寒峰台地を歩く

平成27年9月4日〜5日

西祖谷村・一宇〜中津山〜マドの天狗〜寒峰台地〜1556m峰〜寒峰往復〜落合峠


中津山〜マドの天狗〜寒峰台地〜1556m独標〜寒峰〜落合峠 一泊二日の旅


カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図

プロローグ

寒峰台地は以前から泉保さんの著書「イメージをトレースする私の山歩き」の中で「その昔の剣山系メインルートの一つだろう」
という解説があり興味を持っていた。しかし中々ここを歩くルートが悩ましいのでこれまで触手が動かなかった。最近ヘキチョウ
さんから中津山レポを頂き、更にむらくもさんが北側の日比原方面から山風呂・マド・マドの天狗を歩かれたレポがあり俄然中津山
〜マドの天狗〜寒峰台地への興味が湧いてきた。


歩くルートを色々検討したが落合峠まで突き抜けるとなると移動の時間ロスもあり、ここは途中でビバークをして2日で歩く事に
決めた。

移動手段
先ず車で落合峠まで行き車をデポした後、電動アシスト自転車で西祖谷山村・一宇まで移動し、そこから車道・登山道を中津山ま
で歩く事にする。移動時間がチト長いが往年の剣山系アプローチルートを偲ぶには中々のルートだ。

第一部


一宇〜四等三角点「田ノ内」〜一等三角点「中津山」〜三等三角点「谷又」〜旧マド〜マドの天狗(三等三角点「天狗」)

平成27年9月4日高松の自宅を05時出発し、阿波池田経由で西祖谷村・一宇へ行き、まず土地勘の無い中津山の登山口や
自転車の置き場所を確認する。祖谷川の支流「若宮谷川」の右岸に直接尾根に這い上がる場所を探すが、一宇発電所まで全て
崖でここはおとなしく登山道への車道を歩く事に決めて落合峠へ向かう。


08時に落合峠に着き駐車場に車を置き、電動アシスト自転車パナソニックEZで落合まで快適に下るがその後の長い事。途
中で電池が切れないように下りでは電気を切り何とか09時50分頃一宇に到着。


   
   落合峠の駐車場で自転車を下ろす             さあ、中津山への登山口、一宇まで行くぞ〜

  
  落合の国道沿いまでは楽チンの下り       2時間弱かけてやっと一宇の若宮橋を渡った所に自転車をデポする

車道を歩き田ノ内の中津山登山口へ (約1時間半の歩行)

若宮橋を渡り返して電柱に「中津山登山口」のある山道への舗装道路を上がって行く。すぐに四電一宇発電所への送水口
・調整池である若宮谷ダム横を通過、次第に標高を上げて10時15分車道分岐を標識に従って左へ切れ上がって行く。


退屈な植林の中に延びた車道を歩いていると10時50分右手に桜神社があった。そこからほぼ水平な道を奥へ奥へ進む
と11時15分民家の横の杉並木に「中津山登山口」の看板があった。でもそこからも相変わらず車道が続いている


散在する民家に沿って水平道を更に右手に進むと11時25分やっと本来の中津山登山口へ到着した。曲がり角には車を
回すスペースがあり、傍らに白いトタン屋根の最終民家があった。

  
 若宮橋を渡り返して中津山登山口へ          10時00分中津山登山口を歩き出す

  
  若宮ダムを通過                 10時15分 分岐を左へ上がって行く

  
   桜神社を通過                   11時15分 登山口の標識あり

  
  更に水平道を奥へと進む              11時25分 中津山最終登山口に着いた



田ノ内登山口から中津山へ
  (約2時間10分)

四等三角点「田ノ内」 992.67m

平凡な植林の少し荒れ気味な登山道を30分程歩くと稜線部へ合流する。地図を見るとこの近くに三角点があるので、
少し稜線を下がって探すと12時05分四等三角点「田ノ内」を見つける。
元の登山道合流点に帰ると近くに古い鳥居
が朽ちて置かれていた。


ここから稜線に沿って地図には破線があるのだが、どうひいき目に見ても稜線部には踏み跡らしき物は無く、明確な登
山道は右手を巻いて延びているので素直にこれを伝う。このトラバース道は稜線から離れて行くので少し心配だったが
下降しないのでドンドン進む。基本的には植林地帯だが、岩が多くなる場所は自然林が残されている。所々にシモバシ
ラの花が咲いていた。


12時50分平らな地形になると自然林が主体となってきた。この平地を抜けると笹が足元に現れ山道の雰囲気が俄然
出て来る。
13時15分登り坂の左手に石組みの祠があるが屋根が落ちて荒れている。暫くすると右手に下るべき南東
尾根らしき線が見える。


13時30分この南東尾根への踏み跡に着き良く見ると近くに赤テープなどが見られた。念のために近くの木の枝にレ
ジ袋を目印に吊り下げて置き、取り敢えず初めての中津山へ向かう。同じ登山道でも上りと下りとでは随分景色や印象
の違いがあり、往々にして分岐を見失う事があるのだ。一人で歩く時はそれだけ心細く慎重になる。


  
  11時30分中津山登山口に到着                  植林の登山道は少し荒れている

  
  12時00分尾根部へ合流                  尾根を少し引き返すと四等三角点「田ノ内」があった

  
   尾根に古い鳥居が転がっていた                    尾根筋が荒れて踏み跡が無い

  
   登山道は右手をトラバースしていく              トラバース道には岩や自然林も出てくる

  
  自然林かと思えば又植林帯となる                   シモバシラが目に付く

  
  12時50分 フラットな地形となり赤い杭が頼りになる       13時を過ぎると笹が足元に現れる

  
  13時15分 石積みの祠を通過              13時30分南東尾根分岐,右手に赤テープが貼られている

 

中津山 一等三角点「中津山」 1,446.81m

南東尾根分岐から10分程雰囲気が良い尾根を上がりピークに近づくと何やら幾つかの小屋が現れる。建物を左手から
回り込むと休憩ベンチがあるがガスっておりあまり景色は良く見えない。
裏側に回り込むと未舗装車道がここまで延び
ている様だった。弘法大師像の裏側に一等三角点「中津山」があり13時45分これを踏む。


「中津山修験道根本道場」の看板が掛かった本殿の横に広めの「黄金の池」がある。山頂にある池って雰囲気では無く
どこか田舎の団地近くにある池の雰囲気だ。東側が開けており腕山の牧草地が見える。少し休憩の後14時00分次の
目的地、マドの天狗に向かう。


  
    山頂部へ到着                            ここは修験道の道場らしい

  
   黄金の池  どういう事?                  13時45分  一等三角点「中津山」

  
  修験道→真言密教→空海(弘法大師)               色んな神様が祀られているんだろう、


  天気は一応晴れだが水蒸気が多いので霞んでいる   寒峰台地は見えない

  
  寒峰と1556m独標  やはり寒峰台地は見えない                東隣の腕山



中津山南東尾根をマドの天狗まで   約2時間30分

14時に中津山を出発して10分ほどで南東尾根分岐に引き返して目印のレジ袋を回収し左手の踏み跡に入って行く。

最初はススキなどで覆われて踏み跡が不明になりそうな場所もあったが25分程下ると足元に背の低い笹が生えた明確な
尾根に乗って一旦ホッとする。所が10分程でなだらかな雑木林を下る事になり踏み跡や尾根がはっきりしなくなる。
GPSではほぼ尾根ルート沿いに居るので方位磁石の方角を南南東へ合わせてなるべく高い場所を選んで下る。
こんな時
に地籍調査の杭やテープ、境界杭を見つけると安心する。


14時45分左手が植林、右手が自然林の比較的わかり易い尾根に乗ると黄色い境界杭が現れる。10分程で今度は右手
が植林、左が自然林に変わり尾根も非常にはっきりとしてもう旧マド分岐まで大丈夫だろうと確信する。
足元には先ほど
から赤い炎が度々見える。カエンダケと呼ばれる猛毒キノコだ。


  
   14時10分 分岐を左の南東尾根へ進む        ススキ原の踏み跡を辿ると一旦明確な尾根に出る

  
  又 ススキ原に出る  正面は寒峰             14時25分左が植林、右が自然林の尾根になる

  
  14時30分 尾根がわかりにくいので南南東に方角を合わす   高い場所を選んで右へ左へと忙しい

  
  14時45分 左が植林、右が自然林の尾根となる         この老木は唇を持っていた

  
14時55分 今度は右が植林、左が自然林となる      「ベニナギナタタケ」というキノコがやけに多い
                         初めて見たこやつを「カエンタケ」と間違ってリップ姐に正解を教えて貰った

三等三角点「谷又」1,105.73m


15時05分細尾根の上りを歩くとシコクママコナの花に囲まれた三角点「谷又」に出合い5分程休憩する。それから尚
も右手が植林、左手が自然林の細尾根パターンが続く。
15時30分地形がなだらかになると雑木林となり、境界割出し
杭に沿ってかすかな尾根部を進む。時々前方の木々の間からピークが見えるので恐らくマドの天狗だろうと思う。


地図によると旧マドのコル手前に一つピークがあり、その入り口に左右の破線が交差しているのだがそんな道は有る様な
な気配は無かった。


  
  15時05分 シコクママコナに囲まれた三角点「谷又」      ここは新しいタイプの三角点だ

  
   ここも右手が植林、左が自然林のパターンだ            やはりシモバシラが多い

旧マド

ピークを過ぎて下ると15時50分旧マドの平坦なコル部に出た。右手からははっきりとした道がこのコルに延びてきて
いた。左手に(新)マドへ至る破線がある筈なのだがそれらしき踏み跡は発見出来ず。
この旧マドには上側が白いペンキ
で塗られて四角い標識が埋められており、そこには何故か三角点の文字が刻まれている。これって一体何だろう?


ここから自然林のなだらかな尾根をマドの天狗に向けて上っていく。20分程歩くとどうもシカ害に遭った様な平坦で下
草が無い風景に出合う。この辺りにはシモバシラの群生とヤマシャクヤクのヒトデ姿が目に付く。するとここにも旧マド
のコル部にあったのと同じ上が白く塗られ、三角点と刻まれた四角い標柱があった。


夕方が近づいて西陽を浴びた中津山を振り返った後、天狗を目指す。ピークが近づくと俄然岩が多くなり天狗の名を冠せ
られた所以の山だと知る。
雑木林の斜面に差し込む西陽を浴びた小人のキノコが仲良く並んでいる。今年の長雨でキノコ
は大喜びした事だろう。



                   15時50分 旧マド のコルに出た

  
コルを振り返ると西側からしっかりした道が延びて来ている   正式な三角点ではないのに頭に「三角点」と刻まれている

  
  旧マドから南の方向に尾根を辿る                  歩き易い右手の裸地へ廻り込む

  
 むむっ  ヤマヒトデ? 実はヤマシャクヤクの実だ     ここにも頭に三角点と刻まれた標柱があった


    この山域は シモバシラの群生が多い  振り返ると中津山が見える

  
  天狗と言われるだけあって多少は大岩が現れる          長雨でキノコが大繁盛


マドの天狗 三等三角点「天狗」1,245.71m

16時35分周りにそれより高い場所が無くなったピークに「マドの天狗」の三角点があった。倒れていたマドの天狗標
識を立てて記念写真を撮る。平凡なピークでさしたる遠望も望めないが平らなのでビバークは可能だ。
でも時間が中途半
端なのと少し虫がうるさかったので先に進む事にする。


  
  周りに高い場所が無くなりいよいよマドの天狗かな    16時35分  マドの天狗にとうちゃこ〜


 やっと着いたぜ マドの天狗   廻りは樹林帯であまり展望が無い  結構な平凡さだ


第二部  マドの天狗〜寒峰台地〜1556m独標  (累計歩行時間 約4時間30分)


カシミールソフトを使用したGPSトラックログ図  マドの天狗〜寒峰台地〜1556m独標

 いよいよ寒峰台地へ  意外に快適な尾根だった

マドの天狗〜寒峰台地ビバーク地 約1時間20分

「マドの天狗」の東側は山頂からは樹木帯に隠れて見えない。16時46分鬱蒼とした樹林帯に踏み込むと尾根道はしっ
かりしている様で安心する。すぐにテンニンソウの若葉に覆われた尾根に出る。鹿がこのおいしそうな草を食べないって
事は消化酵素が無い種類か毒があるんだろう。この辺りは鹿が食べないテンニンソウとシモバシラが共存して左手には中
津山の三角形が見える。

正面に寒峰が見えるから東に延びるこの寒峰台地も多少ジグザグしているのだろう。マドの天狗を出発して10分程で前
方に寒峰台地が姿を見せる。一面「カヤト」と呼ばれるカヤ原かと思っていたが結構アセビなどの低木に覆われている。


シカの好きそうな低木は皮が食べられて枯れ立っており、裸地・草地はポツンポツンと点在する規模である。もう泉保さ
んが歩いた頃とは風景が様変わりしているのだろう。古い他の山行記にもびっしり生えたカヤに難儀した様な記述もあっ
たが、今はその面影は無い。


17時00分地面が現れ荒れた台地にはシモバシラと枯れたカヤの根元しか残っていない。こんな殺風景な風景の中でザ
クロの様に裂けたヤマシャクヤクの実だけが鮮やかな色をして異彩を放っていた。


相変わらずシダとテンニンソウとアセビ、松の台地を歩くと17時08分二等基準点の石標があった。17時25分少し
植林があるが又荒れた台地が続く。
すると若いカヤの群落が少し現れて何か安心する。ちなみにカヤとススキは大雑把に
言えば同じ様な物らしい。
稜線の左手には一段下がった平地が並行して走っており何か鹿の棲家の雰囲気がする。

  
  マドの天狗から東へ下る 入口は少し樹林帯だ     直ぐにテンニンソウに覆われた尾根となる

  
  シモバシラとテンニンソウが占有草である         正面右手に寒峰(右端)が見える 思ったより木が茂っている

  
  立木で目立つのは馬酔木(あせび)と松        低木は鹿にやられて枯れている 裸地が点々とみられる


    寒峰台地  一面カヤ(ススキ)に覆われた台地かと思いきや意外と低木に覆われている 正面右が寒峰

  
   カヤの根元だけが枯れて残っている           ヤマシャクヤクの実だけが異彩を放つ

  
  裸地〜テンニンソウ〜松などの低木樹林のパターン   17時08分 2級基準点を踏む

  
     歩き易い裸地                      テンニンソウの草地も背丈が低いので歩き易い

  
  17時30分 やっとカヤ(ススキ)が現れる          相変わらず異彩を放つヤマシャクヤク

  
  左手の平地は鹿の領域だと感じさせる      カヤ(ススキ)が現れると何故かホッとする だってここはカヤトだもん


先程からビバーク地の検討をしながら歩いているがどうもシカの水場などがあり地面も湿りがちなので足早に進む。17
時45分頃には背丈の低いカヤが現れ又ビバーク地に悩む。18時になると灌木帯に入り下草が無くなり、出来るだけ地
面が湿っていない場所を選びツェルトを張る事にした。泉保さんの地図ではこの先に道路があるのだが、やはりビバーク
は山の中でしたい。
GPSで確認すると位置的には四方(よつほ)峠の少し手前である。

  
  ビバーク地を探しながら草地を歩く            笹が現れたが先っぽが食べられていた


  やっと1556m独標へのルートが見えた 左端は烏帽子山、正面は1556m独標に続く尾根

 
       18時05分 平たく草が少ない場所をビバーク地と決める


ツェルトでの山中ビバークについて

元来山歩きに快適さは求められないのだがテント泊では尚更な事で、寝心地の良いテントやマット、着替え、食料などを
持ち歩くとザック重量が重くなり昼間の歩きに支障をきたす。ここが山中泊の悩ましいジレンマと言える。かと言って野宿
等はとんでもない事で、折衷案として私は軽いツェルトを多用する様になった。

山の中で一夜を過ごすのは危ないとか怖いとか言う人がいるが、やってみればクマなどがほぼ居ない四国の山はは意外と
安全なのである。遭難の中で一番多いのは道迷いの末に夜になり携帯電話で救助要請するってパターンだ。夜になって焦
って危険な沢や崖で事故を起こす事にもなりかねない。もしツェルトを持っておれば夜が明けて辺りが明るくなってから
行動が出来る。

でもいきなりこんなツェルト泊など出来ないので機会があると山の中で仲間と夜を過ごして欲しいものだ。


グランドシートは
kazashi さんから手に入れたアメリカのデュポン社が開発したタイベックの建材用不織布でこれが軽くて
強いので重宝している。ペグはアルミ製の軽くて手元が輪っかになっている長い物を使いツェルトの四隅を固定してスト
ックを立ち上げ用ポールとして利用する。短いペグは土が柔らかい場所や笹原では刺さらないし、プラスチック製は石で
叩くと割れてしまう。チタン製のは値段が高いし形状が気に入らない。細引きをツェルトの両端に立てたストックからそれ
ぞれ斜めに伸ばしてこれもアルミペグで固定。「自在」という長さを調節する器具も付けているが風も無いのでそのまま
適当にグルグル巻いて括るだけである。


大体ツェルトが立ち上がったらサイドリフターを細引きで引っ張って室内をちょっと広げる。う〜〜ん まずまずの出来
栄えだ。
内部には銀マットを敷いて床面を少し快適に仕上げる。後は空気マットを膨らませてファイントラックのポリゴ
ンネストの中に入って地図に書きいれたメモを整理したりして時間を潰す。山ラジオを付けるがどこも野球中継ばかりな
ので消す。夜遅くになるとシカが近くまで寄って来るので「シャ〜〜」と度々脅かして追っ払いながらいつの間にか寝て
いた。


  
 ツェルト内に銀マットを敷くと快適な雰囲気となる      まあ こんな感じに個室が出来上がる


 

平成27年9月5日

寒峰台地・ビバーク地〜四等三角点「坂瀬」〜1556m峰〜寒峰往復〜三等三角点「落禿」〜落合峠

寒峰台地・ビバーク地〜1556m独標  約3時間

 

05時30分起床して片付け、出発準備をする。睡眠導入剤を忘れたのであまりぐっすりと寝れなかった様な気がする。忘れ物が無いか
点検の後5分程歩くと又左手に窪地の様な平らな場所がありススキなどに覆われていた。泉保さんの記述からするとこの辺りが背丈のあ
るカヤトに覆われた四方峠で道が交差している筈だが良く分からない。右手が檜の植林が現れちょっとした二重山稜となっており左手の
少し高い植林帯へと進む。


06時20分なだらかなヒノキ林のピーク(1166m)に着くと、左手に別な尾根が続く分岐となっているが、ここは真っ直ぐに進む。
暫くすると左手に何か道路の様な物が見えたので確かめると林道が尾根と並行に走っている。ちょっとこの林道が気になり4mほど法面
を滑り下り道路を逆方向に歩いてみるが、先ほどのなだらかなピークへとトラバース気味に伸びているのを確認して引き返す事にした。


  
 06時05分 ビバーク地を西に進む             四方(よっぽ)峠付近  左右の踏み跡は良く分からない

  
植林帯を抜けると右手に檜、左手が自然林の尾根となる 1166m小ピーク は左に尾根がある  ここは真っ直ぐ進む    

  
小ピークから尾根を下る (右手に檜の植林帯)       06時30分左手下に道路が並行に走っている

エントツ山 罠にかかったシカを憐み、自分も罠に掛かる

這い上がり易い獣道の様な斜面を尾根部に上がる時にワイヤーが垂れているのが見えた。06時30分それを確かめる事も
無く尾根部のすぐ左手に続く窪地を進んでいると物音がするので見ると大きな鹿が罠に掛かってもがいているではないか。
悲しい鳴き声と目が同情をそそる。普段鹿の食害で荒れた山の様子を見る度にシカは駆除すべきだとの意見に賛成する立場
だが、いざこんな光景に出くわすとかわいそうになる。と言ってこんな大きな鹿の足に近寄る事は暴れられて大怪我の元で
ある。

気の毒だがそれも不注意な鹿の運命だと納得させて前を向いた瞬間、バシっと言う音がして右足の自由が奪われた。良く見
ると何と靴先にバネ製のワイヤー罠が挟まれているではないか! あちゃ〜 私も鹿罠に掛かっちゃったのね。靴に食い込
んだワイやーを外そうと力いっぱい引っ張るがビクともしない。相当のバネ圧である。


そうや 靴を脱いだら外れるかも・・・と何とか靴から足を抜いて靴をワイヤーから引っ張り出そうとするが全く無理。 
渾身の力で両指でワイヤーを押し広げ何とか靴を脱出させた。


ホッとすると今度はこの罠を元に返さなければ仕掛け人の狩猟権を阻害した事になりはしないかという人間社会の一員とし
ての社会的責任が目覚める。
でも必死でワイヤーを引っ張っても元のセット場所まで戻す事は出来ずに途中で指が外れて又
バシっと来る。もう危ないのでこのままにしてその場を色々複雑な気持ちを残したまま立ち去る


  
  むむっ デカい鹿が罠に掛かっている           同情してると自分も罠に掛かってしまった

  
 靴を脱いでもバネが強くて益々靴に食い込む       調べると「押しバネ式くくり罠」と言うらしい

「押しバネ式くくり罠」   バネを仕掛けた四角い台を草や土で隠しておき、周りに木を置いて障害物を作ってそこを通り抜ける様に誘導する。
この板を鹿や猪やたまにヘマな人間が踏むと、強いバネでワイヤーが両側から飛び出して足に輪っかが締る仕掛けだ。、


気を取り直して縦走を続け林道に出る

06時40分この尾根はすぐ先で先ほどの道路と合流する。5分程この林道を進むと左手に広場があり林道「日和茶坂瀬線」
余市谷工区の現場事務所とされていた。


この広場入口から次の尾根が開始されるのだが、泉保さんが歩いた尾根の右側に沿って続くこの林道を取り敢えず橋まで歩い
てみる事にした。橋まで来るとやはりこの林道は右手にカーブしてUターンしている。橋の袂で左手のルートを確認するが踏
み跡らしき物も見当たらないので又元に帰る。


  
 ほんの暫く林道を歩く                   左手が広場になっており林道拡張工事の現場事務所になっている

   
時間の余裕があるので林道をそのまま橋まであるいて見る  橋から第二小島谷川を眺めるが左手にルートは見られない


1556m独標 西尾根ルート

06時57分先ほどの工事現場広場入り口から素直に尾根に取り付く。いよいよここからは寒峰台地を後にして南側を
第二小島谷川と北側に松尾川支流・坂瀬川右股に挟まれた狭い尾根を1556m峰主稜線へ這い上がるルートとなる。


この尾根は取り付きこそ少し荒れ気味だが次第に歩き易い植林尾根となる。ここにも地中から炎が上がる様なカエンダケ
が見られた。
07時15分と同22分にそれぞれ右手に沢筋に下るしっかりした脇道がある。そこから暫く自然林、その
後右手に植林、左手に自然林の尾根が続く


07時45分シャクナゲ藪の岩尾根となり10分程とても歩きにくい場所となるが、北側が開けており腕山が見える。
08時08分二重尾根となりどちらがメインかわからないので窪地を歩き主尾根へ復帰する。

  
07時少し前、工事事務所の広場から1556m独標尾根が始まる   右手に先ほど歩いた林道が並ぶ

  
   尾根はこの様に歩き易い              左下にも林道(作業道)が見える

  
「ベニナギナタタケ」ですよね カエンタケではありませぬ 07時22分 右手に作業道が分岐する

  
07時30分コル部を振り返る 泉保さんは沢筋から    シャクナゲ尾根から北側を眺めると腕山が見える
ここで尾根に合流した  

  
 歩きにくいシャクナゲ尾根が10分程続く       08時前にシャクナゲ藪を抜ける

  
 08時08分 二重尾根の窪地を進む                   少し荒れ気味の尾根

四等三角点「坂瀬」 1,395.89m

少し荒れ気味の細尾根となりそのピークに08時13分三角点「坂瀬」があった。すぐ横にある切株の上ではヘビ子が胴
体を膨らませ表面積を広げて日向ぼっこをしていたが、そこに記念写真のデジカメをセットしなきゃならないのでどいて
貰う。どうも木の株の根元を棲家としている様だ。ヘビは学者によるととても大人しくて温厚な動物らしいが、アダムが
この動物にそそのかされてリンゴを食って以来どうも大方の人間に忌み嫌われる存在になってしまった。


三角点から5分進んだ所に大岩が裂けた様な場所があった。ここを過ぎた辺りからは笹とブナなどが出現して穏やかな山
のムードが高まる。


  
 08時13分 三角点「坂瀬」 お〜〜い ヘビ子 どいてくれ〜   08時15分 三角点を踏む

  
    四等三角点「坂瀬」はシャクナゲと切株の広場だ でも岩場ほどには展望は望めなかった

  
   三角点を過ぎると直ぐにデカい岩が裂けている場所を通過    裂け岩を抜けると剣山系の風景となる

1,556m独標

09時前になると右手に寒峰と手前ピーク、その縦走路が見える。笹の細尾根を進むと平らな地形となりその辺りの裸地
に三角点もどきの石標がある。ここを過ぎた辺りで寒峰台地方面を振り返るが手前の稜線が邪魔をして中津山とマドの天
狗は確認出来るも寒峰台地はあまり見えない。最後はテンニンソウの群落を少し登ると09時15分1556mピークの
標石に到着縦走路に出た。


  
   結構大きなブナも現れる                      お馴染みブナと笹の風景

  
  地形が平らになって主稜線へと向かう                寒峰(右奥)と主尾根

  
   テンニンソウの群落が多い                      シコクフウロ

  
  最後もテンニンソウの傾斜を1556mピークへ進む          寒峰への主稜線に上がる


 1556mピーク近くから歩いて来た寒峰台地を見下すが、手前の尾根に隠れて全容は見えなかった

  
  09時15分 1556m独標の石標を踏む         独標から一旦主稜線コルへと下がる


第三部 1556m独標から寒峰往復、前烏帽子〜落禿三角点〜落合峠

1556m独標から寒峰を往復  (約 2時間20分)

さて、縦走路に立ち寒峰方面を眺める。地図で見るよりは一旦下って手前の山塊の向こうにあり遠い気がする。寒峰をス
キップして烏帽子山を踏むか・・しかし烏帽子山は北側から吹き上がるガスで姿も見えない。やはりここは寒峰台地関連
で寒峰を踏もうと決める。


1556m独標の外れから気になる寒峰台地を眺めるが良く見えない。独標を下ると09時32分に裸地があり少し眺め
が良い場所だなので期待するが、V字谷状になっており正面に中津山しか見えない。縦走路は踏み跡はあるものの久しく
登山者は歩いていない様で荒れ気味だった。テンニンソウの群生と葉っぱが鹿に食べられて笹尾根が続く。それにしても
テンニンソウが多い山域だ。


09時43分一段尾根が横に2〜3m掘れこんだ場所を通過する。そこから暫く進むとカヤ(ススキ)の群生する尾根に
なる。縦走路を振り返ると1556m独標の向こうに前烏帽子、その遥か向こうに矢筈山が見える。


  
    コル部からは中津山しか見えない                 テンニンソウの群落

  
  笹はやはり先っぽを鹿に食べられている               09時43分 3m程の窪地を通過

  
  09時56分 カヤ(ススキ)が現れる         振り返ると裸地のコルと1556m独標、その向こうに矢筈山

10時13分植林の多い細長い山塊を抜けるとススキの向こうに寒峰が姿を見せる。東側から見るとこの寒峰も細長いピ
ークである。
10時15分「奥の井」分岐を通過。ここは寒峰をぐるりと周回する時の下山口で何度も来た懐かしい場所
だ。この向こうの窪地に隠れた深い穴があるのだが藪で見えず落ちない様に注意して歩く。笹の中にはオトメシャジンや
シコクフウロが咲いている。


気持ちの良いススキ原を登ると寒峰の手前に北側に張り出したピークがあり寒峰台地が見えないか確かめる為に寄って見
る。足元にはウメバチソウ、シコクフウロ、コウゾリナなどが咲いている。この見晴らしピークから北側を眺めるとガス
で霞んではいたが中津山、マドの天狗、寒峰台地を見る事が出来た。今まで冬場に寒峰に来ても南側の剣山系主稜線だけ
を眺めていたが、今後は北側の風景も懐かしく楽しめる事だろう。


  
ススキの向こうに寒峰が現れる  左は寒峰・西峰  「奥の井」への尾根下山分岐

  
     ウメバチソウ                     シコクフウロ


  寒峰東の見晴らしピークから中津山、マドの天狗、寒峰台地を眺める  ちょっと霞がかかってハッキリ見えない

やはり山は一度そこを歩くと、その場所を眺めた時に一味違う風景になる。

二等三角点「寒峰」1,604.76m

10時33分福寿草の季節に何度も訪れた寒峰三角点を踏む。寒峰の目玉はそこから眺める南側の剣山系主稜線の山並み
なのだが残念ながらガスって良く見えない。北側は樹林帯に阻まれてこれも又良く見えない。どういう訳かここだけ虫が
とても多くてネットを被って退散する。

この時期に寒峰台地から寒峰〜落合峠の稜線部を歩くとススキ(カヤ)とテンニンソウが実に多い事が分かる。山は四季
を通じて歩けば色んな姿を見る事が出来る。11時10分窪地を乗り越えて藪っぽい尾根を引き返しす。裸地のコル部を
過ぎて1556m独標に上り返す。

  
  ススキ原を寒峰へ向かう               10時33分 寒峰三角点を踏む

  
   西を眺めると寒峰・西峰           北側は中津山と左にマドの天狗 寒峰台地も霞んで見える


     ススキの向こうに佇む寒峰 来年の春までさらばじゃ

  
 ベアグランド・コルから1556m独標を見上げる   11時35分 1556m峰まで帰り着く


1556m独標〜前烏帽子〜落禿三角点〜落合峠へ  (約 2時間50分)

11時35分1556m独標まで帰り最後の休憩を少し取る。今回も食糧が沢山余ってしまった。何かあればいけないと
思いついつい多めに持ってきてしまう。特にパン類や飴の類はほとんど残ってしまう。今回は水場が無いのでペットボト
ルは多めに必要だった。

以前四国百名山の烏帽子山へは落合峠から前烏帽子まで稜線を歩いたが、前烏帽子から寒峰までの縦走路は今回初めて歩
く事になった。標高は南隣の剣山系主稜線より低いだけ想像していたより樹林帯が多く、登山道は荒れていた。所々に
ある裸地はススキが生えている。しかしこれだけススキ原が多いって事はすぐ北側の寒峰台地へ風や動物に引っ付いて種
が運ばれたんだろう。


  
  前烏帽子までにピークがある                樹林帯のピークを越すとススキ原の尾根となる

前烏帽子

前烏帽子へ向かって登る縦走路は風が強いのか樹林帯が無くなりススキと笹原が続き眺めが良い。丁度石鎚山系の堂ヶ森
へ登っている様な感じがする。


12時50分前烏帽子に到着。ここにも三角点もどきの石標があり後で国土地理院の基準点検索サービスで確認して三角
点ではない事を知る。
標識にはここから寒峰まで3km、落合峠まで2kmとある。あと2kmだ〜〜〜烏帽子山までは
1kmだが夕方までに新居浜へ帰らなければならずスキップする。


落合峠方面を眺めるが手前に結構高いピークが一つあり山での2kmは結構遠い。

笹とススキの前烏帽子斜面を下りるとモミの木が増える樹林帯となる。この辺りのモミには枯れて倒壊寸前の物があり幹
に「キケン注意」のテープが巻かれている。
落合峠手前の山塊は結構縦長くて次から次へピークが現れる

   
  前烏帽子への稜線から寒峰を振り返る                 もう少しで前烏帽子や〜〜

  
   12時50分 前烏帽子に到着                バンザ〜〜イ  後は落合峠まで2kmや


   あれ?  落合峠まで大きなピークがあるぞ 山の2kmは意外と遠い


三等三角点「落禿」(おちはげ) 1,683.24m

最終手前のピークは少し尖っていて鎖が設置されて。岩場にはアサマリンドウが咲いている。テンニンソウの生えるなだ
らかな傾斜を上り切ると13時53分落禿の三角点があった。さあ あとはススキに覆われた斜面を峠まで下るだけだ。


落合峠には数台の車が止まっている。おそらく皆さん人気の矢筈山方面へ行かれているのだろう。この頃になると烏帽子
山を覆っていたガスは飛んで姿を見せる。
オトギリソウやリンドウの咲く笹原登山道はこの辺りまでは登山者が多いと見
えて掘れこんで赤土が笹の下に隠れて滑りやすい。


手前の窪地が池になった所を過ぎると14時20分落合峠へ到着した。峠には徳島から来られた団体登山者が大型バンに
荷物を積んで帰り支度をされており、近くにはオートバイで来た二人組がいた。


  
 こちらの笹は結構元気そうだ                  13時15分 モミの木林を抜ける

  
  倒れそうな木にはキケンのテープが多く巻かれている    あれ? まだ2つもピークあるじゃん 奥が落禿やな

  
     鎖は要らんやろ  居るかな?                アサマリンドウ

  
  ここは徹頭徹尾テンニンソウやな           13時55分 ここでやっと最後のピーク「落禿」や


   さあ ラストステージのススキ原を落合峠へ向かう  奥は矢筈山
  
  
   もうわき目も振らずに落合峠へ                 でもリンドウの鮮やかな青は気になりますわ

  
  へ〜 落合峠の直ぐ傍に池があったんや〜             アキノキリンソウ

  
 矢筈山へ行かれてた徳島グループの方が居た      14時20分落合峠に着いてデポしていたラッシュに帰る

   
落合峠から自転車の回収に一宇へ向かう

駐車場へ帰り自転車の回収に向かう。途中で道端に滝があったので車を止めて体を洗い着替えをする。車で走っても一宇
まではそこそこ遠かった。
15時45分一宇の自転車デポ地へ着き無事回収して新居浜へお袋専属料理人として向かう。

  
道路脇にあった滝で体を洗い服を着替えてサッパリする  15時45分一宇で自転車を回収し、今回の縦走を完結させる


中津山から寒峰台地を経て落合峠へ至る往年の剣山系アプローチルート。そんなに苦労をする事も無く無事歩けて良かった。
この歩きに動機付けを与えてくれた泉保さんやむらくもさんに感謝





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