LSD(Long Slow Distance で行く北アルプス・涸沢カールを囲む山々周回の旅

1日目:上高地〜パノラマコース〜涸沢   (テント泊)

2日目:涸沢〜北穂高岳~涸沢岳〜穂高山荘 (テント泊)

3日目:穂高山荘〜奥穂高岳〜ジャンダルム〜奥穂高岳〜前穂高岳〜紀美子平(テント泊)

4日目:紀美子平〜岳沢コース〜岳沢小屋〜明神〜上高地


 北アルプス・涸沢カールを囲む山々周回の旅   (その3)

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この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである 
カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図:
3日目:穂高山荘テン場〜奥穂高岳〜ジャンダルム〜奥穂高岳〜前穂高岳〜紀美子平 (テン泊)

4日目: 紀美子平〜岳沢〜岳沢ヒュッテ〜上高地 

0月10日(月)穂高山荘テン場〜奥穂高岳〜ジャンダルム〜奥穂高岳〜前穂高岳〜紀美子平 (テン泊)

 (約8時間半)



奥穂高へ

05時25分朝目覚めると朝日がやはり歪(いびつ)な多角錐・常念岳方面から登り、山荘前には多くの登山者
が出てきている。冷たい風に当たりながら30分程朝焼けを待つが、昨夕同様雲が多く綺麗な風景とはならなか
った。下の段にいるテント居住者に「強い風で寝れませんでしたねえ」と声をかけると「疲れていたので良く寝
れました」と意外な答えが返ってきた。そうか、ユックリズムの山歩きはあまり疲れなかったって事だと納得した。


さっそくお湯を沸かしてミニ・カップ麺とコーヒーで朝食とする。涸沢と違ってここはトイレの混雑もなく平和
な朝だった。いきおいその後もゆっくりと過ごし08時30分頃山荘前の広場へ出て奥穂高岳へと出発する。


既に大方の登山者はザイテングラードを涸沢へ下ったり、奥穂高岳への崖を登ったりしいた。上から帰ってくる
登山者を待ったり、下から登ってくる登山者に道を譲ったりしながら09時20分奥穂高岳に着く。

ジャンダルム方面はバッチリ視界良好。山頂祠の写真順番待ちをして単独者と撮りあう。奥穂高岳はとてもデカい
山塊を持つ山で四国の剣山と同じく山の形のイメージがはっきりしない。だが、剣山と比べても山頂は非常に狭い。


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     前穂高北尾根方面が明けてくる    強風に一晩中叩かれた我がテント ダンロップVL21

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       ジャンダルムが見える         奥穂高岳の上り口には鉄階段がある

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    穂高山荘を挟んで昨夜下りて来た涸沢岳     笠ヶ岳に雲の首輪が出来ている

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奥穂高岳中腹より 左:涸沢岳   中央奥:槍ヶ岳       右:北穂高岳

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            ジャンダルムへの尾根が眺められる

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     奥穂高岳山頂の祠で          前穂高岳側の広場にザックを置いてジャンダルムへ

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                  ジャンダルムへの道


いよいよジャンダルムへ


09時50分、前穂高岳側の広場にザックを置き、ペットボトル、貴重品、カメラを持って空身でジャンダルム
へ向う。この岩塔を奥穂高側から見ると、右側に自分の肩を持っており、左手奥にはコブ尾根の頭が肩に見える
のでちょうど両肩を持った蛸入道に見える。正確には原爆ドームの形をしている。


一旦奥穂山頂祠を通過して、分岐標識から南側の西穂高岳への尾根に出て、後は細尾根付近を適当に進む。

馬の背に入り、細尾根の先はまるで真下に落ちるような角度である。その上左右も鋭く切れ落ちているのだ。
でも岩の形はギザギザしており、怖がって馬乗りにならず思い切って崖側の足場を利用して下ると手がかり・
足がかりが十分で意外と簡単に馬ノ背を下り付く事が出来る。

ここから次の低いピークへと登り、ロバの耳手前のコルまで下がる。この下りは逆から見るとまさに驚異の崖
にしか見えないのだが・・・

次に一番興味深かったロバの耳トラバース道に入る。前回はここが霧に包まれてルートの全容を把握出来なか
ったのだ。遠くから見るとこんな断崖絶壁を一体どうやって切り抜けたら良いのやら唖然とする位垂直の岩壁
である。


でも 特別な登攀技術も不要でちゃんとルートが付けられているのだ。コル部を少し進むと右手に急角度の岩
のスラブが現れる。ここには鎖があるので問題はない。


そこを抜けると、雪が積もった岩の細道を進む。右下は奈落であるが、鎖や手がかり、足がかりがある。それを
越すと山梨県警山岳救助隊員2名がペンキをもって○×マークを付けていた。ここから先のマークは全てペンキ
塗りたてとなっており気をつけないと帰宅してからサマンサの悲鳴が洗濯機前に木霊すのだ。


ジャンダルムを直下から眺めるととてつもなく細い岩塔が競りあがって迫力がある。

少し下ってジャンダルムの直下を左側から回り込む。西穂高岳方面には下りずにそのまま時計周りにジャンダルム
に這いあがっていくと山頂へ到着した。奥穂高岳からゆっくり歩いて1時間20分程かかった事になる。


横に長い岩の山頂部は平坦で格好の展望所となっている。右手に出て奥穂高方面を見ると、これまた到底自分が
歩いて来れた事が不思議になる位の厳しそうな岩壁と岩尾根が見える。今度は左手に出てお決まりの槍ヶ岳を眺
める。その後 西穂高岳へ下っている尾根を見る。あ〜ここも重いザックを背負ってマーシーさんと登ってきた
のだった。


西穂高岳から北穂高岳への縦走路は苦しかったと思うのだか、もう全くその事は記憶に薄く懐かしい思い出だけ
が残っている。時が苦しみや苦難を昇華して全てを懐かしさに変えるようだ。だから「もうこりごり」って心の
底から思った厳しかった山行も又数年経つと山歩き犯人(ホシ)は現場に再び帰って来るのだ。山頂には岳沢〜
天狗沢〜天狗のコルを経て来られた登山者がいたので写真を撮って貰う。30分程山頂で過ごした後、後ろ髪を
引かれながら下山する。


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さあ ジャンダルムが近づいてきた                   これが馬ノ背だ〜〜


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  馬ノ背の左はスッパリと切れ落ちている (左側)       馬ノ背の右もスッパリと切れ落ちている  (右側) 

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    前も岩屑だらけじゃわ                         馬ノ背を振り返る

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                  ジャンダルム タコ坊主

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                     馬ノ背方面を振り返る

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     ここがロバの耳トラバース道だ                 狭い足場に雪が残っていてヤバい

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     クワバラくわばら                  あれ? ペンキ屋さん 違う! 山梨県警山岳警備隊でおます

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                   これって ピサの斜塔じゃない?

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      ジャンダルム直下にて                     基部を左側から回り込む

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                  ジャンダルム山頂にて

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ジャンダルムから奥穂高岳方面 あ〜又あそこを登るのか〜           西側は笠ヶ岳

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ジャンダルムから南側  西穂高岳    焼岳と乗鞍岳


今度は去年の記憶を蘇らせながら奥穂高へのルートを辿る。先ほどの「山梨県警の救世主」がマークを入れた
塗りたてペンキを触らない様慎重に歩く


ロバの耳トラバース路は一箇所崖を下る場所で去年霧で迷ったが、今日は簡単にルートが確認出来た。鎖などが
置かれた細い岩場をコルへ向って進み、最後は10m程の鎖が置かれた岩場を下りる。


このコル部手前からは前面に垂直に見える岩壁があり、その崖に山梨県警2名とその上に登山者が1名這い上が
っているのが見える。ここも近づけばルートが明らかになる。


コルから壁の様に急な崖に向って進む。重いザックが無いって事は登りで相当楽が出来る。先程の○×マークに
従って崖を這い上がり、そこから少し尾根を下がると馬ノ背だ。岩場は登りが易しい事を実感しながら前穂分岐
に帰り着く。時間は13時だった。
 


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ロバの耳トラバース路からジャンダルムを振り返る           奥穂への壁に向かう

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黄色の丸の中に山梨県警2名と登山者1名がいる             ロバの耳トラバース路

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    ロバの耳トラバース路最後の鎖場              これが馬ノ背への登りだ

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遠くから見ると岩屑を塗(まぶ)したモンブラン?           再度ジャンダルムをしげしげと眺める



念願の 前穂高岳へ

ここで更に槍ヶ岳や西穂高岳の展望を楽しみ、13時20分今回の山行の主目的・前穂高岳へ向けて出発する。奥穂
高岳3,190m、前穂高岳3、090.2m、標高差は100mであるが、見た目は涸沢から眺めても北穂高から
眺めてももっと標高差がある様に見える。この間は吊尾根となっているのだが、奥穂高側は山頂近くから出発し、
紀美子平が標高2、910mなので全体的には下りとなっている。


歩き易い登山道であるが、前から来る登山者は前穂高トラバース道は悪路だと言う。

前穂高岳は大きな山塊なので随分近くに見えるのだが、吊尾根を歩いてみると結構アップダウンもあり長い。涸沢側
が見えると自然と身を乗り出して覗き込む。北穂高方面から見る傾斜は緩やかだが、こちらからは垂直に近い様な
角度で切れ落ちている。

振り返ると奥穂高から西穂高岳の山脈が高い壁となっており、ロバの耳や天狗岳がわかりにくい角度で見えている。
吊尾根を進むに連れて前穂高岳が左手に傾いているのがわかる。


単調な吊尾根と前穂高岳トラバース道を歩き15時20分「紀美子平」に着いた。ここにテントを張れる平地があっ
たのでザックを置き、前穂高岳へ登る。



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  奥穂高岳に帰ってぼけ〜とたたずむ                やはり槍ヶ岳を眺める

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       涸沢を見下ろす                      前穂高へ向けて出発

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     最初は鎖場を下りていく               吊り尾根へ    前穂高が傾いている

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            前穂高の向こうに明神岳

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左手が開けると涸沢を眺める  向こうには常念山脈 (中央が常念岳)

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          前穂高岳から左へ北尾根が伸びる

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奥穂岳岳を振り返る  並んで尖っているのは左からジュヤンダルムとロバの耳

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       岳沢が梓川に向かって伸びていく               前穂高の厳しい姿

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    前穂高岳をトラバース路から見上げる             前穂分岐 紀美子平


携帯電話を車に忘れた為、穂高岳山荘の公衆電話で「明日は上高地に下りる予定」と伝えたので少し心配だが、以前
東三方ヶ森で予定通りに帰らず一騒ぎ起こして免疫が出来ているので今回は大騒ぎにはならないだろう。ライトを点
けて岳沢を下る選択も十分あったが、それでは今までのゆっくり山歩きが台無しになってしまう気がした。


踏み跡やペンキマークがあるものの、基本的には岩屑の斜面を天辺へと向う。

イワヒバリのツガイがダンスを踊っていたので眺める。今回は残念ながら雷鳥にお目にかかる事が出来なかった。
16時に風の強い前穂高山頂に着き、北側を覗き込むが深緑の森の中を流れる梓川の白い砂と横尾方面しか見えな
かった。前穂高の山頂は細長く思ったより平坦でケルンが積まれている。又テントを張る平地があり、その周りに
は風避けの石が積まれている。ここが気に入ったがさすがにザックをわざわざ又持ち上がる気にはなれなかった。

涸沢を眺める為、尾根を奥穂高方面へと進む。山頂の端まで出るとやっと涸沢が雲の切れ間に見る事が出来た。


北側は相変わらず常念岳から大天井の山並みが見え、奥穂高側にはロバの耳あたりの尖がりが確認できた。寒いし
展望ももう一つなので17時過ぎに紀美子平まで下りてテントを張る。


紀美子平とは

今田重太郎は大正13年、穂高山荘の前身である穂高小屋を創設した。その後上高地から奥穂高岳への登山道を開拓
していくのであるが(重太郎新道) その際、前穂高岳近辺では幼い娘の紀美子をこの平地にテントを張って中で寝
かしつけてたり遊ばせしたりして奥さんと登山道を整備したらしい。その娘紀美子さんは23歳で病死したのである
が、ここの狭い平地が「紀美子平」と呼ばれる様になった。

17時30分になると雲がちな奥穂高方面に紅色の筋が出来て次第に山の稜線がシルエットとなる。こうなると山々
が同じ様なとんがり帽子になり同定が出来なくなる。


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                    紀美子平でテントを張る

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       前穂への岩ルート                            前穂高北尾根

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前穂高岳から北穂高岳方面  槍はガスの中                 前穂高岳でしぇ〜〜

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   北穂高岳の西端に出て涸沢を眺める           前穂高岳  奥はやはり常念岳

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           前穂高岳から釣り尾根、奥穂高岳を眺める  

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            西穂     間ノ岳    天狗ノ頭            ジャンダルム ロバの耳


静かなテン場ではあるが、残念な事に谷側から風が猛烈に吹き上げてくるのでスリングでテントの谷側を補強し、
無料で手に入れた自分の空間に潜り込む。当初ここに一泊する事は真剣に考えていなかったので残された食料は
ウィダー2個、ポカリスエット2本、チョコレートの欠けら少々、水200mlのみ。

いつも余分にパンやらビスケット、カロリーメイトなどを持って来ては手を付けずに自宅まで持って帰る運命なの
で今回は持って来なかった。取り敢えずお湯を沸かしてスティック・コーヒーを飲む。一瞬 ウィダーとポカリを
小鍋で煮るアイディアが頭に浮かんだが、肯定的な出来上がりの味を想像出来なかったので実験には到らなかった。
眼下には岳沢小屋の灯りが見えて寂しさを増強する。穂高山荘に続き一晩中強風がテントを揺すぶった夜だった。

 

0月11日(火)紀美子平〜岳沢〜岳沢ヒュッテ〜上高地 (約 6時間)

 

05時30分目を覚ますと紀美子平標識方面が明るくなっているが、昼間の晴天に比べて朝、夕は雲が多く今回は
良い写真は取れなかった。


相変わらず奥穂から西穂にかけての稜線が灰色の衝立となって聳えている。それが陽の光を浴びて次第に色を帯びて
巨大になってくる。もう朝食はウィダーとポカリスェットしかないので何を食べようかと悩む事もない。

06時30分テントを畳んで出発する。標識通りに紀美子平の裏側へ回りこみ鎖場を下がる。


最初は沢沿いのガレ場を下っていく。その内、右手に鉄梯子が取り付けられた大岩がありここから沢を外れて岩と
ハイマツの支尾根沿いをジグザグに進む事になる。


右手は相変わらず黄色い草色と岩襞(ひだ)の山塊が続き、左手には明神岳から伸びる尾根、その間に岳沢の白い
沢筋が上高地へと続く。その向うには上高地の山「霞沢岳」、ちょっと右手に焼岳、その又向うに雲から独特の
曲線を持った乗鞍岳が姿を現し、更に左手奥には御嶽山まで見える痛快な下山コースだ。


振り返ると前穂高岳の岩山がボリュームを持って聳えている。紀美子平の標高は2,910m、岳沢小屋のそれは
2,230mだから石鎚山より相当高い場所にある。この差都合700m弱を一気に下る事になる。
「岳沢小屋でカレーを」と頭のなかで念仏の様に唱えながら下がる。


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        紀美子平の朝                      明神岳方面より夜が明ける

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    最初は岩尾根の左手を下りて行く             ガレ沢に沿ってルートが続く

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   この鉄梯子の岩から尾根ルートに入る           広い岳沢が梓川へと落ちていく

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   上高地を眺める   左は霞沢岳    中央奥には 御嶽山と乗鞍岳      右に焼岳

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             振り返ると前穂高岳が迫力満点に聳えている

眼下に緑の少ない岩尾根の最終頂が見え、その右下に岳沢小屋の赤い屋根が見える。こういう場合、そこに到達
するには相当時間がかかる事は経験上覚悟している。


この辺りの岩は節理がスレート板上で縦や斜めに正確な割れ目が出来ているので風化すると崩れやすい。岳沢コース
の前半は比較的なだらかなジグザグ道であるが、07時20分崖に鎖が敷設されている場所を下りる頃になると
傾斜が急になる。確かに前から登って来る登山者は総じて息も絶え絶えでキツそうであるのですれ違う度に同情の
会話を交わしながら下りていく。

次第にダケカンバの樹が崖の様な登山道に出現する。四国では剣山と二ノ森の間や笹ヶ峰の南尾根に素晴らしいダケ
カンバの林があるがどちらも幹が細い。こちらのダケカンバは幹も太く立派な枝ぶりである。

07時40分長いガレ場が縦に続いている場所があり、下から女性の団体登山客が上がってくるので落石を避ける
為待機。予想以上に長い時間がかかるが辛抱して待ち、そのガレ場を下がると鉄階段が2箇所続けてあった


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        右手にはずっと西穂から奥穂への壁がついて来る

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  これじゃ 崩れる訳だ              落石を避けて登ってくる登山者を待つ

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           岳沢の白い筋の右岸に岳沢小屋が見える

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    ダケカンバが多い登山道           鉄階段もここ以外にも敷設されていた


08時過ぎになると雰囲気の良いダケカンバのこんもりした森があり、人の声がする。すれ違った若い男性は信州
の山を伝って東京まで歩いていると言う。年配の単独登山者と更にもう一人の登山者と意気投合して一緒に歩いて
いる様だ。「旅は道づれ」って言葉があるが、交通機関が発達していない昔はこういう出会いが街道筋で繰り広げ
られていたんだろう。


近くに「かもしかの立場」と書かれた岩場があったので記念写真を撮って貰う。この辺りからは非常に美しいダケ
カンバの褐色葉が続くが相変わらず傾斜はキツく鉄階段が又あった。

右手にはダケカンバの白い幹とこげ茶色の葉が美しく優しい色合いとなり、その向こうには青空をバックに穂高の
鋭い岩山が白く聳え、厳しい山肌にへばりつく草は黄葉して絵画の様な風景を作っている。今回の山歩きで一番
感動した場所であり、つくづく昨夜歩かなくて良かったと思った。



黄葉の樹林帯で今度は流暢な英語の会話がする。前からやって来たやや年配の白人に「オーストラリア人ですか?」
と聞くと「いいえUSAです」と答える。時刻は九時前だったので「いまから何処まで行きますか?」と聞くと
「奥穂高まで往復するつもりだよ」と言う。え〜〜こんな時間から奥穂を往復ですと?「あなた達は世界一タフな
米軍海兵隊か?」と冗談半分に聞くと笑いながら「わたしたちはただのおバカね」と片言の日本語で答えた。

後ろの若者もそれに相槌を打った。得てして西洋人の方が東洋人より冗談が好きだと思う。グッドラックと言って
別れた。


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           岩峰の中にこんもりとしたダケカンバの林がありホッとする風景を造る

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   老いも若きも山ではすぐ仲良くなれる               カモシカならぬ四国のイノシシ

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    ダケカンバの黄葉が嬉しい                  こんな風景がずっと続く

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あら 又鉄階段が・・・ まだ結構急な傾斜なのだ      メイドイン USAが二人やって来た


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          昨夜 ライトを点けて歩かなくてよかったわ〜

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       紅葉と黄葉                         朝日を一杯浴びて黄金に輝く

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      どうや〜〜  岳沢コースの美しさ !    奥穂高岳

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                岳沢の河原に出る


9時過ぎに広い岩沢を渡り岳沢小屋に着く。最近再建されただけあって新しい建物だ。以前はこの山小屋は
上条親人が岳沢ヒュッテとして昭和31年建設されたが2年後に大雪で倒壊、その後息子さんの上条岳人が
再建した。しかし平成18年又大雪の為倒壊やオーナーが亡くなったりして休業状態となった。そして
去年(平成22年)槍ヶ岳小屋グループがここを「岳沢小屋」として再建したものである。

公衆電話を借りようと場所を聞くと「ここは携帯電話の電波が入るので公衆電話は置いていません」との事で
がっかりする。それでは取り敢えずカレーを食べて出かけようとするが、「食事は10時半から」と張り紙が
あって2度失望する。


どうも今回はまともな食事には縁がなかったようだ。仕方なく「マルちゃん緑の狸」を注文。ここはセルフサー
ビスなのでお湯を入れて食べる。状況によってはこういう物もご馳走に早変わりとなる。更にコーヒーと自作
ドーナツを急いで頬張り上高地へと向う。


岳沢小屋から奥に向って「天狗のコル」への登山道が続いているが、上高地へは岳沢へ一旦戻り左岸に続く登山道
を進む事になる。岳沢ヒュッテまで下りたら一安心とは言え、上高地までは更に標高差で730m程残されている。
広く緩やかな登山道を所々に残る紅葉を眺めながら歩く。道は良く整備されており石畳の様に平たい石が配置され
て比較的歩き易い。登山者は平日と言うのに次から次へと現れる。


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岳沢を渡る  水は見られない  奥に雪渓が残っていた   昨年槍ヶ岳山荘グループにより開業された岳沢小屋

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      ナナカマド越しに見る岳沢〜天狗のコルルート
 
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     歴史を感じる登山道だ                         さらば穂高よ

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     石畳になっている登山道                  岳沢の左岸沿いに下る

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            森の中へ入る                       風穴があった

モミの林に入ると荒れた登山道を避ける様に木道が設置されており助かる。

一体上高地の何処に出るんだろうと思っていると梓川右岸に出た。梓川の本流から少し外れた流れの緩やかな場所
を歩き、さらに観光客と登山者で溢れた河童橋を渡る。先ず土産物屋の公衆電話で無事を連絡し、ソフトクリーム
を食べ、更に大きな飲むヨーグルトを買って立ち飲みしながらバスターミナルに昼に到着。

帰りはあまり混んでいない1200円のバスに乗り平湯へ出て、バスターミナルから歩いて駐車場へ帰る。車は
ちゃんと鍵のかかった状態でありホッとする。


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    モミの樹林帯に入ると木道が伸びていた              岳沢登山口に到着



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          伏流水が流れる美しい上高地の風景

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    奥の山が六百山だろうか                 河童橋に帰る   正面に歩いてきた岳沢が見える


車に帰ってまずしたいことはお風呂に入る事だ! 恒例となった老舗旅館の風呂に飛び込み体をよく洗いサッパリ
気分。次にしたい事はとろろ飯屋によってご飯を食べる事! お米を食べてシャバの日本人に返る。

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   老舗旅館の露天風呂に入る                    マーシー すまんのう   とろろめし


今回のぐるっと涸沢を囲む山々巡りは寝不足を除いては余裕たっぷりで北アルプスを楽しんだ。基本的には気を使う山小屋
泊は苦手なので居住条件の悪いテント泊を選択したが風の強い場合一人でテントを張るのが大変だった。次回から一人の
場合はモンベルのドームシェルターでテントの内側から設営出来るタイプが良いかも知れない。

さて来年は剱岳か南アルプス3000m級の山々に挑戦〜〜かな

第1日目  涸沢パノラマコースは  ここ
第2日目  北穂高〜奥穂山荘は  ここ


  
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