平成30年3月3日
冬の大山尾根縦走

ルート
大山寺公営P〜夏山登山道〜弥山〜剣ヶ峰〜天狗ヶ峰〜ユートピア小屋〜宝珠尾根〜下宝珠越〜大神山神社〜大山寺公営P


カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図 弥山〜剣ヶ峰〜天狗ヶ峰〜ユートピア避難小屋〜宝珠尾根ルート

プロローグ

山容の気高さにおいては四国の石鎚か鳥取の大山(だいせん)は中四国の双璧だと思っている。冬の石鎚は地元の土地勘があり
色んなルートで歩いているのだが、冬の大山になると夏山登山道から弥山のルートしか歩いていない。特に危険だとされている
弥山〜剣ヶ峰は是非歩いてみたいと常々考えていた。


以前無雪期にユートピア小屋から剣ヶ峰へ上り弥山を眺めて引き返した。弥山〜剣ヶ峰間の山肌が脆くて地震などによる崩壊が
あって基本的には登山禁止区間となっている。但し、冬の積雪期には細尾根の幅が広がり比較的ルートが安定する。それも我々
シロウトには雪が緩まない3月初旬がリミットだ。


単独では不安なので最近又山歩きに目覚めたマーシーさんを誘って縦走する事にした。伊予の鈍亀さんもラクダの背まで行って
指をくわえて引き返していたと聞いていたので縦走を誘うとザイフリボクさんも加わって取り敢えず5人で行く事になった。


一応、私とマーシーさんはメインで縦走し、後の3人は現場で判断し無理と思ったら弥山で引き返すと言う事にした。ヘルメッ
トとピッケルは3人共持っているのでマーシーさんに3人分のハーネスと30mロープ、カラビナを準備して貰う。


いよいよ大山へ

平成30年3月3日04時30分新居浜の山根公園で待ち合わせて川之江インターで05時にマーシーさんを拾う。米子自動車
道には雪が無く道路の周りにも雪が見えない。溝口ICで下りて大山に向かうと道路端に雪が積まれており、この位置が伯耆富
士の名に相応しい秀麗なシルエットとなる。「逆光やから帰りに写真を撮ろやあ」ってその時は明るい内にここを引き返せると
全員信じていた。



帰りに写真を撮ろうと言ってた西側、高速インター溝口方面からの伯耆大山 (昨年冬の大山登山帰りがけに撮影)

夏山登山口に近い「南光原駐車場」は満車の看板が出ていたが、大山橋を渡り公営駐車場を見ると割と空いていたのでホッとす
る。入口付近が雪で分かりにくく一周して07時30分頃入り直す。


駐車場の係員に千円を払うと「先に行った車の横に付けて下さい」と指示される。一番奥に停まったシルバーの車の横に止める
と何やら前座席が騒がしい。何とその車はグランパが運転していたのだった。


グランマー啓子さんは新居浜の同級生で尚且つHP仲間でありお互い良き理解者だ。多少山歩きのジャンルは違い山で直接会う
機会は少ないものの何かと励まし合いながらここまで続けてきた。私の野暮な山だけ歩きとは違いグランパ達はちゃんと勝山の
雛祭りも念頭に入れた文化的要素も忘れていない。


マーシーさんの持って来た30mザイルはいかにも重そうなので今回はハーネスだけを人数分持って行って貰い、ビレイ用は私
の使い慣れた7mmx17mロープとスリングを3本結びあわせたお助け紐を持って行く事にした。

駐車場から見上げる大山の稜線は朝日を浴びて白く輝いている。いい山日和だ。

  
あれ〜〜 駐車場でグランパとグランマー啓子さんに会う        駐車場から見上げる大山


 元谷から見上げる大山夏道コース(右へ上がる尾根)と大山縦走路 う〜〜ん あの稜線を歩くのか〜


第一幕)大山夏道登山口〜弥山避難小屋   約3時間

07時40分駐車場を出発して入り口まで来ると一台の車が入ってきて「エントツ山さん?」と声がする。何と運転席の女性が
現在松山から岡山に帰られた「りをん」さんで助手席から声をかけてきたのは松山の「弁天山」さんだった。


弁天山さんとは冬に大永山トンネル口から笹ヶ峰へペーコちゃん、マーシーさんと行った時に会いその後我が掲示板愛好者とな
ってくれて沢歩きをメインに毎週の様に投稿を頂く事になっている。りをんさんが松山勤務時代に知り合い山友となり四国の山
を一緒に歩かれていた様だが、彼女が岡山に帰った後も時々スケジュールが合えば四国の山や渓流に来られたレポを頂いていた。

後続の車に急かされて十分話も出来なかったが、まあその内登山道で会うだろう。例によって女性陣が登山指導センターのトイ
レに寄って手間取り夏道登山道に到着し08時10分全員アイゼンを装着して出発となる。


  
大山寺橋を渡って右側に大山夏道登山口がある            08時10分 登山口でアイゼンを装着して出発〜

大山夏道登山道は大山寺から延びる尾根の一つ西側の尾根を「常行谷」に沿って5合目まで上がりやがて合流した一つの尾根上
を弥山の西肩まで登って行く。その名に反して冬場にも安全で歩き易く関西屈指の人気の冬山となっている。案の定、冬の
夏道
登山ルートはいつもの如く沢山の登山者により雪道は踏み固められており快適だ。グランマー啓子さん達はアイゼンを付けずに
先に進んでいる。ブナの間に続く雪道の斜面は美しい。


    
 朝日が正面から差して森を明るくさせる お地蔵さんにご挨拶   08時50分大山二合目を通過    

08時50分二合目付近でアイゼンを付けない弁天山さんと「りをん」さんが追い付いて来たので挨拶を交わす。弁天山さんの
掲示板投稿でお馴染みの「りをん」さんとは考えてみると初対面だった。生「りをん」と生エントツ山が握手を交わした後二人
は先に進む。私のペースは皆さんよりスローな様だ。


  
りをんさんとマーシーさん、私は初対面 真ん中が弁天山さん     「先に行ってアイゼン付けてますから〜」

15分程歩くと先の傾斜が急になる場所で今度はアイゼンを装着する弁天山さんを追い越す。ウサギとカメとの競争みたいだ。
09時35分五合目標識を過ぎる。この辺りは大山寺、大神山神社から元谷を経由する行者道と合流する場所だ。ここに昔遥拝
所があり東から昇る朝日に向かって安全祈願した場所と伝えられている。現在は大山ガイドクラブによって山ノ神の祠が再建さ
れて右手に鎮座している。
すると今度はラビットグランマー啓子さんとグランパがアイゼンを付けており3グループ9人がここで揃い記念写真を撮る。


  
あれ? 直ぐに追いついたわ 行動的なりをんさんとシブい弁天山ファッション   中々の急登ですぞ 汗ばむほど暖かい

 
    09時35分五合目に到着  この辺りはかつて遥拝所があったらしい       右手に「山ノ神」の祠がある


  伊予の鈍亀さん、グランパ・グランマー啓子さん、弁天山さん、りをんさん  もうこんな集合写真を撮れる機会はないだろう

この辺りから登山道は大山寺から延びる東側の尾根と交流して来るので、元谷や向かいの宝珠尾根、更にその向こうに甲ヶ山が
見える様になる。今まで何度か冬にここを歩いたが尾根の向こうに見える山の名が甲ヶ山(かぶとがせん)と知ったのは昨秋に
そこを縦走したからだった。


暫くして樹林帯を抜けると視界が開けて急傾斜が眼前に迫り、これが冬山大山登山の醍醐味だろう。大山の北側は単純な様で実
に多くの行者谷、別山沢、弥山沢などの谷部や山襞が入り乱れている。この時期の谷筋はソフトクリームの様な白い雪で覆われ
ており、その中に樹林帯の帯が影を落として美しい


 
明るく気持ちが良い夏道登山道                      宝珠尾根の向こうに三鈷峰、その又向こうに甲ヶ山(かぶとがせん)

  
グランマー啓子さんはシングルストック、弁天山さんはダブルストック  振り返ると弓ヶ浜が霞む


          奥に甲ヶ山             デカい三鈷峰とユートピア尾根  手前に宝珠尾根と元谷に至る沢筋

10時00分頃六合目避難小屋に着くと大勢の人が休憩している。この辺りから眺める元谷や逆光に輝く主稜線は格別で登山者
を満足感にさせるに十分な冬山景色となる。登って来た尾根を振り返ると麓の豪円山スキー場の辺りに雪が沢山見えるものの日
本海に向かって続く扇状地にはあまり雪は見られない。烏ヶ山を丸くした様な孝霊山(こうれいさん)の左奥には弓ヶ浜が見事
な曲線海岸となって見える。


大山から日本海を眺めるときにいつも目にするこの孝霊山(751.4m)は別名「瓦山」「韓山」(からやま)と呼ばれ昔、
朝鮮・高麗の人々が大山と背の高さを比べる為にはるばる高麗から運んで来て、高さで負けた為にそこに置いて帰ったという昔
話が残っている。山の背比べは日本各地に残る民話のパターンだ。


  
 大山の稜線部と北斜面を眺めながら歩く                6合目避難小屋がもうすぐだ


          大山の北側裾野を振り返る  弓ヶ浜の湾曲と烏が羽根を広げた様な「孝霊山」    

  
10時00分 6合目避難小屋に到着                      同級生(グランマー啓子さん)と上級生(亀吉)

今まで急だった傾斜もこの辺りは多少緩やかになり楽で気持ちが良い。以前はスノボーを担いだ登山者が多かったが今日は何故
かスキーを担いだ人が目立つ。
10時40分最後の急斜面を登り切ると後は雪原歩きとなる。樹木はほとんど無いので四国の様
な見事な霧氷は見られないが、雪から少し顔を出すダイセンキャラボクや小木にはエビの尻尾が太陽に輝いている。


  
弥山の西肩に向かって雪原を登山者の列が蟻のように続く     この辺りは比較的緩斜面で気持ちよく歩ける

  
グランマー啓子さんと下の方にマーシーさん、グランパが見える    随分上ってきたわねえ  ええ景色じゃわ


              弥山が次第に近づく  沢山の登山者が見える


       大山はこの高度感がたまらない  「歩けないかも〜〜」って言ってた女性達も黙々と歩いているぞ

  
      犬の方が元気かな                          元谷を眼下に眺める


  奥:甲ヶ山   ちょっと奥: 三鈷峰               手前: 別山               剣ヶ峰

  
   最後の急登を頑張る我が隊                        マーシーさんもゼイゼイ言いながら登ってくる


                    下山時に歩く宝珠尾根

  
   弥山平原にやっと上がる                         ダイセンキャラボクも霧氷が融けたり凍ったりしている

山頂の避難小屋が近づくと長い髪を風になびかせたkurenaikai さんがニコニコ顔で現れた。この滝フリークのkurenaikai さんは独
特の雰囲気・美学を持つ個性的な人で通常こんな繊細な人なら私の様なガサツなHPが嫌いな筈と相場が決まっている。それが
何で私の掲示板を知ったのか弁天山さん同様によく投稿を頂けるようになった。去年石鎚ご来光の滝で会い一緒に愛大小屋まで
歩いたので親しみがあった。聞くと下で弁天山さんに会って私が来ている事を聞き引き返して来たのだった。登山者が多いので
途中ですれ違ったのだがお互い気が付かなかったのだろう。

ここ大山でエントツ山掲示板投稿でお馴染みの元気者二人と一緒に記念写真を撮る事が出来た。


           マーシーさん りをんさん 弁天山さん kurenaikai さん     わざわざ引き返してくれてありがとう!


                      唯一まともな霧氷を逃さない

山の掲示板論

掲示板投稿者というのは気まぐれな存在で当然の事だが自分が気まぐれに歩いた山行の紹介をしてくれる。山に限らず掲示板と
言うものはごく少数の気まぐれな投稿者に頼っていては閑古鳥が鳴いて情報量も少なくて成り立たない。管理者があの手この手
を使って気まぐれな投稿者を多く寄せ集める事で話題性や情報力を高める良い掲示板運営が成り立つ。


従って掲示板管理者は己の情報発信力も常に意識しながら、寄せられる投稿に対して時間をかけてその頂いた貴重な情報を膨ら
ませていく努力も必要となる。


幸いにして私の掲示板はここ大山で会った人達も含めて質の良い気まぐれ投稿者に恵まれている。そしてこの気まぐれな投稿者
に見放されない様に自身の山歩きや寄せられる投稿への対応努力も怠る事が出来ない訳だ。
つまり掲示板管理者と投稿者による
ギブ・アンド・テイクの関係が今流行のWIN・WINと言われるもので、投稿によって管理者自身も勉強し知識が増えて成長
させてくれる有り難い存在なのだ。 でも結構忙しいのも事実なんよね。


話題を大山に戻そう、

11時00分山頂山小屋に着き行動食休憩に入るとなんと「きぬちゃん」が居た。即「やまちゃんは?」と聞くと近くに完全無
欠の山男がスクッと現れた。やっぱ君たちも遠い松山からやってきたんだねえ。きぬちゃんとは冬の石鎚弥山山頂神社の陰で風
を避けている時に声を掛けられて横に居るやまちゃんとも初対面して以来の山仲間だ。やまちゃんは本格的な山男で常に重たい
装備を担いで訓練を怠らないストイックな男だ。手袋も例のテムレスのゴム手袋だ。でも世の御多分に漏れずきぬちゃんには頭
が上がらす優しい配慮でアシストしている姿は本人の意識とは別にしても美しい。


さて、大山に行こうと誘った伊予の鈍亀、亀美さんとザイフリボクさんはトレーニング不足で腰や足が痛くて「山頂まで行けな
いかも〜〜」「途中で二人で引き返すかも〜〜」「山頂まで行けても縦走は無理かも〜〜」ってかもかもトークでか弱さをしき
りにアピールしていた。


こちらはその言葉を真に受けて車のキーを持っているかとか引き返すのはグランマー啓子さんがいるから安心だとか考えていた。
ところが何なく弥山までやって来るとさっそくマーシーさんからハーネスを借りて装着しているではないか?「あんた達行くの?」
「勿論です!」 登山前のあの弱音は一体何だったのだ? 

 

    11時頃 弥山避難小屋に到着〜 (写真は弁天山さん提供)


     お〜〜  やっぱり「やま・きぬコンビ」も来てたか


第二幕)弥山〜剣ヶ峰〜天狗ヶ峰〜象ヶ鼻〜ユートピア避難小屋 約2時間

弥山   三等三角点「大山」 1,709.36m

弥山避難小屋の裏手に小高い展望所がある。三角点ピークまで行けない人はここから南側の岩壁や剣ヶ峰の尾根筋を眺める事が
出来る。


冬の三角点峰の場所は狭くて剣ヶ峰をバックに記念写真を撮る登山者でごった返す。その為避難小屋奥のやや広いピークから少
し進んだ尾根まで出て縦走装備に切り替える。と言ってもヘルメットを被り、ストックを仕舞いピッケルを出す。私はブラック
ダイヤモンドの簡易ハーネスを愛用しているのだが、結構紐が細くてこんがらがり裏か表か前か後ろか、何処に脚を入れるのや
らと装着に四苦八苦する。

この頼りない縦走グループを心配する様に山仲間が集まって来る。一応「私に何かあったら四国の山掲示板は君たちに託す」と
か何とかパフォーマンス握手を交わした後に
11時40分仲間に見送られて出発する。


        さて いよいよ剣ヶ峰へ向かって縦走すべえ

  
   りをんさんとはここでお別れ〜          ヘルメットやハーネスが似合わないエントツ山


   弁天山さんも混ざっての大山尾根縦走壮行式写真  何だか頼り無い登山隊だ


  11時40分 縦走装備に切り替えていよいよ縦走開始する為に弥山三角点へと向かう


最初からロープでアンザイレンは大げさなのでバラバラに三角点ピークまで歩く。
そこから急な傾斜を下ると比較的平らな場所
があり、その弥山からは死角になる緩傾斜でアンザイレンをする。
ロープのトップが私でその後ろがザイフリボクさんでロープ
の最後がマーシーさんが固める。その後ろに伊予の鈍亀・亀美さんと亀吉さんがスリング3本を繋いだ紐で繋がるって体制を取
る。 (少し意思疎通に難があって多少全員のアンザイレンが遅れたが・・・)

我々のパーティはシロウトなので後に繋げたロープがちゃんと後続がテンションをかけてくれるとも限らないので緩んだロープ
を踏まない様に気をつけながらゆっくり
と歩かなければならない。すべて自己責任の世界である。

弥山(1,709m)から剣ヶ峰(1,729m)まで水平距離800mを標高差約20mの上りとなる。この間にはラクダの
背と呼ばれる左右が切れ落ちた細尾根が待ち受けており、狭い場所では両足で幅一杯と言う目をつむりたい様な怖い所もある。

又、厳しい尾根部を少し左手に巻く場所でも足元の雪が崩れると元谷まで下山してしまう。ピッケルの杖部をなるべく深く斜面
に突き刺しながら一歩一歩進む。



   三角点から少し下がった場所でアンザイレンを行う  見た目1時間程で剣ヶ峰まで行けそうだ

  
         剣ヶ峰へと進む                         三角点からは暫く下りになる

  
   7mmのロープ ここの縦走はこれ位でいいか            うん 振り返るとみんな付いて来てるわい

  
振り返りざまにシャッターを押す  あれ?マーシーさんと鈍亀さんが繋がってない  11時50分 ここからほぼ上り傾斜となる

  
         弥山を振り返る                             北側の元谷、登山口方面を眺める


    ラクダのコブを二つ越えていかなければならない 前方の岩がむき出しになっている辺りがヤバそう

  
  最初の大きいラクダのコブへ向かう                    この北斜面も落ちたくはない傾斜じゃのうし

  
      さて前方の露出したザレ場が近づいてきた         12時00分 弥山と剣ヶ峰の中間点、中ノ沢コルを通過


中ノ沢コルからの上り細尾根の途中で一ヶ所雪が無く脆くて嫌な細尾根へ足跡が付いているのでそこを進んで抜けようとすると
「エントツ山さ〜ん 左手にトラバースしたトレースがありま〜す」と後ろから声がかかる。 え〜〜 有り難い話だが又脆い
場所をへっぴり腰でクリアすると伊予の鈍亀隊が先にトラバース路に進んでいる。


あれ? 伊予の鈍亀さん達がマーシーさんと繋がっていない。そこをクリアした先で慌てて5人が運命共同体となる。そこから
私がトップに立って剣ヶ峰を目指す。先に数人が尾根に見えて、その内の2人が引き返して来た。雪庇側に避けて二人を交わす
が少々気持ちが悪い。弥山から剣ヶ峰へ行きピストンで引き返す登山者も結構居る様だ。


  
        気を抜けない細尾根が続く                              ちょっとヤバい場所なんだけど〜〜?


  難所をクリアして前から来る二人組を交わして弥山を振り返る  三角点ピークや弥山小屋ピークには沢山の登山者が見える


                剣ヶ峰へとなだらかな上り傾斜が続く

  
  中ノ沢の正面から元谷を眺める                     北に迫り出した雪庇を避けて少しトラバース気味に歩く

  
弥山〜剣ヶ峰尾根は地図で少し南側に湾曲しているのを現地で体感する  孝霊山の烏が羽根を少し広げた形と弓ヶ浜が霞んで見える


剣ヶ峰 標高 1,729m  (大山の最高峰)

剣ヶ峰直下まで来ると尾根の幅が少し広くなり緊張感から解放される。剣ヶ峰の西側肩部まで上がり景色をゆっくりと楽しむ。
北の日本海側には孝霊山が両側に翼を持った烏の様に扇状地に立ち、その向こうに弓ヶ浜の綺麗なカーブが見える。雪庇が張り
出しているのであまり北側に寄らない様に剣ヶ峰へ向かう。

南側の眼下には一ノ沢、二ノ沢、三ノ沢が白く線を刻んでカーブしている。一ノ沢は大江川、二ノ沢は白水川、三ノ沢は小江尾
川となり扇状地を潤し、やがて三本の沢は日野川となって日本海に注ぐ。ここに来ないと三つの沢揃い踏み姿は見る事が出来な
い。


12時30分剣ヶ峰に到着する。ここには石碑もあるのだが勿論雪の下だ。伊予の鈍亀、亀吉さんはメモ帳を出して時間を記入
している。几帳面な性格のクセに良く「あれ?時間記入するの忘れた あそこ何時だったかいね?」と言うボヤきを聞くがそれ
にマトモに答える仲間は居ない様だ。



   12時30分 剣ヶ峰の山頂部に立つ  帰る元谷方面をピッケルで指さす   無事に帰るぞ〜〜


       三ノ沢            二ノ沢                      一ノ沢 


  12時30分 剣ヶ峰から弥山を振り返る   ここからここから見ると弥山が少し低く見える


天狗ヶ峰  標高 1,711m  槍尾根・ユートピア尾根への分岐

地形図を見ると剣ヶ峰の東肩と言っても良いほど稜線にへばりついている天狗ヶ峰であるが、その間には微妙にコル部が存在す
る為結構尖がっている。
二人組が天狗ヶ峰の北側トラバース部にへばりついているがあまり動いていない。結構怖い思いをして
いる場所なんだろうか。


北側に張り出した雪庇を避けて稜線を少し右側にズラして足跡が伸びている。稜線の右側に回り込むと前方に槍ヶ峰への細尾根
とその向こうに烏ヶ山が見える。
心配していた天狗ヶ峰への北側斜面は思ったより雪質が安定しており慎重に歩けば上りだけに
そんなに危険を感じなかった。
12時50分天狗ヶ峰のピークに立つと前方には三鈷峰へのユートピア尾根、右手には槍ヶ峰へ
の細尾根(槍尾根)の分岐点になっているのがわかる。



 剣ヶ峰の東肩ピークの向こうに今回のラストピークである「天狗ヶ峰」へ向かう

  
天狗ヶ岳ピークには北斜面を這い上がった登山者が見える            剣ヶ峰を振り返る


       コルまで下ると天狗ヶ峰は結構切り立っている   左奥は矢筈ヶ山と甲ヶ山

  
  剣ヶ峰を下って天狗ヶ峰へと向かう                     天狗ヶ峰の急な北斜面を慎重に這い上がる


    弁天山さんがズームしてくれた我ら5人の稜線歩きシーン


    12時45分 天狗ヶ峰から剣ヶ峰を振り返る

夏道で下った経験がある私にとってここから象ヶ鼻への下りが最大の難所だと考えていた。確かに雪が風で吹き飛んだ岩場では
少し緊張したがアンザイレンのお蔭で安心感を持って下る事が出来た。


13時15分宝珠尾根の頭にあたる場所を通過。後ほどgakugaku さんによるとここから冬場だけ宝珠尾根に直接下れるルートが
あるらしい。確かにここから直接宝珠尾根に下る事が出来たら最短距離でもある。しかしながら地形図を見てもおどろおどろし
い岩場マークが並びとても尾根とは言えない場所だし、勿論そちらに向かう足跡も無かった。


危険な場所を下り終わって振子沢の尾根部を歩いていると不自然な大穴が雪の中に続いている。数週間前の大雪頃に歩いた人の
腰まで埋まる苦行の跡だ。
右手の振子沢からスノーボーダーが3人上がって来ている。無雪期にこの振子沢を2度程這い上がっ
て来たが藪の為にルートが限られる。しかし今は沢全体がスキー場のゲレンデの様でどこでも好きな場所をあるいて稜線まで這
い上がって来れる。
彼らに手を上げてエ〜ルを送ると下からも「オ〜〜イ」と手を振ってくれた。こんな事が山では嬉しいもの
だ。



                 天狗ヶ峰から下るルートを眺める


    天狗ヶ峰から南東に延びる「槍尾根」  尾根の先が槍ヶ峰    その奥が烏ヶ山

  
  象ケ鼻への細尾根を下る                         雪が無ければガラガラ岩が崩れるガレ場尾根だ


   天狗ヶ峰からの下りは南面の雪が溶けかかっており不安定な細尾根になっていた

  
  露出した岩にアイゼンを引っ掛けない様に注意して下る         右にも左にも脆い岩が露出している

  
  雪でスッポリ覆われている方が歩き易い場所だった         下った天狗ヶ峰方面を見上げる

  
 少し尾根が広くなって気分が楽になる                     13時15分 宝珠尾根の頭付近を通過

  
 振子沢の源頭尾根付近に入る                          尾根には登山者の胴まで埋まらせた穴が空いていた

  
  右手の振子沢からスノーボーダーが3人上がってくる           烏ヶ山は昨秋歩いて身近な存在になった


前方のピークが地図にある象ヶ鼻ピークで左にユートピア小屋〜三鈷峰へ、 右手には振子山から大休峠〜矢筈ヶ山、甲ヶ山へ


13時30分大山遭難防止協会の「立入禁止」の標識が立っている。確かにこの尾根は無雪期は危険で積雪期でも天候と雪質を
考えた経験者のみに限られた場所だと思う。今日の様に天候と雪に恵まれれば雪山としての難易度は低いのだが不注意や未熟、
悪天候などにより滑落事故も起こっている事も事実なのだ。まあここは槍ヶ岳の北鎌を歩いた二人に免じて許して貰おう。


振子山の稜線とユートピア小屋の稜線が交わる場所あたりが「象ヶ鼻」と呼ばれる1,550mピークみたいだ。夏場この辺り
は岩場になっており藪っぽい登山道に標識が立っている。宝珠尾根側から振子山〜野田ヶ山〜大休峠へのジャンクションピークだ。
ここから少し下って13時45分ユートピア避難小屋に着いた。外に二組4人と小屋の中に一組4〜5人の先行登山者が昼食休
憩をされていた。


風が強くなり寒く、小屋の陰でザックを下ろして昼食の準備をしていると小屋の中に居た人が出発するので「空きましたよ」と
言われたので中に入る。奥に板間の部屋があるがアイゼンを外すのが面倒で入り口の土間に座って食糧を忘れたマーシーさんに
餌を与える。これまでの道すがらマーシーさんが「どこかの山では猿に餌をやらない様にとの看板が掛かっているそうですが、
どうもその猿って山で暮らしている人間らしいです」って話をしていたので「その猿ってマーシーさんのことやんか」と大笑い
になる。


伊予の鈍亀、亀吉さんも私も山歩きの時は殆ど食事を食べないし、亀美さんはいつも気を利かせてシュークリームなどを持って
いる。ザイフリボクさんは大体飴かチーズを登山中に食べているがそれをみんなに振る舞う。従ってマーシーさんはドリップコ
ーヒーは入れて貰うは食糧を持って来ない時の方が豊かな昼食となった様だ。



         象ヶ鼻と思われる岩場からユートピア避難小屋を眺める

  
  13時30分 象ヶ鼻手前で安全地帯に入る              13時45分 ユートピア避難小屋到着


           青空がなくなった大山縦走尾根と北壁を眺める


トホホな第三幕)ユートピア避難小屋〜宝珠尾根〜下宝珠越〜大神山神社〜駐車場 約4時間
                  (宝珠尾根ミスルートによるロス1時間15分を含む)

ユートピア分岐から上宝珠越までのトラバースルート

さて、登山口まで3時間弱と見ていたので14時17分ユートピア避難小屋を出発して17時頃には下山と読んでいた。
(元谷の砂すべりへ下りればもう少し早いかなとも思っていた。)小屋から宝珠尾根を眺めるとその向こうに孝霊山と弓ヶ浜がち
ゃんと見えている。


ユートピア避難小屋から三鈷峰分岐までは夏になると一面のお花畑となりクガイソウ、シモツケソウ、ギボウシ、コオニユリなど
が咲き乱れて蝶が舞う。今はそれが幻のように雪原と化していた。5分程で三鈷峰・宝珠尾根へのトラバース路分岐の大きな標識
に出合う。当然三鈷峰へ行こうと言う者は一人も居なかった。


トラバース路は阿弥陀川〜剣谷の源頭部を上宝珠越へと急斜面を横切って行く。先行者の足跡がほぼ夏道に沿って付いているので
ルート取りの苦労は無かった。でも大量の雪がこの斜面に積もっていれば雪崩などの危険もあり気色の悪い場所だった。


山仲間のgakugakuさんから後ほど天狗ヶ峰より直接宝珠尾根に冬季限定のルートがあり、これを下るとユートピア小屋や雪崩の恐
れがあるトラバース路を通る事なく上宝珠越に至ると教えてもらう。でもこのルートはそこを歩いた経験者の案内無くしてはとて
も下れるような気がしなかった。


トラバース路から時々立ち止まっては衝立の様な大岩壁を眺める。やはり大山は厳しい山だ。小さな山襞を一つ越して14時45
分宝珠尾根に合流する。この辺りは上宝珠越と呼ばれる所でしばらく尾根を下ると先行のガイドと女性が物凄く急な雪面を谷へと
下っていた。一見この急傾斜を下るのは女性2名を含む我々のパーティには危険だと思いパスする。後になって地図で確認すると
どうもこの場所が元谷・砂すべりへの下り口だった様だ。



   14時17分 ユートピア避難小屋を出発  この場所からも孝霊山と弓ヶ浜が綺麗に見える

  
三鈷峰への尾根道は夏場であれば草花」に覆われて狭いのだが・・・  三鈷峰、宝珠尾根分岐(ここからトラバース路に入る)

  
14時20分 トラバース路に入る                      夏場はどおって事無いんだけどなあ

  
 ユートピア避難小屋が遠ざかる                      青空が無いのでモノトーンの景色だ


14時35分一つ小さな尾根筋を乗り越えて宝珠尾根へと進む
左正面のピークから左へ下るのが正しいルートで、尾根をそのまま進むと先で行き詰る(今回のミスルート場所)

  
   宝珠尾根へと斜面を下りながらトラバースする           今日は雪崩の心配はなさそうだった


    14時45分 宝珠尾根に合流 直下に凹んだ上宝珠越から砂滑りへの左斜面へは急すぎて下りずに尾根を進む
    冬場はここからも孝霊山と弓ヶ浜のセットが見えるんや〜


           無雪期の上宝珠越、砂滑りへの降り口はこんな景色だ  これじゃ冬はわからんわ

   
   上宝珠越から急な尾根を下る                      あれ? いつのまにかマーシーさんがトップに出てるわ

  
一旦コルへ下って少し上り返す                        夏道とは一変している宝珠尾根コース

  
  この左手でコースを誤る事になろうとは・・・           三鈷峰の西壁  奥に先ほど出発したユートピア避難小屋が見える


  宝珠尾根を境に雪で白い剣谷源頭部(左)と岩で黒っぽい上宝珠沢側の様相が変わっている この付近がターニングポイントだった


      大山北壁の厳しい姿   上宝珠沢、元谷沢、天狗沢、中ノ沢、滝沢など多くの沢源頭部が刻まれる


痛恨のミスコース 地図を見る基本を怠り1時間強のロス


カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図 大山縦走尾根〜ユートピア避難小屋〜トラバース路〜宝珠尾根ミスルート図

15時15分トレースが正面の尾根と左斜面に別れている場所に出た。一人歩きなら必ず地図を出して見る所だ。ここで我々の
判断は「足跡が多い方に進みましょ」だった。
足跡は断然尾根筋へ進む方が多かったので漫然とこの尾根へ入って行く事になった。

後ほど地形図を見ると割と大きな尾根が真っ直ぐに剣谷へ伸びており、途中で谷に落ちて行く間違い尾根だった。トレースを追っ
て尾根を進んで行くと途中から尾根が次第に細くなって足跡が消えた。左前方を見ると下側に宝珠尾根が見える。この斜面を下れ
ばルートに復帰出来るので直ぐに引き返さずに斜面を下るルートを探す。

灌木ヤブの為にロープがひっかかり中々歩きにくい。こんな場所では知らぬ間にマーシーさんが元気になりトップに踊り出る。先
程から足を攣らしてツムラ漢方薬のお世話になった人間とは思えぬ変わり様だ。


しかしこの斥候イノシシは後続を顧みず己の世界に入り込んでグングン斜面を下る。マーシーさんと私を繋ぐ手綱が引っ張られ、
後続のロープが「ちょっと待って下さい」と私を引っ張る。ややこしい灌木の雪斜面だから中間の私は脚にロープが絡まり悲惨な
状況に陥る。結構マーシーさんを含んだ団体行動には私の板挟み場面が多くなる。


藪っぽい尾根を進み左の崖を避けて右斜面へ下って様子を見る事にする。するとその先が断崖やはり断崖絶壁に近い傾斜になって
いる。ここを下る事が出来れば左に進んで下側の宝珠尾根に復帰出来るのだが・・・
16時00分あと一歩の所で安全優先でこの
尾根を下る事を諦め引き返す事にする。


帰りは元谷に近い斜面側を歩いて緩斜面を探しながら歩くが結局振り出しのターニングポイント近くの下で16時30分トレース
に合流する。
結局このターニングポイントでの地図出し作業を怠たりトレースを辿った為に1時間強の時間ロスとなった。個人的
にはこれも結構面白くて良い経験だった。



   15時15分 ターニングポイントを左に下らず先行者のトレースを追って間違い尾根へと進む

  
左手下に宝珠尾根が先が崖になって下るのは危険          これを下ったら宝珠尾根かいなあ

  
右斜面からの突破をトライするも行き詰り16時00分引き返す    帰りは右斜面から下りれる場所を探しながら移動

  
みなしゃん どうもすんません アンザイレンをして斜面を帰る    16時27分 ターニングポイントの下側に帰りつく

中宝珠越

クランク状になった尾根乗り換え場所から15分程急斜面を下る。夏場は恐らくジグザグに切られた登山道があるのだろうが冬場は
滑落の心配もありそうなのでアンザイレンをしたまま下る。やっと安定した尾根になり気が楽になりながら進むと16時57分
中宝珠越」の標識に出合う。
ここからも左手の元谷へ下りる谷筋道がありそうだったが「崩壊の為危険」という注意標識が見える。
分岐標識には
下宝珠尾根まで0.5kmとあったので今更危険を冒してまでも又急斜面を下る事も無く安全な尾根を進む事にした。

  
藪っぽくなると急に元気になるマーシーさん                正規ルートも冬場は傾斜がムーチョきついぜよ

  
伊予の鈍亀さんも後ろを振り返って写真を撮る余裕が出る     やっと安定した尾根まで下りロープを解除する

  


    16時57分 中宝珠越を通過する  相変わらずの細尾根だ  え? 上りなの?

下宝珠越

ここから急な上りとなるがトレースもあり精神的に楽な雪道歩きとなる。1,242mピークに上がり上宝珠越辺りを振り返る。
う〜〜ん登山って何が起こるかわからんものだから最後まで気を引き締めなアカンぜよ。
ブナ林の間を抜けて行く尾根道を進んで
17時27分やっと「下宝珠越」に着いた。


  
 中宝珠越から1,242m」ピークに向かって急な上りとなる    ピークから大山北壁を振り返る  手前中央の白い線が尾根移りルート


       間違い尾根を進んだ肩部を振り返る やはりこの崖は5人では下れなかった

  
     平和なブナ尾根歩きとなる                  マーシーの独走態勢 やっぱりツムラの漢方薬を飲ますんじゃなかった

  
 17時27分 やっと下宝珠越にとうちゃこ〜               ここからは一気に大神山神社に向かって下るだけ


ここから大神山神社に向かって緩斜面を下って行く。そろそろ左前方の空が茜色に染まるが尻セードをする余裕も出てくる。20分
程下ると「下宝珠登山口」の標識が立っていた。
更にほんの少し下に立派な元谷分岐の標識があり大山寺旅館街1.1kmとある。

17時55分「大神山神社」に到着して無事帰還のお礼参りをする。雪が凍って滑り易い山門を抜けて石畳の道を下る。参道の両脇
に積まれた雪は1m程の高さになっている。美しい夕焼けが見えるので帰りに伯耆富士大山の夕焼け見られなかったのが残念になる。

  
 下宝珠越から谷筋をドンドン下る           寂し気な空の色になる

  
 ここから尻セードで一気にマーシーさんに追いつく    上の元谷分岐標識

  
  下の元谷分岐標識               17時55分 大神山神社に着き安全登山のお礼を申し上げる

足元も雪が無く凍っている場所も少なくなったのでアイゼンを外して落陽の名残りを木立の間に眺めながら歩く。今日は沢山の山仲間
にもの会えたし、漠然と夢にしていた大山の縦走も出来た。そしてやっぱり最後にドラマは起こった。いや〜楽しかった。
18時20分薄暗い駐車場に帰り装備を外し、帰りにサービスエリアにてラーメンで無事を祝う。


  
     大神山神社の山門をくぐる                    今日も朝から夕方まで大山によく遊ばせて頂きました

  
 駐車場に向かって近道を下る この場に及んで近道する〜?  18時20分 カランとした駐車場の奥に伊予の鈍亀カーが待っていた


冬の大山縦走を5人の協力で無事終える事が出来た。今回の山行も我々5人の山人生における良き記憶として残って行く事だろる。

無雪期のユートピア〜天狗ヶ峰〜剣が峰の記録は    ここ   


   
 
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