの記憶を辿りながら眠りにつく
先ず、菱形の前後をペグダウンし固定する。次に入り口に入りポールを1本斜めに通して立ち上げる
ビバーク用品=ポール1本、シェルター、ペグ数本、シート2枚 ポールを入り口付近に立ち上げると居住空間が出来上がる
エアーマット、シュラフ、ザックをシェルターの中に先ず放り込む シェルター内を整理した後、お湯を沸かす
ちょっと早すぎたビバーク地決定だったが、場所の見定めも藪歩きでは重要なポイントとなる
ビバーク地の南端から眺める井野川山 明日進むべき三角点「大川」から大座礼山への尾根筋
夕暮れ時はどこに居ても淋しいものだ 入り口のジッパーを開けてお月さんを眺める
第二日目
ビバーク地(井野川山北ピーク)〜三角点「大川」〜井野川越〜大座礼山〜県境尾根〜大田尾越
(約 6時間)
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 2日目
ビバーク地〜三角点「大川」〜井野川越 藪尾根歩き 約3時間20分
06時20分ボケ〜〜とした頭で昨日ルートミス後に這い上がった尾根を振り返ると朝日が東の山から昇って来る。ちょっとはマシ
なご来光ポイントは無いものかと尾根の東端まで出るが灌木ヤブで景色が開けない。今日の日程は楽なので野営地に戻ってゆっくり
とした気分で片付けにかかる。幸いにもモノフレームシェルターは風の為か結露もなく乾いたままだ。これが夜露で濡れていると始
末が悪い。タオルで拭いても嵩が増えて収納袋に収まらないのだ。
ペーコちゃんのザックは野営用としては少し小さいが僅かとは言え水や食料が減ったので収まりが良い。
所に忘れ物やゴミが落ちていないかチェックの後06時50分出発する。
2日目は距離的にも短いのでゆっくりと起きて準備する 06時20分 山際から太陽が昇る
井野川山にご挨拶 06時50分 立つ鳥跡を濁さず
右手の植林帯から差し込む朝日を浴びた尾根は枯れたスズタケに覆い尽くされ歩き易いものの美しさの微塵も無い。所が地図上に記
された1,384mPに上がるにつれて次第に笹が元気な色になって来る。(ヤメテ〜〜)
07時15分一旦ザックを置いてスティックパンを一本ザックから出して朝食代わりに齧る。フロントポケットのメッシュが藪で破
れパート型になっている。ペーコちゃんからのプレゼントかな? ザックメーカーでは軽量化や収納の便利さからポケットをメッシ
ュ生地にする事が多い。お蔭で藪から帰る度に敗れたメッシュを補修しなくちゃならない。
突然ピ〜と言う甲高い金属音を立ててシカが近くから逃げて行った。この辺りから又枯れた笹薮が続き茶色の世界に変わる。背の高
いブナの樹が立っているが林床が枯れたスズタケだと美しさを感じない。
06時50分出発するとすぐ藪歩きになる この辺りはやはり基本右手に植林帯が続く
上り傾斜になる ストックは藪でダブルに使えない あちゃ〜〜 フロントポケットに穴が空いとる!ハート型やからええか
07時22分 地図の1384P辺りだけが少し藪が薄かった すぐに又藪景色に変わる
まあ空は青いんだけど藪の景色は茶色い
足元はこんな風だから上を向いて歩けないわ 07時45分 この辺りから地図の破線道となる筈だんだけどなあ
大川山 四等三角点「大川」 1,500.43m
07時45分地図を見ると右手から破線道が尾根に合流しているのだが、背丈の倍もある様な猛烈なスズタケのヤブで道らしき物は
見当たらない。標高が上がると所々に雪が残っているので気温は低くマダニの存在に関しては安心感がある。
を見せる山は随分霞んでいる。08時10分藪の向こうにピークが見えるので三角点ピークが近づいた様だ。
れた笹薮が交互に現われる。灌木の枝が笹に横倒しになりムーチョ歩きにくい。
08時40分ヤブ尾根のピークが近づいて来たのでGPSと地図を出して位置を確認する。う〜〜ん 三角点は直ぐ近くだが藪が深
すぎて見つかるか不安になる。少し進んで地図を正置(磁石の北に地図の磁北線を合わせて方角通りに地図を置く)させると三角点
は少し北側にある。藪を北側に進むと08時50分尾根の左端に三角点を発見してホッとする。
もうここまで来れば井野川越はすぐ近くだ。残った水でうがいをした後、減塩カッパえびせんの袋から手の平に出して一気に口に放
り込む。やはりむせ込んだ。 暇なんだから一本づつ食べればいいものを・・・せっかちな自分の性格が時々嫌になる。
獣道(けものみち)がある所はそれを利用する 東光森山が霞んでいる
藪尾根の典型 リョウブなどの灌木と笹薮のコラボ おっ 雪が残っているぞ
笹が枯れたり元気になったりを繰り返す 左手下方を振り返るが遠くはボ〜〜と霞んでいる
藪尾根にブナが現れるだけで有り難い
緑は目に優しいが体にはキツい〜〜 08時25分 徐々に上り傾斜になってくる
ストックを仕舞いたいが必ず落とすので2本を片手に握る 08時42分 う〜〜ん 三角点は近いにかわらん
こんな藪で見つかるんだろうか? 08時50分 三角点が有った〜〜 見つけた〜〜
08時50分 藪の中に四等三角点「大川」を踏む ふむふむ 何故か嬉しい
三角点「大川」から前方、大座礼山への眺め 三角点「大川」から後方を振り返るの図
三角点「大川」からは一旦少しコルまで下がって次の1,511mピークへ上がった後は井野川越まで一気に下る事になる。相変わ
らず笹藪は深く雪が現われてるが、もう少しでこの藪ともケリが付くのであまり苦にならない。少しで試練が終わる事が分かってい
れば人間多少の我慢が出来る物で、その試練さえも楽しむ事が出来そうである。
09時25分境界標石が立つ1、511mピークに着く。ここが小座礼山とか隣の三角点大川とセットにしてこの山塊を大座礼山に
対して小座礼山と呼ばれているらしい。
足元の雪を踏みながら進む 尾根にはツガの倒木が多い 根っこが弱いのだろう
ストックとは笹薮を掻き分ける道具である 09時25分 1511mピークに到着 補点?って刻んでいるのかな?
井野川越
10分程ピークからヤブ尾根を下ると結構デカい八方ブナがあった。これはヤブ尾根からの最後のプレゼントだろうか。ブナ付近から
前方には大座礼山のデカい山塊がデンと構えている。そこから15分程下ると平らな地形になり井野川越を外さない様に少し意識的に
右手に回り込む。井野川越が近づいた安心感で倒木を乗り越えた際に太ももの筋肉が攣った。まだ少し大座礼山への上りが残っている
ので平地に脚を投げ出してツムラの漢方薬68番「芍薬甘草湯」(しゃくやくかんぞうとう)を飲む。
10年以上前はマーシーさんのスピードに付いて行けず良く太ももを攣らせて苦しい思いをしていた。その頃はこんな薬の存在を知ら
なかったので地面にひれ伏して痛みが治まるのを待っていたものだ。
薬には目が無いいザイフリボクさんが伊予の鈍亀さんやマーシーさんにしきりにこのツムラの68番を勧めているのだが、最近は太も
もが攣った経験がなく3年程薬袋に眠っていた。確かに黒戸尾根〜早川尾根で伊予の鈍亀さん、大山冬山縦走ではマーシーさんが使っ
てその効力は実証済みだ。漢方薬なのに即効性があるのが不思議な気がするのだが・・・
5分程休憩した後に少し右側へ軌道修正して10時10分井野川越に到着しここでやっと藪から解放された。井野川は大座礼山の南側、
高知県の吉野川に向かって流れ込む谷川の名前で、昔は大川村からこの峠を経由して大田尾越に出て別子山村とを繋いでいた物流の道
だったのだろうか。
10分程休憩して、さて大座礼山を目指そうか〜 もうブッシュでも何でもかかって来い〜 あと少しで藪ともお別れじゃ
こじゃんと立派なブナにかわらん 黒岩山にある八方ブナの親戚かいな
正面に立ちはだかる大座礼山の山塊を目指す 足元の雪に滑りながらドンドン藪を下って行く
少し地形が緩やかになり井野川越が近いぞ 10時00分 おえっ 倒木を乗り越える時に太ももが急に攣った 休憩〜
ちょっと右手が少し高い尾根筋だったので小高い場所を経由する 10時10分 前方に笹薮が無い井野川越に出た
10時10分 藪歩きからやっと解放される「井野川越」にとうちゃこ〜 ここ数年抱いて来た三滝山から井野川山の縦走がやっと叶った
井野川越〜大座礼山〜県境尾根〜大田尾越
藪の無い井野川越に出た嬉しさに平たい岩の上に寝転んで、石鎚〜剣山縦走時にここを下った思い出を懐かしむ。今下って来た正面の
井野川山への尾根は以前から何時見ても藪っぽい印象だったが実際も大藪だった。10時20分最後の締め括り、大座礼山を目指す。
ここは何があっても出発点は吉野川(高野)、終点は大座礼山の山頂であらねばならないのだ。それが私の美学?こだわり?意地?と
言うものだ。疲れた体にムチ打ってトボトボと美学を遂行する。雪がチラホラ残った広い登山道を進むと10時40分懐かしいブナに
出会う。いまは既に枯れているが目をつぶれば緑の葉っぱに覆われていた15年前の姿が蘇る。それは私が山歩きを始めて最初に対面
したブナ、根っこに土をばら撒いたブナなのだ。ブナ街道を歩くが季節がらか他の樹も水分が足りず干からびている様に見える。
13時20分 少し雪の残った登山道を歩く 10時38分右手にロープが張られたブナ街道に差し掛かる
大座礼山の象徴だった大ブナが枯れていた その他のブナも心なしか元気そうでない
追憶 15年前まだ元気だった頃の大ブナ
大座礼山 二等三角点「大座礼」 1,587.6m
左手の上池跡(空池)に水の様なものが光って見えたので覗きに行くが、近寄ってみると樹の陰で雪が太陽に照らされていただけだっ
た。登山道に引き返して生き残っているブナを眺めながら苔生した東斜面の岩壁を最後のジグザグ上りにとりかかる。
空池方面に水があるかも知れないと寄って見る 近づくと雪と日陰で水は無かった
登山道へ引き返す この山こはミズナラも多い 左手に大座礼山が見える
10時52分 登山道のブナ街道に帰る
笹薮が広く刈り払われた登山道を大座礼山へと進む 東斜面は苔むした岩場のジグザグルートとなる
東斜面を左手から尾根筋へ回り込み北へ少し歩くと11時15分、標高350mの吉野川から這い上がった南東尾根の頂点「大座礼山」
1,587.6mに着いた。
て近くの東光森山やその向こうに二ッ岳が霞んでみえる。
でも残念な事にはこれまで辿ってきた井野川山〜南東尾根方角は背の高い樹林に遮られて全く見えない。長〜い尾根を詰めてその頂点
に立ち来し方を眺めやるのが縦走の醍醐味なのだが・・・大座礼山のけちんぼ!
やはり寒かったのか岩場にはツララが残っている 尾根筋に上がって北へ少し歩く
11時15分 今回の山行最終目的地 大座礼山に到着する 二等三角点「大座礼」
帽子を藪に取られて暑いわ〜〜 井野川山方面はモミの樹などで見えないよ
東側は開けて二ツ岳が見える 県境尾根の東光森山
大座礼山の山頂は予土県境から南側、高知県に位置しているので県境分岐まで北東部へ向かう。山頂から北西に少し下ると2年前にビ
バークした広い登山道を通過する。この辺りの笹も枯れてはいるが背丈は2m程あり登山道がなければ厄介なヤブだろう。元気そうな
ブナを眺めながら県境分岐へと進む。左手には平家平〜冠山〜チチ山〜笹ヶ峰〜沓掛・黒森が霞んで見える。
11時53分県境尾根分岐の標識に出合う。ここから右手に県境尾根を大田尾越まで下るのだ。やはり北斜面に位置しているので雪が
結構残っている。雪で滑らない様に気を付けながら下り切ると12時00分後ろから声がかかった。え? 人間? 久しぶりやなあ
聞くと西条の広川さんと言われる方ではるちゃんの名前を出すと笠松山でお会いして知っていると言う。「何で今頃ここへ?」と聞く
と「生きてる内にブナに会いたくて見に来ました」「え?まだ若いでしょ 今御歳はいくつ?」「48歳です」「それじゃまだまだ大
丈夫でしょう」「いえ ブナが生きている内にと・・・」ってな問答がはるちゃん繋がりで親しみを覚えた広川さんと交わされる。
この県境尾根にも結構立派なブナがあり「一緒に写真撮りましょう」という広川さんの要望に応えてミニ三脚で写真に納まる。こちら
は吉野川から藪尾根を歩いて来たと言うと「藪はイヤです」ときっぱり言われた。
三角点から尾根を北西へと進む 軽快に歩ける こちらにも中くらいのブナが多い
11時43分 ブナゲートを通過 平家平、冠山〜チチ山、笹ヶ峰〜沓掛山、黒森山が霞む
むむっ 同類本家イノシシが歩いているぞ 下りの岩場にはシャクナゲが、 クルリンパ・シャクナゲ
11時50分 県境尾根分岐に着く ここから右手の大田尾越に向かって下る
結構斜面に雪が残って滑る〜 県境尾根は昔に比べて歩きやすくなっていた
今治の広川さんとブナの前でシェー写真を撮る
井野川山方面を振り返る あそこを歩いてきたんだなあ ピークは三滝山か? 尾根の二股ポイントにある境界標石
急傾斜には太目のロープが敷設されたり以前よりは歩き易い感じがした。広川さんと山の話をしながら歩いていると12時50分大田
尾越に下り付く。ここで彼と別れて車に縦走装備を放り込み登山靴を脱ぐ。
急傾斜にはロープも敷設されていた 歩きやすくなった県境尾根
12時50分 大田尾越の県道6号線に着いた 昨日の朝、ここで自転車を下して高野まで下ったのだった
旅はまだ終わらな〜い♪ 県道6号線を標高1,113mの大田尾越から標高350mの高知県側、高野まで下って自転車の回収作業
が残っている。大北川沿いに車を走らせながら大座礼山の南東尾根を見上げるがのんびりと平和な植林地帯の尾根にしか見えない。
13時45分小松川橋を渡って地主神社の下に置いた自転車を回収する。時間が未だ早いので三滝嶽から見下ろした三ッ石橋に行って
逆に橋から三滝嶽を見上げると厳しそうな岩峰が三つ並んでいる。滝はやはり岩峰の事だろうと勝手に確信する。ついでに吉野川の対
岸を走って三角点「高野」を見た後、懐かしい大川橋を渡り返して帰途に付く。
能谷山〜東門山〜西門山〜稲叢山へと続く尾根 13時45分 高野、地主神社下に置いた自転車を回収する
三滝嶽付近から見えた三ッ石橋を渡って見る 奥は能谷山か? 三ッ石橋から眺める三滝山
吉野川の対岸から見た小松川橋と取り付きの三角点「高野」ピーク 大座礼山南東尾根 三滝山の出っ張りが見える
稲叢山東方見聞録で歩いた能谷山〜東門山〜西門山の吉野川を挟んだ大座礼山・南東尾根を歩けた満足感に浸りながら新居浜に帰る。
山歩きには色んなジャンルがありそれぞれの個性が楽しいものだ。地図を広げて尾根の筋を眺めていると多少困難でもそこを歩いて
みたいと思う事が有るのではないだろうか? そこには美しい風景は期待出来ないけれども山歩きの基本がある様な気がする。
井野川山界隈のHP山行記は
むらくもさんの 井野川山〜井野川越は ここ 2012年10月3日 (GPSログ有り)
江崎隊の三滝山〜井野川越は ここ 2017年8月14日(GPSログ 有り)
バリーさんの三滝山〜井野川山は ここ 2016年12月23日