平成平成27年2月20日〜21日
伊予富士から西へ 冬の石鎚展望所 自念子の頭でテント泊
冬の石鎚山系テント泊 自念子(じねんご)の頭
平成27年2月20日 自念子の頭にてテント泊 :モンベルドームシェルターII
この10年間気ままな山歩きを続けている間に色々山道具も増えたので次の課題は退職後に備えてそれをいかに活用していく
かと言う事になる。その中にはテント泊装備も中央の山へ行った関係でそこそこ揃って来た。
そこで、四国の冬山であれば一泊位だと比較的簡単に実行出来るという確認に出かける事にした。場所は土地勘がある伊予富士
の西側、自念子の頭付近と決める。冬にテント泊するには当然防寒対策が重要になってくるが、この為に去年ダウンパンツと
ダウンソックスをモンベルで購入しており、その現場使用検証山行となる。
要は頭で考えたのと実際に使うのではギャップがある。そのギャップを埋めるには経験をドンドン積んでいくしかないと言う
事だ。
平成27年2月20日: 旧寒風山登山口〜桑瀬峠〜伊予富士〜東黒森〜自念子の頭 (テント泊)
翌2月21日:自念子の頭〜西黒森・東ピーク〜自念子の頭〜東黒森〜瓶ヶ森林道〜(尾根越え)〜瓶ヶ森林道〜登山口
この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである
カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図を加工
旧寒風山トンネル登山口〜桑瀬峠〜伊予富士 : 約 4時間
比較的天気が安定した2月20日早朝に伊予富士登山口である旧寒風山トンネル口へ行く。
も準備をして重たいザックを背負い桑瀬峠へ向かった。朝からガスがかかり数日前に降った雪道を1時間10分をかけて桑瀬峠
へ到着する。霧氷が沢山樹に着いているが曇り空なのでイマイチ爽快な景色にはならないのが残念だ。
さあ^ 行くぞ〜 旧寒風山トンネル口駐車場 むむっ 結構新雪が積もっているぞ
桑瀬峠からガスで寒風山が見えない 伊予富士へ向かうと次第に霧が晴れる
桑瀬峠からトレースの無い雪尾根を歩くが、鷹ノ巣尾根分岐尾根手前のトレース部以外は比較的雪が締っており歩き易かった。
トレース部では翌日帰りの事もあるのでザックを背負ったまま念入りに斜面の雪を蹴り込み深めのトレースを付けたがお蔭で
腰が痛くなった。
11時10分鷹ノ巣分岐に出る頃には青空が現れ伊予富士のジャバラ姿がくっきりと見える。尾根稜線は北側から風が吹き上
がって来るので雪庇が発達して美しく雪山ならではの芸術だ。11時50分伊予富士基部に近づくと更に霧氷の衣が厚くなり
一層美しい。霧氷越しの伊予富士や寒風山を見るのが冬の楽しみでもある。
西黒森も冠山に似て裾野を持って雄大である いつも気を遣う鷹ノ巣尾根へのトラバース斜面
ブナが朝陽に輝く
この方向から眺める冠山がかっこいい
夏道より樹林帯に近いルートで滑落を予防する 帰りの事を考えてしっかりとトレースを付ける
さすがにザックが重いので伊予富士への急斜面で息が上がる。ここもトレースを付けながらゆっくりと高度を上げる。伊予富
士の山頂直下には藪岩尾根を左側に巻いて少し滑落の恐れがある急斜面がある。その手前に来ると後続の単独登山者が追いつ
いて来て声をかけてくる。冬場はサングラスや防寒服に包まれているので知り合いかどうか良く分からない。
「誰〜?」と大声を上げると「ペーコです」と答える。え〜〜ここでペーコちゃんに会うか?
てホッとする。伊予富士山頂で正月石鎚以来の再会者を迎える。ザックを見ながら「車があったのでひょっとしてこちら(伊
予富士)かなと思ってましたがどこまで行くの?」と言うので「適当に西へ行ける所まで行ってビバーク場所を探します」と
答える。
しばらくするともう一人、高知から和田さんと言う単独登山者がやって来られたので山談義をしながら高知の山並みについて
教えて頂く。
鷹ノ巣尾根分岐を越えると伊予富士のジャバラ尾根が姿を現す 右手は西黒森山
振り返ると奥に左から 寒風山〜笹ヶ峰〜チチ山が見える
うへ〜〜 こちらからの伊予富士はいつ見ても怪獣だ
この辺りの霧氷は笹ヶ峰同様分厚い 伊予富士の全景が姿を見せる
伊予富士へのとっかかりは右斜面から入って行く 次第に高度を上げる
中央に鷹ノ巣山の手前ピーク 第三トンネルが雪崩れているのが良く分かる (この時は良く見なかった・・・)
何と後続の単独登山者はペーコちゃんやった
伊予富士 標高 1,756m ( 三等三角点「伊予富士」 1,756.18m )
エントツ山とペーコ エントツ山と和田さん
重さ12.5kgのザック 「あばよ!」 「僕を置いて帰っちゃうのね」
いよいよ伊予富士から西へ進む
伊予富士〜東黒森 約2時間10分
私は見送られるのは嫌なので二人を13時10分見送ってからいよいよ冬場の伊予富士から西へ踏み込んで行く。最初は尾根筋に
登山道が付いているので気が楽なのだが、途中か左手にトラバースするので急傾斜を歩く事になる。無雪期なら何でもない登山道
がこの時期には全て斜めの傾斜になって滑落の危険さえあるのだ。西側から見る伊予富士は全く形が単純で恐らくこちら側から見
える形から伊予富士の名前が付けられたのではなかろうか
伊予富士から西へ踏み込む 伊予富士を振り返る (ちょっとピラミダル〜)
どういう訳かこの尾根は稜線部と北側に低い灌木が茂り、南側は笹面となっている。従って稜線上はブッシュで歩く事が出来ず
捕まる木が少ない斜面を進む事になり気を遣う。
埋まり役に立たない。西黒森までの稜線は左へ膨れて右手に湾曲していくので右手には西黒森と瓶ヶ森が見える。
さて 伊予富士を下りた時点から南側の急斜面トラバース路が気にかかる 左正面が東黒森 その右手が自念子の頭
急斜面に入る ストックもピッケルも役に立たない
前方に雪庇が見える あそこを通るのか〜 結構急斜面で滑落が怖い
目指す東黒森 積雪期には迫力がある
右手には石鎚〜瓶ヶ森〜西黒森が姿を現す
14時25分左手は崖で進めず右手のブッシュに突入するのだが、積雪の為丁度広がった枝が障害となり中々進めない。
発達した霧氷は美しい風景を作るが、その中でもがくと全身雪だらけとなる。
そこを抜けると前方に東黒森が立ちはだかる。雪がない時の東黒森は地味で伊予富士からもルンルン気分で歩けるのだが、
やはり冬場は迫力のある姿を見せる。
15時伊予富士を振り返ると相当下って来た事が分かる。伊予富士の北側にはラクダのコブが支尾根となって北に落ちており、
これを以前マーシーさんやペーコちゃんと這い上がったのだ。たしかガクちゃんも冬場にこの尾根をビバークしながら這い
上がったと記憶している。
南側には瓶ヶ森林道が山腹に白い線を作っており、積雪が多く冬季閉鎖も納得の姿である。
なり伊予富士までの標高差を感じる。
更に上ると今度は平らな地形になり西側に西黒森のトンガリとその左手に瓶ヶ森の屋根が見える。15時20分逆光で黒ず
んだ手箱山と筒筒上山をバックに東黒諸山の山頂標識が立っていた。
むむっ 北斜面は霧氷の藪や〜 積雪量が多くてストックもピッケルも役に立たず
ひぇ〜 これが東黒森の姿かや
霧氷の向こうに瓶ヶ森と西黒森が顔を出す
黒森山・沓掛山 笹ヶ峰 チチ山 伊予富士
新雪の斜面は滑らかで美しい 自分の足跡をしみじみと眺める
分散する霧氷も綺麗だ 東黒森への最後の登り
東黒森 1,735m
いや〜〜 いくら見ても見飽きない風景です 東黒森から西を見る
15時20分 東黒森に到着 手前正面が自念子の頭 左奥が手箱山・筒上山
東黒森〜自念子の頭ービバーク・テン場 約2時間10分
普段の日帰り山行と違い、行ける所まで進んでそこでテント泊を決め込んでいるから時刻が気にならない。頭のなかでは漠然
と西黒森まで行ければ良いなという期待はあったが距離的に見て不可能だと悟る。
霧氷の彼方に瓶ヶ森林道のUFOラインとその向こうに「自念子の頭」小ピークが見える。普段なら瓶林をすっ飛ばしている
からこの山も知らない内に通り過ぎているのだ。冬に歩けば山の存在感も増す。
東黒森からは一旦樹林帯を抜けて下っていく また霧氷ジャングルで体中真っ白けになる
東黒森から下りになる稜線は風景の美しさと反して雪庇がせり出して灌木もあり大変歩きにくい。右へ左へとスペースを探し
て下っていく。
ザグと曲がっており瓶林のカーブ運転が良く見える。
いている。
これが冬山尾根縦走の醍醐味だ
ムーチョ歩きにくい雪庇尾根 東黒森は樹林帯に覆われている
加茂川上流ー谷川の源流部ー主谷源流部からの眺め
尾根は瓶ヶ森林道FUFOラインへ一旦下りる 左端のピークは自念子の頭 正面に瓶ヶ森と西黒森
16時10分尾根は瓶ヶ森林道へ一旦下りる。この辺りがUFOラインと呼ばれている場所なのだが風を遮るものが無いので
雪庇が大変発達している。こんな瓶ヶ森林道の姿を見る人は少ないだろうなあ。
いよいよ瓶ヶ森林道へ下りる 冬の瓶ヶ森林道 UFOライン
自念子の頭へのなだらかな斜面から東黒森、伊予富士を振り返る
自念子(じねんご)の頭 1,701.5m (三等三角点 「黒森」 1,701.80m)
16時30分林道部から又尾根へ上る。平らな傾斜なのだがこの時期にここを歩くにはテント泊しかないと一人でほくそ笑む。
一瞬ここの平原でのテント泊も考えたが、夜になって風が出て来ると確保が厄介なので先に進んで様子を見る事にした。
少し下がると周りが樹木で囲まれた比較的平らな場所があり、西側にちょうど石鎚が見えると言う最高のシチュエーションに
、寝るならここだ!と決める。
と腰まで落ち込んでしまう。強からず弱からずの按配でスノーシューをスコップ代わりにしてベースを作る。背中で出番が欲
しいと泣いていたスノーシューもここでやっと役に立ってくれた。
17時10分 自念子の頭に到着 登りきると西側の眺めが良い
美しい風景に魅せられてテン場に決めた場所
テント場から振り返ると自念子の頭が夕日に焼けていた
スノーシューで斜面を出来るだけ平らにし、ドームシェルターを設置 ペグは雪で使用出来ない
テントが流れない様に裏側で枝に細引きを繋いでいる
夕日が石鎚に沈みだす とっておきの場所だ
夕日が沈むまでぼんやりと佇む 贅沢な時間だ
夕日が傾いて来たのでテントの設営を中断して写真タイムとなる。太陽は二ノ森付近に次第に沈み、周りをピンクや赤銅色に
染める。カメラで撮ると何がしの補正が効いて目で見た色合いは出ないが承知の上だ。
地球が回って太陽を隠していく天体ショーを眺める。
夕日はメランコリーを呼ぶこの脳のメカニズムは他の動物には無いのだろうか
18時05分一応テントを張り終える。このモンベルULドームシェルターは言わば正式にはテントでは無くシングルウォー
ルの緊急ドーム型ツェルトの部類に入る。
がるのでとても便利な物だ。
普通のツェルトを雪上で設営するとなると大変面倒である。四隅やサイドを固定するペグが雪の為打てずに、代わりに使う石
も無い。周りに都合よく立木などもあろう筈もなくほぼ安定した居住区は不可能に近い。
ポールをクロスさせて自立させれば中に重いザックや荷物を放り込み、どこか1〜2か所立木に細引きを結んである程度安定
させる。
ガスバーナーでお湯を沸かして夕食を作る シュラフ:イスカ450ショート
シュラフカバー:ファイントラック ポリゴンシールド
テント泊をしない人から良く質問される事がある
Q1
山で泊まるのは恐ろしくないか? A1)熊が居ない限り怖くは無い
Q2
山で泊まるのは寂しくないか? A2)どこで寝ても人間寂しいものよ
Q3
テントの中で暇なのでは? A3)テント内で道具の片付けや今日の出来事を振り返ったり翌日の予定を頭に描い
たり、食事を作ったりと結構時間が過ぎるし疲れているので早めに寝れる
Q4 何か体に変調があったらどうするの? A4)そんな心配をしていたら山歩き自体するのは無理やね
今回初めて山ラジオを使うが山域設定などがわからないので適当にチャンネルを合わせて聞きながら寝る
平成27年2月21日
自念子の頭〜西黒森・東ピーク〜自念子の頭〜東黒森〜瓶ヶ森林道〜第3トンネル〜尾根越え〜瓶ヶ森林道〜
旧寒風山トンネル口
翌朝05時30分頃目を覚ます。ガスでお湯を沸かしてコーヒーを飲みながらビスケットを食べる。06時30分今度は朝日を
眺めるが、東側には山々が連なっているので夕日程は感激しなかった。
06時55分自念子の頭から太陽が顔を出したので、テントはそのままにしておき身軽な恰好で西黒森を目指す。この尾根は遠目
には何でもない尾根に見えるのだが結構アップダウンがキツイ。07時10分藪っぽい尾根に入り下りに緊張する場所もあった。
06時35分 テントをそのままにして西へ出発 黒森山 沓掛山 笹ヶ峰 寒風山
自念子の頭の東側から朝陽が上がる 東黒森もここから見ると結構なピークだ
最初は尾根を歩き、暫くすると登山道に合流 正面の瓶ヶ森が焼けている
樹林帯に入るとアップダウンが多くなる 小ピークを越えると急斜面になる
07時30分平らな林道付近の尾根筋に出ると美しい形をしたブナが現れる。
くまで進むとここから雪原を西黒森へと這い上がって行く。もう夏道はどこか定かではない。
見覚えのあるブナだ
西黒森への取り付き 一つピークを越えると次のピークが見える
西黒森の西側ピークで引き返す
08時尾根を直登して行くと藪っぽくなって行く。08時22分シャクナゲなどの藪をかき分けてピークに達すると前方は崖と
なり完全に行き詰る。ルートは左下を巻いて行く様だった。ここから下って又西黒森まで行くのに更に時間がかかるので今回の
山行はここで切り上げる事にした
今日は天気予報で次第に天気が崩れる筈だし先程から上空に筋雲が現れた。
かった手箱山〜筒上山〜岩黒山〜石鎚山〜瓶ヶ森〜西黒森が右手に正に大パノラマが谷を挟んで広がる景色だ。
急な傾斜を這い上がる 08時22分 ここで尾根歩きは行き詰る
藪尾根を下りて行く 帰りの尾根から西黒森を振り返る
自念子尾根から西側には大パノラマが広がる
元来た道を自分のトレースを辿って09時50分テント場所に帰り撤収作業をする。
へ進む。
登山道が自念子の頭へ向かう 急に雲が飛び出した
09時50分テン場に帰って帰り支度をする 10時28分 自念子の頭を通過
山の天気は一気に豹変する
10時45分UFOラインに下りると青空に薄雲がかかりだした。
西からガスが迫って来た。やはり山の天気という物はあっと今に豹変する。
根はガスに包まれて良く見えない。
自念子の頭から瓶ヶ森林道へ下りる 町道瓶ヶ森線 UFOロード
東黒森へ向かう頃にはもう青空は無い 11時30分 ガスがかかり視界が悪くなる
11時55分 東黒森へ到着 コル部まで来て瓶ヶ森林道へ下りる事にした
昨日トレースをしっかり付けているので迷う心配はないのだが視界の無い尾根歩きは魅力が無く、迷った挙句時間もまだ早いので
冬の瓶ヶ森林道を歩こうと決断しまった。
先刻承知なのだが、瓶林を車で走って伊予富士登山口まで約30分だからまあ歩いても3時間程あれば・・・と単純に計算する。
これがあながち軽率な判断とも思えなかったが、後で苦戦を強いられる事になろうとはこの時微塵も思わなかった。
適当に右手に下る 12時15分 尾根を避けて林道歩きを開始
瓶ヶ森林道の悲劇 (林道歩き 何と 8時間15分)
悲劇の瓶ヶ森林道歩き
瓶ヶ森林道のトンネル
町道「瓶ヶ森線」=瓶ヶ森林道には8つのトンネルがある。普段何度も車で通り抜けているのだがトンネルの数を勘定してる人はいないだろう。実は
瓶ヶ森林道にはトンネルが8つある。寒風山側から行くと最初にアケボノツツジが咲く手掘りのトンネルが第一号隧道(9m)、次に第二号隧道(30m)が
あり、その次にあるのは一番長い第三号隧道(269m)で、向こうから車のライトを見た方が待っている。その後第四号隧道(42m)第五号隧道(74m)
第六号隧道(55m)第七号隧道(17m)第八号隧道(45m)となっている。
結論を先に言うと・・・・
予想通り瓶ヶ森林道は雪が雪崩れて斜めになっているし雪も深い。雪がせり出した場所ではアイゼンを外しているので慎重に歩く。
トンネルも入り口や出口が半分程埋まっているが中は雪があまり無く凍っていた。
瓶林 伊予富士登山口の場所 山側はツララのオンパレード
トンネルは半分ほど入口、出口が雪で埋まっている
冬の瓶林 : 覚悟はしていたがずっと斜めの雪道が続く
どこも雪が雪崩れてきている 林道は雪の斜面と化している 歩きにくい〜〜
14時22分短いトンネルを越えると前方にそれまでより大量の雪崩た雪の壁が見える。そしてその向こうにはガードレールも
林道の痕跡もない。??いくら周りを探しても無い・・・ 何と!良く見るとよりによってこの瓶ヶ森林道で一番長いこの第三
トンネルが雪崩れて完全に埋まっているのだ。ガビ〜〜ン ほんまかよ・・・
もういい加減林道歩きが嫌になっていた時にこの状況だけにガッカリする。
地図を広げて再びびっくりこん! 何と地図に伊予富士から東側、つまりこの瓶ヶ森林道を印刷していないのだ。あちゃ〜〜〜
尾根登山道をピストンの予定だったから余分な瓶ヶ森林道まで印刷していなかった。
いくら雪崩で潰れたトンネル口を見つめても私にはモーゼの様な力は無い。凡人はここを乗り越えなければ家には帰れない。仕
方なくアイゼンを付けて斜面を這い上がる。雪崩の為に雪が柔らかく腰まで雪に埋まって中々這い上がれない。ここに来てこの
惨状は何だ!上の木を目指してラッセルし、木を掴んで少し上昇する。その繰り返しを続ける。
抜けたトンネルを振り返る 雪崩の量は半端じゃない ん? あの向こうで道は無い様な・・・・・・
瓶ヶ森林道 第三号トンネル西口 どこじゃ? (この谷筋を這い上がる)
もがきながら斜面を這い上がる 約1時間かかってやっと尾根が近くなる
1時間かけて尾根筋まで這い上がってホッとする。時刻は15時半なので明るい内に林道の向こう側へ下りれば後は登山口まで
何とかなる。但しトンネルが向こう側に抜ける角度がはっきりしないので、もしトンネルの右側へ下りると林道は無く悲惨な結末
が待っている。最初は灌木の繁る緩斜面だったが、途中から岩崖が現れて進退窮まる。出来るだけ左側へ振りながら何度も安全
そうな斜面をトライする。こんな時に焦って事故に繋がるケースが多いのだ。心を落ち着かせて上に上り返し、又右へ振って下り
る。
15時30分稜線へ出て向こう側への斜面を伺う 約1時間 下がったり上がったりを繰り返す
小雨が降り出したので家に電話をしてもし17時までに向かいの林道まで下りられなかったら最後のトンネルまで帰って中でビバ
ークする旨を伝える。この手のトラブルは慣れたものだが、家人や他人を巻き込む事がなりだけに気楽だ。テントも防寒着も揃っ
ているので自分のトレースを辿って元に帰るのは容易で、予定が一日延びるだけって事だ。暗くなってこんな場所をウロウロして
いてはロクな事にならない。こんな時に気楽な性格が助けになる。
そうこうしている内に丁度17時に向かいの林道にあるトンネルを発見。実は30分前にもここを通過していたのだが林道のイメー
ジが無く、霧で良く見えないので気付かなかった。
でも霧が深くなり視界が3〜5mしかないのでガードレールが無い場所では慎重に歩くのでいつまでたっても林道歩きが果てしなく
続く様だ。
17時頃、再びこの場所までトレースを辿って戻ると、そこは瓶ヶ森林道だった やっと次のトンネルを霧の向こうに見つける
17時10分 瓶林 第二号隧道を抜ける 17時25分 瓶林 第一号隧道 (手掘り)を抜ける
瓶林に復帰して実に3時間半後の20時30分待望の鉄柵が見えて車に帰り着く。途中で道路のミラーや柵がライトに照らされ
て終着ゲートに見えるという幻覚を見ながら無我の境地で歩きに歩いた。
霧が深くて林道が良く見えない 慎重に歩く 夢か幻か? やっと登山口ゲートに到着〜〜〜
天候の急変を受けてフレキシブルに尾根歩きから瓶ヶ森林道へ転進した判断が結果的に裏目に出た。でもこれは自分で決めた事だからその中で
ベストを尽くす事しかない。安全第一に考えて遅めに登山口まで帰り着いたのだが中々味があるフィナーレだった。
今回伊予富士の西へ踏み込んで石鎚を眺めながら冬のテント泊を楽しむアイデアは大成功と言える。